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すみれ荘ファミリア (富士見L文庫)

トイレ、風呂、台所共有、朝食夕食付きのおんぼろ下宿すみれ荘。大家代理兼管理人をしている一悟は、古株の青子、TV制作マンの隼人、OLの美寿々ら下宿人と家族のように暮らしていた。そこに、芥一二三と名乗る新しい入居者がやってきた。作家だという芥は、マイペースで歯に衣着せず、攻撃的ではないけれども思ったことを平気で口にする。そのせいか、平穏なすみれ荘の住人たちの今まで見えなかった顔が見えてきて?。一つ屋根の下の他人、そして家族の再生ものがたり。

これは裏表紙のあらすじなんだけど、ここから連想されるほっこりミステリではなくて、ヘビーな口当たりのパンチの強い物語。

情念っていう感じ、ていうかえーと、とと考えた結果「好きって絶望だよね」っていう物語です。
「一二三と名乗る」だけあって、これは偽名なんだけどそれは冒頭20ページぐらい読んだら明かされることなのでネタバレではないはず。それがどういうところに着地するのかというのがとてもドキドキしたんだけど、え、そっち!? っていうのが相当でかかった。みすずさんは1回病院行きませんか……ってすすめたくなるし「あーーーーーつら!」っていう描写が的確。
案外ミステリタッチで、「憧れる理想のシェアハウス」でもなくて、結構重い話なので、ゆるふわほっこりが読みたい人にはおすすめしないしちょっと重たい話が読みたい人にはどうっすか! っていう感じ。おすすめです。

チュベローズで待ってる AGE22チュベローズで待ってる AGE32

すげー面白かった。わたしが思うところの良いミステリというのは「うまいことだましてほしい(あわよくば世界がひっくり返るような感覚をあじあわせてほしい)」「そうかあれはそういうことかと膝を叩きたい」という要素がある物語なんですがこの「チュベローズで待ってる」はそれらをいい感じに満たしている。

2015年、就職活動に失敗した僕、光太は30社以上受けたがどこにも採用されなかった。ここが最後の望み、という会社からも不採用通知が届いた。就職浪人するか、バイトをするか。就職浪人するにしては家計が苦しい。母の体調も思わしくない。自分に残された道はどちらも不自由で八方ふさがりだった。光太は新宿の街の片隅で吐いていたところ関西弁の男に声をかけられた。その男が光太の人生を動かすことになるチュベローズのホスト、雫だ。

上下巻で、22歳と32歳。トータルで500ページだけど読みやすいというか物語の引力がかなり強い。ぐいぐい引っ張られていく。ホストって華やかそうな世界で結構湿度は高めな気がする……。割と王道は王道だと思う。けどすごい目まぐるしい展開。
上巻(就職に失敗してホストになった22歳)だけでもかなりすごいんだけど、下巻(32歳、10年後の話)もかなりすごい。上巻ものすごく引いて終わるからな。これ上下巻一緒に買ってよかった。だって23時に読み終わって電書にもなくて続ぎが気になって普通に死ぬぞ! 伏線が綺麗に回収され多可と思ったらもう一回角度が変わるのとかまじごちそうさまだ。

封神演義か! とかポケモンショックみたいだなとか、ブギーポップに出会ったからしょうがないとかいろいろ同じ箱にいれる本を考えながら読んでたけど、読後感的には昨日は彼女も恋してた&明日も彼女は恋をするかなあと思った。
あっちは割と呪いみたいな話だけどチュベローズは祈りみたいな話。

凄い本を読んだ!

腐男子先生!!!!! (ビーズログ文庫アリス)

なろうの書籍化。久しぶりに応援上映ならぬ応援読書をしてしまった……。
twitterで奇声を上げていたのはこの本のせいだった。おかしい基本既読のはずなんだが。

ごく普通の腐女子たる早乙女朱葉のスペースに同人誌を買いに来たひとりの腐男子。
オフラインでは一期一会だと思われた描き手とファン、ノベルティを渡し忘れて追いかけたところ発覚した事実、その腐男子は朱葉の高校の教師、今はもっさりした外見だが「イケメン生物教師」と称される桐生和人だったのだ。

短い話が一杯収録されている基本オタクあるある、ラブコメに見えて「フラグは折るもの」

結構リアルタイムなネタが多い(こないだはプリライ回とかユーリオンアイス回とか闇の末裔新刊発売回とかあったのだ)ので古くなってやしないかと思ったけど、キンプラ公開直後の今、プリライが終わった今、応援上映のところが一周回って逆に新しい……。

「オタクあるある」っていっても元ネタが分からないと面白くないとかそういうのでもなくて、「オタクあるある」なのでそれな!!!! っていう共感……? 程度の大小あれどマンガアニメ方面のオタクだったらたぶん身に覚えがざくざくあるやつだと思います。
既読なのに同じところに引っかかった……ぶらっ!!! くろにこ!! だろあれ……。サンホラ1期じゃねえか!!!!!

これは書籍版で、多少の追加あるといってもオンラインでもだいたいおんなじものが無料で読めます。まあ本は課金アイテムです。
縦書きで読めるってすごい。めくったらどこからでも読める紙すごいやばい。

 そして、エンドロールの終わり。
 出るはずだった、最後のテロップは──出なかった。
 真っ黒な画面、そこに。
 白い流麗な文字とともに。
《そして、輝きは終わらない──》
『だよね? 星屑ちゃんたち!』
 アイドルの声が響けば、ギャアアアアアアアアと映画館が歓声に包まれる。
 振り切れた。頭の血管が切れる、精神が焼き切れるかと思った。それくらい興奮した。
 そしてそれは隣の桐生も一緒だったことだろう。隣にいるだけで、それがわかった。
 ──てゆうか隣も完全に泣いていた。マジかってちょっとだけ思った。思ったけど、思った朱葉も泣いていた。
 そして、特報が流れた。来春。劇場版新作。
 それから、まさか、まさかの新曲披露。
 ラストシーンは、みんなが大好きな俺様のキャラクターが、ニヒルに笑って。
『MontBlancでも食べて待ってるんだな』
 そんな風に、煽るから。
「「待ってるーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」」
 劇場が一体になった。
 上映は終わり、灯りがつく。
 夢から覚めたような気持ちにはなったけれど、まだ全然、心がリアルに帰れていなかった。

(P67〜P68)

わかる!!!!!!!!!!!!!

「経済を回しているなんておこがましいことは言わないが俺が回しているのは自分の情熱でありリビドーであり味合あわせていただいているのは課金ができる喜びである!」
「うるせえ!」
「孝行したいときに親はないように、課金をしたいときにすでにコンテンツはないかもしれない! 今! ここで! 課金ができる喜び! 出会い! それは奇跡! たとえガチャが悪い文明だとしても! 俺はこの悪さえも愛する!」

(p100〜101)

それな!!!!!!!!

ある小説家をめぐる一冊 (富士見L文庫)

小説家が担当編集に介護される話……。世話を焼く人焼かれる人はロマンだ。
オタなので桜の話とか好きだし幻想成分があってとてもよいものです。

死神もたまには間違えるものです。 (新潮文庫nex)

シリーズ2巻の1冊完結。
死んだことに気づいていない人に保険の勧誘をして遺される家族へ保険金を遺したりあの世へ送る俗世間慣れした死神の話です。
死神は結構葬送のほうがなかなかエグい(死にたくないという思いをエネルギーにしてあの世へ送る)ので好きになれるかどうかというとそれは微妙なんだけど人間死ぬときは死ぬもんだぽん。さぞ無念が残ると思うぽん。でもそれは生きてるから思うことで死んだらもうなにも分からないから大丈夫、というのがこの死神です。

くるみちゃんわたしオタ隠ししてるメジャーなマンガのマイナーカプなんだけど死ぬ前に薄い本を作らないと! と言ってるあたりはすごいリアル。居飛車の王子さまは最初うたプリかなと思ったけどあれテニプリのほうが近いよな……。
いやでもここで死にたくないだろうなって思うところでみんな死ぬんだもんな……。

夜を乗り越える(小学館よしもと新書)

想定以上に攻撃力が高かった……。小説のほうはまるで読んでなくて第2図書係補佐とかは読んでる。
2章の「創作について」と3章の「なぜ本を読むのか」がすごくよかった。

僕が本を読んでいて、おもしろいなあ、この瞬間だなあと思うのは、普段からなんとなく感じている細かい感覚や自分の中で曖昧模糊としていた感情を、文章で的確に表現された時です。自分の感覚の確認。つまり共感です。
わかっていることことを分かっている言葉で書かれていても、あまり共感はしません。(略)自分の中で散らかっていた感情を整理できる。複雑でどうしようもなかった感情や感覚を、形の合う言葉という箱に一旦しまうことができる。

(P114)

これをやっていったのがこちらになります。

僕は僕の好きな小説を、みんなが読んで、一緒に夢中になれたらいいなと思っています。一方で、これが売れなかったらおかしいだろともまったく思いません。僕は面白いものが読めて幸せだし、今後も読み続けていきたいので、素晴らしい才能の作家さん達が自分の創作活動に手ごたえを感じて頂けるように読者として「これはおもしろいのだ」と全力で言い続けたいというスタンスです。

(P96)

何を想定していたかというとはいとあるアイドルですね。
colorful | S+h(スプラッシュ)デビュー1周年おめでとう!
それな! めっちゃそれな!!! というしかない「首がもげるほど同意」というあれに出会えた瞬間というのはすげーな!!って思うのよ。
かといって「自分は下手だしほかの人も書いてるからいいや」っていうのも嫌で自分が書きたいことは自分にしかないからできるだけ手は尽くしたいぞ。色んなことに対してこうかこうか? と考えてはいるけどうまいこと言語化できてる気がしないときはあるけど、それはそれだ。

本を読むことについてもまたそんなかんじでたくさんあったんですけどいちいち引用しきれないので、読みながら「それな」ボタンがとてもほしかった。攻撃力高いけど読むのもやめられなかった。そんな本でした。よかったぞ!

おいしいベランダ。 午前1時のお隣ごはん (富士見L文庫)

いとこが海外転勤が決まった。「期限付きの転勤だし家具はおいていきたいし引き払うのはもったいないいい物件だから維持したい。ついては大学進学にあたってここに住まないか」と持ち掛けられまもりは一人暮らしを始めた。一人暮らしを始めるうえで両親とした約束のひとつに「ちゃんと野菜を食べる」というものがある。小学生じゃないと言い放ったものの今日も冷蔵庫で野菜が腐っているところを発見した。

そんな感じではじまるベランダ菜園で料理もの、社畜あがりのフリーのデザイナーと女子大生の話。

ひょんなことからお近づきになった男子に料理をふるまわれる話って乙女ゲーを除けばもしかすると植物図鑑以来な気がするけどあれほど恋愛恋愛はしていない。流れている雰囲気、特に前半〜中盤は過去作の東方ウィッチクラフト?垣根の上の人を思い出す感じ。
かつて東方魔女を読んでいたコバルト育ちの皆さんこれは買いですよ!!!(めっちゃ大声で)(派手マ)
「いっしょのご飯を食べるふたりと、近づく関係、形を変える呼び名」その響きにきゅんとなった人ももれなく読むのださあさあ。
おすすめです。

チョコレート・コンフュージョン (メディアワークス文庫)

すれ違いに次ぐすれ違いラブコメ。凶悪な外見ド天然(35歳)×大人ぶりたい乙女(27歳)

龍生は鋭い目つきと凶悪な人相と、噂が独り歩きして背びれに尾ひれについた結果殺し屋と称されており、恋愛はおろかバレンタインなど無縁で生きていた。海外事業部の千紗は自分にも笑顔で接してくれているので憧れは抱いている。
それがバレンタインの夜、千紗がヒール部分を折って龍生がこれを使ってくださいとスリッパを差し出し、千紗はお礼を兼ねた物々交換でチョコレートを渡したことに始まる。

アラサーの恋愛で交換日記と除菌スプレーが飛び交うんですけど、いい意味でばかばかしい。
すれ違いと思い込みと誤解は華やなあと思います。とても王道のラブコメです。
千紗と後輩の桃原の関係がこれtwitterで見かけるやつやーーーっていうやつだった。どことも後輩指導は大変やなあ……。妙なリアル感。
あとほんとうにゆとりはほしい。大事だ。

卯ノ花さんちのおいしい食卓 (集英社オレンジ文庫)

施設育ち、勤め先の工場は突然閉鎖され古いながらも自分の居場所だったアパートは全焼した。
大家の口添えがあって若葉は「薔薇屋敷」と呼ばれる近所の卯の花一家に身を寄せることになった。

表紙と1話から受ける感覚とはまるで違った方向に進むので家族になろうよ系ホームコメディを期待して読むのはやめたほうがいい系。良くも悪くも表紙詐欺では……。
表紙の4人のバックグラウンドの物語に終始します。「ラノベの1巻1」っていう感じです。かなりファンタジーです。
貧乏描写が堂に入っていてすごかった。
あと戸籍上は兄妹になっても今回みたいなまったく血のつながりのないケースは結婚はできるんじゃないのかと……
左のふたり、朱璃と凪の出会いの話は人外BLのような匂いがしたので普段はBL畑の人2なのかもしれないと思いました。

  1. 登場人物の紹介と背景の説明に1冊使う感じ []
  2. 著者略歴によれば「別名義で著作多数」とのこと []

Roman  冬の朝と聖なる夜を廻る君の物語 (上)

告知の時点で豪快に転がったRomanのノベライズです。左さんのHiverを公式として拝める2016年素晴らしい。
上巻に収録されているのは朝夜、風車、腕、革紐、宝石、屋根裏Romanです。あとNoel。
SH楽曲のノベライズ・コミカライズも随分増えましたが、原作サイド1による監修が入っているわけでも訂正が入るわけでもなく、「自由にやってください、解釈はおまかせします」ということになっています。だからこそというか、屋根裏ロマンが読めると思わなかった……。

曲は断然朝夜・腕・宝石なんだけど、革紐と腕がすごいよかった。腕はそこで天秤とつなげるのかとわくわくした。
10年前に出たアルバムに今も首ったけだって思わないだろうよ。

  1. うちの王様 []
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