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屍人荘の殺人

神紅大学ミステリ愛好会の葉村譲と会長の明智恭介は同じ大学の剣崎比留子に誘われた映画研究部の夏合宿に加わるためペンション紫湛荘を訪ねた。
心霊スポットで撮影して制作会社に買い取ってもらいあわよくば番組に流してもらいたいという肝試しと、コンパ目的の合宿だが、今夏は合宿直前に「今年の生贄は誰だ」と怪文書が届き、部員の多くが参加を辞退した。コンパという名目上女性が必要で、自分(比留子)が参加するなら男2人ぐらい増えても構わないということで「夏のペンションとか事件が起きそうでいいじゃないか」という明智と剣崎の間で利害が一致した。
合宿地の近くではサベアロックフェスという有名人が多くやってくるイベントがあるようで周囲はごった返している。その中で始まった合宿一日目の夜、映研のメンバーたちは肝試しに出かけるが、想像しえなかった事態に遭遇し紫湛荘に立て籠もりを余儀なくされる。
緊張と混乱の一夜が明け部員の一人が密室で惨殺死体となって発見される。しかしそれは連続殺人の幕開けに過ぎなかった……

外部と連絡を取る方法については革命的な進歩をしている現代で新しいクローズドサークルだった。面白かった。
マダラメ周りの話をもう少し読んでみたかったけどこれ続編でないかな。
登場人物の名前のおさらいがあったり、館見取り図のある小説がそれだけでぐっとくる。あとテンポが良かった。そして突然の○○○。
荒唐無稽じゃないほうのコズミック(清涼院流水)。北村薫の選評が「野球を見に行ったと思ったら闘牛だった」で、ほんまそれって思った。

以下ネタバレの話をしたい。ワンクッションにもう1回書影を置く。

王とサーカス

「タチアライ。お前はサーカスの座長だ。お前の書く物はサーカスの演し物だ。我々の王の死は、とっておきのメインイベントということだ」

(P178)

「さよなら妖精」「真実の10メートル手前」の大刀洗万智、新聞社を辞めたばかりの2001年に海外旅行特集の仕事を受けネパールへ飛んだ。同じころ、王宮では国王をはじめ王族殺害事件が勃発する。大刀洗もまたジャーナリスト、現地で取材を始めるが、その矢先に大刀洗の前に死体が現れる。

「伝えること」で苦悩し辿りついた真実がそういうところに着地にするのかと。凄いものを読んだ。ミステリは心が洗われる。

短歌と俳句の五十番勝負

お題の単語を必ず使う短歌と俳句集+エッセイ的な本。お題を出す人は朝井リョウだったり竹本健治だったかと思えば壇蜜が登場したりビートたけしがいたり、肩書市議会議員とか牧師とか小学生が登場する。
短歌はともかく俳句は学校卒業して以来はとんと触れる機会が減ったのでこれが久しぶり。
12番目の

「炎天の校区飛び出す謀反かな」

(お題:謀反)

は何から何までわかるって感じだった。コークガイに一人で行っていいんですかー先生に言うてやろーって言われてそだったわたしは一言一句わかる!!!! と言いながら読んだ。
思えば歌人穂村弘にはあまり触れたことないのでこれが久々かもしかしたら初めてになるのでは。

ののはな通信

昭和59年ごろから2011年まで、野々原茜(のの)と磯崎はな(はな)のふたりの手紙やメールや、授業中に回すノートのきれっぱしに至るまでの書簡体小説。この勢いでよくこの厚さと流れの小説を書いたなあと感嘆するが、あと私的で親密なやり取りをのぞき見しているようで背徳感ある。展開急だな!? とか(書簡体なのに)百合だな! と思っていたら時代が流れて行って、2人の歴史の積み重ねを感じる1冊だった。
わたしも授業中手紙を回したりレターパッド1冊分の手紙を書いて長いやり取りをしたりその時送られてきたものはすべて残しているからののとはなのやりとりはすごくわかる。重たい話もたくさんしたなあと当時を思い出して懐かしんだ。

真実の10メートル手前 (創元推理文庫)

久しぶりに読んだけどキレッキレだった。
さよなら妖精に登場する大刀洗万智が大人になって新聞社職員になって(あるいはフリーライターとなって)事件に巡り合うという短編集で王とサーカスの前日譚。フーダニットだったりホワイダニットだったりキレッキレだった。ミステリは心が洗われる。

すみれ荘ファミリア (富士見L文庫)

トイレ、風呂、台所共有、朝食夕食付きのおんぼろ下宿すみれ荘。大家代理兼管理人をしている一悟は、古株の青子、TV制作マンの隼人、OLの美寿々ら下宿人と家族のように暮らしていた。そこに、芥一二三と名乗る新しい入居者がやってきた。作家だという芥は、マイペースで歯に衣着せず、攻撃的ではないけれども思ったことを平気で口にする。そのせいか、平穏なすみれ荘の住人たちの今まで見えなかった顔が見えてきて?。一つ屋根の下の他人、そして家族の再生ものがたり。

これは裏表紙のあらすじなんだけど、ここから連想されるほっこりミステリではなくて、ヘビーな口当たりのパンチの強い物語。

情念っていう感じ、ていうかえーと、とと考えた結果「好きって絶望だよね」っていう物語です。
「一二三と名乗る」だけあって、これは偽名なんだけどそれは冒頭20ページぐらい読んだら明かされることなのでネタバレではないはず。それがどういうところに着地するのかというのがとてもドキドキしたんだけど、え、そっち!? っていうのが相当でかかった。みすずさんは1回病院行きませんか……ってすすめたくなるし「あーーーーーつら!」っていう描写が的確。
案外ミステリタッチで、「憧れる理想のシェアハウス」でもなくて、結構重い話なので、ゆるふわほっこりが読みたい人にはおすすめしないしちょっと重たい話が読みたい人にはどうっすか! っていう感じ。おすすめです。

チュベローズで待ってる AGE22チュベローズで待ってる AGE32

すげー面白かった。わたしが思うところの良いミステリというのは「うまいことだましてほしい(あわよくば世界がひっくり返るような感覚をあじあわせてほしい)」「そうかあれはそういうことかと膝を叩きたい」という要素がある物語なんですがこの「チュベローズで待ってる」はそれらをいい感じに満たしている。

2015年、就職活動に失敗した僕、光太は30社以上受けたがどこにも採用されなかった。ここが最後の望み、という会社からも不採用通知が届いた。就職浪人するか、バイトをするか。就職浪人するにしては家計が苦しい。母の体調も思わしくない。自分に残された道はどちらも不自由で八方ふさがりだった。光太は新宿の街の片隅で吐いていたところ関西弁の男に声をかけられた。その男が光太の人生を動かすことになるチュベローズのホスト、雫だ。

上下巻で、22歳と32歳。トータルで500ページだけど読みやすいというか物語の引力がかなり強い。ぐいぐい引っ張られていく。ホストって華やかそうな世界で結構湿度は高めな気がする……。割と王道は王道だと思う。けどすごい目まぐるしい展開。
上巻(就職に失敗してホストになった22歳)だけでもかなりすごいんだけど、下巻(32歳、10年後の話)もかなりすごい。上巻ものすごく引いて終わるからな。これ上下巻一緒に買ってよかった。だって23時に読み終わって電書にもなくて続ぎが気になって普通に死ぬぞ! 伏線が綺麗に回収され多可と思ったらもう一回角度が変わるのとかまじごちそうさまだ。

封神演義か! とかポケモンショックみたいだなとか、ブギーポップに出会ったからしょうがないとかいろいろ同じ箱にいれる本を考えながら読んでたけど、読後感的には昨日は彼女も恋してた&明日も彼女は恋をするかなあと思った。
あっちは割と呪いみたいな話だけどチュベローズは祈りみたいな話。

凄い本を読んだ!

腐男子先生!!!!! (ビーズログ文庫アリス)

なろうの書籍化。久しぶりに応援上映ならぬ応援読書をしてしまった……。
twitterで奇声を上げていたのはこの本のせいだった。おかしい基本既読のはずなんだが。

ごく普通の腐女子たる早乙女朱葉のスペースに同人誌を買いに来たひとりの腐男子。
オフラインでは一期一会だと思われた描き手とファン、ノベルティを渡し忘れて追いかけたところ発覚した事実、その腐男子は朱葉の高校の教師、今はもっさりした外見だが「イケメン生物教師」と称される桐生和人だったのだ。

短い話が一杯収録されている基本オタクあるある、ラブコメに見えて「フラグは折るもの」

結構リアルタイムなネタが多い(こないだはプリライ回とかユーリオンアイス回とか闇の末裔新刊発売回とかあったのだ)ので古くなってやしないかと思ったけど、キンプラ公開直後の今、プリライが終わった今、応援上映のところが一周回って逆に新しい……。

「オタクあるある」っていっても元ネタが分からないと面白くないとかそういうのでもなくて、「オタクあるある」なのでそれな!!!! っていう共感……? 程度の大小あれどマンガアニメ方面のオタクだったらたぶん身に覚えがざくざくあるやつだと思います。
既読なのに同じところに引っかかった……ぶらっ!!! くろにこ!! だろあれ……。サンホラ1期じゃねえか!!!!!

これは書籍版で、多少の追加あるといってもオンラインでもだいたいおんなじものが無料で読めます。まあ本は課金アイテムです。
縦書きで読めるってすごい。めくったらどこからでも読める紙すごいやばい。

 そして、エンドロールの終わり。
 出るはずだった、最後のテロップは──出なかった。
 真っ黒な画面、そこに。
 白い流麗な文字とともに。
《そして、輝きは終わらない──》
『だよね? 星屑ちゃんたち!』
 アイドルの声が響けば、ギャアアアアアアアアと映画館が歓声に包まれる。
 振り切れた。頭の血管が切れる、精神が焼き切れるかと思った。それくらい興奮した。
 そしてそれは隣の桐生も一緒だったことだろう。隣にいるだけで、それがわかった。
 ──てゆうか隣も完全に泣いていた。マジかってちょっとだけ思った。思ったけど、思った朱葉も泣いていた。
 そして、特報が流れた。来春。劇場版新作。
 それから、まさか、まさかの新曲披露。
 ラストシーンは、みんなが大好きな俺様のキャラクターが、ニヒルに笑って。
『MontBlancでも食べて待ってるんだな』
 そんな風に、煽るから。
「「待ってるーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」」
 劇場が一体になった。
 上映は終わり、灯りがつく。
 夢から覚めたような気持ちにはなったけれど、まだ全然、心がリアルに帰れていなかった。

(P67〜P68)

わかる!!!!!!!!!!!!!

「経済を回しているなんておこがましいことは言わないが俺が回しているのは自分の情熱でありリビドーであり味合あわせていただいているのは課金ができる喜びである!」
「うるせえ!」
「孝行したいときに親はないように、課金をしたいときにすでにコンテンツはないかもしれない! 今! ここで! 課金ができる喜び! 出会い! それは奇跡! たとえガチャが悪い文明だとしても! 俺はこの悪さえも愛する!」

(p100〜101)

それな!!!!!!!!

ある小説家をめぐる一冊 (富士見L文庫)

小説家が担当編集に介護される話……。世話を焼く人焼かれる人はロマンだ。
オタなので桜の話とか好きだし幻想成分があってとてもよいものです。

死神もたまには間違えるものです。 (新潮文庫nex)

シリーズ2巻の1冊完結。
死んだことに気づいていない人に保険の勧誘をして遺される家族へ保険金を遺したりあの世へ送る俗世間慣れした死神の話です。
死神は結構葬送のほうがなかなかエグい(死にたくないという思いをエネルギーにしてあの世へ送る)ので好きになれるかどうかというとそれは微妙なんだけど人間死ぬときは死ぬもんだぽん。さぞ無念が残ると思うぽん。でもそれは生きてるから思うことで死んだらもうなにも分からないから大丈夫、というのがこの死神です。

くるみちゃんわたしオタ隠ししてるメジャーなマンガのマイナーカプなんだけど死ぬ前に薄い本を作らないと! と言ってるあたりはすごいリアル。居飛車の王子さまは最初うたプリかなと思ったけどあれテニプリのほうが近いよな……。
いやでもここで死にたくないだろうなって思うところでみんな死ぬんだもんな……。

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