カテゴリー「 エッセイ・ノンフィクション 」の記事

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98万円で温泉の出る築75年の家を買った - takadonomadoka - BOOTHとは違ってこっちは商業出版です。
75年前、兵庫県西部に建てられた祖父の家の実家じまいの本である。ちなみに一度ついた売り手も仲介業者も離れていった訳アリ物件である。
わたしの喪主本ことこれで君も喪主だ! 密着相続ドキュメント2023-2024 - はと文庫 - BOOTHも「いずれ行く道だからどういうことがあるのか、人の体験談とはいえ知っておいても邪魔にはならん」本だと思っているが、ゆくゆくは実家じまいという問題が立ちはだかる予定の人はこういうことかと先読みしてもいいかもしれん。
隣の家の高齢者夫婦も徒歩30歩ぐらいのところに実家もしくは旧家があって、「固定資産税を払って物置にしていた」家をようやく潰すことを決めて今大量のゴミと戦っている。毎日とても大変そうだ。

売れない実家問題、どうしてますか?
兄弟もみんな家を出て、自分もそこそこ都会に居を構え、もう戻るつもりはない実家。戻りたいなあと思えるロケーションや条件ならいけど、残念なことに両親は団塊の世代。都会の家賃より田舎の戸建て。庭付き一戸建てガレージ付き、もちろんトヨタか日産の新車、庭には芝生、犬を飼うみたいなアメリカのパッケージドラマをそのまんま輸入したパッケージが家族の幸せであり、スタンダード、と無邪気に信じていた世代です。

(P16)
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星野源という人は不思議な人である。私が知っている星野源は志摩一未と四宮春樹をやっていた人で、年に何回か、主に紅白で歌っているところを見る人で、主成分は「星野源のオールナイトニッポン」パーソナリティ星野源だ。とても人に愛されている。時々弱音を吐き、リスナーが作ったジングルにすごいねーと称え下ネタに馬鹿だねーアッハッハッハと笑い、「源ちゃん俺たち友達じゃーん」と送られてきたメールに「友達じゃねえよ(笑)!」と言って時々はトイレにこもっている。
ただ生命体はなぜイントロがないんですか? というリスナーからの質問に対して「人の人生は突然はじまって、終わったら何も残らないからです」といつもより2度ぐらい体温低い感じの声で答えてすっと終わったので、「いつもと別のドアから見る星野源」を感じたけど、この本は「そのいつもとは違うドアから見る星野源」が満載だった。生きづらそうな話を聞いてると愛おしさ的なものが湧いてくる。でもこの愛おしさはLOVEとイコールではなく、「昼休みとかに一回り下の後輩にブラックサンダーをあげる」感じなのである。一回り下の後輩いうても源さんだいたい同世代なんだけども。
ラジオでも妻新垣結衣さんのことはそんなに話さないので、「喜劇」が生まれた日の話はよかった。

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2019年10月30日のことだった。宮城県警から電話がかかってきた。「お兄様のご遺体が多賀城市内で発見されました。第1発見者は同居の息子さんでした」即死の状態だったという。脳出血で死亡時54歳だった。

これは小説ではなく、わたしの喪主本と同じくノンフィクション的な立ち位置で、ずっと疎遠にしていた兄が遺体で発見された。両親ともに鬼籍の人でどちらの親戚とも交流がない。
村井さんは兄の元妻加奈子さんとともに兄の人生の後じまいをする。兄の最期の様子は分からなかったがただ「汚れている」ということだけはわかった。実際の部屋はそれはすごいもので、ギリ特殊清掃を入れなくてもいいレベル。車の廃車も必要だった。アパートも引き渡さないといけなかった。生活保護を受けていたということも知った。

kindle unlimitedにあったので借りて読んでみたら、なんか、わたしが行く先はこれかと思ってしまった。幸い我が家はきょうだい仲は良いし今のところ健康状態に問題はないと言ってるけど人間いつどうなるかわからんしな、というのを地で行ったのがうちの亡父ですんで。

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2018年から2022年3月まできょうの料理ビギナーズなどで掲載されていたエッセイだ。
この頃の柚木さんは保育所に通う年齢の子どもの育児をしていた。しかし世の中はコロナがあらわれた頃である。柚木さんは肺疾患をお持ちのようで主治医からは自粛生活を命じられ、子どもからの感染を防ぐために幼稚園や保育所にも通わせずワンオペ育児をしていた。おうち生活を余儀なくされていた頃の苦闘の記録である。

ニュースにブチ切れながらもとりあえずお湯を沸かし続ける私の記録を、「そうはいってもこの人、料理してるし、なんだかんだ楽しんでいるよね。おうち時間をしなやかにエンジョイする爆笑ママエッセイ」と評しそうな連中に、とりあえず、この沸いたばかりのお湯をぶっかけよう。

(P233)

爆笑かどうかは分からんけどそういう育児エッセイなのである。

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当時カナダ在住の西加奈子さん、ある日強いかゆみを伴う赤い斑点が足に現れた。ベッドバグ(南京虫)ではないかと言われた西さんは青ざめてウォークインクリニックを訪れた。西さんはもうひとつ病院へ行かなければならない理由があった。
胸にしこりがあるのだ……。

カナダの医療は日本とは違う。ファミリークリニックと呼ばれる総合医をまず受診し、その後専門病院へ紹介される。西さんのようにファミリークリニックを持たない人はウォークインクリニックへ行き、やはり紹介状を書いてもらいその後専門病院へ行く。緊急の病気の場合や緊急を要さないが予約まで待てない人は救急がとても混む。とんでもなく混む。
カナダでは一部の州ではカナダ人も外国人も医療費が無料で、皆の命の重さは等しく、それゆえに救急での優先は症状の重さだ。
日本の医療で慣れているとカナダではとても大変そうだった。

その後西さんは乳がんと診断され、苦痛を伴う抗がん剤治療およびその最中のコロナ陽性診断。遺伝的に乳がんになりやすいということで乳房切除などもされている。
日記(わかりやすく日記日記はしていないが、日々の記録である)の比較的序盤で山本文緒さん(2021年にすい臓がんでこの世を去る)が亡くなり、後半で安倍元首相の襲撃事件が起こる。

なお西加奈子さんは今もご存命であり、死の間際まで書かれていた文章ではないのでその点は安心して読んでほしい。

作家・西加奈子さん 乳がんを乗り越えて ロングインタビュー「自分を見つめ 踏み出す一歩を」  - クローズアップ現代 取材ノート - NHK みんなでプラス

ちょっと前kindle unlimitedで壇蜜日記 (文春文庫) Kindle版を読んでいた。壇蜜さんは時々テレビで見る高級そうなバーが似合う感じの、二次創作で見るにっかり青江みたいな人だが、彼女の日記やエッセイはテレビから受けるイメージとはまるで違うから面白かった。なので別の本を読んだ。

先日、ラジオ番組収録中に、男性アナウンサーからこんな話を聞いた。
「子供のころに何かやって褒めてもらった経験は、いつまでも心に残る。結果、無意識のうちにその『褒められた何か』の延長線上にあるような職に就くことが多い」と彼は言うのだった。

(P149)

壇蜜さんは褒められた記憶を呼び起こして「通信簿には苦労してひねり出しただろう褒め言葉が並んでいた」ということを書いていたので、自分もなんかあったかなあと思い出そうとしたが、まじで思い出せない。家庭環境が悪かったとかなんかそういうのはないと思う1
抜きんでた技術や特技はない、普通の子だった。
自転車に片手離しで乗れることがステータスだった時代だから両手離しにも果敢に挑戦し、図工の課題は終わらず常に放課後まで居残りを強いられ、図書室の貸し出しカードの色がひとりくるくる変わる人間だった。

この年齢まで生きてきて特に表彰されたことはないかなと思ったがあれがあった。小学校の時には本をたくさん読んだ子には無条件で賞状が授与された。どこで「たくさん読んだ」と判定されたかといえばページ数だ。
「運動場を走った周数をキロに換算して日本のどこまで走ったか」で表彰する2機会が卒業までの間でたびたびあったがあれの読書版だ。

表彰対象者は全校朝会で名前が呼ばれる→立つ→代表者が賞状を受け取る→座るという流れだった。その制度が生まれてから卒業するまで毎回表彰されていたと思う。最終的には代表者にもなった。あれが人生単位で「卒業式以外で壇上で何かを授与された」機会だ。

何度か同じ話をしているような気がするけど、母親はわたしを「本を読む子に育てたかった」と言っていた口で「まだ読めんだろうに英語の辞書読んでて気持ち悪かった」とも言っていて、特に本が多い家ではなかったし読み聞かせをしてもらったか本なら何でも無条件に買ってもらえたとかそういう特別な記憶もない。ただ読み聞かせの専用カセットを自分で選択して再生し、「病院は退屈3だから持っていく絵本を厳選しようとして結果リュックに入るだけパンパンに詰めていく」幼稚園児だった。

仕事にはなっていないが、そういう記憶が20年ちょっと本の話とかいろいろをするブログをやっているのか? とはちょっと思う。はと文庫オンラインはまじで天啓で、友達に「わたし読書系のウェブマガジンやろうとおもうんだけど」って言ったんですよね。
はと文庫オンラインはじめます! | はと文庫オンラインに書いたとおりです。
その辺が仕事になったらいいけどなー。

  1. まああえてよそさんと比較したことがないので分からないが []
  2. 表彰第1の都市が兵庫県明石市だった。同じクラスの男子が北海道まで行った覚えがある。運動場を走る時間は朝の活動時間として設けられていたがわたしのように大半の時間を歩く人間は明石までたどり着くことはなかった。自己申告だが、不正はたいてい帰りの会で吊るされるのでなかっただろうと思う。 []
  3. 誰の病院だったのかは分からないがたぶん母方の祖母だと思われる []

本当はごはんを作るのが好きなのに、しんどくなった人たちへ Kindle版

料理研究家によるエッセイ。
「お父さんが料理研究家なら普段さぞおいしいものを食べてるんでしょう」と言われがちだけど、普段の食事は質素なもんですよ。料理自体は好きだけど子どもが3人もいると大変だし、撮影で作った余りが食卓に上がることもあるけど、我が子、冒険しないから定番の料理にしか箸をつけない。土井先生は「一汁一菜でええんですよ」っていうけど一汁一菜でさえしんどいときがあるんです土井先生……

手料理=子供への愛情の大きさではないし自分は子どもが満腹ならそれでよいと思っている。別にアルデンテにこだわらなくても子どもは美味しく食べてるし腕によりをかけて作った料理よりコンビニのみかんゼリーが子どもに爆ウケすることもあるし、無理に野菜食べさせなくてもいいけどそれでもやっぱり……っていう人にはこういう手段はどうかという感じの内容なので、絶賛子育て中世代に良いのではないかという本。あと既婚子持ち料理研究家の日常ごはんについて見てみたいという人にも。

夢のような話として「フォロワーがすぐ近くの部屋に住んでいるマンション」「年を取ったら同じグループホームに入ろう」という話がよく語られがちだが、この本はそれを実際にやってみた話である。

・30代後半・未婚・女性4人
・フリーランスと企業勤めが半々
・全員が何かしらのオタク。遠征はよくするタイプ。
・推しジャンルはビジュアル系・舞台(ヅカ・2.5次元)・ソシャゲなど。

という「日本のルームシェアの話」としても割と珍しい部類に入るエッセイだと思う。
内容については一言でいうと「物凄く羨ましい」「こういう生活をしたい」

わたしはこの本に登場する人たちとさして年齢が変わらないことも大いにある。めちゃくちゃ笑ったのは「4人中3人がツインシグナルの新作クラウドファンディングに投じた。この家には同じ本が3冊来る」ということだ。さすが同世代話が分かる。わたしもぶっこんだ。

実際こういう生活が営めるならさぞ楽しかろうと思う。仕事は仕事でちゃんとしていて、家に帰ったら気心が知れたオタクが一緒に住んでいる。それって永遠に終わらない文化祭(の前日の準備)なのでは?
物凄く羨ましかったが、羨ましすぎてタタリ神にならなかったのはわたしには似たような、各地に散らばっており既婚者もいるので同じ家に住むことは生涯ないが、気心の知れたごく狭いタイムラインがあるからだ。

ものすごく羨ましい環境というのもこの書き手、藤谷さんはガチャの引きがとてもいい。オタクなんでもガチャに例えるの悪い癖だと思うが、一緒に住んでくれる人〜みたいな緩い募集に乗っかってくれる友達の多さ、ルームシェア可物件の少なさの中で理想的な家を引き寄せる強さ、そういうのは「ガチャの引きがいい」というてもオタク間なら十分伝わると思う。
ちなみにこの「一緒に住む人をLINEで呼びかけてみたら」と言われて、その呼びかけるLINEグループの名前が「ちょっとしたパーティ」なのも強い。この前読んだ第32回 「ちょっとしたパーティー」 | 裸一貫! つづ井さんを思い出す。
行き当たりばったりに同居人を探したわけではなく「10年程度の付き合いがある、本名は知らなくてもひととなりは良く知っている」中から出会えたのは強い。

ネット連載をしていたものをまとめていたものであるようで、この時期なので、当然「コロナの時、緊急事態宣言がでる前後あたりをどう過ごしていたか」というのも含まれている。

羨ましさを差し引いてもこの方々のルームシェアはかなり成功している例だと思う。この本にはルームシェアのデメリットなどは書かれていないが、困ったことはうまいこと解決できているか人への配慮ができている4人が住まわれていると思われるので、真似したいと思ってもなかなか難しいと思う。それを端的に表しているのは

 現に私は"ハウス"のメンバーの推しキャラは知っているが、恋人の有無は知らないし、この先も知る必要はないと考えている。同様に、私の元パートナー云々の話もみんなから聞かれることはなかった。
 思うに、我々は生活は共有しているが、人生は共有していないことが良いほうに働いている気がする。家族愛や恋愛感情などの関係性による、クソデカ感情が挟まらないので、そこに気楽さや快適さを感じているのだろう。

のブロックだ。そんなぱっと見成功しているように見えるルームシェアも「女同士だからって揉めるとは限らない」「とはいえ一生一緒に暮らせるわけではないと思う」と介護を含めた現実を見据えた話をしつつ、

ドラマらしいドラマもないが、だからこそ安定感のある暮らしは続いていく。最近の我が家は、世のオタクに漏れず、ディズニー映画の悪役をモチーフにしたイケメンたちと交流するゲーム「ツイステッドワンダーランド」の話題でもちきりである

と触れ、物欲センサー対策に同居人にガチャを引いてもらい推しを手に入れるというオタクあるあるのあれが現実に1クリック先にあるというのが本当に理想ですね。

軽い読み物なのでAmazonで電子書籍で買って携帯で読むのにも向いていると思う。
「オタク同士のルームシェア」という単語に過剰にあこがれを持たない人にはおすすめの1冊。

気がついたら同時期に似たような本を読んでいた。
岸本さんはタイトルの通り「40代と50代ではいろんなものが違う」という本で阿部さんは「70代での暮らしはこうするといい」という本だ。共通点は「独居高齢女性の暮らしについて」

ミニマリストの暮らし本は時折読んでいるのだが片付けひとつにとっても
「好きなものに囲まれて暮らそう」「スーパーをストックヤードとして使おう」みたいな話はよく見るのだけど、そういう話も「より現実的に」「老いは受け入れがたいができなくなる自分を認めつつ」「無理をしない」という方向になってくる。

・紙の新聞を読む(タイムラインとは違って自分が興味ないことも配置されている。自分用にカスタマイズされた世界とは別の世界が広がっている)
・iPadは面白い。便利な機器は暮らしの流れを乱す危険があるが、使いこなしによっては1人を上手に楽しむのにもってこい。
・不安に注意を向け過ぎない。今できることをすれば気持ちが落ち着く。
・好きなものがあるとそれを考えるだけで不安に心が揺さぶられることもない
・はっきりした答えがでないものが少なくない。悩んだら「どうして」より「どうすれば」と考える。時にはあきらめも必要。
・快適度をあげるためには収納すべきところにモノが収まり溢れないようにする
・片付けには年齢も重要(体力・気力が乏しくなった後で快適に暮らしたいと思ってももうできない)
・食べる楽しみが一人暮らしの活性化になる
・朝一杯のコーヒー・夜の美味しいお酒は我慢しない
・死ぬ直前まで元気にいたいが、本当に元気でいられる時間は大して長くない。
・これまで体力づくりをしてこなかった人が急に歩いたり走ったりジムに通ったりしてすぐ体力を取り戻せるわけではない。
・年を取るということは体力・気力・集中力が低下していくということでもある。若い時と同じを求めても仕方がない。年は年なりに自然体でいくしかない。
ゆくゆくはこういうことを検討していく必要がある、という先輩の経験談だ。

文具LOVERが教える手書きを楽しむヒント200! カワイイ手帳の作り方

人の手帳がのぞき見できるあれです。人の鞄の中身と手帳の中身と本棚の中身は魅力的。
この本に登場する人は文房具メーカーのSNS担当の手帳とインスタグラマーの手帳で、能率手帳もいるしほぼ日手帳もいるしフレックスノートもいるしジブン手帳もいるしシステム手帳もいるしバレットジャーナルやってる人もいるという感じで種々様々。個人的にはほぼ日手帳weeksで内容のせてる人ってtwitter上でも案外少ない割にこの本では多かった(ということはインスタでは案外いるのかな)
キラキラ手帳の人もいるしがっつり実用っていう人もいるし読みごたえはあった。あ、デザインペーパーって折り紙? どうやって使うの? って思っていた疑問も氷解した。個人的には手帳複数持ちの人にはもうちょっと詳しい話を聞いて見たかった。

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