すごい映画を見た。映画館向きの映画だった。いうて3時間の映画なので、そんなじっと座ってられるか思ったけど、全然中だるみがなかった。
公開から1か月弱経っているのにコナン見に来たんか? と思うぐらいの埋まり具合だった。
土曜日の2本目、一番大きなスクリーンだ。そういう埋まり方をする作品は大抵お客さんの層が面白いほどばらっばらなんだけど、なんか異質だった。他の映画では見たことない感じの人が3組ほどいた。
ひとりは杖歩行で、立位が不安定で階段昇降がままならない高齢女性が見に来ていた(付き添いさんもいた)
ちなみにこの大きなスクリーンの隣はMX4Dのスクリーンで、上映時間がかち合うと「地震かな」っていうレベルで揺れる。この映画館を利用するならだれでも知ってることである(注意看板も出ている)
しかし、この高齢女性の後ろを歩いていた女性が「なんかめっちゃ揺れてなかった? 駐車場? 地震かと思った」っていうてて、ほんまかと思った。「普段は映画館に来て映画を見るような趣味はない」という証拠である。
そして最後のひとつは「上映中にスマホを使う人がいた」ということである。おらがまちの映画館は都会のように駅徒歩3分みたいな立地にないので「暇つぶしに映画でも見ようか」という人は来ない。「映画を見たい人が映画を見るために車なりバスなり自転車なりに乗って映画館にやってくる」のである。ので上映中の治安はかなり良い。ちなみにこの人は2人隣の女性で、「あっすみません」という小さい声が聞こえたので注意されたようだ。わたしの隣に座っていた、お連れさんも時間確認のためスマホを手に持っていた(とても明るかった)ので、ロック画面以上のものを開いた段階で使うなら外に出てくださいという気満々だった。
あとは普段ならもっとポップコーンを食べる音や咳が聞こえてもいいのに、驚くほど静かだった。
そんなわけで映画の話をする。
歌舞伎の話だと聞いていた。吉沢亮と横浜流星がすごいという話を聞いていた。
女形が舞っていたが、極道映画がはじまってびっくりした。おもてたんと違うぞって思った。わたしは伝統芸能は割と好きな方で、歌舞伎は見たことはないが文楽は好きだ。文楽と歌舞伎は演目が被っているものもあるので、過去の知識に助けられている。
いやそれにしても吉沢亮の女形は綺麗だった。浮世離れした美だった。
歌舞伎以外のシーンでは喜久雄が「お前の血が欲しい。部屋子の自分には守ってくれる血がない」といっていたあのシーンがとても好きだ。喜久雄には守ってくれる血はなかったが、その血が視力や足を奪っていった。喜久雄はあの血が引き起こすものからは守られていた。糖尿は遺伝要素があるからなあ。
歌舞伎のシーンはなんか、スクリーンの向こうの劇場とこっちの境界が溶けているような感じだった。
所作がいちいち美しいのである。何か1年半稽古したスイッチのインタビューでみた。歌舞伎の演目では二人道明寺と曾根崎心中が好きだ。吉沢亮の口からあの歌舞伎の発音が出てくるのがすごいと思った。
歌舞伎の話だから順風満帆に行くのかと思ったら、まあとんでもないやん。「これまでスポットライトを浴びてきた」というセリフがあるけど全然そんなことはなかった。喜久雄の出生はいつか影を落とすのではないかと思っていたけどそれはそれやけど思ったよりえげつなかった。
歌舞伎、やっぱりデビューしとくか(8月の刀剣歌舞伎、と思っている)