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シュガーアップル・フェアリーテイル  銀砂糖師と白の貴公子 (角川ビーンズ文庫)

前巻から月日は流れること9ヶ月、1巻からは1年経ち、早くも品評会の季節になりました。
個人的には予想外すぎる展開をした3巻でした。いやえ、もう銀砂糖師になっちゃうの? っていう。いや春らしいイベントとか夏らしいイベントとかシャルとすったもんだーがあったりして5冊か6冊ぐらいかけて銀砂糖師になるもんだと思っていたのだ。時間を進めるのは簡単だけど戻すのは(短編を除いては)無理だからなー。あと2巻のときも思ったけど序盤の地の文ではなく「説明文」と短編の種蒔いてる感が気になります。

いや、しかしそろそろ「後半の小公女セーラ」展開はなんとかならんのですかね。ラドクリフ派がメインで出てくると途端にこう、なあ。ジョナスに見せ場をあげてください(2回目)アンにベッキーかせめてアーメンガード的存在をあげてください。ジェームスはこれ以上いりません。
あとキース・パウエルが黒幕に思えて仕方が無いこの頃。
読後感はあまりよくない。後味の悪い話は愛すべきところですが、いやーな感じの顔になるあれだなあ。
簡潔にいうと最初から最後までストレスのたまる展開で溜め込んだまま続いてしまった。
4巻では一番いい挽回をたのむ。店頭にあった小冊子では春先に発売予定ってあった。

フォーチュン・オブ・ウィッカ2  タロットは初恋を告げる (角川ビーンズ文庫)

相棒最強である。もえた。

七聖守護物対策室の面々は招待を受けてヘヴンリーパレス主催の都市再生式典に出席することになった。
ヘヴンリーパレスはたいした災害を受けたことはない富裕層が屋敷を構える場所だが、「落日の礼拝」など大きな災害を受けた地域への支援活動を行う人々への記念式典が年に1回行われる。設立当初から注目を浴びてきた対策室への興味と、利用できるものなのか邪魔になるのかの判断をつけたい周囲の思惑が今回の招待に繋がっている。

幸運を引き寄せるアイリと凶運を引き寄せるハイヅカ、その吉凶は望む望まざるとは関係なくふたりに降り注ぐ。
相棒なんて聞いてませんよとか人間守護物とか冗談じゃないですよとか言ってたのに、一緒にいるのが当たり前になってるあたり非常に微笑ましい。この辺がじっくり読めたのでわたしとても満足。

フォーチュンオブウィッカ2がもたらした副産物としてはストロボの赤を再読したい。プロミネンスバーストと呼ばれるようになる災害のせいで多数の死者を出した都市で、追悼式典が行われる日の話。

でもやっぱりハイヅカの制服は♂ハイプリっすよね。
あと上条さんキャラらしくちゃんと「不運」にも原因があるということで、アイリの過度の幸運もどこかから来てるんでしょう。幸福量保存の法則とかちらっと思い出しました。

シスター・ブラックシープII  林檎と堕天使 (角川ビーンズ文庫)

産まれてすぐ「この赤ん坊が16歳になったら我輩の花嫁にする」と悪魔に目をつけられた娘がいた。
悪魔に見つからないように男装して故郷から離れた教会で助祭として過ごしていたコンスタンティンだったが、運命の誕生日に悪魔は現れた。ただし悪魔祓いに力を奪われ猫の姿で。かろうじて地獄行きは免れたもののその手には悪魔との結婚指輪がはめられている。
この指輪を壊すためコンスタンティンは昼間は「男装の助祭」、夜は「伝説の聖女【黒い羊】」の二重生活を送っている。

夏至の祭りとかちょっとケルトっぽいなあと思いつつ、なんだか真夏の夜の夢を読もうぜと言われているような気になる。いきなりむくつけき店主が家族の服を借りたりして女装してて激しく吹く。練り歩きとかちょっと屍鬼の冒頭を思い出す。要するに虫送りだ。

相変わらずコンスタンティンとユリエルと悪魔の3すくみ状態が美味すぎる。
悪魔の猫モード時がマジ猫なのとユリエルがドツボなのが笑える。ユリエルにはそのままもだもだしておいてほしい。
ざくざく血が流れる話はいい! 儀式は燃える。クズ呼ばわりされた鬱憤晴らしに強盗事件を追ったりするのである。

しかし今回はな!

びびるがな。しかしひとつ屋根の下の秘密はもえる。ごはん3杯だ。

コンスタンティンは、ぱりぱりに焼かれた香ばしい皮と、とろける脂身、それにあふれる肉汁が染みこんだパンを十分味わい、飲み下してから、口を開いた。(略)
「……なんで君はそうまでして僕のたまの休暇にケチを付けたいの?」
「つまりその肉を我輩に向かって放り投げることで、そなたは大食の罪を断ち、一つ善行をつむことができるかもしれんだろうが?」

(P24)

モンスター・クラーン  黄昏の標的 (角川ビーンズ文庫)

ザビでの紹介文によれば「現代ドイツを舞台にした破魔の拳銃をもった美少女が異端のヴァンパイアを狩る物語」です。銃アクションを期待して読もうとすると多分地雷。
あとザビでのアオリは現代ドイツだけど別の歴史を辿った現代風ドイツだと思われる。というのも

「俺さ、思うんだよ。たとえばさ、ものすごく科学が発達して、地球の裏側から一瞬で手紙が届くとかさ、そんな発明だれかしないもんかな」
拳を握り締めて熱弁を振るう要に、咲夜は冷めたものだ。
「ないんじゃない?」

(P87)

この世界にはメールが存在しない。

ちなみにいちいち「ザビでの」と前置きを置いているのは、文庫本では「現代」という単語があらすじ等には出てこないからです。まあ要のバックグラウンドは明らかに現代なんだけど。

読み始めて30ページぐらいの感想としては「あれ? 間違えて2巻買ってきたの?」です。
1巻が鬼引きでその続きがこれ、というはじまりかただった。
主人公咲夜がいきなり拘束されていて関節を外して逃走するところから始まる。
いつ面白くなるんだろうと思って読んでたけど話の筋がわからない。
視点変更と時系列がぐちゃぐちゃになった場面変更がめまぐるしい。

雰囲気としては、九条菜月の「オルデンベルク探偵事務所録」に高里椎奈の「薬屋探偵妖綺談」を混ぜようとして途中で間違えたっていう感じ。「ドイツ辺りが舞台で人間とヴァンピーアだのヴェアヴォルフだのが出てくる話」が読みたければまじでオルデンベルクを読めばいいと思う。

身代わり伯爵の花嫁修業  II 嵐を呼ぶ花嫁合宿 (角川ビーンズ文庫)

花嫁修業編。何冊あるんだろうか。「最初から両思いでしたがはれて双方の同意が揃いました」までに10冊。
婚約はともかくアルテマリスでの結婚式も前振りされたので2人の結婚まではまだまだ長そうだな。
また10冊ぐらいかけるのかな。

キリルの勘違い方向とシーカの方向性が想定外すぎた。すごいな。ぎゃっぷもえというやつだな。
クリスティンのキャラ設定がまじフィルムガール。間者になればいいのに笑った。

ミレーユの巨乳への執着はなんなのか。シーカと一方的初エンカウントシーンが好きだ。
ミレーユの舎弟集団はアホさがあいまってとても和む。

ドラゴンは姫のキスで目覚める (角川ビーンズ文庫)

ノリと勢いが重要だなあと思う。あとヒロインの性格もあってか雰囲気が軽い。

両親が逝去し男の跡継ぎ不在のため300年近く続いたウィルシャー男爵家はシンシアの代で断絶することとなり、さらに売り言葉に買い言葉の結果、成りあがり貴族で幼馴染みのカイルと結婚をかけて賭けをすることになる。
シンシアはすぐ近くに歴史に残る「暗黒竜」が封印されていることを知る。しかも封印したのは自分の祖先1だったという。
暗黒竜は歴史とは違い「悪の象徴」ではなかった。シンシアはクロウ=クルーウァッハと名乗る暗黒竜と契約を果たす。

要するに「少女小説で榊一郎の『ドラゴンズ・ウィル』をやってみた」ていう感じでした。

クロウ=クルーウァッハってケルトじゃねーか(゚д゚)
最初に思いついたのは阿佐ヶ谷Zippy だったので脳内ビジュアルはあのニョロニョロで固定される。

「お金大好き」「元気が取り得な感じです」というシンシアですが、男女間の機微においては実にお子様レベル。
カイルは絶対赤星くん2コースだと思う。
そしてあらすじ的にはクロウはいかにも「ヘタレです」「肉食です3」という感じだけど、実際は超純情。そういえばクロウとシンシアの出会いのシーンで、クロウから「ツンデレのテンプレ」4が飛び出したけどまるでツンデレではないです。

人間と竜の契約はそもそも竜の花嫁とイコールなんですが、「同じベッドで寝る」が文字通りの意味しかないシンシアにそんなことはわかるまいよ。
ていうかセシルの登場人物紹介に「腹黒」と書いている割にまるで腹黒エピソードがないのがいかにもビーンズくおりちー。ただのキレものやないか。

2巻は幼馴染みのターンな気がします5

  1. あとから知ったことだがどこかの姫巫女 []
  2. 麻生みこと「そこはなんとか」すごく気がある。でもそんなこと言えたもんじゃない。notツンデレ []
  3. 性的な意味で []
  4. 誤解しないでよね別に○○だから△△したわけじゃないんだからね []
  5. たぶん小さいころに結婚の約束をしているものと見た! []

白と黒のバイレ    鳴らせ、再幕のブレリア (角川ビーンズ文庫)

最後の短編集。
ザビ掲載の二作に加えてがっつり書き下ろし。書下ろしにはリリアナとブランカの出会いとか、3巻の後の3人とか子ども達編とかも読めます。やばいっす。賞扉がなんか立体感があってとりあえず触ったりした。

ザビ分については既読。しかしあれですねセロは乙女ですね。
マリッジブルーだったり「好きな人の苗字と自分の苗字をくっつけて結婚後の名前を呟く」とかまじ乙女。なにそれかわいい。

リリアナがかっこいいのは子ども時代からでした。

子ども達編はおいしい。親となった3人にときめく。マルディシオンが寂しくないのはいいことだ。

「終幕のデクララルセ」が真・エピローグだと思います。
よい物語だった。ごちそうさまでした。

レッド・アドミラル    潜入捜査は戦乱の幕開け (角川ビーンズ文庫 56-15)

レッドアドミラル2巻。ところで1巻が失踪しっぱなしなのですがどこに行きましたか。
読みながらは「ロディアは(女だけど)精神的にイケメンすぎる」としか言ってない気がする。
ロディアはイケメンでランセは格好いいんです。ただしかっこいい≠イケメン。
ロディアは細字で装飾系のフォントっぽいかっこよさなんだけどランセは明朝系の漢字っぽいかっこよさだと思います。
意味分からないといわれそうですがDon't think Feeeeeeeeeel!の領域。
カロルは不憫可愛い系。

思ってたより話がごろんごろんと転がった。そしてわたしも転がった。
暴動な水兵を一喝するロディアさんまじかっけーっす。ガーニムとの一戦のシーンが好きだ。
あと「お前女だったっけ」って言われてて本人さえも忘れているところで笑った。
しかしあれだなP143以降のあたりが好きなんだ。ヒャッハア。

3巻は1月刊行予定ということで、年末前倒しで12月末にはもう出ていると思われる。
なんだもう3ヶ月も待てば続き読めるんじゃないかという事実。早いなー。でも長く読めるといいなあ。

アスファルのハレムの話はエティカヤ編を思い出すぜえ……とバルアン不可を思い起こす。懐かしい。

花は桜よりも華のごとく (角川ビーンズ文庫)

男装・能・異能。そんな戦国時代ぐらいの話。

日輪座の京初興行は成功を収めた。天才的な能の舞い手である白火の評判は駆け巡り、名門一座「柚木座」の次期太夫蒼馬は引き抜きに行くが白火はこれを断った。白火は性別を偽り女人禁制の舞台に立っているからでもあり、それ以外にも秘密はあった。

男装少女と言っても基本的には女の子だ。レッドアドミラルではなく身代わり伯爵だ。
あと蒼馬も舞すごいんだけどストレリッチア1すぎる。

白火の一人称が「オレ」だったのに若干しょんぼりしつつも、

体を折り、焦げつきそうなほど熱を発する二の腕を掴んで、白火は悲鳴じみた吐息を飲み込んだ。
「蛇紋が……っ!?」

(P29)

なんという邪気眼……!2ととてもwktkする。
期待する方向を間違えているという話ですが異能のしるしには違いない。

桜能とか舞いのシーンよかったな。わたしあまつきの21夜好きなんだ。
能そのものは見たことがないので人形浄瑠璃風に台詞が再生される。

仇を討て人を喰え ああ恋しや彼の人の 無念想えばまた悲し
集え同胞 依木を持ちたる仇ある者へ群がり群がり 蜿蜒とのたくりて役目を果たせ

あまつき(4)21夜

ここだよ……! これを思い出した。

あと近藤史恵の桜姫を思い出した。これは能ではなく歌舞伎ですが伝統芸能は胸キュンである。
現代日本語とは程遠いことが多いけど。

桜姫 (角川文庫)

  1. 花の名前。花言葉:恋する伊達男 []
  2. くっ……鎮まれ俺の左腕! 的な []

シュガーアップル・フェアリーテイル  銀砂糖師と青の公爵 (角川ビーンズ文庫)

帯が「この少女小説がすごい」で笑った。なんというこのラノ。

「銀砂糖師と黒の妖精」から2ヵ月後、冬の話。現王族と同格のフィラックス公はある触れを出した。
「銀砂糖師かどうかは問わず、優秀な砂糖菓子職人を求む。公爵が気に入る砂糖菓子を作ることができたら1つ千クレスを支払う」
砂糖菓子の最低価格が大体1クレスであることから、公爵の目にとまった職人には「とんでもない大金」と「王族と同格のアルバーン家が認めた」という名誉が転がり込む。
アンはそのお触れを受けてルイストンからフィラックスまで移動する。

早い自覚だった。シャルはかわいいやつだ。
ジョナスは相変わらず1「腕はいいはずなんだけど小物のチンピラ」だった。このままレギュラーキャラになるのであればもうちょっといい目をみせてあげてほしいです。今のジョナスは脇役以上悪役未満なんだよな。
求)見せ場
「駄目な子ほど可愛い」ならぬ「駄目な子ほど先行きが気になる」という感じ。

冒頭からいきなり「ここあなた未読の短編ありますよー」っていう感じの台詞がいくつかあって気になったのでザビを開く。おおこれだ。とりあえず短編を読んでから本編へ戻る。個人的にはささいな会話であれ「文庫未収録短編を元にしたなにか」というのはあまり好きではない2のです。

楽しい話でした。「シャルは愛いやつだなあ」で大体が語られてしまう。
巻末によれば3巻は既に12月発売でほぼ確定しているようなので、ペース速いなあと思った次第。

  1. というか2ヶ月程度で劇的な改善は見られなくて当たり前とも思うんだけど []
  2. ビーンズでいうと「何故かザビ短編で地味に重要な設定が長編に先行して明かされる」彩雲国 []
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