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赤き月の廻るころ  異国の騎士は姫君を奪う (角川ビーンズ文庫)

どうしてそうなった!(主に終盤)
サブダイトルそっちか!1
1巻から約2年の月日が流れているようだ。

必要以上の外交をしないツァーリアから使者がやってくる。同時期にブロウからも和平締結のためロクソンにやってくる。ツァーリアの使節にはロシュア、ブロウからはジェラールがいるのだが共に「第二王女を王太子妃にしたい」という申し出る。
レウリアの異母妹ミザレアがジェラールを気に入って「自分こそが第二王女。この国に王女は嫁いだ姉と自分のみ。喜んでブロウに嫁ぎましょう」という。いろいろこじれたりごたごたする。

巻を重ねるごとになんかどんどん読みにくくなっている気がする……。
読みにくいとストーリー周りやキャラクターがどんなに魅力的でも半減するのです。しょんぼりである。
たぶんわたしにとっては読点が全体的に多いんだと思う。「、」と「っ」「ッ」が重なればもう読むリズムがガッタガタになります。読点が多いのはたとえば死神姫のディネロの台詞もそうなんだけど、あれはあくまで「キャラの個性」であって「お前読点多すぎ」とは思うけどまた別。「禁書18オノマトペ多用されすぎて読みにくい」と同じなんだ。あと「……っらないでッ」みたいな台詞の一部が伏せられたり途切れ途切れで終わる台詞が度々登場するのですが、それへの違和感と分かりにくさがあった2。ふつうのドラマとか漫画とか文字以外の何かがあるものだったらありだと思うんだけど。

あと1冊2冊程度でシリーズ終了3の気はするんだけどここでさよならだなあ。設定周りとしては好きなんだけど、「どうしても苦手なキャラがいる」ならともかく読みづらいのは本当にどうしようもない。

初版なのでショートストーリー付ペーパーが折り込まれていたのですが、これ本当にレウリア寝てるのか?
寝ている割にどえらいはっきりと喋るものだな4。わたしはてっきり「2人きりの気まずさ」から寝たふりをしたレウリアの話だと思ったよ。

  1. 読書メーター感想で「とんびに油揚げ」と書かれていたのに笑った []
  2. さわらないで、だろうけど変換候補には近寄らないでもありだろうなあと思うんだ。読むリズム崩壊ということはムードもないので雰囲気重視の台詞を楽しむ余地がないのだ []
  3. もしくは○○編終了 []
  4. 「なにするのッ」 []

世界クッキー

あちこちで発表したエッセイ。
新聞・各種文芸誌掲載分や書き下ろしもあるしニコンの雑誌とか「初出:不明」なんていうものもある。

そら頭はでかいです、世界がすこんと入りますに収録されていたみたいな「こ、これは本当にエッセイなのか……?」と思うような恐ろしい感じの話はない。

エレベーターの話とか親戚が増えたとか川上甥っ子並に笑った。しぬる。
あと西加奈子さんのエッセイの時もそうだったけど人の酔っ払い時の行動の話は何でこんなに面白いんだろうな。なかには芥川賞受賞時のものもあるので桜庭さんもちらっと登場する。1

評論や書評でおおまかな筋や背景は理解していても、実際その本を読む、という行為から導かれて降り立つ世界は、それが面白くても面白くなくても、まるで違うものです。あたりまえのことですが、時の洗礼を受けて継がれてきた古典や名作といわれる本も、自分が読んだことがなければいつまでも他人にとっての話であるだけで、それが名作であるかどうかなんて分かりません。

(P126)

できるだけ、今の自分から遠いところに手を伸ばすこと。もちろん近くも大事ですが、いつか近いところにしか手が届かなくなる日は確実にやってきますから、手足のぐんぐん伸びるうちはどんどん遠くを触ってください。

(P127)
  1. 桜庭さんも読書日記じゃないエッセイ出版しないのかな……とか思う。 []

悪魔のソネット  探偵稼業も悪魔の仕事 (角川ビーンズ文庫)

最終巻まであと1冊。
今回は学校をでて首都で悪魔祓いのバイトです。パートタイムエクソシストです。
こう書くと別の作品みたいだ。

レクスは随分と丸く人間くさくなったなあと思ったり、料理の腕がひどかった(いい意味で)
あと犬のほうのエルデンにえらいきゅんとした。わたしももふもふしたいです。心行くまでもふりたいです。
猫派ですがもふれる存在は心行くまで触りたい。エルデンは犬だけどルーナエとレクスは猫もしくはネコ科だね。気位が高かったり警戒心が強かったりしてなかなか触れない類の。
あとお父さん! お父さんがラスボスかと思ってたらお父さん! すごい。

ラブコメからより恋愛方面に滑り込んだと思ったら急にがっこんシリアスルートに突っ込んでいった。
そしてわたしユリアンの過去にときめいてしょうがないよはっはっは。とても好物です。というか6章がとても「ずっと俺のターン!」だった。好きな要素ががっつり詰め込まれていた。ときめきすぎる。1
「嫌だ、やだ、そっちに行きたくないんだ!」は銃姫〈4〉のくつしたでどっかん☆で再生され、大聖堂の鐘の音は「タルタロスの滅びの鐘」で、追撃とばかりに志方あきこの?の冒頭2が脳内で流れる。
そして「血の供物は受け取った」は「あかいのありがとう」鼻血ものである。

不老不死的な存在が愛を知って共に過ごし衰えやがて死ぬというのはえらいときめくのです。
古くは100万回生きた猫、新しいどころでは鋼の錬金術師とかマギの魔法使い3とか。
次がラストです。楽しみだ。

愛するひとと一緒に過ごす、ほんのわずかな数十年。いつかは必ず終わると約束された温かさ。
それこそが、しあわせというものなのかもしれない。

(P220)
  1. 好きってことさ! []
  2. 鐘の音が入るのである。 []
  3. ちょっと方向が違うけど []

QED 出雲神伝説 (講談社ノベルス)

気がつけばQEDもこれで16冊目1
今回の舞台は奈良、それと出雲。卑弥呼とかもでてきます。
後半のQED?flumen?出雲大遷宮にはおそらく40代ぐらいになったタタルと小松崎が出ている。奈々はいない。
出雲地方では陰暦10月のことを御忌荒れというそうですよになんかときめく。2

この本は町内の遠足なバスツアーの中で読んでいて、嵐山とか籠神社3とかでてきてそれ今お参りしてきたわ(もしくは今から行くわ)というタイムリーさ加減。本に呼ばれすぎだ。

こういうところだった。

  1. 除・毒草師 []
  2. 神・貴人の誕生・降臨らしい []
  3. このじんじゃ []

おさがしの本は

晴れた日は図書館へいこうの大人版、もしくは大崎梢の書店周りのミステリを硬派にした感じの作品。

和久山隆彦は大学で司書資格をとって公務員試験に合格し、1年目から希望通りN市立図書館勤務となった。自分はなんたる幸運であることかと思ったことだが徐々に現実に打ちのめされることになる。
入職7年、調査相談課の一員としてレファレンスカウンター担当になって3年目になる。

しばしば自分が司書なのか、それとも一種の倉庫番なのか分からなくなってしまう感覚に襲われた。しょせん図書館など知の宝庫ではない。単なる無料貸本屋か、そうでなければコーヒーを出さない喫茶店にすぎないのだ。少なくとも市民の目にはそうなのだ。入職の六年とちょっとの月日は、要するに、そう諦めをつけるための月日だった。

(P21)

なんだかすみません(:D)| ̄|_ とお詫びしたい気分になる。

わたしが利用する図書館は「レファレンスカウンター」と名前がつくのは県立図書館まで行かないとないので1利用したことはありません。ていうか図書館の人に言うことって「返却です」「これ借ります」ぐらいしかないんだよな。あとはもう「書庫の本お願いします」と「予約の本取り消したいんですけど」とか。パターンがない。2

レファレンスカウンターだけに「本探し」がメインであるんだけど、図書館存続・廃止論も登場する。
3話の「図書館滅ぶべし」がすごかった。
「図書館はN市に本当に必要か」派の副館長から「今からいう条件に合う本を探せ」研修を調査相談課に課された。その本を探しあてる経緯・ようやく見つかったその本が出された時は「密室トリックが探偵によって鮮やかに解かれた」ようなすっきり感があった。色んな意味ですんげえええと思った。
「図書館の今後を考える」のが図書館内限定・館長権限でどうにかなるようなものならおそらく3話が最終話なんだろうけど、図書館存続・廃止論はこの後も続く。

「N市の条例の附則を知らんのか」
相手はいっそう表情を険しくして、凛々と言い放った。
「潟田直次にものを言われたら、和久山隆彦は決して逆らってはならない。そう明記されている」
「ほんとですか?」
隆彦が目を見ひらき、問いなおすと、
「なかったか、そんな附則」
潟田はがらりと顔をくずし、含み笑いをしながら、
「では作るべく議員への運動を開始しよう」
この一連のやりとりを隆彦はいくたびか頭の中で再生しなおし、ようやく条例うんぬんはからかいの文句だと気づいたが、反撃のすべを思いつかない。

(P264)

書物というのは、ただ人間を助けるだけの存在なのです。最終的な問題の解決はあくまでも人間自身がおこなわなければならない。

(P283)
  1. 多分貸し出しカウンターがすべてを兼ねている []
  2. あと馴染みすぎる図書館になると「こんにちは」が入る。 []

光炎のウィザード  未来は百花繚乱 (角川ビーンズ文庫)

ぶあつい。最終巻でした。オールスター出場でした。
そんなわけでネタバレ防止のための続きを読むモード。でも短いです。

矢上教授の午後

多摩に存在するとある大学、広大なキャンパスの一角に位置する第1研究棟別の名をオンボロ棟。
夏休みのある日雷雨による停電と出入り口にうっかり看板をおいたことによりオンボロ棟は密室と化した。
外には出られない・落雷と基地局の故障か固定電話も携帯電話もネットも不通で外部への連絡は不可能。
そんな状況で死体が見つかる。

細かく章が区切られており視点変更が多い。視点変更のせいか緊迫感とかはあんまりなかった。
ゆるゆる読めた。おもしろかった。

「現代日本は、絶対人間が孤であることを許さない、とね。一人で静かにしていたくても、電話は鳴る、どこに行こうと携帯電話で追いかけてくる、いや、昨今はおのれの居所まで突き止められてしまうらしい。それがなんと。東京都下で名実ともに閉ざされた空間が出現し、殺人事件まで起き、その一員に加われた」
馳部は毒気を抜かれた思いで、熱弁をふるう老教授の顔を見ていた。

(P167)

マノロブラニクには早すぎる

asta*連載途中ちょっとだけ読んでた作品。

小島世里は翻訳文学の編集者志望で出版社に就職したのだが、配属になったのは女性向けファッション誌編集部だった。ちなみに「20代のキャリア志向がさほど高くない女性」向けの異性ウケを重視する雑誌である。これまで服や時計や靴は機能性重視で選んできて、学生時代はテニス部所属でジャージ率が高かったためさほど興味はない分野だったがこの編集部はそうはいかないのである。
女性編集者の成長を描く物語と思えばもうひとつの線が出てくる。

ある日見知らぬ中学生が世里の会社に訪ねてくる。自分は二之宮太一と言います、カメラマンの二之宮伸一の息子ですと名乗る。父息子ともに初めて聞く名前だが、「あなたは父のことを知っているはずだ」と敵意をもって詰め寄られる。話を聞けば世里は「父の浮気相手」認定され突撃されたのである。1
というのも太一の父は少し前に川に流され死亡した。事故死ということになったが父の死に疑問を持ち2浮気相手(だと思った)世里のところへやってきたのだ。そして世里は太一の手助けをすることになる。

しかし全体的には編集者としての日常に重点が置かれていた。企画が成功した、成功したから妬まれて嘘情報をつかまされた、企画にトラブルがあった解決した上よりよいものが出来たとかそちらのほうが楽しかった。
カメラマン死亡の謎関係は正直すごくどうでもよかったのだけど、いきなり事件の顛末・責任を感じての自殺未遂・動機の吐露など土曜ワイド劇場展開がはじまる。えー(゚д゚;)とおもう。

野心というのは、ドロドロとしたマグマのようなもので、そばにいる人に火傷を負わせるばかりと思っていたし、実際に火傷を負わされたのだが、仕事への強い愛情ゆえに生まれてくるそれは、大事なものでもあるんだなと詩織を見ていると感じるのだ。
そして自分に足りないのはその野心なのかもしれないと世里は思う。

(P241~P242)
  1. とても早計だった []
  2. 誰かに呼び出されたのでは。女と一緒にいたのではないか []

ころころろ

いつもの独立した短編かなと思ったら長編寄りの連作短編でした。
若だんなの子ども時代の話から始まる。
若だんな(当時12歳)と日限の親分と親分が連れてきた沙衣による、目の病に霊験あらたかな生目社の再建を廻る騒ぎとその顛末。初恋の話でもあった。
色々あって話は現代1に戻る。
朝起きると若だんなの目から光が失われていた。相変わらず病弱ではあるけど視力を失うほどの目の病ではない、かといってなにかに取り憑かれている様子でもない。仁吉と佐助は光を取り戻す方法を探す。

いつもより家鳴の出番が多い気がします。

「喰われるのは、嫌?」
余りに何気ない問いであったから、佐助もさらりと返す。
「そりゃ、生きていけなくなるからね」
「でも、喰いたいほどいとしく思う事が、あるかもしれないわ。喰われたいほどの思いにさえ、出会えるかもしれない」

(P163)
  1. しゃばけワールド内の []

白と黒のバイレ  白き、時の流れにのせて (角川ビーンズ文庫)

事前情報1通り本当にいきなり恋愛方面の濃度濃いですね。
いや返り血とか浴びてますけど。いきなり戦闘からスタートしますけど。バトル成分ウマー。

塔での戦いから物語は始まる。マルアスル王国へかけられた呪いをとくため王太子息女ブランカ一行は北部にある塔へやってきた。呪いの術者は禁呪に身を捧げ不老不死となった< 魔王>とあだ名される魔術師マルディシオン。解呪にあたった魔術師はすべて失敗に終わりブランカが最後の希望となった。
そして国にかけられた呪いは無事とかれたのだがブランカ個人に向けて新たに呪いがかけられた。
塔での戦いから2年後、ブランカは19歳にして12歳の身体になっていた。
彼女にかけられた呪いは精神はそのままに肉体年齢が3倍の速さで若返っていくというものだった。2
研究の結果マルアスル王国の魔術ではこの呪いを解く術がないことが分かり他国の魔術に手がかりを求めブランカは騎士セロと侍女のリリアナをともなって旅に出る事にした。

とても面白かったです。
最初「ブランカ」というとわたしの中ではスト2のブラジル人しか出てこなくてウワァとなる。
3ページぐらい読んでもあの野生児が出て行かないのでとりあえずあとがきを読む。
「バイレとブランカはスペイン語です」とある。バイレはちょうどこの前フラメンコの本を読んだので3おおあれか、とおもう。でブランカは「白」でした。スペインと分かると不思議と綺麗に入れ替わる。4

リリアナがいいですねリリアナ。リリアナ好きだ。リリアナ優秀すぎる。侍女ですがよい姉役であり冷静でセロを嫌いつつも認めるべきところは認めている。いい意味でしたたか者。しかも凄腕の剣士セロが認めるほどの格闘技の腕前。ハイパーメイド。
ていうかブランカとセロとリリアナという組み合わせはよいですね。幼馴染萌え。

恋愛物語としては、「これから恋に発展する」わけではなく無自覚や「それは恋だ」と認めてないわけでもなく、お互いへの想いを認識している上で話が動いているので、ブランカに好意を寄せる男がどれだけ増えようとわたしの中ではいわゆる「逆ハーの話」とは認識されません。
主従ですからね。∩゚∀゚)どう転がるの どう転がるの(゚∀゚∩ という感じです。
双方の想いについてはリリアナも知っているわけなんですが2人の仲を取りもつように100パー応援するわけでもなく、身の程を思い知れ!と2人の仲を裂くわけでもなくいい具合にバランスをとってます。リリアナすごい。リリアナベタ褒めするわたしである。

ていうか前作マギの魔法使いにおけるアルフェッカポジションのキャラがいるのは嬉しいね(*゚∀゚)=3

読んでたら抗いし者たちの系譜 逆襲の魔王を再読したくなった。あとマルディシオンは野梨原花南の魔王シリーズのプラティラウ(ていうかラブ)を思い出した。マルディシオンはどう見てもラブポジションの子だよね。ラブは可愛いのでマルディシオンもとても可愛く思える。

挿絵周りのことも書いてたんですが、あまりに長くなりすぎるため別エントリに移しました

呪いや身分を理由にしない、ブランカ自身を思いやる言葉がくるとは予想していなくて、少し胸が熱くなる。嬉しくて、幸せで、リリアナが側にいてくれることが本当にありがたくて、ブランカは自分の侍女にぎゅっと抱きついた。
「気をつけますわ。ありがとう、リリアナ」
「ああ、これが計算なら、いくらでも言葉が出てくるのに……」
絶望に近い何かを漂わせるリリアナの呟きに、この時ばかりはセロも頷いた。

(P151~P152)
  1. 作家公式ブログ []
  2. ※爪と髪は伸びる []
  3. フラメンコのすべて []
  4. スペインは親分と悪魔の領域! []
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