タグ「 野梨原花南 」の記事

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還るマルドールの月 The Return of the Mardore Moon (コバルト文庫)

最近はいろんな方面で「2016年だよ!?」というようなことがあるんですが、野梨原花南の新刊がコバルトで出るというのもなかなかすごい。

没落貴族のダリアードは爵位と引き換えに元敵国の警部と結婚することになった。怪盗が犯行予告をしている宝石の警備のためだ。恋に落ちたらもうお祭り騒ぎだし情報を探すためにはいろんなところに行ってしまうぜという話。

わたしこれを読んで古い野梨原花南読者にこれどう? これどう? って言って回りました。というのもすごい雰囲気が懐かしいんですよ。これは確かにコバルトの野梨原花南だ! って思った。

「世の人があきれかえって、笑って、そしてあなたが泥まみれで死んだとしても、だとしても人がしたいように生きるというのは、人生を思うさま謳歌するというのは、とても素晴らしいことです。大切なのは、したいと思ってそれをする今であって、何も決まっていない未来ではないのです。けれど忘れないでダリアード様」
イズーデはダリアードの手を。両手で包んで強く握った。
「この手は、愛を掴んで抱き締める手です。糞で汚してはなりません」

(P57~58)

この辺がもう北でオニキスとクラスターが殴り合いしていたこととか、ポムグラとか比較的古い野梨原作品がぶわーと流れ出てきて猛烈に涙腺パンチされていた。最近火村さんのドラマやっているせいか10代の思春期女子が非常に活発です。yes10代のわたしにとって火村さんが結婚したい相手で野梨原花南作品は神だった。
恋って素敵だ!!! と10代のわたしがきらきらした目で叫ぶよ。ジオとダイヤの物語を読んだ日にはいつだってそうだったよ。
たくさんのいろいろをありがとうございます。

8月10日を楽しみに 守護天使(巨乳でチビ)と王子(イヤミで口が悪い) (ティアラ文庫)

ティアラは男女エロ前提なので基本読まないんですが、野梨原さんなので!
旅先でこの本を話をしていて、私(未読)「はと(810)の日を楽しみに」友人(既読)「情緒がない!」と言われました。はとの日を楽しみに。

ゲル状の生物デービットに襲われている世界で、退治法がわかっているのは防衛室のエローラただひとり。
彼女は救国の天使と呼ばれており、なぜか彼女の元に配属された新人はこの国の王子という。
あらすじとか四角関係とか書いてますが特に気にしなくていいです。中身はただのいつもの野梨原花南作品です。
ティアラ系は読まないんだけどっていう野梨原ファンは読んでもいいと思いますよ。「私はそういう男女エロとか絶対読まない」みたいな潔癖な方はすすめませんが。
しょっぱなから行為に及んでいるのですがえろくはないです。話のゴールとか到達点とかそういうものとしてエロがあるんじゃなくて、話の中にちゃんと組み込まれてる感じがよかったと思います。

というか切ないというか痛いというかそういうのが詰まりすぎていてわたしは途中で泣いた。
1回目は我慢した2回目は無理だった。程ほどに重くて殺伐としていてラブくていい感じだと思います。同じカテゴリに入っているのはヘブンリーかなあ。8月10日になったらエロさん死んじゃうっていうのは、じわじわと想像できて深読みのしすぎであってほしいと思いつつも、やっぱりそうだよなああああああと叫ぶ。どんな気分で「自分が死ぬ日」を楽しみに待っていると聞かされてるんだエロさん。いくら知らんとはいえさあああ。9年って長いよなあ。2回目っていうのはえろーらちゃん生きられるって思ったら320ページ見てえろーらちゃんどうなったんや! ってもうだばー。死んだ。えろーらちゃんには世界一かわいいおばあちゃんになってほしいものです。

簡単に届くと思っていたはずのそれは、いきなり飾り窓のむこうにもっていかれてしまったみたいで。
そうなってしまって初めてあの輝きは得がたいものだと知って。

(P311)

パラダイスレジデンス1 (講談社ラノベ文庫)

原作漫画のノベライズですが原作未読です。ただの野梨原花南スキーです。
割と山奥っぽい感じのところにある橘花学園寮の入寮初日の話。どうも女子校のようだった。
異能者が集まる寮ではなく、異世界人が転がり込んでくるわけでもなく、同室者が女装している男というわけでもなく本当にただの「現代学園で普通の家庭に育った女の子が親元を離れて入寮した初日」の物語です。
びっくりするほど普通なんですが、派手とか地味とかそういう基準じゃなくてすーごく「地面に足がついてる」物語。
生活の匂いがする。歓迎の料理を作ったりシャンプーの貸し借りをしたり、普通の生活なんだけど女の子はいるだけで華やかだなあと思いました。

終盤にある「昨日までとは違う、これからしばらくの『自分の家』で眠る最初の夜」の寿々花のモノローグがすごく野梨原さんでうっかり転がるぐらい好きだ。ノベライズとはいえ今どき少女向けレーベルでもこういうのはちょっと読めないんだよねえ。なんで現代もの息してないん。

「盗難とかいじめとかの犯罪行為は遠慮なく持ち込んで。まちがっててもいいから。そんなのあなたの立場が悪くなるだけだけど、別にそんなのどうってこともないし、抑止のほうが大事だからね」
きょとんとして見つめてくる小鳥遊に、ミンチンが続ける。
「盗難とかは普通に無秩序の象徴だし、いじめはあってはならないことだからよ。秩序なく、理不尽が横行する寮に住むこととあなたの立場がちょっと悪くなること、天秤にかけたらどっち?」

(P153~154)

そんな野梨原花南スキーは来月はじめてティアラ文庫を読みます。

8月10日を楽しみに 守護天使(巨乳でチビ)と王子(イヤミで口が悪い)

姫婚オールアバウト (コバルト文庫)

コバルトでは魔王シリーズ以来なんだなあ。
これもなんだか王子に捧げる竜退治を思い出すようなシーンがあったりですが、2回目の結婚に向かいます。
イラストなんか見覚えあると思ったら「雪リコ」って湯キリコさんの別PNなんですね。かつてローディストだった身には懐かしいです。
ある事情から市井に混ざって暮らしていた姫が「西の山の魔王」に嫁ぐことになりメイドのネリネ1と伝令のメレンとともに西へ向かう。

愛の話はいいなー。ネリネ周りの話が特に好きだ。

愛には思いやりや自制、責任や勇気、それになにより慈悲がなくてはならないし、愛の最もよい面は誰かや自分をあたたかく育むという時の過ごし方だ。それがない愛など、愛ではない。それはただ片一方側の利益追求だ。愛は商売ではないのだから。

(P174)
  1. 男だけど []

天使から百年2  天使から零年 (富士見ファンタジア文庫 の 1-1-2)

ユウキがやばい子のターン! 色々とめまぐるしいターン!

冒頭でユイカが「とんでもない発想するやつがいる」って言ってたけど実際とんでもないよ!
いや読み始めたらカイがコンビニでバイトしててどういうことだ! って思った。
なんかいろんな人の視点が変わったり隠されていたことがぱたぱた明らかになった。目まぐるしい。

「……あんたは、悪い女になるだろうなぁ。十年後にはきっと、酒のような」
「褒め言葉と、取らせていただきますわね」

(P107)

カイもワインになるのか! そりゃ悪女だ! 

ユウリとテオーデリヒもバカで可愛いんだけど誠と九尾堂がいいな! 超好きだな!
だからあなたはろくでなしなのよ!

「もう百年経ったのね。待たせてしまったのね」
「ええよ。また逢えたから。……いろんな人を傷つけたのも、いろいろあったのも、ほんとにもうなんでもええんじゃ。九尾堂、わしは今ここで死にたい」
「しかたのないひと。だめよ。私はひどいのよ。私にあなたがたりないの。あなたがいやでも、にげられないの」
「ああ、わかっとる。わかっとるよ。」

(P203)

天使から百年  魔人と主人と廃棄物 (富士見ファンタジア文庫)

やっと読めた感が強い1冊。
はじめに発売が予告されたのは11月ですが色々ごたごたしたようでようやく本屋に並んだ5月。
あらかじめ3冊完結でということになっているようだ。

この世界にはロドーリーという敵が存在する。時折ふらりと現れて人々を襲っていく。
アルゼア国とエルスモア王国にしか現れないが、これは全世界規模で対応すべきとして「ロドーリー対策世界機関」はダーヴィス学院を開校した。全世界試験の結果素質ありと認められたものが集められる。
入学辞退も退学も認められない。命を落とす危険性だって大いにある。戦い方なんて分からなくてもここで教える。そんな学校だ。

英雄の末裔・ラック家のカイ(女)もそんな風にしてダーヴィス学院へ入学した。
人を殺したりものを破壊したりそんなことが自分にできるの? こわい。にげたい。どこか別のところへ行きたい。そんな思いと裏腹にカイはロドーリー襲撃の際、指示のままに手帳の1ページ目を読み上げよくわからないまま魔人システム成功の第1号となり異世界からの少女フジシロユイカを従えた。
でも依然として世界への立ち向かい方は分からないまま。

魔人システム・カイの世界とユイカの世界・100年前の天使戦争・ユイカの能力ってなんでえろいの? とかこのわけ分からなさは今にはじまったことではないので超wktkしつつ待ちたい。

わたし読んだ時はわけのわからないテンションでP160ぐらいの防具への試着シーンで死ぬほど笑った。
肉の入れ方wwwwwwwみたいな。ポムグラのときのあけすけな女子トークをおもいだす。

イバラ学園王子カタログ (一迅社文庫 アイリス の 1-1)

なんだかヘブンリーを思い出した。

マロウル国王は望んで叶わないものはないという魔法的存在だ。
マロウル国王が望めば他国は容易に滅んでしまうからこれをなんとかしてしまいたい。マロウル国王には手が出せないので標的は次期マロウル国王候補だ。マロウル国側としては次期候補をなんとしてでも守り抜かねばならない。
次期候補は何故かいつも3人、血筋関係なく魔力の強いものから選ばれる。そしてお妃候補を選ぶのをかねて女子校で暮らすことになる。これは女子の想念が防護魔法として実に強大であるからだ。
彼らが想いをひとりに捧げる時魔力の石が生まれ、その力が3人分集まると願い事が1つ叶うという。
マロウルに滅ぼされたキュイ王国の王子クランツはその魔力の石を盗むべく女装してイバラ学園に侵入した。

クランツは嬉々として女装してるけど、"問題となるのは手段ではない彼にとって目的こそが全て"なのでクランツは決して男の娘ではなくて女装少年だと思うんだよね。中身がデフォルトで男らしいし。アホだけど。
アオリ文が割とアレですがBLではないです。ニアホモでもないです。男女の恋愛もないです。
あらすじの"女子校なのに王子様がいっぱい?"は文字通りの意味です。女子校ですが王子様が複数います。ヅカヅカした「王子様と呼ばれる女の子」がたくさんいる学校ではありません。

地の文の飾りっけのまるでなさに時雨沢恵一をおもいだす。

ていうか黒髪ロングの魔女の名前がフレドリカというのはいかがなものか!
わたしの中ではどうやってもベルンカステル卿に変換される!

空気読んで! のところがすきだ。ていうかみんな馬鹿だなあ。

「脂肪の塊は、でも素敵だ思います」
「蒸れるのよねこれが。谷間が汗でかぶれるの。やんなっちゃうわ。間にガーゼを挟まないと痒くて。なにがおっぱいは癒しよね、丸くて柔いのだったらお前らだって下の方に2つぶら下がってるだろってぇのよ」

(P48)

「カワイイだろう。たまらんだろうフハハハハハ!! いいか美というのは性別を越えるのだ。別にこのことがなくてもいっぺんにミニスカはいてみたかったとかはないからな。誤解するでないぞ。父上も美形でおられた。母上も美形でおられた。時々衣装交換して街を歩いていたなどという大醜聞などないから、誤解する出ないぞ!?」

(P188)

真夜中の太陽〈上〉 (小学館キャンバス文庫)
真夜中の太陽〈下〉 (小学館キャンバス文庫)

あとがき曰く野梨原花南初の文庫作品1らしい。94年の作品。
またキャンバス文庫を読むことになるとは思わなかったわけですが、内容的には「隻腕の神の島」とか「風の歌 星の道」とかあったころのスニーカー文庫にあっても不思議ではない感じです。
たぶんこれは作者名伏せられていたら多分分からないと思う。ちょっと雰囲気が違う。軽快に人が死んでいる。
下巻はもしかしたら……? とか思うかもしれないけど上巻は無理だな。

奴隷のジーク、ジークに憑生している竜のキュート・亡国ファラティリオンの姫ルビィの話。

雰囲気が違うと思ったのは2つあって、ひとつは恋愛とか親子愛とか隣人愛とかなんでもいいけど「あなたが大切なんです」成分が比較的少なめだったのと、あとがき曰くの「女の子は気弱で泣き虫」なことだ。今まで読んできているのは「女は度胸」を地で行くようなひとばかりなんだよな。

ダリアがレティシア海賊団@Chonicle 2ndにみえました。ダリア姐さんはよい。

  1. それまでは新書レーベルで。 []

風の導士候補生の試練

花丸ノベルズって書いてあるからBL? BLなのか? と若干戦々恐々として読んでみたらニアホモですらなく、普通に成長物語でした。恋愛成分はなく登場人物は主に男です。
風の導士候補生に選ばれた13歳の少年2人が試験に合格するため旅に出る話。
あとがき曰く「長い話のうちの1冊」「続きを書きたい」ということなのだけど、これが16年前の本でその後続編らしき本も出ていなさそうな感じなのでお察しくださいということなのだろうか。

基本的に魔法魔法してるんだけど科学とか発明品とかが発達しようとしている世界はいいなあとおもった。

再活性者サクラ (角川ビーンズ文庫)

!注意!
今回の白文字反転の部分にはマルタ・サギーは探偵ですか?〈5〉探偵の堕天のネタバレが含まれていますので未読の方はご注意ください。

ビーンズ初期作品。フリーダムだなあ。
あとがき曰く「『15冊ぐらい続いている話の間に挟まる1冊完結の話』みたいな感じでお願いします」という依頼でただしくそんな感じに仕上がっています。「わたしは好きだけど人には薦めない本」がまた1冊増える。
ちなみに同じカテゴリにはヘブンリーが入ってます。

ちょろっと読んだその夜、自分が吸血鬼になった夢を見たので読み進めることにしました。
ちなみに夢の中では5人ぐらい吸いました。味覚がある夢で「年寄りの血は不味い」という設定でした。

8ページと9ページの間に何があったのかを想像するのが異様に熱い本でした。
ずっと傍にいてくれとかいってたひとが命を奪いに来てるんだぜ! そこに何が起こったんだ! みたいな。 
でもその辺は説明されません。1

サクラは異世界からの漂流者です。日本人です。でも「異世界へ召喚された高校生」とかそういう方向ではありません。契約を交わして人間2の血を吸うヴィアローという種族の王を追いかけてこの世界へやってきたのでした。

ていうかサクラの「元の世界に帰りたい?」「今更帰ってもな。もうあまり覚えてないし」の次、八年。人が何かを諦めるのにも、人が変わってしまうのにも、充分な時間だ。(P57) にマルタを思い出す。蓑崎にいてもずっとオスタスのことを忘れないでいつか戻ることを諦めなかったマルタが別の世界のサクラなのかもとちょっと思った。

  1. むしろ15冊ぐらい出てるっていう設定なので、多分もうその時点は過ぎている []
  2. ミアリー []
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