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春狂い

とても美しい少女がいた。彼女を見た男は皆狂ってしまう。
彼女は幼い頃から男の欲望と暴力にさらされていた。幼稚園の昼寝時間には隣で寝ていた男児から。家ではお風呂に一緒に入る父親から。学校では教師から、クラスメイトから。成長してもずっと続く。
出口はない。

もうマジグロいの領域です。殴る蹴るだけで済むならどれだけ救われるものか。
死んだほうがマシというのはこういうことをいうのだろうなあ。何よりもウワァアアアアと思ったのは使用済みナプキン(数日経過)が現れたときのことです。あれはまさしくドン引きというにふさわしい。

ものすごいんだけど、えぐさ半端ないので人には薦められないし読む人も多分すごく選びそうな……。

うっかり「TOY JOY POP」(浅井ラボ)を初めて読んだ時をおもいだす。
これに比べればあれはまだ可愛いものだ。

天涯のパシュルーナ (3) (新書館ウィングス文庫) (新書館ウィングス文庫 155)

あとがき曰く全5巻予定の折り返しポイント。2巻は半年ぐらい積んだので今回はすぐ読んだ。
今日も災厄が寄ってくるトゥラルクは国王主催の夜会に招かれ、夜風に当たるべく外に出た。どこにいっても人ごみでなるべく人が少ないほうへ歩いていったところ貴族暗殺計画を耳にする。

ヴァイラはじまったな、という感じ。
基本的にトゥラルクさんまじなむいっす! ていう感じなんだけど1今回はうお、かっけーと思いました。ローリング運命。

「無実の人間を陥れなきゃ守れないちゃちなプライドなんてくそくらえ! おまえたち、恥を知れよ。恥を! 自分たちが何をしているのか、何をしなきゃいけないのか、てめぇの頭で考えてみろ!」

(P240)
  1. 主にヒルクイット的に []

日曜日のアイスが溶けるまで (小学館文庫)

なんかすごいものを読んだ感はある。
現実と幻想の境界を認識できていない類の言動を繰り返し言動にも以下略である。
26歳OL、彼氏とは3年目、自分のことは後回しにしがちであるという性格の京子が主人公です。

テレビでふと見た競馬中継で「10歳の時初恋の人と出会ったこと」を思い出す。訪れた競馬場にある児童公園で、京子は「思い出のままの10歳の初恋の人」と出会う。

「日々の雑事の疲れの中(主人公)はふと初恋の人を思いだす。色々あった末、思い出は思い出として私はここで頑張ろう」みたいな癒しと再生の物語では一切ありません。
あらすじほどロマンチックでもないです。現実離れはしていますが幻想的というには痛々しい感じがする。
どこか別の世界に引きずり込まれそうで、現実に戻ってこられておめでとうっていう風の。

思い出と虚構が徐々に現実を呑み込んでいくというか。
悲惨な過去があるわけではないのに過去を思い出したことにより緩やかに狂っていく過程というか。
ここ4行が断定形じゃなくてふわっとしてますが、作品がふわっとしているのでこうだ! とは言いにくい。

うっかり私まで呑まれそうになった。吸引力がすごい。

悪魔のような花婿 (コバルト文庫)

スプリング男爵家の末娘ジュリエットは「不吉な13番目」の子どもで長身で、生家は貧乏ではないが9人の娘すべてに支度金を出せるほど裕福な家庭でもなかった。農業に精を出して品種改良をしてみたりで生涯を終えるのかと思っていたところ降ってきた結婚の話。相手は名門だが悪魔伯爵と怖れられるバジル家のウィリアム。

こう書くと非常にシリアスな話のような気がしますが一言で言うと「甘」に尽きる物語です。
新婚夫婦がひたすらいちゃいちゃしたり痴話喧嘩をするだけの話です。
血と肉の代わりに「お砂糖やスパイスそれから素敵ななにもかも」でできています。
なにひとつとして障害のないしあわせ結婚生活です。

あえていうならうなぎパイ的には1問題ありなんですが、まあそれはコバルトコード的に問題ありだろうと思うので、朝チュンと子どもができますのよ!対応なんでしょう。ていうか「床上手」「むらむら」はコバルト的にありなんだなあ、とおもった。いや床上手はせいぜい「あやして寝かすのが上手い」程度で使われてますが「むらむら伯爵」は笑った。

あとオールドローズ! サンホラー的にはオルドローズ! 魔女! ラフレンツェ! 忘れてはいけないよ!

続編は既に8月発売のコバルトに掲載予定らしい。この本はすごく面白かったけど童話的な予定調和の物語なので続きは読まなくてもいいかなっていう感じです。予定調和が悪いっていうんじゃないけど、要するに「キノの旅」なんだよね。シリーズとして続いたとしても、私の中では「2人はいつまでも仲むつまじく幸せに暮らしました」でいいと思います。

すごくどうでもいいことなのですが折込チラシの作者からの一言欄にあった「糖度高めのラブファンタジー」という表現にちょっと驚く。
いや「糖度」って少女小説読者界隈では珍しくもなんともない単語ですが、有川浩さんの講演会か公開収録かそんなので「読者さんは(自分の本を指して)糖度高いとかいう表現をされるそうで……(新鮮だとか驚きとかそんなニュアンスで)」て言っていたのをおぼえていたこともあり、いつの間にかまあまあ一般的な表現に? とかいうことを思ったりした。

  1. 婉曲的表現 []

イングールの天馬—黒の王子と月の姫君〈上〉 (カラフル文庫)イングールの天馬—黒の王子と月の姫君〈下〉 (カラフル文庫)

さりさんから釣り針がなんか垂らされたので……
上巻というか序盤はぶっちゃけそんなにそんなにかなあ? という感じだったんですが下巻で転がり落ちた。
双方に揺れ動きとかすれ違いラブにガラガラガッターンとなった。
もう潮時ですね∩゚∀゚)!!!

雰囲気的にはCノベの系譜ですね。児童書レーベルですがよいものだ。

光待つ場所へ

スピンオフ短編集。同じスピンオフでも元作品既読前提な「ロードムービー」より格段によい。
「冷たい校舎の時は止まる」から「しあわせのこみち」
「スロウハイツの神様」から「チハラトーコの物語」
「名前探しの放課後」から「樹氷の街」

好きなのはえぐられるような「しあわせのこみち」
今回も「おいやめろ」と思うよいくおりちーです。耳が裂けました。

私この期に及んでまだなにかを模索しているような気がする。なにになるつもりなんだろうか。
いや要するに4月病なんですけどね。

「チハラトーコの物語」
ああそういえば磯山ミオみたいな人ニュースでみた覚えがある。
ていうか冬子今そんなことやってるんだと思った。最近姿を見なくなった人の、今なにしているか聞く気分。

「樹氷の街」
思わぬダークホース。絶対そんなはずないのに「辻村さん私と一緒の学校に通ってたんじゃないの。なんでこんな身に覚えがある話が展開されてるの」って思うことがよくあるんですが今回もすごかった。
この伴奏者私が中1のときの合唱コンクールのあれやないか!!! 中1って何年前やねん!
いやもうちょう動揺した。中学校の時の記憶って基本的に覚えておいても何の足しにもならない負債ばかりで思い出そうとしても思い出せないことが圧倒的に多い。
なのに「あの子なんで立候補したん?」「なんで○○が伴奏せえへんの。あの子無理やろ」という話をしていたり、実際の合唱コンクールでどうなったのか。いろんなことがばっさーと思い出された。
物語の力ってすごい。でもあまり色々引きずり出さないでください。

自分が恋をするとか、誰かと家庭を築いていくだとか、そういうことの全てが、私には想像できない。本当にできなかった。道を歩くたび、歩いたすぐ後ろが崩れていく。帰り道のない私は、前を向くしか方法がない。

(P44)

図書室で読んできたハイファンタジーに登場する人々や種族の言動、ゲームに出てきた武器の名前がどの歴史的事件に由来するものなのか、ヒットを飛ばすアニメの元ネタがどれから来てるか。頭の中に地図を描くように「知る」ことが好きだった。アニメやゲームの教養主義はもう時代が古い。だけど、好きで観て詳しくなった分の、私のこの知識に罪はない。

(P141?142)

兄妹パズル

とてもピュアフル文庫。
松本さんちの3兄妹。上に兄がふたり、そして「わたし」亜実。上の子と下の子はとても親に似ている。
しかし真ん中の子はまるで似ていない。7つ年上の兄は院生、2つ上の兄は大学生そしてわたしは今高校2年。
どこにでもいるような仲良し家族。ある日真ん中の兄、潤一は家出をした。
月に1回はがきが送られてくるから元気ではあるようだ。

話が割と多方面に行くので、さっぱりしている。「忘れている過去」とかどす黒い過去が出てくるんじゃないかと思ったけど、そういうのはなかった。真ん中の兄と亜実はただしく兄妹だなあと思った。子供の時とはいえ妹可愛いっていってる。

「夜目遠目傘のうち」という言い回しはとてもロマンだなあとおもった。和ロマン。

シスター・ブラックシープ 悪魔とロザリオ (角川ビーンズ文庫)

吾輩は猫である。いや猫になってしまった。名前はまだない。
赤毛緑眼白い肌の赤子を妻にすると決め16年待った。その間に司祭と戦い魔力を奪われ、我輩は地上の生き物に成り下がったが我が妻を迎えにいった。かの女は男装し教会で助祭などをしていたが関係ない。その左手の薬指には既に我輩との結婚指輪がはまっているのだから。おいやめろ聖水に沈めるな(ry

悪魔から逃げるためコンスタンスはコンスタンティンと名前を変え男として育てられた。養父の司祭亡き今、助祭コンスタンティンが女であることを知るものはいない。しかし悪魔は現れた。
悪魔との結婚を破棄するべく100年前の伝説の聖女【黒い羊】へと姿を変えた。破棄するにはひたすら善行を積む必要があり、治安の悪いこの街では悪事には事欠かない。伝説の聖女の名前を借りて大暴れできて感謝されて目的も達成できる。すばらしい。
時を同じくしてコンスタンティンの教会へ司祭ユリエルが派遣されてきた。真面目で純情な善人に見える彼は悪魔の魔力を奪った司祭である。

なにこれ超すごい。超燃える。というのが短い感想です。
「殺伐とした関係」はとても好きです。「ひとつ屋根の下の秘密」とか超好きです。
なんですかこのバトル成分は! けしからんもっとやれ(*゚∀゚)=3!
いやあまりの殺伐成分1に満面の笑みを浮かべながら読んでしまったよ。なにこれ燃える。

序盤の「そなたの夫だ」のところ、これなんていうタキシード仮面wwwwwとおもったのは秘密だ。
P254の最初のあれのあたりでうっかりデュラララの波江とか美香を連想する。つまりこれはセルティポジションであるコンスタンティンをめぐる司祭と悪魔の物語なのだ!!
前も書いたけどどことなく少年向けスメルがするビーンズ作品が地味に増えてるような気がしますよ。いいぞもっとやれ。

あとあれだな! エリカとコンスタンティンは実態は百合なのにおいしいな! エリカツンデレだな!

これは食事用ですとかミサ用ですとか「変な人だなあ(*´∀`)」と思うエピソードがあってその裏側になんつーものが! 
? やべえ / ? 超好き /

いい時代になったものだ。

  1. ビーンズ的に。 []

お嬢様探偵ありすと少年執事ゆきとの事件簿 (講談社青い鳥文庫)

11歳で二ノ宮家の当主、ひきこもっては書類を眺め事件を解決。巨大な図書館のような書棚のどこに何の本があるかすべて把握してる二ノ宮ありす。そして交通事故で孤児となり施設で過ごした後二ノ宮家に引き取られ執事となったゆきと。

そんなGOSICKを青い鳥文庫に輸出しました的な1冊。
お嬢さまにこんな不思議なことがあったのですがどういうことでしょうとばかりに持ち込んだりするよ。
でも混沌を再構築したりはしないよ。なんだこの万能感。
でも小学校の時これ読んでたら多分憧れていたと思う……(自分分かりやすいな

薔薇を拒む

施設育ちのぼく、鈴原博人の元にある話がやってきた。
とある実業家が住み込みで働いてくれる17?19の若者を探している。3年間働いて大検を受ければ大学4年間の学費と生活費を援助してくれるという。ぼくは施設の経営状態やらを考えてその話を受けることにした。場所は和歌山の山奥、似たような境遇の樋野薫とともに陸の孤島へ行く。

和歌山の屋敷に住んでいるのは血の繋がらない母娘、娘(小夜)の家庭教師の角倉幸、住み込みのお手伝いさん(登美さん)、家を取り仕切る中瀬。ネットには繋がらず携帯も没収となる。

この閉塞感はよい。殺人事件ktkr! とか久しぶりに思ったな。こんな整えられた屋敷で起こらないはずがない。あのラストはぞっとするな。あれっとおもって2回読んだ。あんな謙虚なことを言っていたのに……

それでも「家族」と言ってもらったことは、ぼくの心の中にあたたかい灯を点した。
この先、大きな幸福など手に入らなくてもかまわない。
静かに本を読める時間だとか、コウさんにそう言ってもらったこととか、小夜がぼくに微笑んでくれたこととか、そんな小さな幸福を紡いで、ぼくはこの先も生きていくのだろう。

(P154)
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