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僕の好きな人が、よく眠れますように

絶対、最強の恋のうたの木戸さんが出てきてびっくりした。

「僕」と北海道からやってきた人妻研究員、「僕」の妹、バイト先で出会った坂本のふりをしている木戸さんの話で、僕と恵はすげーバカップルで2人でいるときはなんかずっとキャッキャウフフ話している。
純愛だけど不倫なんだなあと思う。ちょっと蝶々喃々を思い出す。
こっちもどろどろすることはない。喋々喃々と違うのは2人の行く先が暗示されていることかなあ。
木戸さんの登場は嬉しいサプライズでした。しかし「この話はどこに向いていくのんか。……えー終わったー」という話だったなあと思います。

まともなロマンを求める人は、誰からも相手にされず、誰からも大切にされず、一人で守り続けるしかない。本当はこういう人が、人知れず、世界の孤独とか哀しみとかを、一身に引き受けてしまう。誤解は前提で、理想は敵で、正解は最初からないのだ。

(P145)

ライトノベル作家のつくりかた〈2〉メディアミックスを泳ぎぬけ!

よくある感じの創作指南本かと思えばインタビューの本だった。
そして須賀しのぶさんや高殿円さんが相当分量とって載っていた。登場する作家さんは1ページ程度のアンケートも含めて小学館から本を出してる方が多い気がする。実際に数えてみたら違うのかもしれませんが印象的に。

この本でようやく数学的じゃないほうの帰納法が何者か分かりました。
私評論っぽい用語になると途端に頭上にはてなが飛び交いまくります。「マジックリアリズムの極地!」とか「セカイ系!」とか。何度解説されても分からない。

「少女向けのツボは少年向けに比べて断然狭い」という話の中で

アサオ 今は「お姫様」? 「姫系」以外には何? 「逆ハー」は、僕もちょっと知ってるんですけど、あとどんなパターンがあるんですか?
須賀 ないです。
アサオ えっ!
須賀 ないです、ないんですよ。マジでこの二つだけ。

(P117)

姫嫁な路線以外も出てくるといいなあ。
いくら「時代は繰り返す」とはいえ現代に日の目が当たる時代はくるんだろうか。

特に椋本さんのは読んでるこっちがとてもしょんぼりした。

椋本 今は特にそうですね。知り合いの編集さんに、「こういう作品に付けたいんだけど、この手の絵の人知らないかな?」って言われて「この人とかいいんじゃないですか?」って言ったら「この人、凄く合うと思うんだけど、前ウチのレーベルで誰々さんと組んで(作品が)あまり売れなかったから、ちょっと印象が悪くて出せない」と。それはマッチングが悪かったんでしょう? 貴方達のミスでしょ? 絵描きさんのミスではないのに……。でも、それで印象が悪くなっちゃうっていうのが現実にあるんだ……厳しいなあ、と。

(P159)

今は特に、というのは「売れなきゃ次がない」というのに繋がっています。

“文学少女”と恋する挿話集 2 (ファミ通文庫)

文学少女番外編。FBOnline掲載のものと書き下ろしの短編集。
表紙からななせ救済の巻なのかと思えば反町くんと森ちゃんという最強バカップルがいた!
バカップルにも程があるな!
反町くんが詩人に共感したり反面教師にしたり師匠にしてたりする読書シーンが大変ウザ可愛いです。

森ちゃんの家は名付け的に森鴎外がモデルなのかと思った。森鴎外の子ども達は漢字よりカタカナのほうがよく似合うような、時代を考えるととても珍しい名前をしていたはず。弟は多分ルパンだと思う。瑠帆?

詩は子どもの時に読んだのはらうたとか以降読んでないんですが、ギタンジャリはとても気になる。
中原中也はこの前の別冊文芸春秋だかなんかでやってた番子さんの漫画のイメージが強い。中也=黒目がち。あと読んでないけど知ってる詩といえば山村暮鳥か。いちめんのなのはな。
菜の花綺麗ねーな詩なんだとは思うけど、わたしがこの詩を見るときはいつもホラーがかったシーンばかりだ。

「ななせの恋日記番外編」が「美羽の調教教育の賜物」なんて説明では足りないぐらい心葉がへタレ返上しています。びっくりだ! 嘘みたいだろう? このルートは未来がないんだぜ……

誰だって汚れたくない。
健全でいたいし、綺麗でいたい。太陽に向かって正々堂々胸を張っていたい。
それでも、なにもかもが正しくまっすぐいくわけではなくて、いけないってわかっていても??そんな風になりたくないと抵抗しても、どうしようもないこともある。

(P268)

バカとテストと召喚獣 6.5 (ファミ通文庫 い 3-1-8)

バカテスはつくづく性別の境界が曖昧だなあと思います。
なんですかこのuraraful短編集。1

アタシと愚弟とクラス交換
木下姉弟の入れ替わりもの。双子ならではの基本ネタですね!
「秀才の優子」のイメージがどんどん残念すぎることに。秀吉は「第三の性別っぷりを見せ付ける担当」とか「演技の技術が半端ねー」とかそういうこ感じの役回りが多かったので、私の中では姫路さん寄り2のポジションだったんですが、秀吉は「F組に入るべくして入った人」なんだなあと思いました。

僕と海辺のお祭り騒ぎ(前編)(後編)
海だ水着だ海辺に血の雨が降り注ぐ!(※何一つ間違っていない)
バカテスのヒロインは姫路さんですが6.5に限り雄二がヒロインでいいと思います。なんですかあのけしからん挿絵は。
姫路さんがどんどんF組っぽくなりつつありますよいことです。朱に交われば赤くなるのです。
そして海の話に限定して言うのなら工藤愛子がまっとう過ぎます。
いい意味で突っ込みどころが満載過ぎました。

雄二と翔子と幼い思い出
ここまで女装ネタで走ってきて初の3人称は雄二と翔子の小学生時代の話です。実に心暖まる話です。
ハイテンションで走ってきたのでこの溢れる落ち着きっぷりに戸惑いました。
ていうか雄二は出来る子だったのか、じゃ今は何であれなんだという心の突っ込み。

  1. uraraful……akihisafulの類語。今作った []
  2. 「本当はできるひとなんだけど手違いでF組所属」 []

アンゲルゼ—孵らぬ者たちの箱庭 (コバルト文庫)アンゲルゼ—最後の夏 (コバルト文庫)アンゲルゼ—ひびわれた世界と少年の恋 (コバルト文庫)アンゲルゼ—永遠の君に誓う (コバルト文庫)

夏の、というか今週末までの課題図書でしたアンゲルゼ。
1巻はリアルタイムで読んでAAST発行を機に読み始めた。通販組なので確保はまだ先ですが!

2巻以降読まなかったのは1巻が重くて重くて2巻は手に取る→戻す→手に取る→戻すを繰り返していたなあ。大体憶えてるけど一応1巻再読から始めた。けど初読の時ほど重さを感じなかった。
内容知ってるからだと思ったけど、2巻以降も「重いわー」とかいいながらもう1冊追加できる程度の重さだったので読書的に足腰が鍛えられたのだと思った。1

読みながら時々「これコバルトだよな」っていうのを思い出す。
それぐらい14歳が背負うには過酷・熾烈・容赦ない運命です。すげー。

東京から1000キロ北東の島、神流島。
天使病という奇病が存在しており、時代は中学生レベルでは自覚はなくても世界的には戦時中である。
神流島のこどもたちは中学で軍事訓練が始まり、高校を過ぎれば徴兵という未来が待っている。
読んでる側がちょっといらっとするぐらい内気で引っ込み思案で歌は上手い中学生の陽菜は、色々あってAAST2に関わることになる。ブートキャンプに放り込まれたり訓練で吐いたり気絶したり水ぶっかけられたり心身ともにフルボッコにされたり重たい真実を知らされたり実戦に放り込まれたりする。
軽く書こうとしてみたけどどう見ても過酷さが隠しきれてない。2巻はうっかりEGコンバットを思い出した。

「遅刻の理由を言え!」
仁王立ちの尾田に怒鳴られて、陽菜も反射的に「筋肉痛です!」と大声で答えてしまった。自分の声に腹筋が震え、その痛みに耐えていた矢先、「ばかもん。歯ァ食いしばれ!」と平手打ちをくらってふっとんだ。

(最後の夏 P96)

この辺とかうっかりルノア教官風に再生された。

強制孵化のシーンのグロさは異常だ。相当想像力補正かかってると思うけど、ぎちぎちぎち……ぼこっとかばりばりばり!とか聞こえてきそうだった。こわい。あと素手で、とか飲みなさい、とか。

3巻はずっともーちゃんのターン! だったな。もーちゃんむっつりだな。可愛いな。
敷島がヤンキー座りで煙草吸って注意されてるところにきゅんとした。
敷島の爆弾発言!とか神流島はアンゲルゼ牧場とか湊が生き残ったり(←絶対死ぬと思った)遺書とか本当に「人間とは異なるもの」であるアンゲルゼ(マリア)とか有紗の死と湊の荒れっぷりとか4巻がすさまじい密度だったり「最後に会いたいと思ったのはもーちゃん」とかにとてもごろごろした。

いくらでも機会は与えられていたはずなのに、何も知らないまま、何も手にとろうとしないまま、陽菜はこの世界から離れようとしている。居心地が悪くて自分に冷たいと思っていた世界は、本当はすごくやさしくて、ただ何もしなかっただけなのに。

(最後の夏 P120)

世界を知りたい。願いは、それだけだ。ただ、そう思うようになったきっかけは、陽菜だ。それは確かだ。
昔はずっと一緒にいて、なんでも分かっていると思っていた小さな幼なじみは、しばらく目を離していた隙に、わけのわからないものに巻き込まれ、知らない少女に変貌した。陽菜の変化そのものこそが、覚野にとっては、この世界への疑問を裏付けるものだった。

(ひび割れた世界と少年の恋 P146)

「おまえに誓う! 必ず、俺は迎えに行く!」

(永遠の君に誓う P338)
  1. 読書的に云々は書き出すと長いのでまた次の機会にする。 []
  2. 対アンゲルゼ特殊戦術部隊 []

夢見る水の王国 上 (カドカワ銀のさじシリーズ)夢見る水の王国 下 (カドカワ銀のさじシリーズ)

星兎以来久しぶりに寮美千子作品を読む。すごく幻想的な物語でした。

マミコは海辺の小さな別荘地でおじいさんと二人で暮らしていた。
ある日マミコは海岸で「おじいさんお気に入りの流木」が流されていることに気付いて流木を探しに海岸を走った。流木に見えたものは木馬だった。気がつくと時間が止まった海岸にいたマミコは影が動き出し、影は「世界の果てにあんたの名前と木馬の角を捨てに行く。何もかもを忘れるために」と言い走っていった。
世界が多重になってる感じです。ふわっとします。

この作品は楽園の鳥 —カルカッタ幻想曲—の作中作だそうなので、こちらも気になる。

毎日、老人といっしょに海岸を散歩して、小石や貝殻を拾うほどに、マミコのなかで、ある美学が育っていった。昨日までいちばん美しいと思われた欠片が、きょうはもう、そうは思えなくなる。もっと美しいものを見つけてしまったからだ。その度に、箱の中身は徐々に入れ替えられ、ほんとうに美しいと思われるものだけが残っていった。やがてそれは、箱の中身を無造作につかみとって床にばらまいただけでも、息を呑むような美しさを見せるほどに、洗練されていった。

(上巻P93)

少女だったり老婆だったり、顔かたちも違ったが、それが同じ一人の女であることが、男にはわかった。なぜなら男はその女と、いくつもの人生をともに歩んできたからだ。世界の果てから果てへ、時の荒波を越えて出会い、別れまた出会ってきた。ばらばらに生まれ落ちても、必ず互いを探し出し、手を握りあってきた。

(上巻P314)

愛されることは閉じこめられること。必要とされることは立ち去れなくなること。そうやって、老人は少女を閉じ込めてきた。そして、ふいに姿を消してしまった。

(下巻P250)

花宵道中

江戸吉原を舞台にした連作短編。
性描写がっつり濃厚なんですが最初に出てくる感想は「雰囲気が」えろいなんです。
どう少なく見ても全体的に半分以上、最初の短編で「女による女のためのR-18文学賞」大賞・読者賞受賞作の「花宵道中」にいたっては8割以上がそういう描写なんですけど「直球の描写なんてしてませんよ」ていう気になるところが凄いと思う。1

この本の感想はえろいの抜きでは多分何も書けないので、続きを読むモードに放り込みます。
そういう本が苦手な人・嫌いな人はここで回れ右でお願いします。

  1. 実際は30ページ少々の短編で最後までが2回、これはもしかして……?というのが複数 []

黄昏色の詠使いX  夜明け色の詠使い (富士見ファンタジア文庫)

黄昏色の詠使い完結巻。
綺麗な話だったなあ。最終巻までほぼ標準レベルのまま素通りしてきたエイダ株がぎゅんとあがったよ。
エイダ可愛いよエイダ。エイダとアルヴィルのシーンを推すよ!

ちなみに読んでる間は延々と志方あきこの「謳う丘 EXEC_HARVESTASYA/.」を聞いていた。これがちょうど合うのである。主にヒュムノスパートが。謳う丘ヒュムノス解説

しかし私の中のベストオブ黄昏色は多分1巻なのです。何度再読してもセラフェノ言語のすべてを知った上でもう1回読んだとしても変わらないと思う。来月からのシリーズも楽しみだなあ(*´∀`)

本の現場—本はどう生まれ、だれに読まれているか

本はどのように作られているか(企画段階とか編プロとかフリーライターとか新刊洪水とか)
どのように読まれているか(直木賞芥川賞・本屋大賞・アサドク)
対談とかそんな感じの内容。付記でフォローされてるけど基本的には2005年?2007年時点での話です。
情熱大陸に出てた幅充孝さんとの対談があった。

週間としての読書を身につけるという意味で、朝の読書運動は意義深いと思う。私は最初、この運動について聞いた時、「みんなで一斉に本を読むなんて気持ち悪い」と感じたが、教師が読む本を選んだり、読んだ結果について評価したりしないところがいいと考えるようになった。(略)自分で本を選んで毎日少しずつ読んでいくという経験は、将来きっと何らかのかたちでプラスになると思う。

(P107)

朝の読書はわたしはまるで縁がなかったけど実施状況グラフを見てるとおもしろいなあとか思った。
一斉に読み始めるところを想像すると不気味ではあるけど、感想文の提出とか読む本の事前チェック1がないのならよいのでは、とおもった。細切れにはなるけど、本読みなれてない人は10分程度で飽きるよねっていう。2

永江 クライアントからの依頼は増えているでしょう?
 仕事の依頼はくるんですが、金額とか、インタビューを含めた進め方を言うと、「え?」みたいな感じ。去年、テレビの「情熱大陸」に出たら、テレビって怖いですね、めちゃめちゃ電話がかかってくるわ、メールが来るわ、すごかったんですけど、進めていくと「そんなに金や時間がかかるんだったら、やめますわ」みたいなことがたくさんあった。

(P196)
  1. 小学校の時図工の時間に読書画を描くことになり、何を描くか決めたら先生に「これを描きたい、描いていいですか」とお伺いを立てる必要があった。ボツをくらった悲しき思い出。 []
  2. 例:うちの母上。本を読む→5分ぐらいで眠気が→どこまで読んだかわからない→戻る []

群青 (shogakukan paperbacks)
一応映画がもとにあるけどノベライズではなく原案という扱いになっていた。
かつくらのインタビューでは映画と小説では違う展開と見たような覚えが……

沖縄の離島、主に南風原島1・石垣島の辺りが舞台。
ぐぐってみたところ、収録されている3作のうち映画が下地となっているのは最後の「群青」
ピアニストの由起子が南風原島へ来て、島一番の漁師である龍二と出会いの話「紺碧」
龍二と由起子の娘、涼子と幼馴染みの一也・大介の小学生時代の話「三原色」。

「群青」に関しては相当ベタな部類の話だと思います。恋愛と別れと再生とエロ。
「R-18な幸福な食卓を沖縄でやってみました」みたいな?

これは心理・情景描写が好きなのでたぶん映画は見ないほうがいい気がするなあと思いつつ、読んだ後映画情報を見に行って龍二役が佐々木蔵之介と知って驚く。もっと屈強な海の男を想像していた。2

木陰から見える海と空は刻々と黄金に染まりゆき、西に傾いた太陽が一也の柔らかそうな前髪を茶色く透かす。美しい少年だ、とその横顔を眺め、涼子は思う。小学生のころ小さかった背は中学に入ったとたんぐんぐんと伸び、今や大介を追い越すか追い越さないかの勢いだ。そして放課後、週に三日は漁協の船に乗って潜りの練習もしているため、身体じゅうにしなやかで弾力のありそうな薄い筋肉がついていた。美しい身体も顔も、きっと海の神様に愛されているのだろう。

(P84)

家に帰れば待っている家族が居るというのに、何人もの漁師が命を落としているというのに、懲りもせず、死んだ漁師の魂が漂っている海に、生きている漁師は潜る。(略)肩で息をして水面を睨みつけるあの男の顔は本物だった。五分間、何も聞こえず、空も見えず、足場も見えない海の中で、やつは何度死の訪れを見ただろう。

(P132)

さあ、真実を見るが良い。
私に幻滅するが良い。
幻滅し、私の顔に唾をはきかけ、口汚く罵って、今すぐおまえが捨てた島を出てゆけば良い。そしてもう二度と、戻ってこられると思うな。

(P200)
  1. はえばるじま []
  2. かといって希望のキャストはないんだけど。 []
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