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ほんたにちゃん (本人本 3)

凄く痛い小説だった。作品が痛いんじゃなくて、登場人物が痛いのでもなくて、読んでるこっちの胸が痛い。

学校で飲み会あるって聞いたけど誰にも誘われなかったから「誰かに誘われた」風に店までやってきた。
そこでの「中2病をこじらせた女子(ぼっち)の孤独」描写がとてもいたたまれない。
こんな状況に立たされたらもう泣きながら帰るわな(゚д゚)と思った。
ちなみに私は席移動ができるなら席を転々としつつグラスもしくは酒瓶片手に喋り倒すほうです。

二十歳前ならまだやり直せるよ……むしろ更生的にはラストチャンス……とか思ったり凄くはらはらしながら読んだ。

この表紙は何事だと思ってたけどちゃんと理由があったので読み終わったあと表紙見てふいた。
Amazonレビューいわく「メディアに露出しまくり」だそう1だけど私が見るようなのには出ないらしく見たことはない。
でもどこかで拾ってきたこの本のタイトルは覚えてたのでこの本を実際に読むまでずっと「ほんたにゆきこ」さんだと思っていた。表紙にも大きく「もとやゆきこ」とふりがな振られていて初めて間違いに気がついた。

敗北感。
私の胸に広がる、この複雑な気持ちを言葉にするならばこれだ。敗北。何に敗北したのかはよく分からんよ。でも飲み会で席を奪われ、隣に座っていた人物にはさりげなく移動され、今こうして追いやられるようにみんなから離れた場所にポツネンと佇みながら誰ひとり気にされることなく存在する自分。

(P45)

何しろ昔から『天然最強説』を唱えてやまない私だ。やつらは狙ってないぶん、滑ることを知らない。滑らない人間ほど強いものはない!

(P80)
  1. 書かれた日付を見ると古めだったので今はもう「だったそう」かもしれないけど []

世界画廊の住人 (幻狼ファンタジアノベルス)

画家はよいね!
こういうキャラどっかで見たことある……(しかもすごく好きだった……)誰だっけと思ってたらフランシスだー!と思い出す。「或る少女の肖像」だ。あっちもちょうど画家だし。
よいファンタジーです。みっちりしてます。
確か段組の上行数ぎっちぎちだから文量的には文庫2冊分ぐらいあるとみた覚えがある。

セツリは正しくツッコミ担当だなあ。
世界の話は読んでて楽しいけどくるくるぱーんとなります。そこまでが楽しみの範囲内ですが。

「大丈夫か? 死にそうなら早めに言ってくれ、色が綺麗なうちに樹脂で固めるから」
「貴様が先に死ね、このゴミでクズで地下墓地でネズミにかじられているのがお似合いの駄目画家が!」
「…………君は酷い人だ!」
「お前のほうがよっぽど酷いわ!」

(P48)

セレモニー黒真珠 (ダ・ヴィンチブックス)

葬儀屋の人々が主人公なのになんだかラブコメ風だなあ。
今までに読んだ宮木あや子作品1と比べると何か色がすごく違う気がする。
薄暗いところもあるけど基本明るいよなー。

好きなのは「主なき葬儀」「セレモニー白真珠」です。笹島さんは女のイケメンだと思う。

「うるせえ妹尾!」
「これはヅラじゃねえ! ハンディモップだ! 良いな!」

(P140)

小さな風呂桶のようなふたりだけの王国を不幸という生温い水で満たすと、そこは恐ろしく居心地の良い甘美な城となる。癒えぬ傷を舐めあう行為はふたりの身体を蔓のように絡め、疼きに似た痛みが互いを離れがたくする。

(P155)
  1. 花宵道中・雨の塔・群青 []

創立!? 三ツ星生徒会3 それでも恋3は終われない

三ツ星生徒会、3巻目。次巻が最終巻です。今回は準備期間ギリギリな文化祭ネタです。
学園モノであるならクラスや部活単位での文化祭準備は鉄板のネタですが、学校全体の仕切りと出し物のスケジュールの調整がメインなのはちょっと珍しい気がしました。

この巻ちょっとフリルの悪魔生嶋さん成分が増量されてたから(*゚∀゚)=3という気分だ。

しかし主人公なのに恵の報われなさは半端ねー。生徒会の仕事的な面では周囲の人々から凄い!と思われつつあるのに恋愛的にはまじ南無過ぎる。果たしてこの物語どこに落ちるのか。最終巻は12月発売のようだ。3ヶ月ぐらい早いものだー。

僕の好きな人が、よく眠れますように

絶対、最強の恋のうたの木戸さんが出てきてびっくりした。

「僕」と北海道からやってきた人妻研究員、「僕」の妹、バイト先で出会った坂本のふりをしている木戸さんの話で、僕と恵はすげーバカップルで2人でいるときはなんかずっとキャッキャウフフ話している。
純愛だけど不倫なんだなあと思う。ちょっと蝶々喃々を思い出す。
こっちもどろどろすることはない。喋々喃々と違うのは2人の行く先が暗示されていることかなあ。
木戸さんの登場は嬉しいサプライズでした。しかし「この話はどこに向いていくのんか。……えー終わったー」という話だったなあと思います。

まともなロマンを求める人は、誰からも相手にされず、誰からも大切にされず、一人で守り続けるしかない。本当はこういう人が、人知れず、世界の孤独とか哀しみとかを、一身に引き受けてしまう。誤解は前提で、理想は敵で、正解は最初からないのだ。

(P145)

ライトノベル作家のつくりかた〈2〉メディアミックスを泳ぎぬけ!

よくある感じの創作指南本かと思えばインタビューの本だった。
そして須賀しのぶさんや高殿円さんが相当分量とって載っていた。登場する作家さんは1ページ程度のアンケートも含めて小学館から本を出してる方が多い気がする。実際に数えてみたら違うのかもしれませんが印象的に。

この本でようやく数学的じゃないほうの帰納法が何者か分かりました。
私評論っぽい用語になると途端に頭上にはてなが飛び交いまくります。「マジックリアリズムの極地!」とか「セカイ系!」とか。何度解説されても分からない。

「少女向けのツボは少年向けに比べて断然狭い」という話の中で

アサオ 今は「お姫様」? 「姫系」以外には何? 「逆ハー」は、僕もちょっと知ってるんですけど、あとどんなパターンがあるんですか?
須賀 ないです。
アサオ えっ!
須賀 ないです、ないんですよ。マジでこの二つだけ。

(P117)

姫嫁な路線以外も出てくるといいなあ。
いくら「時代は繰り返す」とはいえ現代に日の目が当たる時代はくるんだろうか。

特に椋本さんのは読んでるこっちがとてもしょんぼりした。

椋本 今は特にそうですね。知り合いの編集さんに、「こういう作品に付けたいんだけど、この手の絵の人知らないかな?」って言われて「この人とかいいんじゃないですか?」って言ったら「この人、凄く合うと思うんだけど、前ウチのレーベルで誰々さんと組んで(作品が)あまり売れなかったから、ちょっと印象が悪くて出せない」と。それはマッチングが悪かったんでしょう? 貴方達のミスでしょ? 絵描きさんのミスではないのに……。でも、それで印象が悪くなっちゃうっていうのが現実にあるんだ……厳しいなあ、と。

(P159)

今は特に、というのは「売れなきゃ次がない」というのに繋がっています。

“文学少女”と恋する挿話集 2 (ファミ通文庫)

文学少女番外編。FBOnline掲載のものと書き下ろしの短編集。
表紙からななせ救済の巻なのかと思えば反町くんと森ちゃんという最強バカップルがいた!
バカップルにも程があるな!
反町くんが詩人に共感したり反面教師にしたり師匠にしてたりする読書シーンが大変ウザ可愛いです。

森ちゃんの家は名付け的に森鴎外がモデルなのかと思った。森鴎外の子ども達は漢字よりカタカナのほうがよく似合うような、時代を考えるととても珍しい名前をしていたはず。弟は多分ルパンだと思う。瑠帆?

詩は子どもの時に読んだのはらうたとか以降読んでないんですが、ギタンジャリはとても気になる。
中原中也はこの前の別冊文芸春秋だかなんかでやってた番子さんの漫画のイメージが強い。中也=黒目がち。あと読んでないけど知ってる詩といえば山村暮鳥か。いちめんのなのはな。
菜の花綺麗ねーな詩なんだとは思うけど、わたしがこの詩を見るときはいつもホラーがかったシーンばかりだ。

「ななせの恋日記番外編」が「美羽の調教教育の賜物」なんて説明では足りないぐらい心葉がへタレ返上しています。びっくりだ! 嘘みたいだろう? このルートは未来がないんだぜ……

誰だって汚れたくない。
健全でいたいし、綺麗でいたい。太陽に向かって正々堂々胸を張っていたい。
それでも、なにもかもが正しくまっすぐいくわけではなくて、いけないってわかっていても??そんな風になりたくないと抵抗しても、どうしようもないこともある。

(P268)

バカとテストと召喚獣 6.5 (ファミ通文庫 い 3-1-8)

バカテスはつくづく性別の境界が曖昧だなあと思います。
なんですかこのuraraful短編集。1

アタシと愚弟とクラス交換
木下姉弟の入れ替わりもの。双子ならではの基本ネタですね!
「秀才の優子」のイメージがどんどん残念すぎることに。秀吉は「第三の性別っぷりを見せ付ける担当」とか「演技の技術が半端ねー」とかそういうこ感じの役回りが多かったので、私の中では姫路さん寄り2のポジションだったんですが、秀吉は「F組に入るべくして入った人」なんだなあと思いました。

僕と海辺のお祭り騒ぎ(前編)(後編)
海だ水着だ海辺に血の雨が降り注ぐ!(※何一つ間違っていない)
バカテスのヒロインは姫路さんですが6.5に限り雄二がヒロインでいいと思います。なんですかあのけしからん挿絵は。
姫路さんがどんどんF組っぽくなりつつありますよいことです。朱に交われば赤くなるのです。
そして海の話に限定して言うのなら工藤愛子がまっとう過ぎます。
いい意味で突っ込みどころが満載過ぎました。

雄二と翔子と幼い思い出
ここまで女装ネタで走ってきて初の3人称は雄二と翔子の小学生時代の話です。実に心暖まる話です。
ハイテンションで走ってきたのでこの溢れる落ち着きっぷりに戸惑いました。
ていうか雄二は出来る子だったのか、じゃ今は何であれなんだという心の突っ込み。

  1. uraraful……akihisafulの類語。今作った []
  2. 「本当はできるひとなんだけど手違いでF組所属」 []

アンゲルゼ—孵らぬ者たちの箱庭 (コバルト文庫)アンゲルゼ—最後の夏 (コバルト文庫)アンゲルゼ—ひびわれた世界と少年の恋 (コバルト文庫)アンゲルゼ—永遠の君に誓う (コバルト文庫)

夏の、というか今週末までの課題図書でしたアンゲルゼ。
1巻はリアルタイムで読んでAAST発行を機に読み始めた。通販組なので確保はまだ先ですが!

2巻以降読まなかったのは1巻が重くて重くて2巻は手に取る→戻す→手に取る→戻すを繰り返していたなあ。大体憶えてるけど一応1巻再読から始めた。けど初読の時ほど重さを感じなかった。
内容知ってるからだと思ったけど、2巻以降も「重いわー」とかいいながらもう1冊追加できる程度の重さだったので読書的に足腰が鍛えられたのだと思った。1

読みながら時々「これコバルトだよな」っていうのを思い出す。
それぐらい14歳が背負うには過酷・熾烈・容赦ない運命です。すげー。

東京から1000キロ北東の島、神流島。
天使病という奇病が存在しており、時代は中学生レベルでは自覚はなくても世界的には戦時中である。
神流島のこどもたちは中学で軍事訓練が始まり、高校を過ぎれば徴兵という未来が待っている。
読んでる側がちょっといらっとするぐらい内気で引っ込み思案で歌は上手い中学生の陽菜は、色々あってAAST2に関わることになる。ブートキャンプに放り込まれたり訓練で吐いたり気絶したり水ぶっかけられたり心身ともにフルボッコにされたり重たい真実を知らされたり実戦に放り込まれたりする。
軽く書こうとしてみたけどどう見ても過酷さが隠しきれてない。2巻はうっかりEGコンバットを思い出した。

「遅刻の理由を言え!」
仁王立ちの尾田に怒鳴られて、陽菜も反射的に「筋肉痛です!」と大声で答えてしまった。自分の声に腹筋が震え、その痛みに耐えていた矢先、「ばかもん。歯ァ食いしばれ!」と平手打ちをくらってふっとんだ。

(最後の夏 P96)

この辺とかうっかりルノア教官風に再生された。

強制孵化のシーンのグロさは異常だ。相当想像力補正かかってると思うけど、ぎちぎちぎち……ぼこっとかばりばりばり!とか聞こえてきそうだった。こわい。あと素手で、とか飲みなさい、とか。

3巻はずっともーちゃんのターン! だったな。もーちゃんむっつりだな。可愛いな。
敷島がヤンキー座りで煙草吸って注意されてるところにきゅんとした。
敷島の爆弾発言!とか神流島はアンゲルゼ牧場とか湊が生き残ったり(←絶対死ぬと思った)遺書とか本当に「人間とは異なるもの」であるアンゲルゼ(マリア)とか有紗の死と湊の荒れっぷりとか4巻がすさまじい密度だったり「最後に会いたいと思ったのはもーちゃん」とかにとてもごろごろした。

いくらでも機会は与えられていたはずなのに、何も知らないまま、何も手にとろうとしないまま、陽菜はこの世界から離れようとしている。居心地が悪くて自分に冷たいと思っていた世界は、本当はすごくやさしくて、ただ何もしなかっただけなのに。

(最後の夏 P120)

世界を知りたい。願いは、それだけだ。ただ、そう思うようになったきっかけは、陽菜だ。それは確かだ。
昔はずっと一緒にいて、なんでも分かっていると思っていた小さな幼なじみは、しばらく目を離していた隙に、わけのわからないものに巻き込まれ、知らない少女に変貌した。陽菜の変化そのものこそが、覚野にとっては、この世界への疑問を裏付けるものだった。

(ひび割れた世界と少年の恋 P146)

「おまえに誓う! 必ず、俺は迎えに行く!」

(永遠の君に誓う P338)
  1. 読書的に云々は書き出すと長いのでまた次の機会にする。 []
  2. 対アンゲルゼ特殊戦術部隊 []

夢見る水の王国 上 (カドカワ銀のさじシリーズ)夢見る水の王国 下 (カドカワ銀のさじシリーズ)

星兎以来久しぶりに寮美千子作品を読む。すごく幻想的な物語でした。

マミコは海辺の小さな別荘地でおじいさんと二人で暮らしていた。
ある日マミコは海岸で「おじいさんお気に入りの流木」が流されていることに気付いて流木を探しに海岸を走った。流木に見えたものは木馬だった。気がつくと時間が止まった海岸にいたマミコは影が動き出し、影は「世界の果てにあんたの名前と木馬の角を捨てに行く。何もかもを忘れるために」と言い走っていった。
世界が多重になってる感じです。ふわっとします。

この作品は楽園の鳥 —カルカッタ幻想曲—の作中作だそうなので、こちらも気になる。

毎日、老人といっしょに海岸を散歩して、小石や貝殻を拾うほどに、マミコのなかで、ある美学が育っていった。昨日までいちばん美しいと思われた欠片が、きょうはもう、そうは思えなくなる。もっと美しいものを見つけてしまったからだ。その度に、箱の中身は徐々に入れ替えられ、ほんとうに美しいと思われるものだけが残っていった。やがてそれは、箱の中身を無造作につかみとって床にばらまいただけでも、息を呑むような美しさを見せるほどに、洗練されていった。

(上巻P93)

少女だったり老婆だったり、顔かたちも違ったが、それが同じ一人の女であることが、男にはわかった。なぜなら男はその女と、いくつもの人生をともに歩んできたからだ。世界の果てから果てへ、時の荒波を越えて出会い、別れまた出会ってきた。ばらばらに生まれ落ちても、必ず互いを探し出し、手を握りあってきた。

(上巻P314)

愛されることは閉じこめられること。必要とされることは立ち去れなくなること。そうやって、老人は少女を閉じ込めてきた。そして、ふいに姿を消してしまった。

(下巻P250)
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