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異人類白書

短編集。
いつも使ってる小さなねじ回しが急に見えなくなったり物陰に誰かがいるような気がしたりふと顔をあげると誰かに見られてるような気がするのは本当に誰かがいるためだ。それを異人類といい、研究しているのが奥多摩の大学の文化人類学専攻の紫門教授とその助手、吉元嬢である。
自分は触ってないねじ回しに足が生えてどっかに歩いていったという類のいい訳ではなく、私は妖精が見えるのウフフフという類の人ではなく、本当に異人類はいる。教授と吉元嬢はフィールドワークを通してコミュニケーションを取ったりもしている。
登場する異人類は「穴居人」「盲点人」「無人島人」「物陰人」「混戦人」「痕跡人」「風下人」以上7人

話には直接関係ないし伝聞のかたちでしか登場しないけど首相が気に入った。
実際こんな人が首相だったらどんな平和な国でもアウアウ!だろうけど。

 朝から今日のお昼はカレーだとか、今日の晩ごはんは絶対にカツ丼だと決めてかかったとき、人は絶対にそれを食べないと気が済まないときがある。
 それをして嬢は口が○○になっていると表現する。つまり吉元嬢は絶対に晩ご飯はきつねうどんでないと嫌らしい。(P188)

これ使う(゚д゚)今日は口がお好み焼きとか。

78(ナナハチ)

13編の小説。続き物であったりリンクしていたりいつも比ちょっと分厚い本でした。
蓄音機でしか再生できない78回転のSPレコードがモチーフの話。
好きな話は第3の男とトゥインクル、トゥインクル、アーサーのねじ回し

大いなる無駄を積み重ねないことには、決して到達はありえない——(P230)

三番目の魔女

表紙に惹かれてふらふらふらと借りるの巻。

すべて奪われた少女ギリーは国で一番の武将に復讐を誓う。武将の名前はマクベス。
シェイクスピアのマクベスを魔女のひとりの視点で書き直した話、らしい。
マクベスどころかシェイクスピア読んだことないのでさっぱりですが。

度々出てくる

私は自分を一本の矢にしてきた、そしてあいつの心臓がその的。私は自分の人生を一本の短剣にしてきた、そしてあいつの死がその納まるべき鞘。

これが好きだ。

苦難の中で生き抜こうとするギリーの強さとか、止められても色んなものを投げ打って幸せになれそうな感じの道が用意されてても復讐するという執着心には恐れ入ります。

読みながら大地をわたる声を聞けを思い出したわー。
あれも10代女子が妹を殺された復讐のため旅に出る話だし。

木洩れ日に泳ぐ魚

朝には別れて別々の道をいくある男女の最後の夜の話。

ユージニアをチョコレートコスモスで割った感じがした。舞台っぽい。
俺のターン!ばりにスポットライトが切り替わって2人の視点が入れ替わって進んでいく感じ。
と書いてたらこういうの他にも何かで見たことあるな、でも舞台は見たことないし(除:人形浄瑠璃)と思って考えてたら「ことのは」の演劇部の話。あれも男女2人でスポットライトな話だ。スポットライトは極々終わりのほうだけど。ああすっきりした。

ことのは (花とゆめCOMICS)

「ことのは」はこれです。



夭逝の芸術家・赤石沢宗隆最後の弟子たちによるエリート集団「赤石沢教室」。兄の死に「赤石沢教室」が関与していることを知り、復讐を誓うあゆみを待つのは…。気鋭が描く、驚愕のサイコロジカル・ミステリー。

bk1内容紹介より

狂気分をがっつり吸収。二人称の小説をあんまり読んだことなかったので新鮮。(恩田陸か宮部みゆきだったかの新聞連載のやつぐらい)
読み始めるまでが長かったんですがそれ以降は一気。ごちごち。

東京・地震・たんぽぽ

地学科のある大学院に進んだ友人はある日こんなことを言った。
「16日に東京に大地震が来るんだって」
そんな噂はしょっちゅうあるしその話を信じたわけでもない。自分が実家帰ってる間に新幹線に乗っている間に地震が起きて脱線して死ぬかもしれないけど。まあ選択してみると実家に帰ってだらだらと過ごし運命の日、16日。

お昼前、関東地方で地震発生。M6強。死亡者怪我人多数。火災も発生している

200ページぐらいの本に14人の話。1つ1つの話はとても短いです。
怖い話だ…… ホラーという意味ではなく色々と考えさせられる。
私が住んでいるところは南海・東南海地震が起きたらまず被害は免れないだろうなというところです。
その瞬間私はどうしてるんだろうなあ、とか。
この前南海地震が発生、津波がやってくるとしたら水位はどこまでかっていうプレートが貼ってあるのをちょっと前に見ました。その辺は土地が低いし海も近いのでまあ当たり前なんですが、水位は私の胸よりちょっと上ぐらいを指してました。びっくりしたというかそらもう死ぬわーとか思いました。

タイトルの東京・地震はともかくたんぽぽは何かと思ってたんですが……
たんぽぽは根の張り方が凄いから(ちょっとぐらい引っ張っても抜けない)災害が起きても復興させて生きていく強さみたいなものかなと思いました。

でもついのすみかとかどうでもいい子は緩やかに滅びゆく世界って感じだなー

少女には向かない職業 (ミステリ・フロンティア)

久しぶりに再読。

「階段にすりこぎ。裏手の道に油。アー・ユー・オーケー?」
「メイビー。……なんだかなあ」 (P69)

脳内のあの男だ……と前はするっといったところでがっと転ぶ。おお……

メイビー
そのころキムタクが主演していたドラマでこの台詞を連発していた

桜庭一樹日記P118脚注

ぽろぽろドール

誘惑に負けて図書館で借りてしまいました。
借りて10日間ぐらいは表紙で満足してた。

えろい。えろいっつーか淫靡。
人形に魅せられた狂気と紙一重だったり、人形が救いとか手助けとかの人たちの短編。
「手のひらの中のやわらかな星」とかに出てきた「lico」なんですがこれブライスかなあ?
ニュースの特集でやってた「大人のための着せ替え人形」でしか知らなくて、今公式見てる。

licoの特徴

なにしろこの人形はせいぜい5頭身しかない。かなりデフォルメされた体型をしているし、目もやたらと大きい。リカちゃんやバービーと身長は変わらないが、頭がとても重そうだ。マンガの中から出てきたようなつくりになっている。手足はばかみたいに細く、とても自分の力で立てそうにない。(48p)

「手のひらのやわらかな星」の咲子はそのまま冬馬と友達になることはなかったと思いたい。冬馬踏み台にして別方向に歩き出してたらいいなあと思う。友達ではなかったけどきっかけとなった人ポジションでひとつ。

「めざめる五月」よりも「ぽろぽろドール」のほうがえろいのは上だと思う。22?23ページの辺り。
つか「めざめる五月」はどことなく加納朋子/コッペリアだ……

「サナギのままで」は製糸工場・女工とかから産業革命?野麦峠?大正時代?とか思ってて戦争は第一次か日露かその辺と思ったけど英霊とかは何か第二次っぽい雰囲気。
豊島ミホでこんな時代がかった話はちょっと新鮮だと思った。

「きみのいない夜には」は一番予想外の展開をし、予想外の終わり方をした。
これが狂気度一番高いかなあ? でもこれが一番好きだ。

「僕が人形と眠るまで」はタイトル見た時点でラストは死亡エンドかなと思った。ラストはどっちなんだろう。世界が好きだったとか過去形で、走馬灯っぽいし、

これ読んだらコッペリア再読したくなった。同じく人形に恋をした人の話。

コッペリア (講談社文庫)

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「人形」がメインになってる小説なんかあるかなあとか思ったら妙にRoman漫画版が読みたくなったのでUJ公式へ(注意:音楽が鳴ります)
さあ往っておいでとえいえんの冬に抱かれて眠る私の子だけでやばい。
音楽つきだったら多分死んでる……

ハンプティ・ダンプティは塀の中 (ミステリ・フロンティア)

「日常の謎」ただし学校の日常ではなく、会社の日常ではなく、留置所の日常。
連作短編なのですが2話と4話が好きだな。ついで1話。
登場人物の名前が何故か皆カタカナなので(日本人ですが)それが読みにくかったかな。
面白かったけど好みからはちょっと外れる感じ。

片耳うさぎ

配達赤ずきんの人の別シリーズ。
題材は凄い好みなんですがあんまり楽しめなかった。

関東北部。とある村。
小学生の奈津は親の会社が倒産して父方の実家に身を寄せることになった。
父の実家は資産家で、近隣の子どもからはお化け屋敷と言われるほどのでかい家。

父は職探しのため家に寄り付かない。母は手術の付き添いのため週末まで帰らない。
今週は大きな家でただ1人。(味方は、という意味で。同居人はたくさん)
色々あって中学生のさゆり(蔵波屋敷に興味津々)が泊まりに来ることになった。

屋敷探検ツアーである最初80ページぐらいはわくわくしたんですが(隠し階段!屋根裏!屋敷見取り図!)それ以降は全く引っかかるところがなく、ここいい!というシーンもなく終わってしまった。

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