カテゴリー「 新書 」の記事

77件の投稿

プールの底に眠る (講談社ノベルス)

2008年と1995年を行き来しながら語られる物語。

2008年の僕は殺人未遂の容疑で留置場にいた。追憶しつつ話は進んでいく。
13年前・95年、僕は裏山で「セミ」と出会った。セミは裏山でロープ片手に自殺しようとしていた。
セミという名前は僕が名付けた名前で、セミは僕のことをイルカと呼んだ。そして幼馴染みの由利、カバの呪い、野球の勝負、セミと過ごす1週間。

ラストは「どういうことなんだ!」というもやっと感はあるけど、95年の話は確かに「いつまでも読んでいたかった」と思うような物語。

プールの底に眠る特設

待ち人にイライラしたり、相手の親が出るかもしれないドキドキ感や、テレホンカードの残数にやきもきしたりすることが、全てマイナスだったとは思えないのだ。
擦れ違いは確かに減った。でも、その分、人との摩擦することも減った。僕らは心を不用意に揺り動かされることはなくなったのだ。

(P95)

V.T.R. (講談社ノベルス)

代々社新人作品である。これがデビュー作ということだ。

というのはさておきスロウハイツの神様作中人物の作家チヨダコーキのデビュー作が出版された。
スロウハイツの神様とはまた別の独立した物語なので未読でも問題ない。

カバーの裏側は別のイラストで名義がチヨダコーキになっていたりあらすじも違ったり作者コメントがついてたり代々社ノベルスの文字とか奥付の日付とか細部までちゃんとコウちゃんの本になっている。
可愛らしい辻村深月ペーパーがついてたりする講談社GJの一品。

読んでいると今までの辻村作品とはどれとも違うからチヨダコーキが実在するような気がしてくる不思議。
つかわたしはスロウハイツとコウちゃんが好きすぎるのでこういう本が出た時点で既に相当満足です。
環とか狩野の気分である。ふっふっふ。あとP68のSがとてもスーである。

もし万が一次があるとしたらあの惨劇の引き金となった「この町が死ぬ時」が読みたいなあと思います。

「よく言われているキーワードだけど、チヨダ・コーキは『絶望』を書くのが巧いんだよね、きっと」

スロウハイツの神様(上) P65

嘗めないでね、俺はこう見えて、意外に執念深いんだ。絶対に、逃がさない。

(P176)

雪迷宮 (幻狼ファンタジアノベルス)

あとがき曰く飛鳥・奈良の風俗を少し意識して平安と中華の要素も入っているけど、地球ではない異世界が舞台。名詞とかは漢字名なんですが不思議と和風とはなんか違う感じのファンタジーです。
恋愛もので一冊完結です。
本宮作品を読むのはこれが初めてで、「かつくらのメールインタビューで自分の読書履歴とキャラ萌え履歴をみっちり書いておられた方」という印象です。

神話の時代、その地には異界に通じる《門》がありそこから異形たちがふきだし世界は緩やかに滅びようとしていた。対策に頭を悩ませた王のもとへ自分は異界を奉じる巫女だと名乗る痩せこけた娘が現れた。
彼女は「異界の門を自分の胎内に封じる」と王に進言した。いずれ壊れる人の身に封じるのではなく血脈で封じるのだといった。
そうして《門》を守るため巫子姫は代々王の妃となり、巫子姫はかならず女児を産み胎内の《門》は娘に譲り渡されてきた。世界に唯一の赤い瞳は《門》を宿す巫女の特徴だった。
時代は流れこれは37代目の巫女の物語である。

封印設定に加えて「《門》は最初にあった場所からあまり遠くへ動かすことは出来なかった」という設定から何となくビーンズの封印の女王を思い出す。でも似てるかと言われれば全くそうではなく、わたしの中では「巫子姫の目は赤い」「胎内の門」から魔女とラフレンツェが飛んでくる。
純潔の結界はむしろ破られるべきなんですが最初の1回で懐妊しその娘が次代の巫女となるため、王以外と結ばれることは許されないのである。

読み始めてみるとなんだか行間が空いてる気がするなあでもフォントサイズは変わらないはず……と思って試しに手元にあった世界画廊の行数を数えてみる。18行。対する雪迷宮は16行。2行違うだけで見た目の「詰まってる感」がこれだけ違うのかと少し驚く。

初恋もえ。
とてもいい本だと思う。面白いしすげえ! とおもった。でも正直小骨が喉に刺さってる感があるのは否めない。
しかしこの本はネタバレを回避しつつ感想を書くのがとても難しい本だ。
すごい話だと思うしご都合展開でもないとは思うんですが、6:4で「ハッピーエンドであること」が残念な感じ。でも面白いんだから不思議な話だなあと。妾がよいね! むしろ雪より妾が主人公でもよかったね!

QED 出雲神伝説 (講談社ノベルス)

気がつけばQEDもこれで16冊目1
今回の舞台は奈良、それと出雲。卑弥呼とかもでてきます。
後半のQED?flumen?出雲大遷宮にはおそらく40代ぐらいになったタタルと小松崎が出ている。奈々はいない。
出雲地方では陰暦10月のことを御忌荒れというそうですよになんかときめく。2

この本は町内の遠足なバスツアーの中で読んでいて、嵐山とか籠神社3とかでてきてそれ今お参りしてきたわ(もしくは今から行くわ)というタイムリーさ加減。本に呼ばれすぎだ。

こういうところだった。

  1. 除・毒草師 []
  2. 神・貴人の誕生・降臨らしい []
  3. このじんじゃ []

翼の帰る処〈2〉鏡の中の空〈上〉 (幻狼ファンタジアノベルス)翼の帰る処〈2〉鏡の中の空〈下〉 (幻狼ファンタジアノベルス)

隠居したいんだけどまるで隠居できそうもないルートを突き進む(進まざるを得ない)ヤエト先生の話。
2巻は1巻比雰囲気がライトになった気がします。とても楽しい。
一度は左遷された身だけど超出世することになったり1超出世したけどやっぱり中間管理職として悩んだりしている。ヤエト先生皇女とかジェイサルドとかどころかスーリヤとかシロバ2にも心配されまくりだ。ちょっと若だんな(しゃばけ)を思い出した。
ヤエト先生は不憫である。幸せになれるといい(※隠居以外で)

《黒狼公》領は砂漠だけにちょっとイスラム圏の匂いがする。
1巻はヤエトとジェイサルドと皇女が好きだったんだけど2巻はルーギン株があがる。割とフリーダムだった。
伝達官は男女の仲にはなれないんですよ。しもい話を軽やかに爽やかに言い切ったりヤエト先生との会話がとても楽しかった。下巻ラストの関節最強王決定戦に笑った。あと皇女が可愛かったです。

皇女は立ち上がり、暫しこちらを見上げていたが、ふいに長椅子の上に登った。挑戦的に見返されてようやく、皇女のほうが少し目線が高くなるからそんなことをしたのだと理解した。
——なんと子どもじみたことを。
呆れていると、皇女は両手を腰に当てた。
「だいたい、ちょっと大人だと思って、偉そうに」

(下巻 P108)
  1. ところで43ページの皇女はとてもいい笑顔をしていると思います []
  2. 鳥 []

おひとり京都の愉しみ (光文社新書)

京都一人旅でオススメな観光地・食(昼/夜)・ホテルが多く載っている。
食の部は財布にはかなり優しい感じで、「これは美味しそうだなあ」というのが多く載っている。
巻末には地図と紹介した店・寺・ホテルのリストつき。
わたしは京都行く時は大抵ひとりでどこで食べようかなあとかは悩むところなのでこういう本は大変ありがたい。

少年陰陽師  異邦の影を探しだせ (角川つばさ文庫)

つばさ文庫版の少年陰陽師を読んでみました。
つばさ文庫版のスレイヤーズはかなり別物になっていたようですが(→うららさんところ参照のこと)こっちはほぼそのままでした。というかあまりにも違和感なさ過ぎて笑った。

変更点はルビの大幅増量と若干漢字をひらくのと、イラスト全般。
イラストはオール描き下ろしでした。同じシーンを描きなおしているのもあるし、新しく描いたのもあり。
ちなみにビーンズ文庫は全8ページでしたが、つばさ文庫版は14枚ありました。単位が枚なのは1ページぶち抜きもあれば1ページの半分の大きさ1のもあるので。

漢字→ひらがなについては雰囲気重視なのか「これがひらかれる(ひらかれない)のか」というのが結構ありました。たとえば「鼈2」はそのままで、「探さなきゃ」がひらがなになっている。
「怨霊が闊歩している」とかもそのままですが、これはひらがなにしたら字面が不細工になるし、そうすることでかえって意味が分からなくなるのではと思うのです。
それなら他のことばに置き換えたほうがよくね?→一部だけ置き換えるならバランスが悪くなるから全体的な修正が必要にならないか→元々子ども向けに書かれている作品をさらに低年齢層向けに書き換えるとか誰得(゚д゚)→これはこのままでいい! という結論に至った。

  1. 縦に半分とか横に半分とか []
  2. すっぽん []

風の導士候補生の試練

花丸ノベルズって書いてあるからBL? BLなのか? と若干戦々恐々として読んでみたらニアホモですらなく、普通に成長物語でした。恋愛成分はなく登場人物は主に男です。
風の導士候補生に選ばれた13歳の少年2人が試験に合格するため旅に出る話。
あとがき曰く「長い話のうちの1冊」「続きを書きたい」ということなのだけど、これが16年前の本でその後続編らしき本も出ていなさそうな感じなのでお察しくださいということなのだろうか。

基本的に魔法魔法してるんだけど科学とか発明品とかが発達しようとしている世界はいいなあとおもった。

角川つばさ文庫版 サマーウォーズ

角川つばさ文庫版のサマーウォーズです。
映画未公開地域なのでDVD出るまでに小説読もうと思ってとりあえずこれを。
映画のほうは映画館まで片道1000円程度で行けるなら見にいったんですけど、上映映画館で一番最寄なのが兵庫の西宮か香川の辺鄙なところだったのです1

読書メーター曰く「映画に一番忠実なノベライズ」ということで、偶然にしてはちょうどいいものを読んだ。
とりあえず分かったことはこれ映像でされた日には確実に泣くなということです。DVD見るときは気をつけよう。感想としては「侘助がやばい。駄目すぎる感じがたまらん」というのと「ばあちゃああああん」である。読んだ後角川文庫版のサマーウォーズを探しに行ったけどどこにも売ってなかったのでまた日を改めて……。

『家族同士、手を離さぬように。人生に負けないように。もし、つらいときや苦しいことがあっても、いつもと変わらず家族みんなそろって、ごはんを食べること。一番いけないのは、お腹がすいていることと、ひとりでいることだから。私はあんたたちがいたおかげで、大変幸せでした。ありがとう。じゃあね』

(P165)
  1. 100キロは余裕で離れております。映画のために超遠方まで車をだしてくれるような心優しい同好の友はおりません。 []

心と響き合う読書案内 (PHP新書)

これはよいブックガイド。
FMラジオでのしゃべりを本にしたものだそうです。紹介されるのは主に文学作品ですが、本読みであれば読んだことはなくてもタイトルは聴いたことある・あらすじ知ってるぐらいの有名どころが割と多いです。たとえば「こころ」「走れメロス」「チャーリーのチョコレート工場」「モモ」「アンネの日記」「ファーブル昆虫記」

まえがきでも書かれてるけど小難しい話は一切ありません。選ばれた本は色んな方面に広がっています。
「なんだね君は」と気になる本が多いこと多いこと。
こういう「この本のここが凄いんだよ」ときゃっきゃしながらすごく興味を惹くというのはすごいと思う。
とても理想的。

PAGE TOP