カテゴリー「 一般文庫 」の記事

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紙書籍のほうは在庫切れなのでkindle版にリンクを貼っておく。最近これtiktokでバズってめっちゃ売れたらしいのだ1
帯が衝撃的(僕の恋人は150人以上を自殺に追いやった殺人犯でした)なんだけど、そこまでセンセーショナルな内容じゃなくて、でもずっと青い蝶が一斉に飛び立つ絵面が脳内で見えてたな……。
凄く面白いけど凄く感想が書きにくい。「ゲームの指示に従って進めていたら最終的に自殺してしまうゲーム」ってちょっと前に現実にそういう自殺教唆ゲームがあるっていう話(なおこれはのちにデマであることが発覚)を見たけどまさにこんな感じ。それだけじゃないけどこんな感じ。

小学生の頃から人心を把握して操作することに長けており、誰からも愛されるクラスの中心人物、青い蝶(ブルーモルフォ)という自殺教唆ゲームのマスターをしていた寄河景とその幼馴染宮嶺の、特に寄河周りは極々最近でいうと同人女の感情の綾城さんと点対称っていう感じ。寄河は分かったうえでいろいろやっているし、綾城さんは自覚の有無は描写されていないけど同じぐらい人を動かしている。

誰に対してもどれぐらい「景がそう思うように仕組んだことなのか分からない」ところがすごいよな。人間の自由意思とは。

  1. って斜線堂さんのtwitterで見た []

母子家庭で育った由奈はここ半年放課後に病院へ通う生活をしている。入院中の母を見舞うためだ。病院までそれなりに時間がかかる距離だったけど週3回は行くのは義務として自分で決めた。
由奈の母愛理はスナック勤めで誰からも愛されていた。今思えば貧困家庭だった由奈はそんな風に「母がお客さんに愛された結果」節目節目で必要なもの、例えばランドセルや制服は初対面のお客さんに買い与えられて育った。でも由奈は「男に頼って生きている」母ののことが嫌いで、そのせいで「何事もきっちりする」「人に頼らない」性分として育った

母の死を知らされたのは、状態が安定しているから面会の回数を減らそうかなと思ったり多少遅れていっても大丈夫だろうと思っていた日だった。そして葬儀の場で「1人になった由奈は誰が引き取るのか」問題が勃発していたところ父親だと名乗る男が2人現れた。
金髪で強面の竜二、眼鏡で硬い仕事の秋生。2人とも母から「黙っていたけどあなたの子供に子供がいる」という手紙を受け取っており、親戚一同は2人に由奈を押し付けて方々へ散った。
しかし由奈は「母と暮らしたこの家で暮らす。どちらにも引き取られない」「どうしてもいうならそっちがこの町に引っ越して来い」と啖呵を切り2人とも本当に引っ越してきた。
母と暮らした築60年のボロアパートに。

序盤の方から物語のゴールとしては第3の、真の父が出てくるんだろうなと思っていたので、そこに至るまでどういう道をたどるのかと楽しく読んだ。一緒に暮らすことは認めても、家賃生活費を受け取ることさえよしとしなかった由奈が、父候補2人とどうやって交わっていくのか、知らされていなかった母の過去などが丁寧に描かれていてよかった。

でもこの本を投げようかと思ったのは「坂口ディーン」という芸能人(中高年に人気のアイドル俳優)が思いのほかがっつり物語に関わってくることで、なんでこの名前にしたのかと多少いらついた。ディーン・フジオカがちらついてしょうがなかった。しかも謎に「坂口ディーン」と、何度もフルネーム呼びをされていてあまりいい役柄ではないので不思議とフジオカsageをされているような気分になる。わたしはディーンフジオカのファンではないが、ご存命の人間を想起させる人を出す場合は立ち位置を注意してほしい。
そこが無理という以外はよい王道疑似家族もの。でも登場するところがあのへんじゃなかったら読むのやめてました。

なんかすごいものを読んだぞ。そうだよわたしが夜市を読んでこの人すげーーーな! って思ったのはこういう作風なんだよな。短編集で、共通点としてはどの話も閉鎖されたというか閉塞したというか、なんせ異界での話だ。異世界じゃないんだよなこれは異界なんだよな。幻想小説だ。わたしは幻想小説はジャンル的にあまり読まないこともあって「同じ箱に入ってる作品」というのが恒川作品の場合まじでない。恒川光太郎ジャンル恒川光太郎だ。あえていうなら夜市とか秋の牢獄が好きな人は多分好きってぐらい。
なんせ読み始めて最初にテンションが上がったのは無貌の神の、血まみれの男が神に飲み込まれたところだ。死神と旅する女の「放棄された世界」の空気も好きだし12月の悪魔のおっそろしく「白い闇」って感じのラストも好きだ。

ハッピーエンドとかバッドエンドとかはっきりした終わりのものが好きな人にはあんまり積極的には薦めないんだけど、私はあっこれ好きって感じ。例えば真夏にセミの鳴き声を聞きながら道を歩いていたらとても日本とは思えないところに迷い込んでそのままなのか無事元の生活に迷い込んだのか分からないままに終わる、みたいなのがハッピーかバッドなのかって言われたら分からんけど、そういう絶妙な「カーテン1枚向こう」の世界の空気を吸える小説はすごいと思うんだよな。

5月22日に公開予定だったけど延期になって絶賛調整中の「映画『小説の神様 君としか描けない物語』」の関連作品でラノベ周りに携わってる人(書店員とか読者とか書評ブログの中の人とか)の話だ。
アンソロジーなのでいろんな人の作品が読める。寄稿者は相沢沙呼・降田天・櫻いいよ・芹沢政信・手名町紗帆・野村美月・斜線堂有紀・紅玉いづき(敬称略)。手名町さんだけは漫画で、この方は小説の神様コミカライズの方。
どの作品もこう、身に覚えがあるものとか、あーーー怖っってなるものとか(ホラーというではなく背筋が寒くなる感じのあれだ)あって、読後感がサエズリ図書館のワルツさんの2巻。あの本はきれいな紅玉さんのよそおってあっちこっちから鈍器を持ったポケモンがゲリラのように飛び出してくる。凄い勢いでぼこぼこにしてくる。
この本はそこまでアグレッシブじゃないけど斜線堂有紀さんの「神の両目は地べたで溶けてる」とか身に覚えがありすぎるんだ。お前は俺か案件。突然僕に話しかけてきた岬布奈子は作家水浦しずガチ勢だった。布教アカウントがあり、作家に貢献するためには買うのが一番だといい、

「だから私らが水浦しずを陽の当たるところに連れ出さなくちゃいけないんだよ、誰も知らないけど、私は見つけた。私が見つけたんだ」
岬の言葉はレビューと同じくまっすぐだった。僕が何を言おうと、全く揺らぐことがない。

(P255)

「ポエムを書けって言ってるんじゃないんだよ! レビューっていうのは宣伝なの! 水浦しずの名前を検索する新規読者を逃さないようにするんだよ!」
「絶対その努力の方向性は間違ってるって! 岬の思いは一周回って不純になってきてるだろ……」
「不純でも何でもいいんだよ! このレビューで水浦先生を好きになる人がいればいいの!」

(P258~P259)

岬布奈子の主張圧倒的にわかりみしかない。

あと久しぶりに遠子先輩に触れたり紅玉さんのはただのあとがきだった。
神様の探索はあれを読んだうえでこれはその正体そこかって目玉が飛び出た。

19世紀、ヴィクトリア朝ロンドン。
この時代は科学の時代であると同時にオカルトの時代だった。

社交界に浮名を流すエリオットの通り名は「幽霊男爵」だ。オカルトに目がなくロンドン中の心霊絡みの案件によく顔を出している。顔を出す理由として、実のところは「幽霊が見えているふり」で人をだます輩を叩き伏せるためだ。沈黙の交霊会、ミイラの呪い、見える少女、天井桟敷の天使、様々なオカルト事案が幽霊男爵エリオットとその従者で人形だと自称するコニーの物語だ。

何度でも言うけど顔がいい。具体的にどこが好きかって「修道院と愛の誓い」のレディ・リリアンお気に入りの中庭のシーンだ。新生児から10歳ぐらいまでの子供の幽霊が密集しているシーン。いいよねそういうの。黄昏の楽園1みがあってとてもいい。リリアンは死者を「天使」だといい素敵だという。
というか誤解を恐れずにいうと、エリオットはPixivにいる燭台切光忠みある。伊達男を感じる。

この「私が嫌いなはずがない」というエリオットの設定を見てほしい。

生者も出るが同じぐらい死者も出る。死んでるとはかたくなに認めない人もまだあちら側に行くわけにはという人もいる。空気感が好きなんだわ。さすが裏切らない。
好きなセリフはアレクサンドラの

「いい男に育ったわねえ、エリオット。私の『剥製にしたい人間の男』暫定一位よ」
「生きているほうがいい男だと言われるように、もっと話術を磨きます」

(P184)

だ。

  1. Linked Horizon「楽園への進撃」収録 []

谷中びんづめカフェ竹善 2 春と桜のエトセトラ (集英社オレンジ文庫)

谷中で一人暮らしをしている女子大生紬はきょうも実家からの野菜を持て余してとある店のドアを開いた。
びんづめカフェ竹善というその店はいろんなびんづめの保存食を商うカフェであり、店主はイギリス人のセドリックだ。ひょんなことから紬はセドリックの息子武流の家庭教師をすることになって……という1巻からの2巻。ちょっとした謎が明らかになったりちょっといい話をしたりする方向。
これも料理ものでもあるんだけど、ストレートにいうならわたしはおいしいベランダの方が好き。
なんだろうなー悪くはないんだよ。悪くはないんだよ普通に面白いんだけど、普通なんだよ。

猫だまりの日々 猫小説アンソロジー (集英社オレンジ文庫)

猫がテーマのアンソロジーです。はなからいうけど5作入っててこれいいなと思ったのは1作。
というか5作もあって「人語を解する神社猫」か「転生」の二択なのはどういうことだ?

最初のハケン飯友はおっちょっといいなと思ったけどこれハケン飯友の導入作なんかなと思うぐらい何も始まらないままに終わる。

唯一いいなと思ったのは「神様はそない優しない」(一穂ミチ)
こてこての関西弁(尼崎出身)の猫の一人称だ。ネコはもともと人間だった。ある夏の日、混雑したホームで背中を押されて転落した。気がついたら猫だった。ネコに生まれ変わった俺を拾ったのが未亡人となった元嫁だ。
方言ベースで書かれた小説とかドラマCDってこれが「母国語」の人が書いてないことが多くて気持ち悪ーってなることがまあまあるけどこれはそういうのなかった。なんか落語みたいな語りを聞いてる気持ちで読んでた。丁寧な「人間だった猫の思考」描写と加齢と意外な展開。これに関してはとてもよかった。

まあ究極の選択やね。嫁にあてがわれた別の雌とつがうか去勢されるか。結果的によかったとは思うんやけど、麻酔覚めたら傷口じくじくしてなあ、痛がゆうてたまらんのに、あのエリザベスカラーゆうんか? 頭に朝顔みたいなん巻かれてぺろぺろもできへんし、何せあの見た目、間抜けすぎるやろ? 何がエリザベスじゃボケ。意気消沈、心が右肩下がりで先細っとった。すべてにおいてテンションが上がらんのよ。えらいなあいつ、司馬遷やったっけ? 宦官にされてもごっつい歴史の本書き上げたんやから。そのガッツどっからくんのん? めっちゃ尊敬するわ。本、1行も読んだことあれへんけど。

(P190)
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