なんかすごいものを読んだぞ。そうだよわたしが夜市を読んでこの人すげーーーな! って思ったのはこういう作風なんだよな。短編集で、共通点としてはどの話も閉鎖されたというか閉塞したというか、なんせ異界での話だ。異世界じゃないんだよなこれは異界なんだよな。幻想小説だ。わたしは幻想小説はジャンル的にあまり読まないこともあって「同じ箱に入ってる作品」というのが恒川作品の場合まじでない。恒川光太郎ジャンル恒川光太郎だ。あえていうなら夜市とか秋の牢獄が好きな人は多分好きってぐらい。
なんせ読み始めて最初にテンションが上がったのは無貌の神の、血まみれの男が神に飲み込まれたところだ。死神と旅する女の「放棄された世界」の空気も好きだし12月の悪魔のおっそろしく「白い闇」って感じのラストも好きだ。

ハッピーエンドとかバッドエンドとかはっきりした終わりのものが好きな人にはあんまり積極的には薦めないんだけど、私はあっこれ好きって感じ。例えば真夏にセミの鳴き声を聞きながら道を歩いていたらとても日本とは思えないところに迷い込んでそのままなのか無事元の生活に迷い込んだのか分からないままに終わる、みたいなのがハッピーかバッドなのかって言われたら分からんけど、そういう絶妙な「カーテン1枚向こう」の世界の空気を吸える小説はすごいと思うんだよな。