カテゴリー「 単行本 」の記事

723件の投稿

赤い月、廃駅の上に (幽BOOKS)

鉄道縛りで怪談話の短編集。中には三途の川を渡るのが列車だったり百物語だったり色々。
表題作の「赤い月、廃駅の上に」が好きだ。赤い月が一番雰囲気がすきなのだ。
次点が黒い車掌。

「ダイダイって……ああ、橙色の橙ですか。鬼月というのは、鬼の月?」
「そうです。恐ろしげな名前でしょう。邪気を招くというて、縁起がよくないとされる月です」
「悪いことの前触れですか?」
「よろしくないものがくるので、家の外に出るなとか言われています。古い迷信ですよ。それでも田舎のことですから、気にする人もおります」

(P205)

残される者たちへ

ある日方野葉小学校同窓会の知らせが届いた。
もう既に廃校になっているが、方野葉小生の多くは方野葉団地の住人だった。
川方準一(37)は同じ小学校卒の人間が一同に会するその会に出席することにしたが、幹事「押田明人」という名前にまったく聞き覚えがなかった。別の学年の人物だと思っていたが実際に行ってみて、同級生の話を総合すると自分と押田は(途中で転校したとはいえ)1年半のあいだ一緒のクラスで過ごした、しかも昔の住んでいた家の向かいの住人だという。生まれたときからのお向かいさんだっただろう押田のことをまったく覚えていない。
準一は同じ団地の2階下の住人だった未香(35・精神科医)と一緒になくした記憶を探しに方野葉団地へ向かった。方野葉団地には現在未香の患者である芳野みつきがいるのだ。団地に呼ばれるかのように2人は団地へと向かった。

あらすじは未読でしたが、辻村深月が帯文を書いていた覚えもあったので最初のほうを読んで「冷たい校舎の時は止まる」みたいなミステリなのかなーと思ったらそうじゃなかった。中盤までは不吉な雰囲気がとても好きだったのでえーってなった。
終盤に触れてるので一応隠しします。

なんかこう、超不可能な密室殺人! 犯人はドラえもんのようなものがどこでもドアのようなもので乱入して射殺!これはこういうものなのでこれ以上の説明はしない! みたいな。

もうちょっと不思議な話なりの説明がなされるんだと思ってました。

思い出した。同じ棟の二つ下の階に住んでいた下級生の女の子。僕のことをそう呼んで慕ってくれた女の子。
お世辞抜きできれいになったその顔に、確かに当時の面影を見つけることができた。それなのに。
会場でみんなと談笑している押田明人の顔が浮かんできた。
どうしてあいつが思い出せないんだ。

(P28)



「変人揃いの洋館アパートといえば鳥篭荘だな!」といってるときに「変人揃い洋館アパートといえば望楼館」という声があって手を伸ばしてみる。
すごく変だ!(褒めことば) 思ったよりずっと厚かったし、海外モノは不慣れなこともあり読めるかなあといざ読み始めてみるととてもおもしろい。
望楼館は24世帯が暮らせるように設計されていたが、住人を慄かせた「18号室の新しい住人」がやってくるまでは七人のだけだった。ぼく、フランシス・オームはどうにかして新しい住人アンナ・タップを立ち退かせたかったが、アンナ・タップは住人の心に入り込み、住人は追想にふけ語った。凍りついた時間は動き出し館に変化が訪れる。

凄く変なのである。変だけどおもしろい。

望楼館の住人は、少人数の風変わりな仲間だった。いや、ぼくらに共通しているのは同じ建物に住んでいるということだけだったので、仲間という言い方は正しくないかもしれない。ただ、ひとりでいる時間が長くなればなるほど人は気難しくなるものだから、長いあいだ孤独に暮らしてきたぼくらはどこか似通ったところがあったかもしれない。(略)彼らは自分自身から逃れたいと思っている。肉体からだけでなく、その過去、現在、未来から逃れたいと思っている。つまり自分とつながりのあるものはなにもかも、永久に忘れてしまいたいのだ。

(P15?P16)

我慢なんかできない! わたしを自由にさせて! わたしにさわらないで! わたしは生きている! 死にたくなんかない! そんなところに座ってないで、動いてよ! お願い。人間だってところ、見せてよ。フランシス、動いて。話すのよ。だれでもいいから!

(P455)

喋々喃々

食堂かたつむりに続く第2作。かたつむりよりこっちのほうが好き。しかしやっぱり雰囲気重視なんだな。
関係を気にせず読むならほんわかしたいい恋愛と下町の日常話。
実際は何でもっとどろどろしないのか不思議なぐらいの突っ込みどころのある小説だった。
かたつむりもそうだったし、これはもうそういう作風なんですと思うしかないのかも。

舞台は東京谷中。
アンティーク着物の店「ひめまつ屋」を営む横山栞はお正月のある日、父とよく似た声を持つ木下春一郎と出会う。彼は初釜に着ていく着物がほしいということでひめまつ屋を訪れたのであった。左手の薬指に指輪をしている男性だった。
栞は店で一人暮らしをしているが、父母は離婚済みで、父は再婚して山中で自給自足のような生活をしている。母は都営住宅で栞の妹花子と、異父妹楽子と一緒に暮らしている。栞はひめまつ屋営業を終えた後様子を伺いにいったりしている。

食べ物の描写がよいです。とり鍋天丼からあげ黒糖焼酎焼き鳥みつ豆お惣菜、食堂かたつむりよりよっぽど身近な食べ物が増えました。酒飲んでるところが地味に多いですね。「谷中はいいところですよ」みたいな描写もとても多いのでいつか行ってみたいなあと思うところでした。

しかしどうしようもなく気になるのは栞と春一郎の関係。浮気です。妻子ありです。
でも2人とも独身です、ていうか恋なんて初めてですとでも思うような初々しさ。やることはやりますが。
以下一応一応隠します。
春一郎本宅と谷中は別次元の空間みたいに春一郎の嫁の存在感が希薄。栞も春一郎も真面目な割には罪悪感的なものは感じられないし。最初は指輪は一応つけてるだけで嫁は実はもうお亡くなりになっているのかと思うぐらい早々に告白だった。
雪道嫁がはがきを持ってきたシーンで、名乗るまでは「ついに本妻が泥棒猫チェックにきた(゚∀゚)」とときめいたのに。最後は栞が春一郎と完璧に別れて新しい日々を送ることを決めるか、春一郎が離婚を決めるかの二択かと思ったのでえーーーそこで終わるんだ!って思った。

イッセイさんがiPhone使ってたから吹いた。
Twitter上の所持率が半端ないから実際の普及率がよく分からないがiPhone教は確実に存在すると思う今日この頃。ちなみに友達は9割ドコモです。

注文してからわずか数分で、見事な天丼が運ばれてくる。
「すごいボリュームですね」
「若いんだから、いっぱい食べろ」
どんぶりには、どこから食べていいのか途方に暮れるほどに、立派な天麩羅がこぼれ落ちそうになって入っている。海老、穴子、烏賊のかき揚げ、獅子唐。私は海老からかぶりついた。サクサクでカリカリの衣にくるまれた立派な海老からは、活きのよさが伝わってくる。しっかりと甘辛いタレと、とてもよく合う。箸で天麩羅をかき分け、ご飯も口に含む。
「幸せです」

(P157)

孕むことば

妊娠出産育児と翻訳・文学・ことばをからめたエッセイ。
40歳ではじめて子ども(娘)を産んで4歳になるまで。翻訳のココロのほうが好きだったりする。

好きなことさえ見つかれば、きっとアンパンマンがその夢を守ってくれるのだろう。好きであることが大事。自分にあった仕事にしよう。優劣を競うな。ナンバーワンよりオンリーワンを目指せ。

(P103)

日本の経済と雇用の平和を守ってよアンパンマーン。
ちなみにこの後は好きにしなさいと言われ夢がうまっているよと煽られるだけはしんどいのではないかーと続く。

物の本によれば、不謹慎な、汚い、エッチなことばを、言ってはいけない場で言ってしまうのは、「汚言症」というらしい。言語の正常な発達過程で4?5歳ごろの子どもにも、そういった傾向があらわれるという。

(P134)

うつ歴十年、色恋妄想

タイトル通りのエッセイです。そんなに明るい方面ではないけど妙に惹かれるものがあったので……

布団かぶり、とも称している。うつが来たら文字どおり、寝床から出られなくなる。いったい今度で通算何百回目だろう。(略)軽いときには長風呂や長散歩、幸運なら半日ほどの布団かぶりを経てうつは遠のく。原稿も下書き程度なら書ける。が、重くなるほど薄い眠りと濃い不安感と、深い絶望感とに交互に襲われ、ひどくなると一日二十時間くらい布団から出られない。

(P8)

こんな感じで始まる。
入眠エスコート(シマシマ みたいな感じ)は商売として成り立たないかと考えたり、旅先(海外)で会う予定の彼氏にドタキャンされて、ファミリーとカップルが泊まる部屋にはさまれて「もうひとりで○○するのは嫌だ!」と延々書き殴ったり、北米の自殺防止センターに電話をかけたりとても赤裸々だったりする内容でした。ちなみにうつ病の完治が本の終わりではないです。

再婚生活をちょっと思い出した。
再婚生活はここまでではないけど。

彼女は、わたしが泥沼の底から這い上がる間ずっと伴走してくれた。ゆえに、再びわたしがへこむのを想像したくないのだ。うんと若かったり、場所が離れていたりする相手に惚れた挙げ句、恋煩いが重篤状態に陥ったり、あっさりフラれてうつ地獄へ逆戻り。そんな展開を恐れるが故の助言と解釈している。

(P177)

めっちゃ心当たりある、と思った。(友達がここ数年このパターンなのだ

刺激的生活

生活に根付いたエッセイだった。
検査とかゴミの分別とかジムに入会すること数度にわたるとか洗濯乾燥機と戦うとか。
軽く読める。おもしろい。

が、その先、五十キロはどうしても割らない。体重計の針が五十以上に固定されてしまったかのように。
十の位が常に四であり続けたのは、過去のことか。2度と還らぬ数字なのか。

(P78)

みみがいたい。

伊坂幸太郎×斉藤和義 絆のはなし

対談とか年表とか仕事風景とかそんな感じの本。
どういう人なのか知りたいよ、みたいな人は読むといいかも。

対談2本収録されてて、それぞれゴールデンスランバーが書き終った所と出版後ぐらいの時期。
ゴールンデンスランバーが本屋大賞受賞したときの、どこかの新聞に載ってた万城目学さんのエッセイで「桜庭さんが『伊坂さん可愛い!』ってキャッキャウフフしてたー」って感じのことを書かれてた覚えがあるんですが、ほんとうになんか、伊坂さん可愛いです。
最初のほうはなんか「どれぐらい斎藤さんのことを好きか」について喋ってる気がする。

斎藤さんのほうは「知らない人だ……」って思いながら読んでたけど最後のほうのページで「歩いて帰ろうとかもそうですけど」ってあって、むむ?と思って脚注をみてみたら「ポンキッキーズで起用され」とある。
歌歌えるぐらいには知ってるよーーーー!って思った。テンション上がった。
しかし次のページで対談は終わりである。しょんぼりした!
あと歩いて帰ろうで脳内再生候補が後ひとつあって、そっちは高音女性声で、なんだこれはーとしばらく考えてたらボイパが入ってきたのでぽち@ハモネプだーーーーって分かった。

——女性で好きなタイプ、苦手なタイプというのはありますか?
伊坂 メールで絵文字や顔文字を使うのは、嫌悪というか嫌いで、使っていなかったんですよ。でもこの間初めて(斎藤さんの曲を聴いて)編集さんに「斎藤さんの曲、すごくかっこいいですヽ(´▽`)ノ」って送りました(笑)。何でもかんでも使うんじゃなくて、ちょっとしたニュアンスを伝えるのにはいいかもしれません。

(P50)

伊坂 自分の仕事はあくまで小説を書くことだけですし、映画の力を借りて爆発的にヒットしたい!とか、そういう気持ちもないですし(笑)、映画の原作を書いている人って思われたら、つらいと思うんですよね。だからなるべく、映画になることで自分の仕事に影響がなければいいなあ、と最近は思っています。

(P103)

——斎藤さんの仙台のライブのときに、伊坂さんがファンから「伊坂さんですよね」って声をかけられていて、「よく言われるんですけど違うんですよ?」っておっしゃっているのを目撃してしまいました(笑)。
伊坂 本当に(人前が)怖いんですよ。

(P105~106)

船に乗れ!〈1〉合奏と協奏

これはいい青春音楽小説!

語り手は大人になって随分経った後の僕、津島サトル。
サトルは音楽家一族(音楽家でないのはサトルの両親のみ)の中で育ち、走れるようになるぐらいにはもうピアノの前に座らされていた。中学の頃はピアノはやめてチェロをはじめ、芸術高校入学を目指して必死に練習と勉強に励み、ニーチェに傾倒して、心の中では下位を見下ろす上位の人間のつもりだった。いい中二である。
そして結局は芸高受験は失敗し、祖父が学長をしている学園の高等部音楽科に通うことになる。
幼稚園から大学まであるけど共学は大学と音楽科のみ、今年の男子音楽科受験生は7人のほぼ女子校学園。

サトルのいい中二病ぶりにときめきすぎたよ!
一緒に下校する友達がいないのも昼休みにクラシックのCDをかけようとしてしらけられたりするのは彼らが僕のレベルについてこれないだけで、彼らに同情する必要はないし高貴な人間は自分を基準に物事を判断する、とニーチェを読んで理解した(と思いこめる幸せを持っていたとのちに現代のサトルは語る)

オケ合宿での鏑木先生の怒鳴りぶりがすごい。のだめSオケ編の千秋なんか目じゃない。
全員が同じテンポで弾ける、楽譜通り弾けることなんて当然、それどころか指揮者の要求に応じられることができることが求められている。しかしオケ結成してからまだ数ヶ月のオーケストラである。今日できたことが明日もできるとは限らない。だから「音が出なけりゃ出るようになるまで一人でやってこい!」と罵倒され「時間の無駄だ」「ポンコツオーケストラ」と失望される。

難敵難曲にぶつかって叩き潰されても立ち上がって成長していく姿は10代ならではですね。
オーケストラ発表会にホームコンサート、祖父の弾いたバッハの曲の意味とか眩しすぎます。

現代のサトルにいたるまでいかなる挫折があったのか続きがいつ出るのかすごく気になるところ。
2巻への引きもありますが、1巻だけでも十分まとまっています。
「さよならピアノソナタ」が音楽小説として好きな人にはとてもおすすめしたい一冊です。

恋というのはうじうじして神経質で無意味で、馬鹿げた妄想に満ちており、食事もチェロの練習も睡眠さえも、どうやってするのか忘れたようにぎこちなくなって、誰もなんにもいわれてないのに、恥ずかしくなったり腹ただしくなったりする、そんな陰湿な感情の総体だ。

(P156)

「こんなの私、一回で完璧に演奏できると思ったんだもん! こんなに間違えるなんて思ってなかったよ! ちっきしょー」
南は憤然とヴァイオリンを構えた。
「もう1回。次は絶対合わせる!」
僕もメトロノームを動かして、弓を弦にあてたが、引き始めようとして吹き出してしまった。

(P198)

CHICAライフ

ユヤタン面白かったよな……と思って再度借りてくる。
そしたらその日の夜のついったーがユヤタン祭りだった。何なの予知なのっておもった。
タイムリーで凄くびびった。

笑えるエッセイを好きな人に。あと佐藤友哉ファンにも。だめんず率たかいです。

さらには美術館や映画館に行ってもチケットを買うことができない。待ち合わせ場所が分からなくても交番や通行人に聞けないので、しょっちゅう道に迷う。知らない番号の電話には絶対出ない。美容院などもってのほかで、髪型はすべて自前なため、素人のくせに妙にカットが上手い……等々、その極端さは日常生活に支障をきたす域に達しているのだった。

(P127)
PAGE TOP