カテゴリー「 単行本 」の記事

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海馬が耳から駆けてゆく

これがはじめてのエッセイだったらしい。11年前だった。菅野さんまだ27歳だった。

わたしがエッセイでなにを愛するかというと身内ネタである。家族ネタである。
もっというならきょうだい(姉弟・姉妹・兄姉弟ならなおよい)ネタだ。母と娘もおいしくいただける。
そんなわけで家族ネタが大変多いこの本はとても美味い。
あと11年前の本なのにあとがきで「インフルエンザの日本上陸を阻止します」とかいってて、歴史は繰り返すとかおもった。

 今このエッセイを読んでいる読者さんに、純真な中学生はいるだろうか。どうだろう、君の女友達が、君の好きな男の子と二人きりでバイクの修理に出かけてしまったら。女友達は君がその男の子にメロメロだとよく知っているんだ。ちっとはぐれるだろ?
 でもね……大人になってしまうとね……昼日中に二人で出掛けたからってなんだっつうのよということになってしまうんだよ……。

(P124)

言われてから気づいたよわたしもそんな青い心はいつの間にかなくしてしまったよ!
飲み会にいっても私は青いときの話(誰が好きだったとか)はほとんどしない。そんな話をする子は幼小中高一緒で特に高校は3年間クラスも部活も一緒だったので多少のヒントで特定余裕なのである。やばい。

姉弟の間には、親には絶対に言えない秘密というものが沢山あるのだ。
「き、貴様それを言うか……っ。俺だってみんな知ってんだぞ。おめえは(本人の名誉のため——以下同文)」
「ああっ、それを言ったわね! あんたの補導回数は、本当は2回じゃないのよね!? シンナーだけはやんなかったのが唯一の自慢なのよね!?」
と、喧々囂々姉弟は醜い骨肉の争いを繰り広げた。
気が付くと母が、遠い、遠い空の彼方を見つめている。
「……刑務所にだけ入らないでくれて、本当にありがとう」
「い、いや、そこまで言われるほどのことでは……」
「ついでに、これからも入らないでくれると本当にありがたいんだけど」
「恐れ入ります」
恐縮して姉弟は、思わず頭を下げた。

(P183)

荒野のヒース、荒野に咲いた一輪の白い花。たおやかで可憐な白い花のようなその人の名を、それでも憚らずここに記そう。
ウッチャン。う……内村光良である。ウッチャンナンチャンのウッチャン。……ちょっと恥ずかしい。荒野とは主に南原清隆のこと……。

(P211)

三匹のおっさん

定年退職後嘱託職員として再就職した清一(通称キヨ)、居酒屋元店主重雄(通称シゲ)、機械いじり大好き工場経営則夫(通称ノリ)。まだまだ爺のカテゴリには入らんぞ(゚д゚)ウラァーーと仕事後終電ぐらいまで町内の安全を守るため見回りをはじめた。

キヨと孫祐希の交流はイイデスネ。
心温まる仲良し祖父孫には程遠いけど(誰が仲良しだばーか(゚д゚)とか言う二人です)

人知れず町内の安全を守る祖父世代の勧善懲悪と孫世代の恋愛物語……だったりするのですが、揉め事の内容とか悪が凄かったです。嫁姑対決とか強姦未遂とかゲーセン強盗とか動物の虐待とか、1ヵ月後?数十年後の自分とか今現在の隣近所で起こっていてもまったくもって不思議ではなかった。
新聞に載るとしたら地域欄の数行にしか満たない程度の、でも生々しくてすごく現実味を帯びた悪だった……

4話はちょっと鬼籍通覧とかぼくのメジャースプーン思い出したな……

不健全な精神だって健全な肉体に宿りたいのだ〈3〉

1巻の時点では確か結婚を目指して頑張ってみたり、断食してみたり、ヨガとかフィットネス方面を体験してみたりとかそういう内容だったんですがこの巻はかなり体育会系……

芦ノ湖ウォーキング(22キロ)に参加してみたり9時間かけて縄文杉に会いに行ったりピラティス体験してみたり。ピラティスが整体+運動と聞いてちょっと興味を持った。やべえとか思ったのは明日すごくいい天気の中朝から超長距離歩くよって分かってるのに、深夜までだらだら酒を飲む→翌日二日酔いコンボ。

溶けてなくなりたくなるような、ピーカンである。
わざわざ書かなくてもいいようなことだが、私たちがただの旅人ならいいさ……けれど昨日さんざ飲んだ朝八時半から芦ノ湖畔を一周する人……ねえ何処の誰? こういうイベント企画する人!! 私も鈴木も椅子に根が生えてるの抜いてきたから、ちっともこのピーカン有り難くないよ!

(P138)

わくらば追慕抄

昭和30年代の人やものの記憶が見られる姉さま(鈴音)と私(和歌子)の話、2巻。
姉さまと同じ力を持つ薔薇姫こと御堂吹雪。怪しげな宗教団体。記憶喪失の女性。
薔薇姫は今回は主に登場の巻という感じで、姉さまとの繋がりが分かったりどういう人なのかとかそういうことが分からないのでそれは今後に期待。
わくらば日記のころから順調に年を重ねて最後の話では和歌子は高校生、姉さまは20歳を目前に控えている。物語の最後は姉さまが視る最後の事件になるのかもしれないと思った。

「夕凪に祈った日」は読むとだんだんへこんでくる。しょんぼりした。

「お母さんっ」
傾いた甲板を滑るように落ちていきながら、男の子は叫んだそうです。
「いい子になるよっ いい子になるから助けて!」
その声は激しい風にちぎれ、耳に届かなくなったそうですが……(略)

(P304)

恋文の技術

書簡体小説。
asta*でリアルタイムで追いかけてたのに大分笑った。
とてもアホだった(褒め言葉)大塚さんは強い。守田妹はすごい。
守田とか小松崎とかOPPAIに興味を示しすぎだった。

君は二の足は踏んでいるが、俺も桃色映像を断つのはおすすめしない。ただでさえ理性を失っているところで、欲望の捌け口を失えば犯罪に走るかもしれん。汚れた心は今さら清くならないのだから、桃色映像を我慢するのは百害あって一利なしだ。

(P15)

れんげ荘

45歳独身キョウコ、初めての一人暮らし。
それも稼ぎに稼いでいた広告代理店を退職して月3万のぼろぼろアパートれんげ荘で隠居生活。
話の途中で生活の転機があったり新たな展開があったりそういうことはない。

生活費は働いている間に溜めた貯金。1月10万で暮らせば80歳までは余裕で生きられる計算だ。
梅雨時は湿気に悩まされ夏は蚊の襲撃秋冬は隙間風。
たまに会わなくてはいけないそりの合わない母。そんなれんげ荘での日常。

プリンセス・トヨトミ

万城目学今回のはったりの舞台は大阪城周辺。

5月末日の木曜日、大阪が停止した。
病院・都市のインフラに関わる産業など特定の産業に関わるものを除き商業的な活動は停止し、地下鉄ほか交通機関も停止した。
物語は大阪が停止する10日前、東京から訪れた会計検査院第6局の3人が大阪に降り立つところからはじまる。面白いんだけど、それはあくまで大阪城が赤く燃えてからの話で、それまでが長い。中学生パートはもうちょっと少なくてもよかったんではないかなあと思った(特にTS方面

ラノベ風に言うと万城目学版デュラララ!っぽいなとおもった。
ダラーズみたいに来るものは拒まずではないけど。

道頓堀の清掃業者は、早朝「かに道楽」の店頭に飾られている巨大カニのハサミに、発泡スチロール製の巨大なひょうたんが突き刺さっているのを見つけた。戎橋を仕事帰りに歩いていたホストたちは、あくびがてら道頓堀川に臨むグリコのネオン看板を見上げたとき、中央の陸上選手が広げる手のひらの上に、大きなひょうたんの絵が貼り付けられていることに気がついた。

(P377)

妖怪アパートの幽雅な日常(10) (YA!ENTERTAINMENT)

道は一つではないし可能性は無限に広がっているというのはシリーズ当初から言われていたことではあったけどこの終わり方は予想外だった。
妖怪アパートを出て行くときが物語のラストだと思っていたのだった。

冒頭に出てきたクエ鍋はまじ美味いです。
よそではどうか分からないけどこちらでは冬になったら5000円ぐらいのコース料理の一環でクエ鍋がでてくるのだ。去年は「クエ鍋食べに行こうぜ忘年会」を企画した私です。

しかしなんだか複雑な気分だ。
長谷ENDと千晶ENDを両方見せられた気がして微妙……今まではスルーできたのに! できたのに!

やおろず弐 でこぼこな恋、始めました。 (Regalo)

1日1編ずつ読んでた。すごく笑った。
今回のベストヒット神さんは電子レンジかな……
「わたしは空気の妖精シルフィード!」とあの絵にときめきすぎた。
好きな話は招福の段とマレビトの段だな。マレビトの段とかほとんど書き下ろしじゃないか。関羽やばかった。三国志はほとんど分からないけど曹操が出すぎなところが気になった(ストーカー的な意味で

いつものへいじつやクオリティでした(すごく笑いをとりに来るのにちょっとしんみりするところがあったりするちょっとええ話系。カッパ寿司wwwとか関羽×猫耳娘とかオマケの短編が○○○www(特典短編なので伏字)とか、ちょうどいい感じに笑いのツボなのです。
なんかすごくいい感じに終わってるんですけど次あるんかな。前もいい感じに終わってたけど今回は前以上にあれこれあるので……。ネット小説シリーズはこの本から(仮)がとれて「レガロ」とレーベル名がついたので今後が楽しみです。

マレビトは神たちを投げ捨てながら、朗々と声を張った。
「みんなー外! わたくしはー内!」
「自分だけ特別待遇!?」

(P212)

そうでなければ、この想いをなんと呼べばいいのでしょう。動悸・息切れ・体温上昇・脈拍変化に軽いめまい。こいでなければちょっとした病気です。「先生、私、明治大正レトロモダン建築を見るとこんな症状が出るんです」「えー次の方ー」医者にもさじを投げられます。

(P314 あとがき)

恩寵

読み終わってまず思ったのは「ファンタジー色の濃いからくりからくさ」でした。

仕事をやめて風里は電車に乗って都心を離れた。緑と一軒家が多くなり二の池駅というところで降り、古ぼけた家と出会う。どうしても気になる家だが失業したての自分に家を借りる余裕なんか……などと思いつつ、家の持ち主に交渉して借りることができた。
近所の植物園で標本整理のバイトを見つけ、以前は良くやっていた刺繍を再びやるようになった。
夢の中で不思議な少女を見たりして、ある日実家に帰った時、母方の女系の筋では時々夢見ができるものが現れるという話を聞いた。過去の話と現代の話が行ったり来たりする。

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