格闘する者に○

再読オブ三浦しをんのデビュー作。
可南子は出版社希望の絶賛就活生である。内定はまだ無い。そもそも就職戦線にもあまり出ない。
エントリーシート! とか 圧迫面接! とかそんな感じなので今大学4年生とかのひとにぜひとも渡してみたい1冊。面接必勝本みたいな方向ではないのでその辺は注意あれー。

可南子の一族は政治家の家系なのだった。入り婿の父、亡き母、義母、可南子と半分血が繋がった弟。
親族会議とか跡継ぎとかごたごたしてるけど、その辺の家族の話もとてもすきだー。

「藤崎」の家に住んでいる人間の中で「藤崎」の血を引いているのは、私一人だ。そして明らかにその私の存在こそが、この「家族」を家族たらしめない要因、異物だ。その事実を突き付けられたくないから、私はいつもの生活を崩されるのを嫌う。父がこの家に帰ってきて、家族の構成要因が揃ってしまうことを恐れるのだ。

(P91)

「きっとどこかにありますよ。可南子ちゃんも気に入り、相手も可南子ちゃんにぜひ来てほしいというところが。ちょうど今の可南子ちゃんとわしのように、相思相愛になる会社があるはずじゃ」
心のどこかで、そんな甘いものじゃない、西園寺さんみたいに私を気に入ってくれる会社なんて……という声がずっとしているのだが、あえて聞こえない振りをした。たとえ最悪の事態に直面しても、まだ事実から目をそらそうとしうるのが私だ。

(P197)

「だいたい会社、それがひいては『社会』なんだと思うけど、会社が求めるような能力が、そもそも私たちに備わっていないのよ」(略)
「覇気があって、うだつがあがってて、初対面の人とも明るく打ち解けて。そういうのを面接という限られた時間内でアピールできる、か」
「そうそう。そういうことができる人間を、社会人というのよ」

(P205)