幼い頃は三浦誉と倉田ミズは恵悠の子分だった。
3人の関係は緊張感をもったものになったり子分ではなくなったり形を変えつつも高校になった今も続いている。
廃校になった中学校に残った備品の整理に最後の世代がかりだされ、最終的に残ったのは誉と悠とミズの3人。
3人が過ごした教室は卒業式の雰囲気をまだ残していた。2次会の出席や落書きが残された黒板を見ているとクラスメイトの声が聞こえてきそうなものの、室内は蝉時雨で満たされている。
干からびて花瓶に貼り付いた花が教壇に置かれていた。夏の日に教員宿舎で変死体として発見された担任に手向けられた花だ。3人の中学校の時の担任は「僕は蝉の幼虫なんだ」と蝉に傾倒した佐野青春という変わり者だった。
夏が来るまで寝かせてた。夏の福井が舞台の青春ホラー。
2人の少年と1人の少女(幼馴染み) 廃校になった母校 秘密 異形
といういつもの壁井さんです。ホラーはホラーなんですが、日常が侵食される系の?
鳥篭荘よりもうちょっと現実味がある感じ。いや鳥篭荘も大概ホラー要素があると思うんですが。
章扉がイラスト表紙なんですが、象徴っていうか暗喩っていうか。4章……! っていう。
あの時奥にあったのが「変死体」として処理されたアオハルの抜け殻なんだろうなあ。
ラストシーンは脳内で再生するぐらいでちょうどいい。これが忠実に映像化されようものならガチホラーすぎて夏は外に出れなくなる。「ぱー……ぱ?」はやばい。あのながれであれはやばい。ゾクッとするなあ。
「いかにきれいな抜け殻を見つけるか」に重点を置いていた頃はあっても蝉爆弾に出くわしたことはないんだよなあ。フィクションあれだけ鳴いてるのに。隣の人の声が聞こえないぐらい鳴いてるのに。タイミングの問題か「ミンミンゼミは関西には生息してない」みたいなものか。