カテゴリー「 小説 」の記事

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無花果とムーン

ある夏、地方のある町、お兄ちゃんが死んだ。「食べたら死ぬ」レベルのアレルギーの、周りからも気を使われていたアーモンドを食べて。

かなり砕けた口語文体の1人称。パープルアイ1でもらわれっ子の月夜と急逝した兄、奈落。
・地方
・大人にならないまま死んで行った下の兄
・地銀で働いている上の兄
・夏
・少女(複数)
・口語文体
ということで少女には向かない職業やら砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けないを連想するなというのは到底無理な話なんですけど桜庭一樹の少女の話がまた読めるとはなーと。桜庭一樹発売日に買って積んでるんですけどもったいなくてなんか読めない……!
ピンク色のもやはここにもあって、月夜はもやの中に飛び込んだけど藻屑とか葵と違って周囲の手はちゃんと届いた。あとこれは幻想成分が強い。生者と死者なーーー。
UFOカフェとか出てくるからちょっとイリヤの空UFOの夏を思い出した。苺苺苺苺苺という命名はやばい。1×5かよ(゚д゚)
あと、乞食が表現的にアウトのようで乞*という表記になっててびっくりした。

  1. 何かの比喩ではなく本当に目の色が紫 []

菩提樹荘の殺人

ミステリ的にはアポロンのナイフめっちゃ好きなんですけどこの本10代のわたしが悶絶して死んだ。火村さんの過去が!!!! またアブソルートリーいってたときのはなしが! 猫好き火村さんが!!! 大学生の火村さんが!!!! 人を殺したいと思ったことがあるから

ヾ(:3ノシヾ)ノシ((└(:3」┌)┘))
菩提樹の殺人は10代の私に向かって差し出されたプレゼントみたい。
死ぬかと思った。探偵、青の時代も大概だったけどアブソルートリーしぬかと思った。
火村さん好きなんですよ。あとがきがまたぶん殴りにきて、そうだ火村さんはもう34歳より年を取ることはないんだって。15歳で出会ってその年齢に向かって私どんどん歩いていってるんだなって思った。

--------なんか、お前とはカレーばっかり食べているような気がするよ。
火村の言葉を思い出す。
授業中に書いていた小説を覗き込んできたおかしな男。こんなに長い付き合いになろうとは思ってもいなかった。ましてや犯罪学者と推理作家になり、一緒に殺人現場の現場に立つなんて想像できたはずもない。

(P259〜260)

神曲プロデューサー

何でも屋音楽家兼フリーライター蒔田シュンの話。
音楽で食っていくには収入が少ないけど出来る楽器はあまたとあるため良く呼ばれているという。だいたいいつもの杉井光なんだけど面白いですよっていうかわたし杉井光の音楽の話すげえ好きなので面白いの当たり前だった。

形而上モヴィメントが好きで、たぶん若らんらんを他の世界に放り込んだりすると拓人みたいになるんじゃないかなあって思った。音楽の話はだいたい面白いし良い。

ベースは打楽器なのだという人がいる。鼓動を刻むためのものだと。それはおそらく正しい。ドラムスの生み出すビートは皮膚の上で弾けて蒸発する。ベースだけが血管に染み通る。

(P76)

白ゆき姫殺人事件

「しぐれ谷OL殺人事件」について、被害者と週刊誌上で容疑者とされた人物双方について語られる同僚・同級生・故郷の人々、そして当事者。
まあ女こえーっていう話ですが。この読了感は湊かなえだなー久しぶりだなーって思った。

王妃の帰還

女子校で中学生でスクールカースト。
終点のあの子よりもうちょっと生々しい気がする。ガチに派閥とか女王とか。
上位グループはどれだけ大声ではしゃいでもいいとか、なんだか懐かしくなる。
突然百合百合しはじめるし15歳ならではとてつもない重さがあってよいものでした。

2.43 清陰高校男子バレー部

タイトルの2.43はネットの高さ。春の高校バレーでは社会人と同じく2m43cmの高さで行われる。
福井の弱小バレーボールの男子高校生の物語である。視点人物が移り変わりながら描かれるある青春。

東京の強豪中学で深刻なトラブルを起こした灰島公誓は幼稚園の頃まで過ごした福井に転居して、幼馴染の黒羽祐仁と再会する。身体能力は高いもののプレッシャーに弱い黒羽とバレーへの情熱と才能に溢れている灰島はたびたび衝突を繰り返し、良いコンビとして成長するも絶縁状態となり清陰高校へ進学する。

視点人物は女子バレー部にもいる。中学はエースで高校でつまずいていまいちぱっとしない末森茨ちゃん。
いばらちゃんと棺野くん(健康上の理由で屋外運動ができない)がもう死ぬほど可愛い。あまずっぺええええええええええと大概転がったあとにやってくるのが灰島再登場である。
黒羽と灰島は1年ほど絶縁状態である。バレー部にも入らなかった。色々あって現バレー部と一緒に試合をすることになって、主将小田(163cm)にあんな球打てるかといわれて

「黒羽なら打ちます」
さらりと言われて返す言葉を失った。

(P180)

その信頼はなんなのかああああああああとぶち転がった。
打てますではなく打ちます。可能かどうかではなく事実を述べる。ぎゃーーーー。
口は悪いけど灰島はバレーに対してはちゃんと褒める子である。その能力はすごいという子である。
ていうかもう黒羽と灰島はたいへん燃えるコンビなのである。お前のエースになりたいとかお前に上げるトスは最高のものにするとかやめろおおおおおおおおおおおおヾ(:3ノシヾ)ノシ((└(:3」┌)┘))と叫ぶ。それでいて「輝いている男子高校生」という羨望をもって青春を羨ましく思う。

スポ根って、男子高校生ってすばらしいものですねとぶっ転がりながら読みました_(:3 」∠)_っ
Free好きな人とかオススメですよ。登場人物一覧は特設サイトにあります。
特設サイトは2.43 清陰高校男子バレー部|壁井ユカコ|集英社 WEB文芸 RENZABURO レンザブローこちらにあります。1章丸ごと試し読みとかあります

あとこの時期にオススメなのはサマーサイダー!

サマーサイダー

同じく福井の高校生の物語です。こっちは青春にちょっと不思議ちょっとホラーちょっと蝉が怖くなる。
そんな物語です。

あのひとは蜘蛛を潰せない

母が娘にかけた「ちゃんとして」「みっともない」「あんたには無理よ」それでいて(母のことはいつも正しい)と思ってしまう呪いの話。すごいところをえぐってくる話だった。すごい話を読んでいるのは分かるけどすごくこわい。引き込まれる物語であると同時にこわくて到底一気には読めない話だった。
家を出る直前直後の母がもっとも恐ろしかった。そこからは地面がすごく不安定な話だったなー。ココからは大丈夫だと思ってもすごくぐらぐらするのね。

「馬鹿馬鹿しい。たいして給料もよくないくせに、一人暮らしをしてどうするの。お金をどぶに捨てるつもり? 食事や家の掃除はどうするの? 出来ないでしょう? 峰岸さんのところや加藤さんのところを見なさい。賢い娘さんはみんな結婚まで親元で育つの。それが常識なの。そうすることで先方の親御さんも安心してお嫁として認めてくれるのよ。あんたそういうのなんっにも分かってないでしょう。職場が遠いわけでもないのに家を出たいなんて、私は遊びたいですって言っているようなもんよ。いい歳してみっともない。やっぱりダメね、お金の苦労をさせてないからかしら。ぼーっとしたまま育っちゃって」

(P70)

ガーデンロストのお母さんも大概怖かったけどこれはやばい。
このMPをゴリゴリ削られながら先に進んでいくのも読書の醍醐味だと思いつつ最近味わってなかったな。

卒業するわたしたち

色んなものからの卒業。全体的にしんみりとしている。
「にじむオレンジ」が好きなんですが、これは女子アイドルグループから学業を理由に卒業するメンバーの卒業公園に行く話。アイドルが繋いだ縁、わたしと友達の仲のよさは変わらないのにアイドルグループは変わってしまう。
卒業公演のアンコールの、卒業する子のソロの部分に差し掛かってオレンジのサイリウムで埋め尽くされるっていいよね。この前までもーむすの卒業公演のあれこれをタイムラインで見かけたからこういう感じなんだろうなあって思った。

「胸に赤い花」はびっくりするほど加藤千恵で、でもこういうのはひとつ読めたらいいなあって。

ブランコ乗りのサン=テグジュペリ

立て続けに起こった天災は都市に多くの爪痕を残した。特に湾岸部は液状化が酷く、死の土地になることや経済の立ち遅れを危惧した政府は湾岸部を再度埋め立て、湾岸地域を経済特区に指定して公営カジノを建設した。
ギャンブルが許された歓楽街に客寄せとして作られたサーカスは20歳にも満たない少女が集められた。
最初は満足な設備があったわけではなく、少女たちに秀でたなにかがあったわけでもない。それでもカジノ特区の発展でサーカスへ注目度もあがっていった。いま演目を任されるのは文学者の名前を冠したエリートのみ。
曲芸子の舞台に立てる寿命は長くはない。それでも一度舞台に立てば今後が約束されるだけの地位と力があった。
スポットライトと拍手が彼女らのすべてだった。
8代目サン=テクジュペリとしてブランコ乗りだった涙海のかわりに舞台に立つ。周囲から嫉妬と羨望と重圧をもたらされ舞台の上で見るもの、の話。

想像したのはAKB0048とアイドライジングでした。アイドラよりはもっと女子ですが。

同じ母親の腹から、同じ細胞と同じ遺伝子を持って生まれてきたのに。同じ者を食べ、同じ動きをして笑いあったのに。
どうして心は、いつの間に、こんなに遠く、こんなに違うものになってしまったのだろう。

(P75)

来栖さんちの双子、というかなっちゃんと翔ちゃんを眺めている薫ちゃんで変換されて、あと「永遠をちょうだい」「永遠をあげよう」はことあるたびにQUARTET★NIGHTが控えめなボリュームで流れてきてまじ自重っておもった。
歌姫アンデルセンは出たーアイドルの伝統枕! とかおもいましたすみません猛獣使いカフカが思いのほか重くて好きだな。あのなんともいえない女! めんどくさ! っていう話が好きです。

勝手にふるえてろ

インストール以来久しぶりに読んだ。
お付き合い経験のない、中学生から延々と片思い継続中の江藤良香のもとにふってわいたある恋の話。
なんかこう、中学生か! っていう感じだった。全体的に「思春期か!」っておもった。
思い出はとことん美化して現実はけなす。そんな感じだった。め、めんどくせえ。

どうも私はおたく期間が長かったせいで現実世界で自分がどんな行動を起こせばどんな反応がかえってくるかが想像がつかない。仕事中はオフィシャルな場所だから気を引き締めていれば浮かないけど、オフの場面になったら途端にどういうのが普通か分からなくなる。

(P80)

やめろ! でも辻村深月作品ほどえぐられるものは少なかった。

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