カテゴリー「 小説 」の記事
371件の投稿
本が作る縁の話。もしくは「海辺のカフカ」@村上春樹ツアーをする3人の話。私は村上春樹は未読なんですが、これを読み終わった後本屋にいって「新潮夏の100冊 本店オススメNo1は海辺のカフカ」とか見てしまいうっかり買いそうになりました。
大歩危小歩危とか鳴門とか地元がどこどこ出てきたのでびっくりしました。
「地元が出てくる小説」というのはめったに見ないのでそれだけでも甘くなるものです。いや地元といっても鳴門も大歩危も私のホームではありませんが。
ナズナの方からワタルに教えたことといえば、もっぱら本のことだった。
子どもの時から読書好きだったナズナは、一人の作家を好きになると全ての著作を読まないと気が済まない。自分と会うまでは村上春樹も読んだことのなかったようなワタルには、読ませてやりたい本が山ほどあった。
ワタルと会う時には、何冊もの文庫本を持っていくのが習慣になった。それを貸しておくと、ワタルは次に会うときまでにはみんな読んできてくれる。電話やメールでその本について語り合うのが毎日の楽しみになっていった。(P87)
老舗和菓子屋<福桜堂>に勤める絢部あかりとその2軒先のショコラトリー<ショコラ・ド・ルイ>のシェフ長峰和輝とスイーツと人間関係と謎の話。連作短編。
前作ラ・パティスリーとも地続きです。
家庭的な南仏料理の店も出てくるから、作者違うけどタルトタタンの夢とも繋がってそうな雰囲気だ。
しかし今回は縁遠いフランス料理ではなくチョコレート。ケーキ。上生菓子。なんたる身近さか。チョコ食べたいとついったーで叫ぶこと2回にわたる。そして今我が家には友達のお土産であるロイズのチョコがあったりするのである。むしゃむしゃしてやった。今は満足している。
チョコ断ちをしている人は決して読んではならぬ本である。
「低カロリーなら、女性客は大喜びで買うと思いますが……」
「冗談じゃない。私は、健康食を作るために菓子職人になったんじゃないんです」長峰シェフはかすかに笑った。「おいしいものほど体に悪い。甘いもの好きは、それを覚悟しておくべきですよ」(P202)
書影があるのを選んでみた。私が読んだのは図書館本なので今は亡き大陸書房版です。
新井素子といえばチグリスとユーフラテスぐらいしか読んだことがなかったので、「新井素子初心者に薦める1冊」とかないすかーと色々聞いて、とりあえず1冊目はこれ。
子どものいない夫婦と、10歳になってもぬいぐるみが片時も手放せない子ども(両親死亡)が家族になっていく話……なんですがラストスゲーよ。
新ジャンル:ぬいぐるみ、ただしヤンデレ
図書館小説。これは面白かった……
漫画でいうと共鳴せよ!私立轟高校図書委員会、ラノベでいうと生徒会の一存みたいな感じだ。
桜ヶ丘高校の図書室は「図書委員」と「図書部員」の2つでできている。図書委員は嫌々ながら引き受け2学期になるころには来なくなるクラスの代表1名。
図書部員は数代前に「このままじゃ駄目だ!(読みたい本も入荷されない!」ということで自発的に管理運営を行う部だ。
「望美、トンちゃんがさぁ『カツクラ』に載ったんだよ」(P13)
いきなりハートをキャッチされたところ。あのかつくらです。はい。
ところで世の図書委員はそんなになり手が少ないのですか。私が高校生の時は図書委員談合が毎学期ごとにありましたよ。
図書委員談合……誰が今学期の図書委員(定員2人)になるか事前に話し合って決めること。図書委員になるメリットはカウンターに入れること、掃除場所が図書室であること。ちなみにうわさに聞く「購入本の選択権」などは一切ない。
そういう健太郎だって、ついこのあいだ幸治と2人、次に買うべきテレビはプラズマか液晶かで激論を戦わせていた。動画速度が、とか、アリスパネルが、とか望美ですらなんとなしに聞いたことのある単語が頻出して面白かった。
(略)
議論がエキサイトした末に健太郎が放った「そんなに世界の亀山工場が好きなら亀山に住めよ!」という啖呵が望美のベスト賞で、「二人とも家で今使っているテレビはなんなの」と最後に部長に聞かれ「ブラウン管です」と口を揃えて終わったのも美しい着地と思う。(P50)
それで文芸部の展示は当初の予定通り占星術の特集になった。演出の一環として、部室の床に悪魔召還のための巨大な魔法陣を描くことにし、シルバーのテープで円を描いたところまではよかった。
「悪魔召還? それは占星術というか、ゲームの『女神転生』だよね」(P159)
読み終わってから山本幸久のデビュー作だと知る。漫才コンビの女性2人の話である。
漫才コンビかつ女とすると最近は海原やすよともこがお気に入りです(゚д゚)
漫才コンビの話といっても、成功物語がメインではないし、爆笑ものではないし、夢(将来はカーネギーホール!)に向かって突進する2人の話だ。
「あたし達『アカコとヒトミ』は、漫才コンビなんだよ。そりゃ今回のようにさ、漫才やるために、テレビ出させてくれんだったら、いいわさ。でもさあ。くそつまんねえバラエティとかぬかしてる腑抜け番組に引っ張り出されてだよ、コントと称して、その場の盛り上がりだけでお茶を濁す、三流タレントの馴れ合いにつきあわされたり、レポーターとか言われて、街にほっぽりだされて、屁の突っかい棒にもなりゃしねえ情報垂れ流したりすんのは、お・こ・と・わ・り、なんですよ。あたしら二人は漫才やってナンボで行きたいんです。舞台に立って、目の前にいるお客さん笑わしていきたいんですよ。それがホントでしょ。ホントの芸人ってもんじゃないっすか。あたし達はそうおもうんですよ。ね、ヒトミ」
(P150)









