星間商事株式会社社史編纂室

WEB連載していたもの。
コピー本作りが上司バレしたところまで読んでたんだけどいつの間にやら存在を忘れていた。

星間商事に勤める幸代は企画系の部署の一員として郊外の大型ショッピングセンターを手がけ、成功させた。類似企画の責任者にならないかと打診されたが固辞した。幸代は出世欲がなくそれなりの給料で構わないが夜や週末は必ず体が空く仕事をしたかった。そして左遷部署扱いの社史編纂室に飛ばされた。60周年記念社史となるはずだったものは創立60周年を過ぎた今も完成されていない。本間課長(あと1年で定年)が退職するまでにできあがれば……という雰囲気になっている。

幸代は腐女子(※自称したことはない)である。GW・お盆・年末はコミケやらイベントに赴き、プライベートな時間は同人誌作成やら友人ら3人でやっているサークル「月間企画」サイトの運営やら通販処理に大部分が割かれている。ちなみに放浪癖のある彼氏(洋介・コピー本の製本を手伝ってくれたりする)と同棲している。

・社史作成中のなか誰も語ろうとしない高度成長期の星間商事とサリメニ国の繋がり(陰謀めいたターン)
・原稿とコミケと私と足抜けする友人
・会社のコピー機を使ってコピー本を作っているところを上司にバレた!
・ごまかせたと思ったら自分もコミケに出たいとか言い出したり、上司や同僚に自作を朗読される
・作中作として幸代作のBL小説(年下攻めのリーマンBL)と本間課長の謎小説
・恋愛あれこれ

みたいな内容です。

陰謀のターンは風呂敷を広げすぎない程度で早々にたたまれるので、「左遷された実は有能職員が会社の闇を暴く!」みたいな小説ではありません。
BL小説のターンはキス以上の絡みはありませんが(ほのめかしはあります)、男同士がいちゃいちゃしてるのはあります。月間商事は「固定ファンがついている・イベント毎に新刊発行・30冊刷れば売り切れる・収支はイベント参加費印刷費で足が出る」程度の創作JUNEサークルでした。

サリメニ関係の小説が実にロマンチック。

「いや、これまでの人生の過半数の年月がオタクなんだから、もはや趣味なんかじゃない。人生そのものよ! つまり同人誌を捨てたあんたは、人生を捨てるということになる!」(略)
「むしろ捨てる! 今までの人生をリセットする! テレビで党首討論見て、与野党の政治家のじいさん二人にすら萌えを見いだすような自分を清算する! そんで女の幸せをつかむ!」
「女の幸せって?」
幸代は念のため聞いてみた。
「かわいいなってみんなに思われて、お姑さんにも気に入られて、子どもを二人生んで、カルチャースクールでフランス語か手話を習って、それを活かして家事の合間に少々の収入を得て、週末にたまに夫と二人だけでカフェでランチしたりすることよ!」

(P125)

それから、冬コミ用の新刊の内容について考えた。パソコンに向かって、数行打ってみる。
書くという行為があってよかった、と思った。むなしさややるせなさをいっとき忘れられる。

(P203)