カテゴリー「 一般文庫 」の記事

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すべての愛がゆるされる島 (メディアワークス文庫)

インモラルだったり退廃的な話かと思ったら意外とそうでもなかった。むしろ数学で宗教だった。
外国のようで領土的には日本の島国で、赦されぬ想いに灼かれてる人が集まる島です。Arkですねわかります。
1人称で語り手が人知れず変わっていくし時間軸も一定である気がしなかったので、くらくらする。
しかしこのふわっとする感じは悪くない。

「そうだよ。ほんの1ミリグラムの望みは、絶望の千倍つらい」

(P109)

やっぱりだらしな日記+だらしなマンション購入記 (幻冬舎文庫)

2002年2月から2003年の1月までの日記にマンション購入の顛末・断食合宿レポートなど。
本日の読書欄に★評価と前巻比ちょっと長めのレビューと巻末に索引もついた。ちょっと便利。
マンションを買うって大変だ。

オリーブ—Girls & Boys (MF文庫ダ・ヴィンチ)

オリーブ少女って要するに今で言うところの森ガールなのか。
名前は聞いたことあるけどどんなのかは知らないんだよな。

章ごとに視点が変わる長編で、名古屋が舞台。
ミツコは80年代後半から90年代のオリーブ少女に憧れている中学3年生だ。ある日13歳離れた姉チエコが突然東京のアパートを引き払って名古屋へ戻ってきた。チエコを追いかけて恋人、矢野もやってきた。
矢野はミツコは憧れる"オリーブ王子"そのもので、要するに今で言うところの草食男子である。いや本当に草とか霞とか喰って生きてそうなもんである。お金に困ってなくてなんか優雅な生活で、まるで生活臭がしない。
面白いのは面白いけど普通っぽい。読後感的には「コバルトで昔あった感じの現代ものを再度やってみた」ていう感じ。

晩婚化が進み、二十八歳なんてまだまだ娘さんじゃないのといった風潮があるけれど、あくまでそれは都会での話だ。大いなる田舎、名古屋ではそういうわけにはいかない。名古屋で二十八歳といえば、「もう二十八歳」なのである。

(P173)

一番引っかかったのここだ。名古屋が田舎だというのなら四国とか「断崖絶壁の孤島」だよね。
愛知県って広いカテゴリで言うなら知らないが名古屋は都会だよ。
もし東京と比べてるならそれはどこでも田舎になるだろうし、名古屋じゃなくても28歳はどこでも「もう28歳」だと思う。おひとりさまに優しいのなんか東京のごく一部なんじゃないの。
あと星山書店とかいってないでそこは星野って書けばいいのにとか思った。
ほかは番組名とか注釈が必要なぐらい1名古屋ローカルネタが頻出してるのに。

「あれは読んだのであれば今度はぜひあれも読んでほしいなあ」というあの会話のあたりはなんだかいたたまれない気分になる。

登場人物紹介に「沼ガール」という文字が目に入り何だそれはと思ってぐぐってみたところ「自虐的森ガールもしくは『森に住んでそうっていうかお前は森より沼にいそうだよね』と言われる」≒「沼ガール」らしいです。
森ガールがさらに進化すると魔女ガールになるらしいです。なにそのドルイド。

  1. 実際注釈がある []

不思議の扉  時をかける恋 (角川文庫)

テーマは「タイムトラベル・ロマンス」 よいアンソロジー。
収録作品は梶尾真治「美亜へ贈る真珠」 恩田陸「エアハート嬢の到着」 乙一「Calling you」
貴子潤一郎「眠り姫」 太宰治「浦島さん」 ジャック・フィニィ「机の中のラブレター」

非常に名作揃いだと思います。
3回ぐらい読んでいるはずの「エアハート嬢の到着」が今までになく胸キュンでした。どういうことだ!

失はれる物語に収録されたり映画化漫画化いろいろメディアミックスされていた「Calling you」はともかくとして富士見ファンタジア文庫の眠り姫がこの本に収録されているのがとてもサプライズ的存在。
元本は6年前に出版されたもので新刊書店で手に入るのは極稀なパターンではないかと思うので、記憶と古本屋に埋もれていくのではなくアンソロジーにあらたに収録されるのは良いことだ、とおもう。

富士見ファンタジア版眠り姫も非常によい短編集なのでこの本で興味を持たれた方はぜひどうぞ。
「ラノベの短編集」というとまず長編シリーズありきで番外編の集まりっぽい感じですが、眠り姫については独立した短編集です。

この本は「10代から楽しめる読みきり小説」ということでラノベ作品も収録されやすいのかなあと思います。
今月末に不思議の扉 時間がいっぱいというのが出る予定なのですが、こちらには谷川流作品が収録されます。

あと、「美亜に捧げる真珠」はKOKIAの「大事なものは目蓋の裏」
「エアハート嬢の到着」はSoundHorizonの「エルの肖像」がよくあう! とおもいました。

美亜へ贈る真珠—梶尾真治短篇傑作選 ロマンチック篇 (ハヤカワ文庫JA)ライオンハート (新潮文庫)眠り姫 (富士見ファンタジア文庫)
きみにしか聞こえない—CALLING YOU (角川スニーカー文庫)お伽草紙 (新潮文庫)ゲイルズバーグの春を愛す  ハヤカワ文庫 FT 26

ホンのお楽しみ (講談社文庫)

2002年から2年半Frauで連載していたものを文庫オリジナルとして本にするにあたり、絶版になった本を除き連載時に紹介した本とは若干入れ替えさらに加筆修正を行いましたというブックガイド。

エッセイ風にはじまり、これこれこういう感じのひとはこの本を読んでみてはどうでしょうかと各章末に3冊おすすめ本が掲載されている。それがまた絶妙に気になる感じの本なのだ。
3冊のうち1冊は知っててあと2冊はなんだね君らは、という感じの本である。
積読が増える ? やべえ /

ちなみに章末には2009年追記、というのもついてくる。時事ネタは少なめだと思われる。伊集院光が痩せてるとかソルトレイク五輪とか。

1日1000歩以下しか歩かない生活というのは、一体どんなものなのかと説明すると、それは家から一歩も出ない引きこもり生活。起きて、本読んで、適当に料理でもしつつテレビを見て、ネットでもして寝る——。

(P67)

誰かを思い出すなどした。

だらしな日記—食事と体脂肪と読書の因果関係を考察する (幻冬舎文庫)

気になる書評家双璧の片方1、藤田香織さんが日記本を出していることを知ったので買ってみました。
内容は2001年から2002年1月まで。主に日記とごはんです。あと本のこともちょろっと。
あとがき曰く「フリーになってまだ数年。何でも屋状態から書評家への過渡期」
タイトルにもある「だらしな」、藤田さんは掃除洗濯運動がとても苦手な方だったのだ。その辺も包み隠さず書かれているので潔癖症な方には想像しがたい世界が広がっている……かも。

内容はというとこんな感じ。ちなみに最新はこちらです→Webマガジン幻冬舎

かつてすべてがEになる—I Say Essay Everydayを出した幻冬舎だけあって文字が超小さい。縦書き・文庫ですが段組されています。そして370ページ弱あります。

  1. もう片方は三村美衣さんです []

ガーデン・ロスト (メディアワークス文庫)

現代で女子高生4人組それぞれの視点による4つの物語。
「少女」の物語というとよく桜庭一樹を連想するんだけどこれは三浦しをんの秘密の花園を思い出した。

好きなのは1章エカの話「春の繭」・4章シバの話「ガーデン・ロスト」
春の繭は読みながらだれかと文通したいと思った。エカの文通相手の話はなんかで読んだことあるなあ。桜庭一樹のエッセイだった気はする。そっちは筆跡変えてたようだけど。そういうのは割とあることなんだろうか。わたしもかつては文通相手を探してよく手紙を送ったりしたものです。でも大抵はほとんど続かなかったなあ。

ガーデン・ロストはシバ母の怒り方がとてもうちの母似で……。
いや進路とかそういう人生レベルで重大なことじゃなくてもっと心の底からどうでもいいことなんですが。

地の文は痛い+切ない感じですが会話は明るい方向なのでそんなに重くない話だなあと思います。

犯罪でもいい。病気だっていい。
笑わないで。いじめないで。軽蔑しないで。そのどれも構わないけれど、壊さないで。消さないで。せめて私達の意識の中から。
そして、ただ、愛させて。

(P66)

シアター! (メディアワークス文庫)

「シアターフラッグ」はファンは多くついているけどどうしようもなく赤字体質の劇団である。
主宰の春川巧はせっぱ詰まって兄の司に300万貸してくれと泣きついた。司は「金は無利子で貸してやる。その代わり2年を限度に劇団が得た収益のみで返済しろ。今日から俺が債権者だ。債務期間中の資金繰りと予算決済は俺が管理する。返済できない場合は劇団を畳め」と突きつけた。

小劇団が登場する小説はチョコレートコスモスとかコッペリアとか読んだけど主に裏方、しかも金勘定方面が前に出てくるのはわたしが読んだ中でははじめて。
有川浩作品は割と何にでも恋愛が絡んで来てもちろんシアターにも片想いが存在しているんだけど、主に兄弟愛! というのもちょっとレアな感じがした。手塚兄弟1とはまたちがう新鮮さ。
要するにわたしは兄ちゃんが好きすぎるという話である。

途中で出てくる「千歳が声をあてている少女向け変身ヒロインアニメ」はプリキュアかなあと思った。

この作品は沢城みゆき所属劇団の話を聞いて作りましたっていうのはあとがきとか解説とかダ・ヴィンチ 2010年 01月号にも載っていることですが、ネトラジ「沢城みゆきと12の夜」の12/26更新分でも有川さんがゲスト出演して主にシアターの話をするようです。
ちなみに現在配信中のは「有川浩に12の質問」っていう感じで、旦那への惚気とかかなり含まれてます。有川家はまじリアル植物図鑑でふいた(夫婦で散歩→野草収集→料理)。

読み終わった後、この春川兄弟なんかで既視感あるよなと思ってたんですがあれだよ巧=フェリシアーノ 司=ルートヴィッヒ。わたしの中でのはまり具合に相当笑った。

「守銭奴けっこう! 金は正義だ!」

(P59)

「よりにもよって業界のてっぺん持ってきて言い訳する奴があるか! 向こうが神だとしたらお前なんか脊椎発生以前の昆虫だろが!」
「せめて哺乳類にしといてよ!」
「やかましい、言い訳の浅はかさが虫並みだ! つーかシアターフラッグで初日の幕が開かないなんてことになったら払い戻しの金は誰が出すと……!」

(P117)
  1. 図書館戦争 []

カスタム・チャイルド —罪と罰— (メディアワークス文庫)

メディアワークス文庫創刊ラインナップのひとつ。カバーこわい。表紙公開された時ギャッと思った。
現物は口元が帯で隠れるので若干マイルドになります。
読んだ後じーっとカバーを見てるとああそういうことなのかって思ったけどこわいのはどうしようもない。

電撃文庫版のカスタム・チャイルドとは世界観を共有する別の話です。これだけでも読めます。
「世界観共有」だと「時代は違うけど同じ世界の話です」っていうのがあるけど、これは本当に「切り口が違うだけの同じような時間・同じ街の時間の話」だ。廃工場は再びの大活躍。
電撃文庫版は比較的灰色寄りの白っぽい話ですがMW文庫版のカスチャは「黒っぽい話」です。
ちょっとダーク。

無印の人物はどれぐらい出てくるのかなと思って読み始めたらいきなり「ヤンロンズ・デリ」が出てくる。おいそれ鳥篭荘だよwって非常にときめく。冒頭からいいジャブを喰らう。
4歳の時にバイク便で"返品"されてきた春野とアニメキャラの実体1として作られたレイと遺伝子操作の一切を拒絶して自然に生まれてきた2清田の話。
春野がこう、1回転半ねじてれる子だった。無印カスチャのアナザーセイタだと思った。あの子もお母さんからネグレクトだもんな。レイは設定は綾波だけどキャラ的にはNocallの有海とか私の男の花だよなあ。
清田は可愛い子だ。他2人が影背負いまくりな分白っぽいところを一身に背負っている。

地味に出番があったテっちゃんとか影だけ見える三嶋とか総領の次男とかにによによした。
不穏な雰囲気が好きだ。歪んでる人たちが好きだ。黒さに胸キュンの話だった。
今度はまた別のダーウィンズヒルの人々の話が読みたい。

「僕らトランスジェニックは、二度とナチュラルには戻れない。僕らはもう引き返せないんだ。破滅へと向かう先細りの道を転げ落ちていくしかないんだ」

(P311)
  1. 9割綾波だと思う。包帯とか眼帯とかも標準装備 []
  2. がゆえに生まれながらに色々なハンデを背負っている []

子どもたちに語るヨーロッパ史 (ちくま学芸文庫)

ヨーロッパの歴史入門書的なもの。中世に力を入れられている感じ。
「子どもたちに語る」のタイトルどおりですます調の易しい文章だった。ヘタレに優しい。
はじめてベラルーシの場所を確認した。あとラテン語で地獄のことをtaurtaurs(タルタルス)というらしい。
某滅びの塔をおもいだす。聖戦と死神とかの背景がちょっと分かった。

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