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いやー勇気がもらえる作品でしたね!
なんかこれ違うな……と思いつつ3日ほど使ったインクがあったんですけど、作中で「合わなかったら即洗浄!」っていうセリフがあったので昨日読み終わってから洗浄して1日置いてさっき別のインクを入れました。

そんな沼い話は置いておいて、これはちょっとブラックな職場に勤めていた葵がふらりと立ち寄ったお店で万年筆とその後の職を見つけてしまったというはじまりです。葵は年若い店主志貴に万年筆の知識をレクチャーされつつ、なんとか1人前の店員を目指そうと頑張っています。実在の万年筆やインクも出てきて割とパイロットとプラチナ強めです。葵のファースト万年筆もです。わたしが住んでいるところは万年筆を試筆できるようなお店がないのでめっちゃ憧れです……。三宮でキャップレプラチナスデシモの試筆したときは恐る恐るだっただけど嬉しかったわ……。

わたしも数年前から万年筆に分け入り、去年うっかりインク沼に入水して水際でぱちゃぱちゃ遊んでいます。今年は神戸ペンショーに行くのをやっぱりやめたので代わりにバス代+現地で使う分ぐらいインクを買いました。5桁余裕です。インクは増えるんですよね……。わたしは欲しい万年筆はキャップレスデシモで他はまあカクノとTWISBIとガラスペン3本で満足しています。

すごく久しぶりにビーンズ文庫を買ったな……。なんかピンときたので買いました。新人作品。
序盤はすごく駆け足(なんせ最初40ページで竜と出会って、結婚直前に村が焼かれて唯一の家族である兄を目の前で失う)なんだけど、読み終わってもう一回最初に戻ってくるとこれがあれに活きるのかっていう感じで、これもたぶん必要なシーン。

ライラは村が焼かれた日に見た蒼い竜、ルガーに復讐することを決めた。

竜人は生涯ひとりを愛する習性を利用して、ライラは「自分がその運命の相手、番いだと誤認させる匂いを発する薬」を口にした。飲むと翌日に死んでしまうその薬を中和するのが赤い飴玉だ。飴玉はライラが飲む薬の副作用を抑え、舐めた後の口づけが竜人には毒になる。1日でも舐めるのを忘れればライラは死ぬし、口づけをしなければ竜人の毒は抜け、100日口づけを続ければ竜人を確実に死に至らしめ、後には毒も検出されない。

番いだと誤認させる薬を飲んだライラのことを、ルガーは一目で「番いを見つけた」と愛を注いだ。
ライラもまた竜人とともに暮らし、ルガーに寄り添って暮らし、日々ごく自然に復讐の武器である口づけをした。
どういう経路をたどってどういう結末を迎えるかっていうね。いやもうラピュタでしたね。
久しぶりに少女小説ファンタジーを摂取しました。

1か月後の日本時間15時、地球に小惑星が衝突します。

ある日の緊急首相会見でそう語られた。
数年前から世界各国が協力体制で挑んできたがついに軌道を変えることはできなかった。小惑星は直径10キロ、かつて恐竜を絶滅させたものと同程度の大きさだった。

学校ではスクールカーストの底辺でいじめられっ子の友樹、人を殺めたヤクザの信二、恋人から逃げ出した静香、徐々におかしくなっていく世界の中東京を目指した雪絵。
4人はゆっくりと、確実に終わりへ近づいていく世界の中で、何を見て何を背負い、どのように過ごしていたが丁寧に描写される。略奪に自殺、新興宗教によるテロなど世界の常識が一変した世界でなければ気づくこともなかったし手に入れることもできなかった、家族の小説だった。

凄い小説を読んだ。↓下記が読了の勢いで睡眠時間を削って書き残した感想です。

滅びの前のシャングリラ/凪良ゆう colorful

 もうすぐ遙か上から巨大な石が降ってきて、あたしたちはみんな死ぬ。
 けれど最期の時、あたしの隣には惚れた男と子どもたちがいる。
 −−−−それって、どっちがいいことなんだろうね。
 友樹の問いに、あたしは今も答えられない。あたしだって死ぬのが怖い。こんな結末は最悪だって思っている。血のつながりを今もどこか胡散臭く感じている。
 なのに、それでも今あたしはとてつもなく幸せを感じている。

(P239)

感想エントリは別にちゃんと書こうと思うんだけど初読時の衝撃を残しておきたいので睡眠時間を削ってこれを書きます。
あっちこっちからこの本はすごいぞすごいぞやばいぞというツイートはよく見ていたんですがもうなんかびっくりするほどすごかった。

「明日世界が滅ぶとしたらあなたはどうしますか」というよくある問い。
自分がもしというわけではなく推しがそういう場面に陥ったらみたいな感じで、考えたことがある人は多分多いと思うんだけど、この本は「1か月後、地球に小惑星が衝突します。どうにかしようといろいろやっていましたがどうにもなりません」という滅びの宣告がなされます。自分の命を賭して世界を救う宇宙飛行士は存在せず、滅びゆく世界が主に4人によって語られます。
いじめにあっていた高校生男子や、人を殺したヤクザ、恋人から逃げていた女性が滅びに向かう世界でどのように生き、過ごし、何を得ていたかがものすごく丁寧に、世界の荒廃とともに描かれます。

滅びゆく世界でも人は光や納得や理解や幸福を得る(ただし人によって差はあります)、なんだろうね設定から想像する鬱展開とか、絶望の中で見いだされる希望とか、そういう生やさしい言葉はなかった。ものすごくヘビーな本なんだけどこの本を読めてよかったという気持ちでいっぱいになっていまこれを書いている。

何でそういうのを書いているのかというとこの本は初刷限定で短編小冊子が封入されています。
滅びの前のシャングリラは発売前に重版しました。つまり世界にはもうこの素晴らしい短編がついていない小説が流通されているということだ。この短編はなにかに収録されることはないと聞かれています。が、ものすごいので読んでほしいんだよな。

推しの音楽を聞きながら世界が終わるなら、それは家にこもって最期の日を待つより上等なのではと思ったんだよなあ。

わたしは凪良ゆう作品と出会って、もう数年が経とうとしているんだけども、「ひとひとりの感情によりそって物語が丁寧に展開する物語が読みたい」と思っていて、その条件に適合するのがひとりが一穂ミチ、もうひとりが凪良ゆうでした。わたしの出会いがものすごくよかったのか、BL作家というのはそういう「感情に寄り添う物語」を書くことがうまいのか、数読んでないのでちょっとよくわからないんですが、「生きにくさを抱えている人たちがどうにかしてもがきながらもなにかを掴む話」というのが凪良ゆう作品でよくある話だと思ってます。それがすごくクリティカルにはまって今に至るんですが、流浪の月でどっかん世界に名前が知れ渡るようになったのは東京創元社の桂島さんが見つけてくれたおかげだし、神様のビオトープをめっちゃ売ってくれた梅田三番街の紀伊國屋書店の方々のおかげだと思うし、なんか「推しを生んでくれてありがとうと推しの親と世界にお礼をいう」みたいにわけのわからん謝辞を述べる程度には「滅びの前のシャングリラ」はものすごく面白い本でした。

ガッと書いて落ち着いたので寝ます!!! 明日ちゃんとした感想エントリを書くしこのエントリも残します。

流浪の月は電子書籍で読んだんだけど、凪良ゆう作品は紙書籍で読んだ方が面白さが上がる気がする。
滅びの前のシャングリラは明日届く。

神主兼翻訳家の統理、統理の元妻と再婚した男性の間の子ども百音(統理と百音の間に血縁はない)、統理の友達路有(ゲイ)の家族を中心に据えつつもその周辺の人物を視点に話は進む。3人が住むマンションには屋上には庭園があり、その奥には狛犬が守る祠があり、統理はこの神社の神主でありマンションの大家だ

「生きにくさを抱えた人たちの話」というと「いつもの凪良ゆう」なんだけど、読むことに対する被ダメがやばすぎる。久しぶりに「読めば読むほど鈍器でぶん殴られている気がするのに読むのがやめられない」という事態に遭遇した。いや、でもさすがに人の多い休日のイオンモールのフードコートのど真ん中で、なんてことないシーンで泣けてきた日には読むのをやめたが。

特に兄の恋人はなんかぞっとするほど「この思考ルーチン覚えがある」と思った。ストレートにいうと「お前は俺か」選手権である。ぞわぞわした。

根本的な解決にはなっていないけれど、生きていく中でなにかが根っこから解決することなんて滅多にない。しんどい。つらい。それでも明日も仕事に行かなくてはいけない。とりあえず明日がんばるための小さな愉しみを拾い集めることが優先される。それが生きる知恵と分かっていても、たまに焦ることがある。

(P55)

よかった。ちゃんと生きてるね。
路有、なにか飲む?
路有、ビスケット食べる?
好きな人に会えないの悲しいね。百音もわかるよ。
百音のお母さんとお父さんもね、少し前に死んじゃったんだよ。
でも大丈夫だからね。百音のおやつ、半分こしようね。

(P157)

真由のためにも早く元気にならなければ。早く東京に戻らなければ。早く再就職先を見つけなければ。早く結婚しなければ。早く子供作らなければ。早く両親に孫の顔を見せなければ。子供を安心して育てられる家を買わなければ。子供が成人するまで親として稼がなければ----。
ぱちんと、と唐突にスイッチが切れた。
世界が消失したように頭が空っぽになった。

(P199)

夢のような話として「フォロワーがすぐ近くの部屋に住んでいるマンション」「年を取ったら同じグループホームに入ろう」という話がよく語られがちだが、この本はそれを実際にやってみた話である。

・30代後半・未婚・女性4人
・フリーランスと企業勤めが半々
・全員が何かしらのオタク。遠征はよくするタイプ。
・推しジャンルはビジュアル系・舞台(ヅカ・2.5次元)・ソシャゲなど。

という「日本のルームシェアの話」としても割と珍しい部類に入るエッセイだと思う。
内容については一言でいうと「物凄く羨ましい」「こういう生活をしたい」

わたしはこの本に登場する人たちとさして年齢が変わらないことも大いにある。めちゃくちゃ笑ったのは「4人中3人がツインシグナルの新作クラウドファンディングに投じた。この家には同じ本が3冊来る」ということだ。さすが同世代話が分かる。わたしもぶっこんだ。

実際こういう生活が営めるならさぞ楽しかろうと思う。仕事は仕事でちゃんとしていて、家に帰ったら気心が知れたオタクが一緒に住んでいる。それって永遠に終わらない文化祭(の前日の準備)なのでは?
物凄く羨ましかったが、羨ましすぎてタタリ神にならなかったのはわたしには似たような、各地に散らばっており既婚者もいるので同じ家に住むことは生涯ないが、気心の知れたごく狭いタイムラインがあるからだ。

ものすごく羨ましい環境というのもこの書き手、藤谷さんはガチャの引きがとてもいい。オタクなんでもガチャに例えるの悪い癖だと思うが、一緒に住んでくれる人〜みたいな緩い募集に乗っかってくれる友達の多さ、ルームシェア可物件の少なさの中で理想的な家を引き寄せる強さ、そういうのは「ガチャの引きがいい」というてもオタク間なら十分伝わると思う。
ちなみにこの「一緒に住む人をLINEで呼びかけてみたら」と言われて、その呼びかけるLINEグループの名前が「ちょっとしたパーティ」なのも強い。この前読んだ第32回 「ちょっとしたパーティー」 | 裸一貫! つづ井さんを思い出す。
行き当たりばったりに同居人を探したわけではなく「10年程度の付き合いがある、本名は知らなくてもひととなりは良く知っている」中から出会えたのは強い。

ネット連載をしていたものをまとめていたものであるようで、この時期なので、当然「コロナの時、緊急事態宣言がでる前後あたりをどう過ごしていたか」というのも含まれている。

羨ましさを差し引いてもこの方々のルームシェアはかなり成功している例だと思う。この本にはルームシェアのデメリットなどは書かれていないが、困ったことはうまいこと解決できているか人への配慮ができている4人が住まわれていると思われるので、真似したいと思ってもなかなか難しいと思う。それを端的に表しているのは

 現に私は"ハウス"のメンバーの推しキャラは知っているが、恋人の有無は知らないし、この先も知る必要はないと考えている。同様に、私の元パートナー云々の話もみんなから聞かれることはなかった。
 思うに、我々は生活は共有しているが、人生は共有していないことが良いほうに働いている気がする。家族愛や恋愛感情などの関係性による、クソデカ感情が挟まらないので、そこに気楽さや快適さを感じているのだろう。

のブロックだ。そんなぱっと見成功しているように見えるルームシェアも「女同士だからって揉めるとは限らない」「とはいえ一生一緒に暮らせるわけではないと思う」と介護を含めた現実を見据えた話をしつつ、

ドラマらしいドラマもないが、だからこそ安定感のある暮らしは続いていく。最近の我が家は、世のオタクに漏れず、ディズニー映画の悪役をモチーフにしたイケメンたちと交流するゲーム「ツイステッドワンダーランド」の話題でもちきりである

と触れ、物欲センサー対策に同居人にガチャを引いてもらい推しを手に入れるというオタクあるあるのあれが現実に1クリック先にあるというのが本当に理想ですね。

軽い読み物なのでAmazonで電子書籍で買って携帯で読むのにも向いていると思う。
「オタク同士のルームシェア」という単語に過剰にあこがれを持たない人にはおすすめの1冊。

メダリストというのはアフターヌーンに連載中の漫画で先日1巻が出たばかりのフィギュアスケートの漫画です。

高校野球でいえば甲子園出場的な扱いの、フィギュアスケート全日本選手権を目指すには5歳から始めるべき、と言われていますが司がはじめたのは中学生の頃。経済的な理由もありクラブに所属することもコーチに師事することもできず、ようやく教えてくれる人が見つかったのは20歳の頃、それも「アイスダンスなら教えてあげるよ」という条件つきでした。シングルの夢を諦めてアイスダンスに転向、全日本選手権に出場して引退して、今はアイスショー出演を目指して20代半ばを越えてなお「フィギュアスケート」にしがみついている。

フィギュアスケートは「大学卒業」が「キャリアの終了」であることも多いです。例えば本田真凛選手は「競技を続けるのは大学まで」という発言があります。

そんな中で出会ったのが少女いのりです。フィギュアスケートへの情熱は人一倍濃い、でもお母さんは習わせてくれないのではとびくびくしている、フィギュアスケート以外はできないことが圧倒的に多い小学生の女の子です。
姉にもフィギュアスケートを習わせた、フィギュアスケート以外のものをいろいろ犠牲にしたが特に何の成果も得られなかった、この子にはそういうものを背負わせたくないという母と、フィギュアスケートをどうしてもやりたいといういのりと、この子には才能が有りますよっていう司と。

こう書いていると私の紹介が普通すぎてめっちゃ普通なんだよなあ。でも「情熱」とか「執念」とかそういうものを強く感じられる漫画で、フィギュアスケートが漫画(動かない絵)で表現できるんだっていうすごいものを読んでますよ。わたしは連載がはじまった当初、スケオタ方面からRTされてきて、「ネットで無料で読めます」枠で読んで移行コミックDAYSのサブスクを試したりアフタヌーン電書購入とかでリアルタイムで毎月読んでいます。

1話は今もコミックDAYSで無料公開されているのでちょっと時間があるとか鳩の口車に乗ってもいいという人はぜひとも読んでほしい。

メダリスト - つるまいかだ / score1 | コミックDAYS

でもね、本当にすごいのは今月のアフタヌーン掲載の最新話なんだよ。
この漫画はいきなり大会を描くんじゃなくて、まずバッジテストから書いてたんだけど、初級の子限定の、大会がついにはじまった。ライバルもいるしこの前であったばかりだけどもう2回転が飛べる子も出場している。
当然ながら大会なのでプログラムがあって振付があってどこで何のジャンプを飛んでステップがどうでっていうのがあるんだけど、漫画なんだけど(動いてないんだけど)すごいフィギュアスケートなんだよね。
TESカウンターみたいなのまであって。いのりの「勝つための執念」とか6分間練習で失敗してると引きずるとか、俺ならGOE加点5億点つけてるとか、地上波で放送される程度のフィギュアスケート中継でみんな普通にやってるフライングシットスピンがいかに難易度高い技なのかとか、メダリストを目指す、そのためならという執念を持つ小学生ってめっちゃあついよな。

いや本当にこう、コロナ禍で、フィギュアスケートの大会も通常の大会はかなり中止になっていて、ネーベルホルン杯とか地区予選大会とかはやってるけどグランプリシリーズがどういう形式になるのかはまだ分からなくて、まだあんまり試合を見ていないわたしはこの最新話は途中からぼろぼろ泣けてきたし、読み終わった後はyoutubeで全日本選手権とかグランプリシリーズとかいろんな動画を見ました。

わたしはジャンプ以外は本当に数えられるぐらいしか漫画読んでないんだけどメダリストとワンダンスはめっちゃ売れてほしいしメディアミックスもガンガンされてほしい。動いてるところめっちゃ見たいわ。静止画の漫画でさえすごい動いているのにアニメとかになったら脳沸騰するわって思うよな。

今朝から132話を何回も読み直している。

紙書籍のほうは在庫切れなのでkindle版にリンクを貼っておく。最近これtiktokでバズってめっちゃ売れたらしいのだ1
帯が衝撃的(僕の恋人は150人以上を自殺に追いやった殺人犯でした)なんだけど、そこまでセンセーショナルな内容じゃなくて、でもずっと青い蝶が一斉に飛び立つ絵面が脳内で見えてたな……。
凄く面白いけど凄く感想が書きにくい。「ゲームの指示に従って進めていたら最終的に自殺してしまうゲーム」ってちょっと前に現実にそういう自殺教唆ゲームがあるっていう話(なおこれはのちにデマであることが発覚)を見たけどまさにこんな感じ。それだけじゃないけどこんな感じ。

小学生の頃から人心を把握して操作することに長けており、誰からも愛されるクラスの中心人物、青い蝶(ブルーモルフォ)という自殺教唆ゲームのマスターをしていた寄河景とその幼馴染宮嶺の、特に寄河周りは極々最近でいうと同人女の感情の綾城さんと点対称っていう感じ。寄河は分かったうえでいろいろやっているし、綾城さんは自覚の有無は描写されていないけど同じぐらい人を動かしている。

誰に対してもどれぐらい「景がそう思うように仕組んだことなのか分からない」ところがすごいよな。人間の自由意思とは。

  1. って斜線堂さんのtwitterで見た []

youtubeにアップロードしている自作の演奏動画の再生回数を伸ばすため、ほんの気の迷いで女装動画をあげたらこれがバカ受けした村瀬真琴がいろいろあって3人の腕利きの女の子とバンドを組んで演奏するまでの話。

わたしは杉井光が書く音楽の物語が好きで、驚くほど寄せられる好意に気づかない男主人公も、好意が過ぎすぎて多少暴力的な行動に出る女の子も、まあ杉井光の持ち味だからねとおいしくいただいています。
が、今作の「丁々発止のやりとり」に混ざる「おふざけだと言える間柄」で繰り返される「お前は性犯罪者」っていう発言がもう本当に無理。「超高純度の青春ストーリー」と称される物語で女の子が「好意を寄せる男の子」に対して三者三様に「お前は犯罪者」だってたびたび言い放つのはフィクションとして普通の展開なんですかね。「仲がいい間柄で繰り返される愛のあるdisりワード」としてもあまりにもなんかこう……。ドストレートな下ネタのほうがまだましだった。
音楽やってるシーンはよかったので、そこだけは救われました。

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