カテゴリー「 単行本 」の記事

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背表紙は歌う (創元クライム・クラブ)

書店の新人営業マンと謎シリーズの第2弾。
取次ぎでの一件やらトークショー、出版社の倒産、直木賞(仮)待機、書店員による帯アオリ文と暗号。
「新刊ナイト」と「プロモーション・クイズ」が好きだな。やっぱり書店ミステリよりこっちのほうが好きだ。

ちなみに現在asta*では大手出版社の文芸編集者を主人公にした「クローバー・レイン」
同じ出版者を舞台にし、まったく興味のないローティーン向けファッション雑誌に配属された新人編集者が主人公の「プリティが多すぎる」
なんかもやっているそうです。そのうちシリーズ横断長編とかあるといいなあ。

四畳半王国見聞録

太陽の塔寄りの登美彦氏。
かといって今までどおりではなく「ひとりの阿呆」のみならず数々の阿呆大学生を取り上げ、誰の視点だか解らずあれっと思う作品もあり呑まれる感じ。よいよい。
「グッド・バイ」と「四畳半統括委員会」と「四畳半王国建国史」が好き。
「グッド・バイ」はあの微笑ましさから段々哀れな感じになってくる流れが好きなんだ。
大日本凡人會が真面目に異能集団である。モザイクさんはすごい。

昨今、一見普通のサークルのように見せかけて、その実、違法なビジネスや宗教に勧誘するサークルがあります。ソフトボールサークルに参加したつもりが、夏の合宿に出かけて見るとソフトボールにまったく関係のない教祖様が出てきた、などという哀しむべき逸話は枚挙に暇がありません。

(P166)

ゴールデンタイムを思い出す。四畳半統括委員会はあの議事録とか手紙とかが好きだ。

だいたい四国八十八ヶ所
(四国を)一周してみたい・(八十八ヶ所を)全部回ってみたい・いっぱい歩きたいという理由でお遍路開始。
ろうそくやら線香を割愛したエコノミーかつ民宿利用の区切り打ちである。

春になったからそろそろお遍路さんを多く見る季節がやってくるのである。
わたしは極当たり前にお遍路さんが歩いている環境で生まれ育ったのでよそから見るとどう見えるか知らない。なのでこの本はその別の視点から見えるっていうのが興味深い。
ちなみにこれと同じ時期の日記が載っているのがスットコランド日記 深煎りである。

なかには新町川にエイが出没した記録もあった。懐かしい。
そして鮎喰川にキャッキャウフフしていたのでそうかそれが既に凄いのかと驚く。
うんいや関東から来た人たちも新町川見て「中心地でこの透明度はおかしい」っていってたもんな。

私には香港人の友達がいて、日本が好きで、もう何十回と旅行に訪れているのだが、日本のどこが一番よかったかと彼に尋ねると、四国と即答する。人がものすごく親切だったというのだ。思えば、それも納得できる。彼はきっと、知らず知らずのうちにお接待文化の真っ只中を旅したのに違いない。

(P102)

いいよねなんか嬉しいよね。
わたしNHKの四国ニュースはほぼ見ない(=四国他県のニュースに触れる機会がない)ので同じ地方といえど関西のほうが馴染みがあるのでなんとも「四国」としてのひとまとまり感はないんですけど。
ちなみにマチアソビオフ主催のときのは「お接待してくるわ」というて家を出ます。
「オフ」とか言わないでもこっちのほうが理解されやすい。

51番の石手寺のところがやたらとおもしろかった。あの写真の攻勢はやばい。

多くのお遍路が、四国を特別な土地を思い見なし、ただそこにいるだけで感動したり、感謝したりする。冷めた目で見れば、へんろ道の9割以上はアスファルト道路で、中にはトラックがばんばん走る国道に過ぎなかったりするにもかかわらず、それは美化され、心の中で光り輝いたりする。
なかにはそうして美化することに反発を覚える人もいるだろう。だから、これから新たにへんろ道を歩こうとする者はみな、その一歩手前のところで、判断を求められることになる。
すなわち、この幻想を受け入れるか否か。
四国幻想にどっぷりハマるか。あるいは拒絶するか。

(P274)

待っている怪談 白い本 (ポプラポケット文庫 児童文学・上級)

主人公の子が「怪談の本」を読み始めて作中作を挟みつつ、現実となんだかリンクしていくのがこのシリーズなんですが、今回はちょっと切ない系。いわばちょっといい話系のホラーだと思います。

両親とも予定が入ったので「ぼく」が先にペンションへ行き、その行きの電車の中で女の子と出会う冒頭。
「ぼく」はなんだかよくわからない不思議な事態に触れていくのです。
怪談は「夜の訪問者」と「白装束」が好きだな。

不思議な羅針盤

大きいサイズ1のソフトカバーでエッセイ。
ひとつの章が長く家守綺譚より長いぐらい。話題もその中で入れ替わる。小説みたいだ。

「栗花落」で「つゆり」さんという苗字の人がいるらしい。梅雨入りの略かも? ということで。
新聞の集金のおじいさんの話が好きだ。

  1. 文庫本横置き2冊分ぐらい []

終わる世界のアルバム

ある日突然前触れもなく人が消えてしまう、そして「消えてしまったこと」が認知されず「元からいなかったもの」として記憶と世界が修正されてしまう世界の話。

塩の街とか外道王子を思い出した。
塩の街よりずっとずっと感傷的に叙情的にした感じのしんみり系。

人が消えていく世界で、写真を撮ることでそのひとの記憶を残しアルバムという墓標を作る主人公の僕。
「人が消えていることをただひとり認知してしまう」事実から自分を守るように人から距離を保っている。

滅びに向かう世界の話をするのではなく、その中で暮らす少年少女の話が語られる。
喪失と別れと繊細な動きが描かれている。誰か消えていないか教室の机の数を数えるくせがついた僕はある日机が一つ増えていることを知る。僕に写真をとられることを極度に嫌がる奈月と幼馴染みの莉子。

序盤で出てくる先生とかカメラ屋の親父さんとかはもうちょっと長く出ていて欲しいなと思った。
そいて恭子かあさーん、ととても思った。突然消えるのではなく、もうすぐ消えることを知ってしまった僕の胸のうちは、と思った

本に埋もれて暮らしたい (桜庭一樹読書日記)

桜庭一樹読書日記第4巻。製鉄天使のサイン会とか伏とかばらばら死体の夜とか準備段階のGOSICKとか。
製鉄天使と伏はまだ未読である。発売日付近に買ったのに!
読書日記は毎月のお楽しみとして読んでいるけど雰囲気が変わってまた新鮮な気分……と思いながら読む。
がっつがっつと本を読んで暮らしたいものだ。

巻末付録の女子会を読みながらいいなあと指をくわえる。

桜庭 一つのジャンルを、がーっと読んで詳しくなるんじゃなくて、全体のバランスを取りながら、小説という文化全般をうっすらとよくわかりたい、というか。

(P292)

わたしも多分こっちだ……というかこっちでありたい。
ただし国内に限るなんですが。

アンダスタンド・メイビー〈下〉

綾乃は久しぶりに出てくる「女の子」「優しい」「友達みたい」だったので癒されたなー。
相変わらず黒江がなんだか放っておけない感じの危なっかしい子で、あの日送られてきた写真の詳細にわーーー(゚д゚)ってなる。両親共に大概である。
師匠の仁さんはいいやつだ。救われたような気分になる。

謎解きはディナーのあとで

そういえばここに死体を捨てないでください!が気になっていたんだよなあと思った日。

プロ野球選手になりたかったけど色々あって警察官に落ち着いた、中堅自動車メーカーの御曹司の風祭警部。
その風祭家より大きな大企業の娘で残念な上司を持った宝生麗子。
宝生家の使用人、30代半ば、銀縁眼鏡の長身執事影山。

バカボン風祭に悩まされる麗子1が捜査について助言を影山に求め、丁寧に罵倒されるという短編集。
安楽椅子探偵系。そういえば人が死ぬミステリ読むのは割と久しぶりなんじゃないだろうか。有栖川有栖を除いてはめっきりと日常の謎系が幅を利かせていた。
雰囲気としてはとてもライトである。

他の作品も読んでみたい。

  1. といっても麗子もふつうのひとだ。 []

竜が最後に帰る場所

エソラで連載されていたもの。
鸚鵡幻想曲だけは既読。
迷走のオルネラは読みながらすごく衝撃を受けてもうちょっと落ち着かないと寝れないぞ……とふらふらしていた。
夜行の冬は好き過ぎて死ぬ。錫に呼ばれて夜の街を歩く。知らない街にいつの間にか自分の家が用意されている。再び錫の音に呼ばれて外に出る。夜の街を歩く。
夜行様に案内され歩く人々の道行きは気楽な夜歩きではない。
元の家にはもう戻れない。次の夜にはもしかしたらもういないかもしれない。脱落したら喰われる。
こういう話には毎回コロっといってる気がする。草祭が好きな人は好きなんじゃないだろうか……どうだろうか。

ふと外の遠く離れたところに妙なざわめきを感じとり、活字から目を離して耳を澄ました。
シャランという鈴のような音と、雪を踏む音、少しくぐもったががやがやとした話し声。そうしたものが混ざり合った気配。
気のせいではなかった。
ああ、《夜行様》だと、思った。酔っ払いの集団ではない。音にそれとわかる独特の陰りがある。

(P105〜P106)
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