晴れた日は図書館へいこうの大人版、もしくは大崎梢の書店周りのミステリを硬派にした感じの作品。
和久山隆彦は大学で司書資格をとって公務員試験に合格し、1年目から希望通りN市立図書館勤務となった。自分はなんたる幸運であることかと思ったことだが徐々に現実に打ちのめされることになる。
入職7年、調査相談課の一員としてレファレンスカウンター担当になって3年目になる。
しばしば自分が司書なのか、それとも一種の倉庫番なのか分からなくなってしまう感覚に襲われた。しょせん図書館など知の宝庫ではない。単なる無料貸本屋か、そうでなければコーヒーを出さない喫茶店にすぎないのだ。少なくとも市民の目にはそうなのだ。入職の六年とちょっとの月日は、要するに、そう諦めをつけるための月日だった。
(P21)
なんだかすみません(:D)| ̄|_ とお詫びしたい気分になる。
わたしが利用する図書館は「レファレンスカウンター」と名前がつくのは県立図書館まで行かないとないので1利用したことはありません。ていうか図書館の人に言うことって「返却です」「これ借ります」ぐらいしかないんだよな。あとはもう「書庫の本お願いします」と「予約の本取り消したいんですけど」とか。パターンがない。2
レファレンスカウンターだけに「本探し」がメインであるんだけど、図書館存続・廃止論も登場する。
3話の「図書館滅ぶべし」がすごかった。
「図書館はN市に本当に必要か」派の副館長から「今からいう条件に合う本を探せ」研修を調査相談課に課された。その本を探しあてる経緯・ようやく見つかったその本が出された時は「密室トリックが探偵によって鮮やかに解かれた」ようなすっきり感があった。色んな意味ですんげえええと思った。
「図書館の今後を考える」のが図書館内限定・館長権限でどうにかなるようなものならおそらく3話が最終話なんだろうけど、図書館存続・廃止論はこの後も続く。
「N市の条例の附則を知らんのか」
相手はいっそう表情を険しくして、凛々と言い放った。
「潟田直次にものを言われたら、和久山隆彦は決して逆らってはならない。そう明記されている」
「ほんとですか?」
隆彦が目を見ひらき、問いなおすと、
「なかったか、そんな附則」
潟田はがらりと顔をくずし、含み笑いをしながら、
「では作るべく議員への運動を開始しよう」
この一連のやりとりを隆彦はいくたびか頭の中で再生しなおし、ようやく条例うんぬんはからかいの文句だと気づいたが、反撃のすべを思いつかない。(P264)
書物というのは、ただ人間を助けるだけの存在なのです。最終的な問題の解決はあくまでも人間自身がおこなわなければならない。
(P283)