先日出たドラマCDのこれが想定外にすごく面白かったんですよ。
AIとか遺伝子操作とかシンギュラリティとかあまり耳慣れない単語や最近触れてない分野だったりで最新のあたりはどうなのかと思っていろいろ読んでみたのでそのまとめ。
S+h(スプラッシュ)長編ドラマCD「Code:6iX」

Code:6ixのあらすじをざっくり説明すると物語は2116年からスタート。人間が工場で大量生産されるようになって戦争へ駆り出されたり、かたや遺伝子操作で優秀な人間を生み出したり、時間をさかのぼれる技術が確立されている未来。
そこにやってくる「2017年の日本、東京で大学生をしている町田望」の暗殺指令。
これを実行しようとする陸軍将校スメラギとアンドロイドのヴィとジュノー。
阻止しようとする同じく未来から飛んで来る人間、イチカ・フタバとアンドロイドのZERO。

1時間のドラマCDで、語られていない余白はあれどストーリーとしては完結している、と思っている。ちなみに主人公としてこの抹殺対象になっている町田望ちゃんの扱いはどうなのかと思えば過去の事故で声を失っている。姿も声もないけど、ちゃんとそこにいる感じはある。

AIに心は宿るのか/松原仁

AIに心は宿るのか (インターナショナル新書)

読書メーターのおすすめ本ランキングメールで見つけた本。
筆者の松原さんは公立はこだて未来大学の教授で、人工知能が専門。
一時話題になった「AIが書いた小説が星新一賞の一次選考を突破した」プロジェクトの主宰者。
Code:6ixに出てきたシンギュラリティ後の〜っていうセリフがなんのこっちゃーと思ってその話をしているらしいと知って読んだ。

シンギュラリティ(技術的特異点)というのは未来学者でありAI研究者のレイ・カーツワイルが提唱した概念で、

「人間が生み出したテクノロジーが、急速に進化し、後戻りできないほどに人間の生活を変容させてしまう−−−−。その未来の到来をカーツワイルはシンギュラリティと呼称し、2045年と特定しています。

(P44)

将棋AIの躍進が進み、将棋界ではすでにシンギュラリティ後の世界となっている。AIの共存共栄を望む「共存派」、伝統的な棋士のあり方を望む「保守派」がいて、そのなかでもAIを使うことに対して最初から大して抵抗を持たない世代、AIネイティブ世代としてあげられる藤井聡太6段の話。彼は元々ある才能を将棋AIの活用でさらに棋力を磨き「歴代連勝記録の単独首位」となったなど。
「AIが書いた小説」「将棋界におけるAI」などに多く割かれている。
羽生善治永世七冠との対談も収録。「鉄腕アトムって実現する?」と言う羽生さんの質問に対して具体的に技術的にどのぐらい可能なのかという話も。

明日、機械がヒトになる ルポ最新科学/海猫沢めろん

明日、機械がヒトになる ルポ最新科学 (講談社現代新書)

小説家海猫沢めろん氏による、ヒトと機械の境界を探っての7人の科学者へインタビューをしたルポルタージュ。
これはすごく面白かった。SR(代替現実)、3Dプリンタ、アンドロイド、AI、ヒューマンビッグデータ、幸福学、それぞれの最前線で研究している人に話を聞くという。「ディープラーニングを体験してみた」ていう項目もあって、ディープラーニングとはという点では「AIに心は宿るのか?」よりこっちのほうが分かりやすかった。
「機械の人間化」「人間の機械化」「行動の後に意識は生まれる」「人間こそが最強のインターフェイスである」「心は定義できるのか」とか「幸せを感じる能力は半分ぐらい遺伝子の影響で決まっている」とか「幸福は数字で測れる」とか科学ってめっちゃロマン。

マグナ・キヴィタス 人形博士と機械少年/辻村七子

マグナ・キヴィタス 人形博士と機械少年 (集英社オレンジ文庫)

これは小説です。あとアンドロイドとかサイボーグとか出てくる海上都市を舞台にした冒険活劇なSFです。これは単に「新作出たぞヒャッホウ!」って買ったやつ。人工都市キヴィタスでアンドロイド管理局に勤める若きエリート、エルガー・オルトンは登録情報のない少年型アンドロイドを拾う。ワンと名乗る彼とエルは共同生活を始める。

という頭はいいけどなんかずれてる(ワンに言わせれば「クソポジティブ」)の感情表現とかが不器用な博士と苦労人のアンドロイドの2人の物語で、スメラギとヴィかと思えばどっちかというとイチカとフタバみたいな。そんな感じです。徐々に親密になっていくふたりを書かせたら辻村さんは素晴らしいと思う。

ちなみにこの方、デビュー作が過去様々な理由でロストした美術品を時間を飛び越えて盗み出すというものでこっちもおすすめ。

螺旋時空のラビリンス (集英社オレンジ文庫)