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カレーパンまん

「トキヤはカレーパンマンだったらよかったのにね。そしたら俺いつでもどこでもトキヤのカレー食えるのに」
「あなた馬鹿ですか」
「アンパンマンのあの古い頭ってどうなるのかな。昔は何とも思わなかったけどすげえ不思議。トキヤんちの子育て手伝わないなら俺アンパンマンとか見る機会なかったかも」

四ノ宮那月で『生き方は似ているのです』

手元の楽譜に目を落とす。いつもなら音符が踊って見えるのに今日は皆どこかへ隠れてしまっている。
「朝起きてごはんを食べて音楽を作ってピヨちゃんたちを日向ぼっこさせて」
楽譜で顔を大方隠しながら目だけ向かいを見る。
「でもここには翔ちゃんがいないから似ている生活でも全然違う。寂しかった」

藍で『誰にも渡さない』

「アイアイったら嫌々だったのに先輩馬鹿になって」
「何、悪い?」
「悪かないけどさ、おとやんとトッキーもしっかりしたし最近れいちゃんあたり強いんだよ。そこいくとなっつんも翔たんも可愛いしさ、交換してよ」
「嫌だね。あの2人はボクの後輩だよ。責任持ってボクが育てるんだ。誰にも渡さないよ」

嶺二で『こたえられない』

「どうしても答えられないの?」
「秘密だってっていわれてるからね。はまぐりのれいちゃんは口を割らないよ」
「ボクがこんなに頼んでいるのに?」
「どうしたのやけに食い下がるね? 翔たんにおねだりされた?」
「別に。ただボクには言わないでレイジには言うっていうナツキが気に入らないだけだよ」

嶺二で『先着順』

「先着1名様にれいちゃんのサイン入りCDをプレゼント! よってらっしゃいみてらっしゃい!」
藍の前にCDを差し出したが押し返された。
「いらない」
「なんで!?アイアイそんなにぼくの曲嫌い?」
「今日何日だと思ってるの?発売日とっくに過ぎてるよ。ナツキがうるさいから一緒に買いに行ったよ」

那月で『四十五秒以内の逢瀬』

手元にある最新の那月はスマホの中だ。ある日動画付きのメールが送られて来た。45秒少々のその動画は最初はひたすら地面を映しておりこれで大丈夫?などという那月の声が聞こえ、ようやく顔が映る。しかしそれもやたらアップで「翔ちゃん、僕はいま」で終わっている。ちゃんと教えておけばよかった。

那月で『どんな言葉よりも』

どんな褒め言葉よりも翔ちゃんに褒められた時が一番嬉しいと言っていた那月は今ここにいない。犬が散歩に行くみたいにして準備を整えてお気に入りのスーツケースを転がしてちょっと行ってきますと言ったまま帰ってこない。そういえば行き先を言われなかったなと気付いたのは少し経ってからのことだ。

トキヤで『いえない一言』

助けを求めることがひどく不得意でした。大抵のことは自分でできていましたし、まだ子どものうちに上京して長い期間一人暮らしをしていたので、仕事を介さない人との接し方に悩むこともありました。その点音也はそういうのがとても上手で学園時代から私はそれに振り回されることが多くて、困りました。

トキヤでわたしの涙は飾りなんかじゃないんです

「私だって涙のひとつやふたつ演技以外で流す事だってあるんです! 演技の装飾用じゃないんですよあなた分かっているんですか。心配ばかりさせるくせに本当に無神経なことばかり」「分かったからトキヤ、もうお酒はやめよ? 烏龍茶でも飲もうよ」「トッキーは元気だねえ」「寿さんうるさいです」

那月で『普通の尺度』

「普通の尺度では測れない」という那月への評価は誰しもが通過するところだったが、翔にとっての那月はもっと身近な存在だった。確かに理解しがたい行動は多かったがお互いによき理解者で無二の友人だった。2人はずっとこのままなのだろうと思っていたがある日その均衡は崩れることとなる。

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