「シアターフラッグ」はファンは多くついているけどどうしようもなく赤字体質の劇団である。
主宰の春川巧はせっぱ詰まって兄の司に300万貸してくれと泣きついた。司は「金は無利子で貸してやる。その代わり2年を限度に劇団が得た収益のみで返済しろ。今日から俺が債権者だ。債務期間中の資金繰りと予算決済は俺が管理する。返済できない場合は劇団を畳め」と突きつけた。
小劇団が登場する小説はチョコレートコスモスとかコッペリアとか読んだけど主に裏方、しかも金勘定方面が前に出てくるのはわたしが読んだ中でははじめて。
有川浩作品は割と何にでも恋愛が絡んで来てもちろんシアターにも片想いが存在しているんだけど、主に兄弟愛! というのもちょっとレアな感じがした。手塚兄弟とはまたちがう新鮮さ。
要するにわたしは兄ちゃんが好きすぎるという話である。
途中で出てくる「千歳が声をあてている少女向け変身ヒロインアニメ」はプリキュアかなあと思った。
この作品は沢城みゆき所属劇団の話を聞いて作りましたっていうのはあとがきとか解説とかダ・ヴィンチ 2010年 01月号にも載っていることですが、ネトラジ「沢城みゆきと12の夜」の12/26更新分でも有川さんがゲスト出演して主にシアターの話をするようです。
ちなみに現在配信中のは「有川浩に12の質問」っていう感じで、旦那への惚気とかかなり含まれてます。有川家はまじリアル植物図鑑でふいた(夫婦で散歩→野草収集→料理)。
読み終わった後、この春川兄弟なんかで既視感あるよなと思ってたんですがあれだよ巧=フェリシアーノ 司=ルートヴィッヒ。わたしの中でのはまり具合に相当笑った。
「守銭奴けっこう! 金は正義だ!」
(P59)
「よりにもよって業界のてっぺん持ってきて言い訳する奴があるか! 向こうが神だとしたらお前なんか脊椎発生以前の昆虫だろが!」
「せめて哺乳類にしといてよ!」
「やかましい、言い訳の浅はかさが虫並みだ! つーかシアターフラッグで初日の幕が開かないなんてことになったら払い戻しの金は誰が出すと……!」
(P117)