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文芸あねもね (新潮文庫)

電子書籍版も買ったけど紙も買ったよ。ちょこちょこ読んでいたけどはからずも今日読み終わった。
彩瀬まる,蛭田亜紗子, 三日月拓, 南綾子, 豊島ミホ,宮木あや子,山内マリコ,山本文緒,柚木麻子,吉川トリコの10名による小説集。
最初は東日本大震災復興チャリティとして売上100%を寄付する目的で電子書籍として販売された同人誌でした。「女のためのR-18文学賞」界隈の人が集まって、特に固定テーマは決めず好きなものを、固定ファンがいる人は固定ファンが喜んでくれるものを、そこの段階にいたってない人は新しい読者を獲得する気概でということで書かれたそうだ。この辺は巻末に紙書籍版のおまけとして制作のバックステージが一部公開されている。

「新しい読者を獲得する気概で」の通りこの人のほかの作品読んでみたいなあと思うのが多くてすごい。
柚木麻子は元々読もうと思ってて、南綾子は今積んでる幻冬舎文庫のアンソロに参加してて、蛭田亜紗子はデビュー作をチラッと読んだことがある。
「川田伸子の少し特異なやりくち」はすごかった。俺妹の黒猫があのまま30歳になったらこうなるのかなという感じだった。なんか刺さった! やめて! とか思いながら読んだ。同じささりっぷりは「ばばあのば」にもあった。

「あんた今、男いないだろう? でもそのうち適当に暮らしとれば出会いがあって、彼氏ができて、遅くとも三十五歳ぐらいまでには結婚できると思っとるんだろう?」

(P327)

これがなんかえらい衝撃で、衝撃っていうことは私心の底では結婚したいって思ってるのかなあ、いやでもその次はなんとも思わんなあ、なんやねんと思いつつ椅子に座ってぐるぐる回っていた1。そういえば10代半ばの頃には「25歳の頃には子どもはいなくても結婚ぐらいはしてる」って思ってたよなあ、ということを思い出した。そんなの幻想だって知るまでにそう時間はかからなかったけど。「ばばあのば」はどのぐらい実話なんやろと思った。
「私にふさわしいホテル」は文豪コールにいたるまでに笑った。あねもねの中ではこの3作がとても好きです。

エッセイの文庫落ちはあれどリテイクシックスティーン以降休業状態が続いている豊島ミホさんの新作が読めるのは今のところこれだけです。

ということで今度はこれを読もうと思います。

暗い夜、星を数えて: 3・11被災鉄道からの脱出

  1. ばばあのばは職場で読んでいた。土曜日だから人が少なかったので部屋を移動しなくてもよかった []

神田川デイズ (角川文庫)

大学生挫折物語。高校2年ぐらいの子に竹宮ゆゆこのゴールデンタイム〈1〉とあわせてそっと渡したい本。
やっぱり「リベンジリトルガール」が好きででも2番は「雨にとびこめ」が昇格してて3番が「花束になんかなりたくない」
変わらず華麗にえぐっていく本だなあ。「今すぐにでも死にたい」級の黒歴史が蘇ってぶるぶるした。
でも「部屋の隅っこで膝を抱える」ほどでなかった。

その言葉にマルちゃんと一緒にうなずいたことは、これから長い時間をかけて、「ただの思い出」とか「若気の至り」とかそういうものになってくれるんだろうか。今の私はそんな未来信じられそうにないのに。

(P171)

こうなってくれたんであろう。

やさぐれるには、まだ早い! (ダ・ヴィンチブックス)

L25でやっていたエッセイ。
この連載をやっているということでL25読みたかったんだけど首都圏のみとか無理だし取り寄せできるみたいだったけど送料はんぱねーという感じだったのでハンカチを噛んでいた覚え。

この本は今までになかった「彼氏」の話が初めて出てくる。しかしこの本の最後のほうにはもうぱきっと心が折れた感じで彼氏とは別れるし作家業は休業して秋田の実家に引っ込むこととなる。

底辺女子高生に出てきた放課後自習の恋の話、1人称「オラ→あたし」と引き換えに失ったKくんの話がちらりとあったりする。

「日記はロマンです」「その桜がきれいな理由」「ほやほや」の章が好きだ。

リテイク・シックスティーン

星星峡で連載してたやつ。1冊にまとまるのを待ってた。
キリのいいところまで読もうと思っていたら気がついたら読み終わっていたという。
あれだな。豊島ミホの長編を読むのは久しぶりだな。

放課後の教室で孝子がいかにも秘密を打ち明けますといった感じで話し始めた。
「あたし2009年から来たの。本当は27歳で無職の引きこもりだった。今度こそ青春らしい青春を送るんだ」というはじまり。
といってもSFSFした展開はなく、あくまで未来から来たと言い張る痛々しい人の話ではなくガチの青春。
語り手は孝子ではなく沙織。見た目はお嬢だけど実際はそうではない。

舞台は97年の地方1で高校1年生。携帯はまだない。
調理実習・球技大会・席替え・「教科書忘れたから見せて」・部活・彼氏が出来てはじめての海・進路・スキー研修
要素を並べるだけでも王道だなということが分かると思います……

序盤の大海君が可愛い。

笑点の話の時も、即座「小峰さんは誰が好きですか!」とこっちに接近してきたし、バドミントンにいたっては、私に向かって羽根を打つたびに「愛のサンダースマッシュ!」とか変な技名を叫ぶ。

(P68)

男の子って馬鹿だ。

自分は27歳だったという女子高生の口から語られる「かつての自分」はわたしの心のやらかいところを締め付けるわけですよ。私もうすぐ29歳を読もうと思っているけど大丈夫か。

働いていないから、一年前と今日の違いがよくわからない。気力がなくて家事もあまりしない。どうしてこんなことになったのか、ひとりで部屋に篭って考えてばかりいる。(略)
「沙織には……や、若い子は皆、わかんないかもしんない。人生が止まっちゃうって感覚。大学出ても就職できなくて、どこにも行き場なくて、でもひとりでやりたいようなこともなくて……まさに手詰まりって感じ」

(P198?200)

わたしはてっきりもう休業しているもんだと思っていたのですが、これが休業前最後の小説2なんだそうです。どおりで豊島ミホ休業エントリへのアクセスが多いはずである。

papyrus (パピルス) 2010年 02月号 [雑誌]

papyrusに休業前最後の特集が組まれています。

きっと、今この瞬間だけの幸福の重さを、みんながわかっている。

(P382)
  1. 「鶴賀」っていう地名が出てくるのでもしかしたら長野県。 []
  2. 書いたのは、という意味。まだ週刊アスキーで連載していた「廃墟の女王」が単行本化されていない。ちなみに今年は文庫が出るそうだ。 []

夏が僕を抱く

短編集。
幼馴染みラブと聞いて「檸檬のころ」みたいな方向を想像して読んだらどっちかというと「純情エレジー」とか「花が咲く頃いた君と」っぽい雰囲気だった。エロいという意味ではなく雰囲気として。でもエロありです。
幼馴染みラブなんですけど、甘酸っぱい方向を期待すると多分「び、微妙……」と思うのではないかと……
好きなのは「変身少女」と「遠回りもまだ途中」、その次に「夏が僕を抱く」かなあとおもった。

1話目の男子の名前が「鞠男」だったので本開いて小説本文1ページ目の1行目からふいた。
今何故かマリオカートDSが自分の中で超はやってる。超ブーム。

夜の朝顔 (集英社文庫)

田舎の小学校に通うセンリ。6年間クラス替えのないクラスでの毎日。連作短編。
ちゃんと月日が流れている。最初の話は1年生だけど最後の話は6年生になる。
1年でひとつの話というわけではないし入学ではじまって卒業で終わる話でもない。

「ビニールの下の女の子」の夜の不吉さ不安さとか暗闇の得体の知れない怖さとか「ヒナを落とす」のシノのポジションとか「だって星はめぐるから」のなんで一緒にいるんだろうと思うあの感じ、なんで知ってるんだと思うぐらい懐かしい生々しい感覚がそこにある。

五月の虫歯はHERO(冷たい校舎の時は止まる)方向に走るのか砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない方向に走るのか読んでてすごくどきどきした。

初めて見る真夜中の世界は真っ暗じゃなくて少し驚いた。道沿いにぽつぽつとくすんだ街灯が並んでいて、その間の空気は青みがかかった深緑だったり、また、カラスの羽根より濃い黒をしていたりした。窓ガラスにおでこを近づけると、ひんやりとした外の空気が伝わってくる。

(P55)

前提:6月末?7月頭の混雑が異常

『夏が僕を抱く』
祥伝社さんから7月11日頃発売です!
短編集です。恋愛小説誌「Feel Love」に掲載させていただいたものがまとまってます。
話がつながってる連作スタイルじゃないけど、6編全部「おさななじみ同士の恋」がテーマです。
告知板としま : 新刊情報(6/17)

豊島ミホ新刊は幼馴染みの恋だと……!

エバーグリーン (双葉文庫)

文庫化したので3人か4人ぐらいに布教した。思春期の約束、その10年後。
田舎在住のミュージシャン志望男子と漫画家志望女子が中学校卒業式に、「10年後夢を叶えてこのあぜ道で会おう」と約束してその9年10ヵ月後の話。
豊島ミホ作品のなかではこれと檸檬のころが私の中で鉄板です。大好き。
夢叶えた方も挫折したほうもちょーぐるぐるしてるなー。甘酸っぱくて滅びそうになった。

静まり返った部屋は、本当に何ひとつ物音が聞こえなくて、耳鳴りがしそうだった。
あけすけに恋バナのできる友だちも、彼氏も居ない二十四歳の私は、ただ十年かけて腐っていってるだけなのかもしれない。濡れた毛布のような思い出にくるまって、身体じゅうにカビを生やしながら。

(P145)

自分の感想読み返したらなんか今とは思ったこと違うんだけど、初読のときの感想もおいとく。
エバーグリーン/豊島ミホ

純情エレジー

デビュー作は読んでないのでR-18な豊島ミホを読むのはこれが初めてです
性描写ががっつりあります。エロス&郷愁。帰りたいとか帰れないとか帰ってしまったとか。
エロありというてもなんか乾いてるイメージがした。湿気とか粘度とかとは無縁な感じの。

「あなたを沈める海」「避行」「結晶」のあたりが好き。

「あなたを沈める海」「避行」の照は肩書きが「ライトノベル作家」で、この辺りがわたしの中でとても新しい。
というか田舎に残った遙が他人事じゃないです。

——わたしこの町でひとりで死ぬんだ。
小さな町。今は合併して、県庁所在地の市の端にくっついているけれど、海と山しかない、なんの娯楽もない場所だ。
東京がどんな場所なのか、わたしはきちんと知らない。修学旅行で行ったディズニーランドは千葉だというし、テレビで見る東京は、ただ大きな真新しいビルが並ぶくらいのイメージしかない。

(P57)

このあたりがね。うちもこんな感じなのだ。海と山しかない。
ちなみにわたしは「最初から上京という選択肢を持たず田舎で暮らすことを選んだ」人です。
東京はなんでもあるしオフ会はたまにすごく羨ましいしライブもすごく行きやすいけど、そこで住みたいとは思わないんだよなー妄想の中で「家とか就職とか生活の基盤不問でどこに住みたいか」とか考えても東京は明らかに圏外だった。

「おれ、東京に行く。別に、行かなくても小説は書けるんだろうけど、でも今じゃなきゃここを出られない気がするから」

(P43)

お正月にやってた一読永劫の桜庭さんの回の、ダブリンの駅のところで、「田舎は呪縛が強い」とかあの辺を思い出した。

ネタバレになるので作品名はあげませんが、ひとつ乙一の「失はれる物語」みたいなのがあって「あばばばばば」ってなった。とても怖い。(わたしは乙一作品の中では「失はれる物語」が物凄く怖いのだ)

初恋素描帖 (ダ・ヴィンチブックス)

再読。PBW用に10代成分が必要でちょろちょろ読んでた。
時間をかけて読むつもりが人災にあったので癒しが必要で一気読みをする。

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