夏が僕を抱く

短編集。
幼馴染みラブと聞いて「檸檬のころ」みたいな方向を想像して読んだらどっちかというと「純情エレジー」とか「花が咲く頃いた君と」っぽい雰囲気だった。エロいという意味ではなく雰囲気として。でもエロありです。
幼馴染みラブなんですけど、甘酸っぱい方向を期待すると多分「び、微妙……」と思うのではないかと……
好きなのは「変身少女」と「遠回りもまだ途中」、その次に「夏が僕を抱く」かなあとおもった。

1話目の男子の名前が「鞠男」だったので本開いて小説本文1ページ目の1行目からふいた。
今何故かマリオカートDSが自分の中で超はやってる。超ブーム。

変身少女
「鞠男が不良になるなら私も不良になる」とスカートを短くしようとしたり髪の毛を染めてみようとしたりする小学生女子→中学生女子の話。

らくだとモノレール
多摩の団地育ちの1個違いの男女の話。らくだ(男・18)・いるか(女・17)
2人は別々の学校へ通ってるけどある日一緒のような時間帯で学校サボって帰ることにした。
いるかは「らくだに彼女がいるのか?」と思うような物音を聞いた。

あさなぎ
小学校の時お姉ちゃんがキスしているところを見た。わたし3年生、お姉ちゃん6年生、相手はお姉ちゃんと同じ6年生の研吾くん。あのキスの記憶は23歳になった今でも鮮明に覚えている。
お姉ちゃんが結婚してわたしの元に見合い話が舞い込んだ。相手はあの研吾くんだった。

遠回りもまだ夢中
あたしと岬は中学までは一緒だったけどそれ以降は3軒隣に住んでいることも忘れそうなぐらい顔を合わせていなかったが受験を機に再会した。そしてあたしは近所の大学に受かり、岬は東京の難関大学を全部落ちた。大学生活を満喫して半年、久しぶりに岬のところにいった。くさっているところを初めてみた。
あたしは何かの機会に岬と一緒になってしまうのかもしれないと思うと次から真剣に恋人を探し始めた。

夏が僕を抱く
ミーちゃんと再会したのは夕立に降られて渋谷のレコード屋に駆け込んだのこと。
同じく駆け込んできた女がとなりにいた。濡れたカットソーから不似合いなほどゴージャスな下着が透けて見えている。誰かに似ていると思ったその人は夏休みごとに過ごした青森の祖父宅で遊んだミーちゃんだった。

ストロベリー・ホープ
護が帰ってきたというニュースを聞いた。「東京で大学生をしている」という以外は消息の知れなかった、小学校のころから誰からも「いい男子」と好意をもたれていた護。その護とセットにされていたラッキーな私。
そんないい男子とセットにされていていいのかと疑問を持ちつつ中学の頃から部活やら何やらでニコイチではいられなくなった。

らくだは十八、あたしは十七。世間では「幼なじみ」と呼ばれる関係なんだろう。けれど、そんなに甘やかなものではなくって、あたしとらくだはただの友だち。時間が合えば軽いお喋りやテレビゲームで楽しめる、お互いに便利な仲間なのだ。

(P50)

私が護に対してできることなんてあるんだろうか。——もっと言えば、一度東京に出てまで、何かを探した護に、「生きるために必要なこと」たるものが、この田舎で見つかるのだろうか。

(P222)