真綿荘の住人たち

台所風呂トイレ共同の共同生活度の高いあるアパートでの話。語り手が1話ごとに変更する短編集。
爽やか! っていう感じとか青春! みたいな方向ではないです。
真綿荘にはそれなりにややこしい事情を抱えた面倒くさい感じのひとたちしか住んでません。
「真綿荘の恋人たち」の結末はどうしてそうなった! っていう感じなんだがそれがよいハッピーエンドなのだろう。逆から辿る私の男っぽい。あと椿と八重子は百合だと思う。

すぐに呼吸が苦しくなるほどに鼻が詰まって、いそいで数枚の紙ナプキンを引き出して顔を覆いながら、自分でもびっくりするほど溢れて止まらないものに揺さぶられて、嗚咽が、吐き気のように込み上げました。
愛されないことを受け入れるのは、いったんあきらめてしまえば、たやすかった。だけど、こんなにも長い間、持ち続けていた悪い夢が色褪せていくなんて、想像もしていなかった。

(P237)