純情エレジー

デビュー作は読んでないのでR-18な豊島ミホを読むのはこれが初めてです
性描写ががっつりあります。エロス&郷愁。帰りたいとか帰れないとか帰ってしまったとか。
エロありというてもなんか乾いてるイメージがした。湿気とか粘度とかとは無縁な感じの。

「あなたを沈める海」「避行」「結晶」のあたりが好き。

「あなたを沈める海」「避行」の照は肩書きが「ライトノベル作家」で、この辺りがわたしの中でとても新しい。
というか田舎に残った遙が他人事じゃないです。

——わたしこの町でひとりで死ぬんだ。
小さな町。今は合併して、県庁所在地の市の端にくっついているけれど、海と山しかない、なんの娯楽もない場所だ。
東京がどんな場所なのか、わたしはきちんと知らない。修学旅行で行ったディズニーランドは千葉だというし、テレビで見る東京は、ただ大きな真新しいビルが並ぶくらいのイメージしかない。

(P57)

このあたりがね。うちもこんな感じなのだ。海と山しかない。
ちなみにわたしは「最初から上京という選択肢を持たず田舎で暮らすことを選んだ」人です。
東京はなんでもあるしオフ会はたまにすごく羨ましいしライブもすごく行きやすいけど、そこで住みたいとは思わないんだよなー妄想の中で「家とか就職とか生活の基盤不問でどこに住みたいか」とか考えても東京は明らかに圏外だった。

「おれ、東京に行く。別に、行かなくても小説は書けるんだろうけど、でも今じゃなきゃここを出られない気がするから」

(P43)

お正月にやってた一読永劫の桜庭さんの回の、ダブリンの駅のところで、「田舎は呪縛が強い」とかあの辺を思い出した。

ネタバレになるので作品名はあげませんが、ひとつ乙一の「失はれる物語」みたいなのがあって「あばばばばば」ってなった。とても怖い。(わたしは乙一作品の中では「失はれる物語」が物凄く怖いのだ)

『悪魔』でも恋に生きる—真・運命のタロット〈5〉 (講談社X文庫—ティーンズハート)

《死神》とのフェーデ終了。
勝ったはずなのにすごく容赦ない展開だった。ん? えええええ?って感じの。
ゴーリキー一家……。今後救いとか光とか見えたりするのかな……とおもった。
《女帝》と《皇帝》の登場がわたしにとっては救いだった……そして黒《恋人たち》へ。

それはさておき《審判》の持ち曲、緋色の囁きに反応した。どことなく綾辻行人っぽい。

「前に向かって進むしかないんよ」
文華がいう。「起こってしもうたことに、"改変"以外の方法で向き合うしか、うちらにはできへんのよ」

(P18)

「《女教皇》がもし、三十億の人間たちを、その小さな背中に背負っていたとしても《魔法使い》は《女教皇》を抱きしめるのにためらいはしない。《女教皇》が、その小さな背中に罪の刻印を背負っていたとしても、《魔法使い》は《女教皇》を抱きしめるのにためらいはしない」

(P163)

「生きていく代償を支払えばいいのよ!」

(P262)

フラクタル・チャイルド—ここは天秤の国 (コバルト文庫)

でるたさんちのLNFレポを読んで再読。
サキはいいヘタレです。しかもたれ目で家事万能の「いいひと」どまりのオカン型です。よいもえです。
新大陸に移住・半分壊れた都市に住む人々・殺人事件・未知の麻薬・カーチェイス・電脳戦・寄せ集めの家族。よいもえです。強調したいことなので2回言いました。

「簡単だよ。意地も見栄もプライドも、何もかもドブに捨ててでも生き残りたかったからだ。守らなければならないものが、人にはあったんだ」

(P220)

彩雲国物語  黄粱の夢 (角川ビーンズ文庫)

短編集。相変わらずがっつり加筆修正かかってます。
分厚いです。この巻はほとんど秀麗は出てきません。主には静蘭と燕青の過去話です。
あと清苑が国を追われるまでの話と、八仙まわりとか・薔薇姫と邵可の出会いとか。

静蘭と燕青の組み合わせは嫌いではないけど、今更殺刃賊時代の話っていうのもねえというのが多分乗り切れなかった理由。たぶん茶州編やってるときぐらいならおいしくいただけた。

ロマンス小説の七日間 (角川文庫)

あかりはハーレクイン的な小説を翻訳しつつ恋人神名と半同棲している。
あかりが今まさに翻訳している中世騎士ウォリックと女領主アリエノールの恋物語と、あかりとその周辺の人々の話が描かれる。原書では最終的に幸せにむすばれ愛を深め合うウォリックとアリエノールだったが、あかりが創作をはじめどんどん奇妙な方向へと走っていく。同時にあかりと神名の関係もこんがらがっていく。
2組の行方は。という。
あとがきも面白いです。ていうか作中で編集さんに心配される「体毛描写」で三浦さんそのものを思い出す。確か胸毛に並々ならぬパッションをもっていたはずだ。

 その意味ではロマンス小説って、すべて「ファンタジー」だ。麗しい外見でちょっと気が強くて、処女で心根の真っ直ぐなお姫さまが、かっこよくてちょっと粗野で、過去のあるホントは心根の優しい騎士と恋に落ちる。二人を陥れようとしたり、横恋慕してちょっかいを出してきたりする悪役に翻弄され、互いの思いがすれ違ってすったもんだした後に、忠実な部下や侍女の助けもあって無事誤解が解け、二人は末永く幸せに暮らすのでした。ハッピーエンド。
 まずこの展開で間違いない。濡れ場が何頁に来るかもだいたい見当がつくぐらいだ。これを幻想と言わずしてなんという。
 まあたしかに、楽しいんだけどね。わたしも好きだもん。

(P27)

絲的サバイバル

ひとり、時々複数人で関東甲信越やセネガルでキャンプをしてみた。
サバイバルというかアウトドアです。読んでる途中豚汁がとても食べたくなりました。
神奈川県三浦市でキャンプの章もありました。

名前を出すわけにもいかないので便宜上彼のことを「宇宙人」と呼ぶことにする。

ふーんと思いながら次のページ、「宇宙人が懇意にしているという魚屋『まるいち』」
どう考えても宇宙人=いしいしんじじゃないかああああああああと思った。意外なところでの邂逅。

日頃霊感なんかはない。怖い思いなんてしたことがない。けれどここは、びんびん感じるのだ。
出た、なんてもんじゃない。気がついたらそこかしこに出ている、という感覚。(略)
見えないんだけど本当に聞こえるのだ。
具体的にどんな音かというと、正面からはものすごくスローで暗いディキシーランドジャズみたいなの、男の声、四人か五人歌っている、楽隊もいる、右からは鳩笛、これは女三人ぐらい、後ろからは、ざざ、ざざ、という引きずるような不規則な足音ですよ。

(P132)

オルキヌス 稲朽深弦の調停生活 (GA文庫)

幻獣が棲む島オルキヌスに幻獣同士の諍いの仲裁をする調停員としてやってきた稲朽深弦。
所属するはずだった事務所は幻獣は入れない街から離れた場所にあり、しかも上司となるはずの傑物秋永壱里は絶賛失踪中だった。そのことはごく一部の人間にしか知らされていない。島に上陸できる人間が限られている以上壱里の不在が分かれば深弦のかわりにベテラン調停士が送り込まれるだろう。深弦は壱里の不在がばれてもオルキヌスにいられるように調停のしごとをはじめた。

オトナリサンライク 方向かと思ったら生徒会みたいな会話重視のほのぼのコメディでした。
会話重視の話は波にうまく乗っかれればとてもはまって面白いのですが、いったん外れてしまうとすごい勢いで失速してしまう。ということで続きはやめておく方向にしました。

「よくぞ聞いてくれた! 俺の名は海原の疾風ことアトランティックマッカレル!」
「そして俺の名は海底の探索者ことフラットヘッドマレット!」
『二・人・合・わ・せ・て!』
「ああ、サバとボラね」
「和名で呼ぶんじゃねええええええええ!」

(P73)

氷の海のガレオン

氷の海のガレオン/オルタの前身。こっちにしか入ってない短編が読みたくて読んだ。
2回目ともなるとガレオンも冷静に読めます。死ぬ死ぬ言いながら転がらなくても読めます。
たまにひりひりはするけどわたしは元気です。

天上の大陸がよかった。微妙にガレオンと繋がっていた。日本が舞台だと思うけど日本じゃないみたいだった。

もうだめだよう、わたしには耐えられないよう、助けに来てよう、と叫んでいても、もっと深い所では出口が見えている、という事が。
そういう時は、どんなに頼んでも、出て来てくれなきゃ死ぬと言おうとも、絶対ソーマは来てはくれないのだ。
そういう状況に陥ったなら、まず、泣き寝入りでもいいからひとねむりして、こころを落ち着けて、『自分がどっっこも嘘ついてないか、自分のことをひとっっっつも偽ってないか』を探さなくちゃならない。
すると、何となく、見えてくる。

(P124-125)

うれしくて、うれしくて、涙があふれ出した時、先のほうに、ぽつんと強い光の入り口が見えた。
あの光の所まで行ったら、絶対に、何かを疑ったりしてはいけない。

(P165)

クリス・クロス—混沌の魔王 (電撃文庫)

ソードアートオンラインを読んだらとても再読したくなったので……わたしの10代がいまここに!
SAOは確かにクリスクロスなんだけど、クリスクロスから連想するなら迷宮街クロニクルかクラインの壷だよなと思いました。SAOは塔を昇るMMOだけどクリスクロスは迷宮を潜るゲームだから。
甘さがかけらもないこのラストは何度も読んでても素敵。懐かしかったー!

“文学少女”見習いの、初戀。 (ファミ通文庫)

このラノ2009とかかつくらのインタビューで言われていた「心葉1人になった文芸部に後輩(女子)がやってくる」外伝。心葉ちょっとたくましくなった。少なくとも脱ヒロインはしてるとおもうんだ……

今回のテーマは曽根崎心中。
文学少女外伝は恋する後輩ちゃんこと菜乃の一人称なのでとても少女小説っぽい。
菜乃に対する心葉はとてもツンだった。

4章の後半からは脳内劇場で実写的に上映スタートだった。ここらへんとても好きー。
その次が麻紀ふたたびあたり。
菜乃と死にたがりの道化のラストの遠子先輩がだぶるねー。だぶるねー。

「なんです、その残念そうな顔は。ツンデレにもほどがありますよ」
「きみに見せるデレは、最初からない」

(P105)

——この貝殻の分だけ、生きてください。
——幸せになってください。

(P289)
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