カテゴリー「 単行本 」の記事

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嘆きの美女

耶居子は新卒入社した会社もアルバイトも続かずヒキニート生活をしていた。生活のお供はジャンクフード/ヲチ板/ブログの荒らしと粘着/写真から個人情報を特定/通報・炎上・ブログ閉鎖に追い込むことという、すごく駄目人間だった。

今の玩具は「嘆きの美女」というお悩み相談コミュニティだった。耶居子はあれこれと駆使するがここの住人は煽り耐性が高すぎる。ならば「自称美女」の写真を晒し上げてやろうではないかとオフ会会場(ケーキ屋前)でカメラ片手に潜んだが、驚いたことに本当に美女ばかりのオフ会だった。
そしてオフ会参加者のひとり、ユリエのストーカーともみ合いになり乗用車にはねられ入院した。

退院後の耶居子は「嘆きの美女」オフ会参加者が同居している家で療養していた。あのコミュニティの管理人は小学校のときの友達で、休職中の看護師もいるこの家で是非とも療養をかねて御礼がしたい、と耶居子の母親に頼み込んだ。この家の住人は早寝早起き・健康な食事・適度な運動という健康的な生活をしており、外見も中身もブスだった耶居子は多少美人になる。攻撃的過ぎた生活も多少マシになった。
やっぱり陰険でひがみっぽいところもあるが魅力的な女性にはなる。

「終点のあの子」の奥沢エイジも登場する。
朱里はもう大学生になっていて、エイジの話の中に登場するけど本人は出てこない。

耶居子はこのあとフードコーディネーターの道へ進む。ジャンクフードを再現していくのだがでっかいコアラのマーチとかまじ美味そうで死ぬ。これに限らず食べ物の描写の「美味そうな感じ」がもう本当に半端ない。
「耶居子のごはん日記」は深夜に読むのはお腹と体重へのテロでしかなかった。

上等な土鍋の中には澄んだおつゆと、つやつやの白いうどん。とろんとした卵、かまぼこ、椎茸、ほうれんそう、焼き目のついた餅、ネギ、そしえぶっとい海老天が沈んでいて、いまにもほかほかと湯気が上がってきそう。

(P245)

終点のあの子

思ったよりびっくりするほどスクールカーストの話。
世田谷の私立お嬢様高校の普通グループの希代子は、外部からの編入生で有名カメラマンの父を持つ朱里と仲良くなる。朱里があまりに自由で、休みも多いのに先生には愛されてどこのグループにもまんべんなく付き合って、自分に正直なところに羨望を抱いていたが日記を盗み見したところからやがて嫉妬や怒りが沸いてくる。
クラスを扇動してクラス1の派手系女子も動かして朱里をいじめる。それも長くは続かなかった。
そういう話「フォーゲットミー、ノットブルー」からはじまる。

1番好きなのは「二人でいるのに無言で読書」である。
フォーゲットミー、ノットブルーにも出てくる派手系女子恭子の話。夏休みだというのに彼氏とも別れて店の手伝いもせず一人暇つぶしのため図書館にぶらぶらいってみたらクラスの地味女子「ウィンナー指」早智子と出会う。
恭子は本なんか読まないけど早智子の「本の話」は好きだという。早智子は「本は好きだ。恭子とは話は合わないけど綺麗。」というふたりが頭をつき合わせて無言で本を読み、時々本の話をして、ごはんを食べて一緒にいるという。恭子は人の目がすごく気になって、早智子は周りのことには割と無関心で、でも恭子といる時間は楽しいなあと思っている。
クラスの上位グループの女帝とオタクグループに潜む地味女子。その出会いにはじまる夏休みの話。

柚木麻子の単著を読むのはこれが初めてだけど、心理描写がすごくいい。
2学期デビューのため禁止されているバイトをするとか、自分以外の女子は皆普通とか、ここまで堕ちてくればいいとか、10代女子の自意識とか劣等感とか嫉妬とかたまらないな。まじ美味だな。

とにかくうちに帰ります

「職場の作法」・職場の作法のスピンオフみたいな「バリローチェのファン・カルロス・モリーナ」・「とにかくうちに帰ります」の3篇。会社員小説です。

職場の作法はなんだかあちこちに見覚えがありすぎた。あるあるあるwwwwwみたいな。とても他人事ではない。浄之内さんが好きだな。「とにかくうちに帰ります」は穂村弘さんのエッセイみたいなタイトルだなあと思いつつ、読んでみたら台風みたいな天候で帰宅難民化している人々の話だった。
これを読んでいた昨日は「あしたは台風並みの春の嵐」とニュースで見ていたので、これらは明日の私か思いつつ読んだ。元妻と子どものためなんとか家路を急ぐ人とか、とにかく家に帰らなくてはいけないのだ! という人々の話。読んだ時期がこれまた他人事ではなかった。布団の中でずぶぬれになりつつ歩いている感覚を思い出した。

ペリカン ペリカーノJr - Pelikan Pelikano Junior - 本体:ブルー 万年筆

作中に出てくる万年筆。色が複数あって可愛い。

北の舞姫  芙蓉千里II

須賀女神様さすがやでェ……といわずにいられない展開の連続だった。
流血女神伝はまだぬるいと思える連続。「困難をものともせず立ち向かっていく」では済まされない何かがあるよな。
酔芙蓉を離れ黒谷の支援で元々日本人が暮らしていた屋敷で暮らし舞姫芙蓉としての日々を過ごしている。
舞に対する苦悩や黒谷との齟齬、黒谷の弟武臣襲来や名バレリーナエリアナの存在。2回の慰問。
いやもう地面にたたきつけるような所業ですよ須賀女神様。生きたまま翼もがれてますよ。
雰囲気は重苦しいんですがとても面白かったです。重苦しいけど。
とりあえずこれでsari-sariの第3部が読めます。スマホ版バンザイ。

夏の王国で目覚めない (ハヤカワ・ミステリワールド)

ミステリ作家三島加深の隠されたファンサイト「月の裏側」に集う人々に管理人のジョーカーから1通の招待状が届く。三島加深の未発表原稿を書けて架空の殺人劇をしないか、参加するしないは自由に決めてもらって構わないが事前の打ち合わせなどを防止するため「月の裏側」は閉鎖する。

そして高校生の天野美咲は「九条茜」としてこの架空遊戯に参加する。
要するに宿泊ありのオフ会。ただし本名やハンドルを名乗ることや外部と連絡を取ることなどは禁止されている。
開かれているけど密室のようなもので時折ジョーカーから指令が届きそれに従って劇を行う。

県庁おもてなし課

高知県をもっと観光都市として盛りたてようぜ!
そのためああでもないこうでもないと会議をした高知県庁おもてなし課がPR大使に依頼した作家吉門に「これだからお役所は!」って言われるところからはじまる物語。

高知は
夏のくじらとかやっちゃれ、やっちゃれ!?独立・土佐黒潮共和国とか面白い本があっていいな。徳島は眉山とか吉野北高校図書委員会とかかな1。小説じゃないけどいろどり おばあちゃんたちの葉っぱビジネスとか。

四国は交通機関が発達してないので四国他県に行くぐらいなら関西に出たほうが近いという立地。
高知は2回ぐらい行ったけどいいところでした。
1回目と2回目の間で高知に自動改札が導入されたのでとても都会になってました。

この本自体が「高知ガイドブック」みたいになってて面白いなあと思いました。馬路村はごっくん馬路村がすごいという話しか聞かないんだけどこれはすごい。
免許なし×日帰りJRだとどうしても滞在時間超短くなるんですが日曜市は面白かったしひろめ市場はあの雑雑とした感じがよくてたたきは美味しかったです。

おもてなし課に来る前の多紀の身上がとても自分のことのように感じられてぶすぶすささった。

それはそれとしてカツオ人間断面まであってわろた

  1. 阿波DANCEは黒歴史 []

深泥丘奇談・続 (幽ブックス)

奇妙なテイストの怪談短編集第2弾。2弾といっても特に繋がった話ではないのでどこからでも読めます。
京都っぽいところをモデルにした本格ミステリ作家の「私」が色んな目に遭う。
なかにはこんな夢を見た みたいな感じではじまるのもある。
可視化された(そして手術で除去できる)心の闇笑った。「狂い桜」と「ホはホラー映画のホ」が好きです。
まじ不気味だったのは「コネコメガニ」ぞっとした。

これ読んでるときに掛け軸がどーん落ちてびびった。紐がすっぽ抜けたらしい。

ゴーストハント?旧校舎怪談 (幽BOOKS)

すごーく昔にコミカライズでちょっとだけ読んでいた。そのときには既に入手困難だったのだ。
学校の怪談ではじまり、幽霊が出ると噂の旧校舎の調査を依頼された「渋谷サイキックリサーチ」の所長は若干17歳だった。麻衣はビデオを壊した代償として助手として手伝わされることになった。
幽霊で、巫女に坊さんに神父に口寄せと色々非日常なんですがナルは超科学的だなあと懐かしく、しみじみ。

なつい。
朝顔が急に伸びてきました。ぐんぐん。

このTLが2次元。この世は空想病。

オーダーメイド殺人クラブ

中学2年の4月、アンは友人達から無視されていた。
クラスの上位カーストバスケ部所属で女帝の友達。赤毛のアンが好きでいまいち詰めの甘い母につけられたこの名前は正直ちょっと……と思っている。少年犯罪と死に興味を持ち母との関係と教室での立ち位置に絶望感を感じている。アンはクラスの地味男子で自分と同じセンスを感じる徳川勝利に「自分を殺してくれ」と頼み2人で事件の起こし方死体の装飾について検討しあう。

コウちゃん!
息が詰まるような女子のやりとりと、今日楽しく遊んでいた子がある日豹変したりもう味方ではなくなっていたりこの感覚は懐かしい。なにかにすがって日々を生きるような。授業に行きたくないから学校が爆発すればいいみたいな。P266とかちょうすきだ。あのへんは好きだ。もうどうしようもなくなったどん詰まり。

「来年までに、私は、徳川に殺してもらえる。殺してもらえる。殺してもらえる」
呪文を唱えるように口にすると息が切れた。
そこから先は、胸の中で言い聞かせた。
だから私には関係ない。私には関係ない。私は、芹香や倖や、あんな教室とは関係のないところへ行ける。私には、全部、関係ない。
「私は徳川に殺してもらえる」
声がまた、泣き声になる。やけになって叫ぶように、呟く。大声になっていく。
「殺してもらえるから、大丈夫! 絶対、大丈夫」
顔を空に向けると、泣きすぎてひび割れた瞼の縁に涙が沁みた。

(P239)
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