暗い夜、星を数えて: 3・11被災鉄道からの脱出

2011年3月11日、一人旅の最中にJR常盤線新地駅で被災。
被災時の5日間とその後2回にわたる福島訪問のルポ。

仙台からいわきに移動する最中に地震は起きた。被災した駅の500m向こうはもう海。
津波が町を飲み込んでいくのもみている。16時過ぎに福島原発で爆発の報が防災無線で流れ、一度は誤報とされるもニュース速報で福島原発で爆発のニュースが流れる。「情報は制御されている」の一文に震える。

散策路を上って町を見渡せる広場へ辿りつくと、五キロほど先だろうか、青い林の切れ目から甘い色をした穏やかな海が見えた。海面に特に異常は見つけられない。高台の足元からのどかな町並みが広がり、海の近くは平野になっている。
はじめはなにも気がつかなかった。景色を見ながら、弟さんが言った。
「本当は、ここから海は見えなかったんだ。防風林に完全に隠れていた。それに林の手前には、住宅地があった。もう、なにもないな」

(P26)

3月13日の話である。

水が怖い、土が怖い、子どもの将来が心配だ。引っ越しても、子供がいじめを受けるのではないか。うちのお米も、野菜も、美味しかったんだ! なのにもう、今までのようには贈っても喜んで貰えない。自分でも、今までとおなじ気持ちでは食べられない。こんな、雪のように降り積もる悲しみを、どう購えるというのだろう。

(P104)

1年半ほど前に現実にあって今も続いている話。120ページほどの本で淡々としていてすごく身近に感じられる。西日本で地震もたいしてない地域の住人ながら立地的に「明日は我が身」と寝つきの悪かった夜を思い出す。