カテゴリー「 小説 」の記事
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中学2年の4月、アンは友人達から無視されていた。
クラスの上位カーストバスケ部所属で女帝の友達。赤毛のアンが好きでいまいち詰めの甘い母につけられたこの名前は正直ちょっと……と思っている。少年犯罪と死に興味を持ち母との関係と教室での立ち位置に絶望感を感じている。アンはクラスの地味男子で自分と同じセンスを感じる徳川勝利に「自分を殺してくれ」と頼み2人で事件の起こし方死体の装飾について検討しあう。
コウちゃん!
息が詰まるような女子のやりとりと、今日楽しく遊んでいた子がある日豹変したりもう味方ではなくなっていたりこの感覚は懐かしい。なにかにすがって日々を生きるような。授業に行きたくないから学校が爆発すればいいみたいな。P266とかちょうすきだ。あのへんは好きだ。もうどうしようもなくなったどん詰まり。
「来年までに、私は、徳川に殺してもらえる。殺してもらえる。殺してもらえる」
呪文を唱えるように口にすると息が切れた。
そこから先は、胸の中で言い聞かせた。
だから私には関係ない。私には関係ない。私は、芹香や倖や、あんな教室とは関係のないところへ行ける。私には、全部、関係ない。
「私は徳川に殺してもらえる」
声がまた、泣き声になる。やけになって叫ぶように、呟く。大声になっていく。
「殺してもらえるから、大丈夫! 絶対、大丈夫」
顔を空に向けると、泣きすぎてひび割れた瞼の縁に涙が沁みた。(P239)
コンビ結成してM-1にも出れなくなるぐらいの年季を積んだけど鳴かず飛ばずの芸人の物語。
お互い腹を割って本音をぶつけ合おうと交換日記を始めることにした。合意の上ではじめたわけではない。
近所に引っ越した甲本が田中の家のポストに交換日記しようぜとノートを入れる。田中は律儀に「嫌です」とだけ書いて翌日に返す。
脳内でDkが点滅した。
交換日記に否定的だった田中が落ち込んでいる甲本を慰める。慰める。時にはバイト先へ押しかける。
お笑いのコンテストを目指す。一生懸命ネタあわせして「俺らやれるよ今ならトップ取れるよ」と輝く。眩しい。
片方のために夢を諦める。相方を生かすために10年以上もがんばってきた芸人としての自分を殺す。なんというコンビ愛。このデレがすごい。
(略)川野さんから、コンビ解散して作家でやれば、絶対作家として売れるって言われたらしいと聞いたけど。
本当のこと、教えてくれ。
6月30日 甲本へ
本当だよ
7月2日 田中へ
なんで隠してた??
7月3日 甲本へ
隠してたつもりじゃない。でも、ごめん
7月5日 田中へ
なんで相談してくんなかった??
7月6日 甲本へ
ごめん。
7月6日 田中へ
つうか、なんで断った!!
やってれば今頃、お前、貧乏生活しなくてすんだだろ?
7月7日 甲本へ
単純だよ。
甲本と漫才をしていたかったから。(P43)
「女による女のためのR-18文学賞」大賞作品。
全5話の連作短編で、斉藤卓巳君が中核なんだろうか。
この子のガールフレンド、一時期関係を持った主婦、友人、母などの視点で語られる。
1話が冒頭からちょっと引くレベルでえろい。なんたっていきなりどんである。
主婦がコミケでナンパした男子高校生に札つかませて脚本書いてそれにそってコスプレでピーなのである。
とりあえず本を閉じて1週間ぐらい寝かせて再度読み始める。性的な意味で結構えげつないのは最初の1話だけである。あと基本的には結構悲惨な話が多いです。無惨な事態さ。
「世界ヲ覆フ蜘蛛ノ糸」はなんというか、気持ち悪い話だ。
ストーリーセラー2収録の有川浩のヒトモドキのような気持ち悪さ。こっちのほうがさらにえぐいとは思った。
1話で出た主婦視点の話。「あなたがもっとがんばらないからよ」って怖い。妊娠こえー。
こえーとおもってたらさらにこえー展開。なにこれやばい。
「セイタカアワダチソウの空」はうってかわって黒い。2035年が比較的あれだったのでとても黒い。
ハチクロのはぐとおばあちゃんの二人だけのおうちを思い出す。田岡さんが花丸つけてるシーンになぜかじーんときた。なんでもないワンシーンだけど、JR内だったのでこれはやばいと思ってそこで中断した。
この話はすごかった。この子が一番心配だ。
花粉・受粉は命が生まれてくる現場は凄い話だった。でもあの壷はだめだ。よくない。
学校の授業や、テレビでは絶対味わえない、いのちの出来事に、心を奪われてしまったのだ。初めてお産に立ち会ったとき、産婦さんの体から流れ出てくる羊水の温かさに感動した。こんなに温かくてやわらかな水の中でいのちが育ち、この世界に生まれ出てくる。その現場にいつもいたかった。
眠れなくても、食事が出来なくても、儲からなくても、お産の場所にいたかった。(P226)
大安吉日、老舗のホテル・アールマティで行われる4組の結婚式。新郎新婦や出席者の思惑や事情が交錯する晴れの日。
鞠香と妃美香が好きだ。双子補正か。いやでも凄く好きだ。ぎゅううと絞られるような思いだった。ふたりのこれまでとか小学生の願いとか久しぶりのあの人たちの登場とか、ピアノとか何回ももうここからは読めない!(くるしい!)と思いながら読んでいた。とてももだもだした。
P74のあたりは島田紳助の声で再生された。すりこみこわい。
映一が持ってる「君ら以上のややこしさ」がなんなのか表に出る日は来るのだろうか。恭司と月子が久しぶりに登場したようにまた会える日が来るだろうか……。
まじで結婚式って300万も? とおもった。
友達は人前式で12だったっていってた。別の友達の結婚式では「え、この曲……クラナド……?(挙動不審)」「まあ不思議ではないだろ(黙々」「クラナドって何?(知らなければただのBGM)」ということがあった。
こちらはゼクシィよりももっと地域密着型の結婚情報誌が2種類ぐらいあって、さらに毎月のタウン誌の半分をブライダル関係がしめていることがあって、結婚式やばいとおもうなど。
双子は強い。
太陽の塔寄りの登美彦氏。
かといって今までどおりではなく「ひとりの阿呆」のみならず数々の阿呆大学生を取り上げ、誰の視点だか解らずあれっと思う作品もあり呑まれる感じ。よいよい。
「グッド・バイ」と「四畳半統括委員会」と「四畳半王国建国史」が好き。
「グッド・バイ」はあの微笑ましさから段々哀れな感じになってくる流れが好きなんだ。
大日本凡人會が真面目に異能集団である。モザイクさんはすごい。
昨今、一見普通のサークルのように見せかけて、その実、違法なビジネスや宗教に勧誘するサークルがあります。ソフトボールサークルに参加したつもりが、夏の合宿に出かけて見るとソフトボールにまったく関係のない教祖様が出てきた、などという哀しむべき逸話は枚挙に暇がありません。
(P166)
ゴールデンタイムを思い出す。四畳半統括委員会はあの議事録とか手紙とかが好きだ。
ある日突然前触れもなく人が消えてしまう、そして「消えてしまったこと」が認知されず「元からいなかったもの」として記憶と世界が修正されてしまう世界の話。
塩の街とか外道王子を思い出した。
塩の街よりずっとずっと感傷的に叙情的にした感じのしんみり系。
人が消えていく世界で、写真を撮ることでそのひとの記憶を残しアルバムという墓標を作る主人公の僕。
「人が消えていることをただひとり認知してしまう」事実から自分を守るように人から距離を保っている。
滅びに向かう世界の話をするのではなく、その中で暮らす少年少女の話が語られる。
喪失と別れと繊細な動きが描かれている。誰か消えていないか教室の机の数を数えるくせがついた僕はある日机が一つ増えていることを知る。僕に写真をとられることを極度に嫌がる奈月と幼馴染みの莉子。
序盤で出てくる先生とかカメラ屋の親父さんとかはもうちょっと長く出ていて欲しいなと思った。
そいて恭子かあさーん、ととても思った。突然消えるのではなく、もうすぐ消えることを知ってしまった僕の胸のうちは、と思った。