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中学生+弱小部活動+青春=もえるよかんしかしない。
これは今中学生の人もかつて中学生だった人も読むといいと思います。
佐田海月(みづき/あだなはくーちゃん)は、幼馴染みの大森樹絵里(じゅえり)に誘われて樹絵里好きな人が兼部しているという「飛行クラブ」に入部することになる。この学校は部活は必修でなにかひとつに入らなくてはならないのだ。
元来の性格が災いし、なしくずしのままに入った海月が一番精力的に働くこととなるのだった。
ちなみに物語は海月一人称単視点である。
「ひこうクラブ」と聞けば大抵の人が「非行クラブ」と脳内で変換する飛行クラブの活動内容は飛ぶことだ。
「自分自身が」「何の力も借りず」「自由に飛行する」ピーターパン型の飛行がベスト。
しかし特別な能力も魔法のほうきも豊富な財布も持っていないので、普通の中学生ができる範囲でクラブ規定の飛行をさぐっていくところからはじめよう、というクラブだ。ちなみにペットボトルロケット・飛行機を飛ばす・飛行機に乗る・遊園地のアトラクション・バンジージャンプなどは規定外である。
ただその飛行クラブはまだ正式な部活ではなかった。部として認められるには部員5人と顧問が必要で、現在の部員は2人。部長は先生にも「一言で言えば変人」と言われる斉藤神(ジン)。そして副部長で樹絵里の好きな人である中村海星(かいせい)。とりあえず正式な部に昇格するため部員を集めた結果、仲居朋(るなるな)、餅田球児が入部する。
部員はとても珍名さんいらっしゃいである。
名前って、親からもらう最初のプレゼントであるけど箱の中に入ってるのは祝いあり呪いありだよね……
あとわたしは海月の母が好き過ぎる。
この「目からビーム」だって元をただせば母のウソ話なのである。小学校低学年の頃、テレビでドラゴンボールの再放送を見ていて、カメハメ波はホントに出せるかという話になった。すると母は真剣な面持ちで言ったのだ。
「うーん、カメハメ波はもともとの才能と大変な修行が必要だけど、目からビーム出すくらいなら、普通の人でも少し頑張ればできるんじゃないかな」と。(P193)
爆笑した。おかあさんは名案を授けてくれるも、基本的にはボケの人(そして海月がツッコミの人)なのでとても面白い。
「くーちゃんはさ、<二人組>の怖さなんて知らないでしょ」
(P249)
もう見た瞬間にひやっとした。じゃ適当に二人組みになれー。
ふだんつるんでるのが3人とか5人とかだったらもう目も当てられない。
世の中で一番馬鹿な生き物は、中二男子なのだと聞いたことがある。銀魂で銀さんも言ってたし。
幸か不幸か私は中学に入るまで、中二男子と知り合いになる機会はなかった。だから、先の説(?)についても、そんなもんかなー、小学生男子だって充分馬鹿だよなーとか考えていた。
だけど確信した。やっぱり世界で一番馬鹿なのは中二男子だって。(P110?P111)
再読オブ三浦しをんのデビュー作。
可南子は出版社希望の絶賛就活生である。内定はまだ無い。そもそも就職戦線にもあまり出ない。
エントリーシート! とか 圧迫面接! とかそんな感じなので今大学4年生とかのひとにぜひとも渡してみたい1冊。面接必勝本みたいな方向ではないのでその辺は注意あれー。
可南子の一族は政治家の家系なのだった。入り婿の父、亡き母、義母、可南子と半分血が繋がった弟。
親族会議とか跡継ぎとかごたごたしてるけど、その辺の家族の話もとてもすきだー。
「藤崎」の家に住んでいる人間の中で「藤崎」の血を引いているのは、私一人だ。そして明らかにその私の存在こそが、この「家族」を家族たらしめない要因、異物だ。その事実を突き付けられたくないから、私はいつもの生活を崩されるのを嫌う。父がこの家に帰ってきて、家族の構成要因が揃ってしまうことを恐れるのだ。
(P91)
「きっとどこかにありますよ。可南子ちゃんも気に入り、相手も可南子ちゃんにぜひ来てほしいというところが。ちょうど今の可南子ちゃんとわしのように、相思相愛になる会社があるはずじゃ」
心のどこかで、そんな甘いものじゃない、西園寺さんみたいに私を気に入ってくれる会社なんて……という声がずっとしているのだが、あえて聞こえない振りをした。たとえ最悪の事態に直面しても、まだ事実から目をそらそうとしうるのが私だ。(P197)
「だいたい会社、それがひいては『社会』なんだと思うけど、会社が求めるような能力が、そもそも私たちに備わっていないのよ」(略)
「覇気があって、うだつがあがってて、初対面の人とも明るく打ち解けて。そういうのを面接という限られた時間内でアピールできる、か」
「そうそう。そういうことができる人間を、社会人というのよ」(P205)
序盤がとてもとても長いです。
ファンタジーで小学5年生の女の子が主人公です。本とか物語とかそんな感じの方向で。
友理子はある日突然早退するように言われ家に帰ると兄の大樹(中学2年)が同じクラスの男子を2人刺して逃げたという。ひとりはもう死んでしまった。
あらすじを書こうとすると序盤だけでもすごく長くなるので適当に省略して書くと、大樹は大叔父の書斎から持ってきた、英雄について書かれた本「エルムの書」の器として選ばれ黄衣の王に成り果てた。友理子は兄を救うため旅立つことを決めた、という感じ。
小学生が背負う割に過酷な運命でしょんぼりした。
ラストは「ある意味この上下巻は長い長いプロローグなのかも……」と続きを思わせるようなものでした。
「なるほど、紡ぐ者たちは己の書きたいだけの話を書いたら、そこで筆をおく。だが、彼がこしらえた"領域"はそこにある。存在し続けるんだ。そのなかの生き物たちは、たとえ創作物であろうとも生き続ける」
(下巻P32)
デビュー作は読んでないのでR-18な豊島ミホを読むのはこれが初めてです
性描写ががっつりあります。エロス&郷愁。帰りたいとか帰れないとか帰ってしまったとか。
エロありというてもなんか乾いてるイメージがした。湿気とか粘度とかとは無縁な感じの。
「あなたを沈める海」「避行」「結晶」のあたりが好き。
「あなたを沈める海」「避行」の照は肩書きが「ライトノベル作家」で、この辺りがわたしの中でとても新しい。
というか田舎に残った遙が他人事じゃないです。
——わたしこの町でひとりで死ぬんだ。
小さな町。今は合併して、県庁所在地の市の端にくっついているけれど、海と山しかない、なんの娯楽もない場所だ。
東京がどんな場所なのか、わたしはきちんと知らない。修学旅行で行ったディズニーランドは千葉だというし、テレビで見る東京は、ただ大きな真新しいビルが並ぶくらいのイメージしかない。(P57)
このあたりがね。うちもこんな感じなのだ。海と山しかない。
ちなみにわたしは「最初から上京という選択肢を持たず田舎で暮らすことを選んだ」人です。
東京はなんでもあるしオフ会はたまにすごく羨ましいしライブもすごく行きやすいけど、そこで住みたいとは思わないんだよなー妄想の中で「家とか就職とか生活の基盤不問でどこに住みたいか」とか考えても東京は明らかに圏外だった。
「おれ、東京に行く。別に、行かなくても小説は書けるんだろうけど、でも今じゃなきゃここを出られない気がするから」
(P43)
お正月にやってた一読永劫の桜庭さんの回の、ダブリンの駅のところで、「田舎は呪縛が強い」とかあの辺を思い出した。
ネタバレになるので作品名はあげませんが、ひとつ乙一の「失はれる物語」みたいなのがあって「あばばばばば」ってなった。とても怖い。(わたしは乙一作品の中では「失はれる物語」が物凄く怖いのだ)
定年退職後嘱託職員として再就職した清一(通称キヨ)、居酒屋元店主重雄(通称シゲ)、機械いじり大好き工場経営則夫(通称ノリ)。まだまだ爺のカテゴリには入らんぞ(゚д゚)ウラァーーと仕事後終電ぐらいまで町内の安全を守るため見回りをはじめた。
キヨと孫祐希の交流はイイデスネ。
心温まる仲良し祖父孫には程遠いけど(誰が仲良しだばーか(゚д゚)とか言う二人です)
人知れず町内の安全を守る祖父世代の勧善懲悪と孫世代の恋愛物語……だったりするのですが、揉め事の内容とか悪が凄かったです。嫁姑対決とか強姦未遂とかゲーセン強盗とか動物の虐待とか、1ヵ月後?数十年後の自分とか今現在の隣近所で起こっていてもまったくもって不思議ではなかった。
新聞に載るとしたら地域欄の数行にしか満たない程度の、でも生々しくてすごく現実味を帯びた悪だった……
4話はちょっと鬼籍通覧とかぼくのメジャースプーン思い出したな……
昭和30年代の人やものの記憶が見られる姉さま(鈴音)と私(和歌子)の話、2巻。
姉さまと同じ力を持つ薔薇姫こと御堂吹雪。怪しげな宗教団体。記憶喪失の女性。
薔薇姫は今回は主に登場の巻という感じで、姉さまとの繋がりが分かったりどういう人なのかとかそういうことが分からないのでそれは今後に期待。
わくらば日記のころから順調に年を重ねて最後の話では和歌子は高校生、姉さまは20歳を目前に控えている。物語の最後は姉さまが視る最後の事件になるのかもしれないと思った。
「夕凪に祈った日」は読むとだんだんへこんでくる。しょんぼりした。
「お母さんっ」
傾いた甲板を滑るように落ちていきながら、男の子は叫んだそうです。
「いい子になるよっ いい子になるから助けて!」
その声は激しい風にちぎれ、耳に届かなくなったそうですが……(略)(P304)