野球でミステリの短編集。カープが25年ぶりの優勝を遂げた2016年からコロナで開幕が遅れに遅れた2020年まで、実際の出来事を背景に描かれる。探偵役はバーに現れる熱心な広島ファン。事件を捜査するのはヤクルトファンの親子刑事。
時代が時代なので、広島の選手だった丸(現巨人所属)も話の中で登場する。
時代が時代なだけに阪神はBクラスをうろうろしていることもある。あと阪神タイガース新井貴浩は亡き者にされている。「何か知らんけど一瞬違うユニを着ていたこともある」みたいな書かれ方。
年1で続編が書かれているそうで、そのうち本になるそうだ。2024年の世界はどうなるだろうか。どの球団のファンも優勝は広島だと信じて疑わなかった広島が1%の確率を引いてBクラスに沈んだ2024年。
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高殿円さんの息子さんがつい先日成人(18歳)されたらしい。
わたしは高殿さんのファンを長らくやっているので、オーダーメイドダーリンを読み、育児エッセイ(同人誌)を読み、冬になれば柏餅になり、外へ行けばエレベーターを乗りまくりという様子を遠巻きに遠巻きに眺めていた。
そんな息子さんもスキンケアや容姿に気を遣うようになり、夫(父)さんも同じようにスキンケアをするようになったという。
そんな「自身のパートナーと息子の変化」から、資生堂の広報さんに話を聞いてみよう、男性向け美容クリニックに話を聞いてみよう、「なぜ男は着飾らなくなったのか」、実際に早川書房の男性社員にスキンケア1か月体験をしてもらおうと身近な視点から歴史上の話へという実に新書っぽい内容である。基本エッセイのような語り口なので読みやすさはある。
スキンケア1か月は30代〜50代の男性3人、提出されたレポートがそのまま掲載されている。中には「塩の人」と桜庭一樹読書日記にも登場していた塩澤快浩さんがいる。
「レーザー脱毛は白髪では利用できない(髭脱毛をしたければ毛が黒いうちに)」という一文を読んで、おうそうやったんかと思ったので、誰かに言いたいなあと思って「こういう知見を得たが、言う相手がいないのでYOUに投げつける」と友達にLINEした。友達は旦那さんに言うとくと言っていた。
「(略)もっと厳しく言えば、社会が男性の美容を許さないみたいなプレッシャーにさらされ、とても男性がキレイに整えていいんだ、という考えにたどり着かない人が多いと思うんです。」
情報にアクセスできないことは大きな格差の種である。しかも、ことこれだけSNSが発達してしまうと、「やろうと思えばだれでもも調べられるのに、それをやらなかった自分が悪い」ちおう暗にな自己責任論で片付けられてしまうのだ。
(P102)
なおこの本は2025年3月時点の「何からやったらいい人向けのここからスキンケア」おすすめ商品が載っている。
まず全然本の感想じゃないことを言うけど、文庫本高くなったなーって思った(1430円)
でも金星特急は紙で読みたい(ずっと置いときたいから)
桜は一行を離れてロンドンへ、桜を追う蜜蜂、砂鉄とユースタスの関係、夏草と三月のそれぞれが大変ワクワクする展開。5巻をぺらっとして4巻を読んだのか全く自信がなかった。4巻が出たのは3年前。介護が非常に忙しいころでそもそも読んでないのかもしれなかったのでこっちも一緒に読んだ。
作中で天然痘が登場した。根絶された病の割に最近見た覚えがあるけどなんだ? と思ったらエムポックス(旧名サル痘)でワクチンが有効だった。金星特急は現代日本はちょっと違う歴史をたどった世界だけど、竜血の娘はそこから年月が経ってある程度文明が後退した世界での話なのでそういうのが好きな人におすすめです。
この例えが適切なのかどうかはわからないけど、まほろの女性版みたいな。
ネイルサロンをふたりで開業していろいろあって今はひとりでやっている月島がもうひとり雇って、仕事をしたり酒を飲みに行ったり、なんかそういう話である。事件は起きない。恋愛も発生してない。クソデカ感情もここにはない。でも「お仕事小説」というにもなんか違和感がある。仕事も日常の一環として描かれているからからかなあと思っている。
タイトルは「ミステリ」だけど内容はSFっぽい短編集。
「妹の夫」と「ゴールデンレコード収録物選定会議予選委員会」が好きで、特に「ゴールデンレコード収録物選定会議予選委員会」のほうはキャラが良かった。宇宙に向けて流す、地球人類から異星人へ向けるタイムカプセル「ゴールデンレコード」、そこに何を収録するかの持ち寄り会みたいなものである。自分の推しマンガ(リボンの騎士)を入れたい御竈門玖水(みかまど・きゅうすい)はプレゼンを繰り広げるものの芳しくない結果に終わった。それ以外に登場する人もなかなかの私利私欲の「それやばくない?」というものを持ってきており、玖水はそれ微妙じゃね? 言っていくのである。
「妹の夫」は時間跳躍を繰り返す荒木務は妻の殺害現場を目にしてしまった。夢をかなえて「初の有人長期航行」を手に入れたが、これに乗り込むと帰れる保証はないしそもそも妻が生きているうちにもう会えることはない。その覚悟で乗り込んだ。しかし妻を愛していた荒城は地球の自宅の映像を宇宙に飛ばし、一方的にそれを見る選択をした。声は入らない。映像だけでこちらからの問いかけも届かない。その中に妻が殺されている現場が映り込んでいた。
日常の謎系ミステリ短編集。
荻窪のカフェ「アンブル」に集う作家と古本屋と同人誌の主宰、あと編集者。
ここでは「コージーボーイズの集い」が時折開催される。趣旨はお茶とケーキを囲んでミステリの話、掟は作品の悪口は大いに、人間の悪口は言ってはならない(※なお後者は時折破られる)
その場で「ああ、そういえばねこんなことが……」と謎が提示される。ああでもないこうでもないと言っているうちに店主も「恐縮ですが」と自説を述べる。
「アッと驚くような」展開はないが、ほのぼのとした雰囲気で読みやすくコージーボーイズの集いの席に座っているような気分になる。
物珍しいのは各短編終わりであとがきのような「本作の源泉」が語られる。なので制作秘話が好きな人は「おっいいね」と思うだろうし「作者の顔が頻繁にちらつく作品はちょっと」という人は避けられたほうがいいと思う。
このサイトは来月で24周年を迎えるのですが、実は24年前に書かれた日記が現存しているのである。
書いたり書かなかったりする時期があって、「日々を無為に過ごしているような気がして」と書き始めて今は日記を書く媒体を増やしている。
この本は日記の新しい指南書になれば、と担当さんに言われたが正直そうするつもりはない。日記と言い張ればどんなものでも日記であるが実はそれが難しいことなのかもしれない。だからわたしの日記を公開することでなんだそれでいいのかと思ってもらっていろんな日記が読めればいいと思う、という序文で始まる。
わたしがインターネットを始めて間もないころ、ウェブリングやタブブラウザが元気だったころは日記サイトというのがとても多かった。SNSの隆盛とともに個人サイトや個人ブログが少なくなり数年ぐらい前からnoteで日記(ただし毎日更新ではなく、数日分まとめて更新するスタイル)が読めるようになった。人の日記はおもしろい。叙述トリックのようなものを味わうことがある。
くどうさんは同性とルームシェアをされているのかと思ったらのちにその人と結婚していて男性やったんかと新鮮な驚きを得た。
たくさん書いている日があれば1行2行で終わっている日も日付だけの記述の日もあり、日記とはこうでいいんだよと思える本だ。
綺麗ごとゼロ。別居で80代後半から90代に入った夫の両親の介護が必要になった、というエッセイ的な本である。
わたしは一昨年の11月(実質9月)で15年ぐらいに渡った介護が終わったので実用書としてはもう必要がない本ではありますが、人の苦労を見るとあの時大変だったなあというのが思い出されます。
きれいごとゼロ、というのは
冷たく聞こえるかもしれないが、これが実の子でない人間による介護のリアルだと思う。そのうえ、プロに任せるのがベストであるのは明らかだ。
(P164)
まあこういうところだ。
理子さんご自身の両親は早くに亡くされご兄弟については警察からご遺体が発見されたと電話がかかってきたのを読んだ。
言ってしまえば他人なのに、すごと思いながら読んだ。私は母は「母」だし、同性だからお風呂に入れるのもトイレの失敗の後始末もできていた。父親はあらゆる意味でできないと常々言っていた。
デイサービスに行ってくれるのいいなあと、思い(カーチャンはコロナ禍以降頑として行ってくれなかった)、男性看護師さんが入ってくることに、の件にあ、覚えがあると思った。もしなんかの気の間違いで結婚して介護案件が発生したとして、またあれをできるかというと、いや無理やでと思う。最後の数か月は3時間程度しか寝られず深夜もトイレ誘導して日中は仕事をしていた。
誰でも通る道を、ゆっくりと進むだけ。横断歩道に差し掛かったら、右を見て、左を見て、安全確認を怠らずに真っ直ぐ渡るだけ。そうやって、ひとつひとつ、しっかりと確認しながら、いつも通りの暮らしを続けていけばいい。いろいろな人の手を借りて、ようやく手に入れた完全に自由な時間を楽しめばいい。なにせ、それが一番大切で、かけがえのないものだから。
(P87)
高松で日記の練習を買って年始のAmazonセールでも2冊ほど買って、今ちょっと「くどうれいん」という人を知ってみようキャンペーンが行われている。
岩手出身で割と生活に根差したエッセイを書かれている方だ。瓶ウニがおいしそうだった。
「ひとりでごはんが食べられない」が印象に残ったりした。わたしはひとりでも外食ができるが、ひとりだと食事をおろそかにする(しかもお腹が空いてくるとどの店を見ても「コレジャナイ感」に襲われて結局どこにも入れない)ことがある。
でも誰かとおいしさを共有したさはないので、こういうところで他人の見解が見られるのは良い。
いやライブ終わりに西梅田のファミマでサンドイッチとビール買ってハービス大阪で写真撮って食べながら検索するのいいんですけどね。直近ではよしここだと並んでも「ご案内はできますが、キッチンが混んでいて提供に〇分かかります」と言われて高速バス時間的に無理で泣く泣く後にしたこともあり。思えばあれはインフル的にアウトだったのだろうか。
それをあれかが「丁寧な暮らし」だと嘲笑するかもしれないが、うるさい。わたしは大根を面通ししているだけだ。それ以上でも、以下でもない。わたしはわたしの大根を切る。お前はお前の大根を切れ。
(P102)
同人誌です!
きのうぐらいから「社会人は新人賞を取っても会社を辞めるな」という話題がよく流れている。わたしは本読みなので、フォローしている作家も多い。そういえばそんな本をこの前買って積んでおいた、という本がこれ。
これは少女小説レーベルからデビューした兼業作家(30代)とコピー取りが仕事の中年女性をいかに丁重に扱っていかに仕事を円滑に進めるか、みたいな話の2本立て。
なお2作とも自分(青木さん)を投影して書いているが具体的なモデルはいないとのこと。
先に言うとスカッとするようなする話ではない。どちらかといえば「そんな男とは早く別れろ!!!!」と読みながら思うような、感情の動きが丁寧に描かれている話である。あとがきに「いつもストレスを溜めている」「負のお仕事小説」と書かれているけどまさにその通りである。あかねちゃんも葉奈ちゃんもどうぞ報われますように、と思いました。