下半期からラノサイ杯がなくなりまして、下半期については年まとめがあるのでそこである程度拾えるのですが、上半期はそうはいかねえよとエントリを作った。
ラノサイ杯みたいな感じの企画はいくつかあるんですが、ついでにあれこれ拾いたいなあと思ったのでセルフで。
対象期間:2011年1月1日〜6月30日に私が読んだ本(つまり発売年月日は問わない)
一般文芸とラノベは少年向けと少女向けと各10冊ずつ計30冊抜いて、紹介的な文書きながら30はむりだわー今更1巻のつもりでネタバレなしでは無理だわーと思ったので、シリーズがかなり進んでいるものは優先して落としました。半分の15作にしました。
楽園まで 張間ミカ
静かに雪に埋め尽くされていく世界。
ハルカとユキジ、双子のきょうだいはふたりだけで旅を続けていた。ある出来事からユキジは心を閉ざし感情と言葉を手放し、ハルカは焦燥と不安を浮かべて手をつないで楽園を探して一路スプラドへ向かっていた。
悪魔の印であるオッドアイの持ち主は見つけ次第殺される。庇い立てした者も無事では済まされない。それがこの白銀に沈む世界の正義だ。そしてハルカとユキジのふたりはオッドアイをもって生まれたために「平穏な暮らし」を奪われ続けている。
吉原夜伽帳--鬼の見た夢-- ミズサワヒロ
吉原が舞台です。えろいほうじゃなくて事件もの(それだけではないけど)。人に見えざるものを見る「外道菩薩」白髪赤目の青年弥太郎のもとに奇妙な来客が現れる。仏師に身請けされた花魁の不審な死と顔のない仏像と増える死者について。吉原に住む女たちの物語。
吉原が舞台だけに決して明るい物語ではなく、かといって暗すぎずいい物語です。
これが好きでえろいのでも読めるよっていうひとは宮木あや子の花宵道中読むといいんじゃないかなあと思います。新潮文庫2011夏の100冊にも入ってるよ!
はたらく魔王さま! 和ヶ原 聡司
魔王は世界を征服しかけたが後わずかのところで勇者に追い詰められ、命からがら異世界へ逃亡した。
魔王とその従者が漂着したのは東京都原宿駅付近。魔力が回復して元の世界に帰るまでふたりは善良な市民として暮らしていくことを決め、僅かに残った魔力で催眠術を使い生活の基盤を整えた。
具体的には戸籍を作り、片言の日本語で保証人不要のアパートを借り、病気になって高額請求された経験から健康保険証作り、魔王は今某ファーストフード店の有能なバイトとして働いている。従者は家事一切合切を取り仕切っている。
ちなみに後に出会うことになる魔王さまを追い詰めた勇者もまたこの世界にやってきている。そして同じように帰れなくなっていてこの世界でなんとか食いつないでいる。彼女は今テレアポの派遣社員として働いていた。
ちなみに強面な割にすごく気弱で、その外見ゆえに職にありつけず長らく無職だった父ちゃんが魔王という名の正社員になって、娘にケツバットされつつ頑張るのが魔王をプロデュース!?です。
侍ニーティ みどうちん
基本コメディのちょっとええ話系。
とある古びた一軒家に引っ越してきた上山家。その家族構成は少々おかしなもので、霊能者の父・占い師の母・手品師の兄はそれぞれ世界中を股にかけあちこちを飛び回っている。引越し当日も下の娘ミツコを残し各地に飛び散っていった。ちょっとでも掃除をしようかとミツコは各部屋の窓をあけて回り、最後に自分の部屋の窓をあけた。光が入ると室内は突然男の叫び声が響いた。ござる言葉で体が微妙に透けている。男が暴れると室内でポルターガイストが起きる。
どう見ても幽霊である。
男は語った。生前の記憶がないからよくわからないが未練があってこの世から離れられず、かといって幽霊社会にも適応できず、ならいっそ働くのをやめればいい。このアニメというものはとても面白い。
どう見てもニートである。
ミツコは自室の平和を守るべくこの幽霊を社会復帰させることにしたのだ。
オーダーメイド殺人クラブ 辻村深月
中学2年の4月、アンは友人達から無視されていた。
クラスの上位カーストバスケ部所属で女帝の友達。家では赤毛のアンが好きな、でもいまいち詰めの甘い母が待っている。少年犯罪と死に興味を持ち、母との関係や教室での立ち位置に絶望感を感じている。アンは自分と同じセンスを感じる同じクラスの徳川勝利に「自分を殺してくれ」と頼み2人で事件の起こし方や死体の装飾について検討しあう。
風車祭(上)(下) 池上永一
97歳の生年祝い「風車祭(カジマヤー)」を迎えたオバァ、フジの楽しみは長寿と人を弄ぶことだ。長寿者が多い沖縄といえども風車祭をできる者は早々おらず、フジの同級生はもう誰もこの世にいない。
風車祭を控えたこの1年は長く騒がしい1年だった。すべての始まりは旧暦(沖縄暦)8月15日シチの日。「あの世の正月」の日のことだった。
高校生の武志はシチの日に200年以上もこの島にとどまる美しき盲目の幽霊ピシャーマと6本足の豚ギーギーに出会い恋に落ちる。武志はピシャーマがグソー(後生、あの世)に旅立てるように手助けをする。一方ピシャーマは夢の中でニライ神マユンガナシィと出会い自らの死ねない理由を聞き、神はさらに島が滅びる予言を次々に下した。
沖縄の祭事・民謡・方言が織り交ぜられものすごく幻想の島になっている。
エージェント・コード--恋の陰謀は執筆のあとで-- 瑞山いつき
ちょっと昔のイギリスが舞台で、現実のイギリスではないけど架空すぎない。
アークライド伯爵家のライザは10歳まではサーカスの軽業師として暮らしていた。ドレスを着る生活に馴染めず父の助けになりたいという思いから父の部下として女性の少ない諜報員への道を歩み始める。
最初の任務として「賢者の石」の回収を命じられ、エリファス地下に存在する秘密結社の支部へと潜入し任務を済ませると、美術館(2F)から脱出しボンネットの長い車に降りたった。
ライザは「降りて」と運転手に告げたものの彼は「こんなネタになりそうな面白そうなこと逃すわけには行かないよ!」と運転を続行した。彼、有名な作家であるカルヴィン・ストーンは車を運転しながらライフルで追っ手を撃ち落し、ライザが漏らした僅かな情報から身辺情報を明らかにした。得体の知れない好奇心の強い男である。
ライザは「カルを巻き込んで申し訳ない」と思っているが、当のカルヴィンは「好奇心、スパイを手のひらで転がす」の勢いで全力でライザを利用しまくっている。
幽霊伯爵の花嫁 宮野 美嘉
フェルナンデス侯爵家の娘だったサアラは領地や家族を幼い頃になくし、それからずっと遠縁のヒルベルト家に身を寄せていた。この家の跡取り息子と婚約し暮らしていくはずだったがこの辺り一帯の領主を介してコルドン伯爵からの縁談が舞い込んだ。サアラは婚約を破棄し、墓守と呼ばれる幽霊伯爵のもとへ嫁ぐことになった。
望まれない政略結婚、よそよそしい使用人、不気味な屋敷、屋敷前に広がる墓地を見ても、深夜自室に幽霊が現れてもじつに伸び伸びと暮らしている。サアラが物怖じしないしたたかで自分の容姿も武器にする悪女みたいな子でとても新鮮です。まっすぐにねじれています。深夜突然に現れる幽霊にも礼節についてこんこんと説教をしています。
花咲けるエリアルフォース 杉井光
皇国と民国のふたつに分かれて戦争をしている日本。
4月8日に世界中でソメイヨシノが枯死し、民国が防衛ラインを乗り越えて皇国側に侵攻した。靖国神社に咲く9本の桜は枯れる直前の記憶を錨にして時間を止めている。死にたくないと願ったソメイヨシノが枯れる現場に居合わせた9人の少年少女はソメイヨシノの接続子として兵器「桜花」を駆る。
激化する戦争に否応なく巻き込まれ、一方では時を止めた永遠に舞い散る桜の物語。
「桜花隊」という名前とか2種類しかない攻撃手段とか、すごく悪趣味なんですがすごくきれいでいいと思います。
双界幻幽伝 出逢いは前途多難! 木村千世
黒鳥州刺史の妹朧月は、「幽鬼を見る少し風変わりだがのんびりしていて可愛らしい天然公主」という噂だがそれは身内が流した噂であって、事実は姉気質の幽鬼に甲斐甲斐しく世話をされる引きこもり少女だった。もう5年は家の外に出ていない。働きたくないでござる! とかその類の理由で外に出ないわけではないのだけどとにかく人との接触を苦手としている。その彼女が今上陛下から召集され無理やり外に出されることになった。
迎えに来た蒼刻が無理やり朧月を担ぎだし、ことあるごとに「帰りたい」「隅にいたい」と連呼する朧月を「引きこもり体質の珍獣の躾」と称し指導を加えていくのであった。
ふたりの距離の縮まり方がもう、とてもたまらんです。
シスター・ブラックシープIII 薔薇と聖歌 喜多みどり
「16歳になったら我の花嫁になれ」と生まれてすぐ目をつけられた赤子がいた。母は娘の身を案じ連れ故郷を離れ名を変え男装をさせたが、16歳を迎えた日に約束どおり悪魔は迎えに来た。現れた時には異端審問官に力を奪われ弱体化していた。コンスタンティンは今のうちに結婚を破棄すべく、伝説の聖女「黒い羊」としてこの悪徳の都サクスの夜を駆ける。一方で悪魔の力を奪った司祭兼異端審問官ユリエルがコンスタンティンの教会に就任した。
ひとつ屋根の下に狙うものと狙われるものがそうと知らずに同居しててとても燃える。
5巻で恐らく完結するようだ。
レッド・アドミラル 栗原ちひろ
伝説の艦長に憧れ海軍を目指すロディアは唯一女を受け入れる近衛兵から転属願いを幾度となく提出し続けている。ロディアはある一件から謹慎の身分となり帰郷中に軍艦レーン号艦長のランセと知り合い、腕を買われて憧れの船上に立つこととなる。
金星特急 (4) 嬉野君
金星特急がはじめてこの世界に現れて8年。「生殖可能な男子であれば誰でもよい。報酬はこの世の栄華」とうたう花婿探しポスターとともに世界各地にその特急列車は現れ、一定期間ののち沢山の男を乗せて消えた。特急に乗ったものは誰ひとりとして帰らなかった。
8年目の今年は金星特急の出現地としてはまったくの空白地帯だったアジア・日本・東京だ。
自殺特急便の名に相応しい金星特急は出発前に突然1両分がプレスされあるはずの死体はすべて掻き消えた。手荒いご挨拶だ。金星特急は勝手な途中下車を許さず西を目指す。
はなかおる−淵国五皇子伝− 古戸マチコ
植物に異常に好かれる能力のため気味悪がられ生まれてすぐ捨てられた。それでも親切な人に拾われ大学に預けられカナンはなんとか生きてきた。その力を生かして伝説の植物を蘇らせて呪いを解いて欲しいと西洋から東の淵国へとやってきた。呪いをかけられているのは淵国の個性的な皇子5名。カナンはここで生活をすることになる。
GOSICKVII‐ゴシック・薔薇色の人生‐ (角川文庫)
久城がベルゼブブ以降の実にヒーロー的な、たくましい騎士でよいと思います。
コルデリア・ギャロの出番が多くてキャッキャウフフしていた。ヴィクトリカ出生の秘密、というか当時の事情である。出生当時は短編集の冬のサクリファイスでも語られている。
物語の舞台は王都ソヴレムで、いまだ根強い人気を誇る10年前に亡くなった王妃ココの死の真相である。
ヴィクトリカが生まれた頃のコルデリアの話はなんだかアナザー七竈のような気分で読んだ。
今月(7月)末についに完結してしまいます。
その他取り上げる予定で選んだものの、やっぱり30は多いわと投げたもの。(書影のみ)
大概の本はブログ内検索してもらったら感想が引っかかると思います。
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