喋々喃々

食堂かたつむりに続く第2作。かたつむりよりこっちのほうが好き。しかしやっぱり雰囲気重視なんだな。
関係を気にせず読むならほんわかしたいい恋愛と下町の日常話。
実際は何でもっとどろどろしないのか不思議なぐらいの突っ込みどころのある小説だった。
かたつむりもそうだったし、これはもうそういう作風なんですと思うしかないのかも。

舞台は東京谷中。
アンティーク着物の店「ひめまつ屋」を営む横山栞はお正月のある日、父とよく似た声を持つ木下春一郎と出会う。彼は初釜に着ていく着物がほしいということでひめまつ屋を訪れたのであった。左手の薬指に指輪をしている男性だった。
栞は店で一人暮らしをしているが、父母は離婚済みで、父は再婚して山中で自給自足のような生活をしている。母は都営住宅で栞の妹花子と、異父妹楽子と一緒に暮らしている。栞はひめまつ屋営業を終えた後様子を伺いにいったりしている。

食べ物の描写がよいです。とり鍋天丼からあげ黒糖焼酎焼き鳥みつ豆お惣菜、食堂かたつむりよりよっぽど身近な食べ物が増えました。酒飲んでるところが地味に多いですね。「谷中はいいところですよ」みたいな描写もとても多いのでいつか行ってみたいなあと思うところでした。

しかしどうしようもなく気になるのは栞と春一郎の関係。浮気です。妻子ありです。
でも2人とも独身です、ていうか恋なんて初めてですとでも思うような初々しさ。やることはやりますが。
以下一応一応隠します。
春一郎本宅と谷中は別次元の空間みたいに春一郎の嫁の存在感が希薄。栞も春一郎も真面目な割には罪悪感的なものは感じられないし。最初は指輪は一応つけてるだけで嫁は実はもうお亡くなりになっているのかと思うぐらい早々に告白だった。
雪道嫁がはがきを持ってきたシーンで、名乗るまでは「ついに本妻が泥棒猫チェックにきた(゚∀゚)」とときめいたのに。最後は栞が春一郎と完璧に別れて新しい日々を送ることを決めるか、春一郎が離婚を決めるかの二択かと思ったのでえーーーそこで終わるんだ!って思った。

イッセイさんがiPhone使ってたから吹いた。
Twitter上の所持率が半端ないから実際の普及率がよく分からないがiPhone教は確実に存在すると思う今日この頃。ちなみに友達は9割ドコモです。

注文してからわずか数分で、見事な天丼が運ばれてくる。
「すごいボリュームですね」
「若いんだから、いっぱい食べろ」
どんぶりには、どこから食べていいのか途方に暮れるほどに、立派な天麩羅がこぼれ落ちそうになって入っている。海老、穴子、烏賊のかき揚げ、獅子唐。私は海老からかぶりついた。サクサクでカリカリの衣にくるまれた立派な海老からは、活きのよさが伝わってくる。しっかりと甘辛いタレと、とてもよく合う。箸で天麩羅をかき分け、ご飯も口に含む。
「幸せです」

(P157)