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太陽の坐る場所

今「30前後女子の話が熱い!」1
ということで野良女→ゼロハチゼロナナ→アシンメトリーと来て今回は意図的にこの本を選んでみる。
買ってから約1年熟成していた。

悪意の話である。最後には光が見えるけどどろっとした悪意の話である。
クラスの女王様、その取り巻き、劣等感と自己顕示欲。あと東京で住む者、田舎で暮らす者。
SIMPLE1500 The ルサンチマン。

F県藤見高校3年2組クラス会は年に1度2度のペースで開かれ今年が10年目だ。
クラス会の話題によくあがるのは女優になった元クラスメイトのキョウコについて。
F県は東京隣接で進学や就職を機に上京する者もいる中田舎に残る者もいる、ということだったんだけど"東京隣接のF県"がどこなのか分からなかった。隣接というほど近くもないけど福島かなあ。
福島っていったらコウちゃんだよなあていうか冒頭のあれは環だよなあと思った。

一章ごとに変更を変えつつ話が進む。帯には10年目のクラス会 よみがえる「教室の悪夢」
とあったけどその「教室の悪夢」がなんなのか中々見えない。影はたまに見えるけど姿は見えない。
ぬぬぬん? と思いながら読む。ラストが近づいて事実発覚。びっくりする。違和感の正体はそれか!

視点変更の妙だよなあと思ったのは苦手だと思った由希が「いやいやこの子にも事情があるねん」とプラスに転がる。由希幼稚園のときの話は思わず本を落とした。うへあとなった。

70ページにあった学校の怖い話が素で怖かった。夏休み前の小学校体育倉庫に女の子がうっかり閉じ込められる。2学期になってからミイラ状になって発見される。壁には血まみれの手で引っかいた痕。
ほんの数行だったけど超ホラーだった。悲鳴が聞こえてくるようだった。

  1. 主に私の中で []

ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。

山梨県でとある事件が発生した。望月千草が自宅で脇腹を刺され死亡。死因は失血死。
はじめは自殺かと思われたが、家にいたはずの娘がキャッシュカード等とともに失踪しており包丁についた指紋や血液のついた衣服が捨てられていること等から警察は事件性が高いと判断し、重要参考人として望月チエミを指名手配した。チエミは地元企業で契約社員として勤め、職場や友人からは「真面目」と評され、死亡した母との仲は非常に良いものだと思われていた。
東京でライターとして活躍し結婚生活も手に入れた神宮司みずほは、幼馴染みであるチエミの足取りを追うべく学生時代の友人や元恋人や恩師を訪ねた。

なんかすごく2時間ドラマみたいな書き出しになってしまった……
「ラストに断崖絶壁でナイフを持った犯人ともつれあったり説得したり動機を語りあげたり」するような話ではありません。殺人事件をおこしたとされる幼なじみを探す話ですが主に語られるのは「母と娘」の物語。

わたしの周りは望月一家をもっと悪化させたようなおうちに住む女の子がいるのでとても生々しすぎた。読みながら「あああああ」ってなった。今までのあれこれを思い起こす。背筋がぞわっとする。自分に近いのは亜理紗6チエミ4かなあとおもう。恐ろしかったのはみずほの子ども時代だった。コーラ怖い。

赤ちゃんポストは一時期よく見てたのにそういえばとんと聞かなくなったなあと思ってぐぐったりした。
「あかちゃんに なにかのこしてあげて」にすごくせつなくなった。

第2章という扉が見えたところで小休止&コーヒーいれてきてぺらっとひらいてみたら見開きにぎゃっとなった。誰の視点なんだろうと思って読み始めてそのまま忘れてしまった第1章直前の3ページを、最後まで読んでからぺらっとひらいてなんとも言えない気分になった。

手紙を持つ手が震えていた。よく、そのままぐしゃぐしゃに潰してしまわなかったものだと思う。視界がグラグラ、煮え立つように揺れた。頭の位置が何も変わっていないのに、足元から下が震撼したように沈んで、過呼吸のような息が出た。空気を吐けるだけ吐き、だけど吸えなかった。

(P292)

家族だからと何かを許し、あきらめ、呑み込み、耐え、結びついた家。形は違っても、どこかみな共通に抱える病理のような。
どんな風に振舞っても、娘は許されず、母の望む正解は出せないのだと思っていた。だけど、正解を与えないのは私も一緒だ。私は母を許していない。それでも、彼女は一生、私の母だ。逃げられないし、逃げるつもりもない。一生、いい思い出も悪感情も、引きずりながら向き合わせて生きていく。

(P298)

あわせてよみたい:「ファミリーポートレイト」と「野良女」かな。
ちなみに野良女は「女の語る下ネタ」に対して寛容な心が必要です。

ファミリーポートレイト野良女

小説すばるの辻村深月新作なのですがやばいなこれも。
母の赤毛のアン好きが高じてアンと名付けられた田舎の中学2年生の話です。魔王とか!
yomyomの読みきりのアイドルの心得とかも割とそうだったんですが、共感が行きすぎて「よせ、やめろそれ以上言うな!」ていう気分になります。

ふちなしのかがみ

怪談だったりホラー風ファンタジーだったりする短編集。
表紙動植物でファンシーだなあ(*´∀`)と思いつつ裏表紙向けたら女の子の足が。つまりこの植物は女の子の体から生えているということか。びくっとした。

学校の怪談とか都市伝説とかときめきます。コックリさんとそれに類するものはやったことないけど7不思議とトイレの花子さんはよく信じてたなあ。うちの小学校の花子さんは体育館脇のトイレ(電気がつかない)の個室の一番奥にいるという噂でした。
小学校の時に流行るものって何であんなに出元不明なんだろう。そして一気に広がる。皆知ってる。
好きなのは「踊り場の花子」「おとうさん、したいがあるよ」「ふちなしのかがみ」です。
「踊り場の花子」は少しずつ詰め寄られる恐ろしさがあるなあ。

「おとうさん、したいがあるよ」は「現実と幻想の境界を認識できていない言動を繰り返し」な話だと思ってる。

君は本当に<現実>に存在している?
君のまわりの人たちは君のことを認識している?
君は自分が今、本当に生きてるって言い切れる?

(鳥篭荘の今日も眠たい住人たち2巻 P265)

これを思い出す。

全体的にどれも奇妙で不思議で変な話だから、「これはこういうことだ」っていうちゃんとした解答は不要だなあと思う。

理科室の中は、薄暗かった。黒い遮光カーテンが窓全部を覆って、圧迫感と閉塞感に満ちた息苦しい空間を作り出していた。誰が最後にこれをしめたのか、他の教室や特別室は、夜でも休み中でもカーテンなんかまずひかない。理科室だって、そうだと思っていた。
水道はどれもきちんと蛇口がしめられている。水は流れていない。
「花子さんの呪いは、階段に閉じ込められることです」

(P36)

ろうそくにひとつひとつ火を灯し、その炎が鏡の中にゆらめくのを確認してから、香奈子は鏡を背にしてゆっくりと立った。幻想的な炎の照明は、まるで自分が映画のヒロインになったかのように思えて、気持ちがさらに高揚していく。

(P179)

本日は大安なり/辻村深月 野性時代09 8月号
女子一卵性双子! 黒い! 怖い! もえ!

私はその日から、毎日、コンタクトレンズを嵌めました。お化粧をしました。
それは、妃美佳を消してしまう殺人です。

連作短編で次は10月号に掲載らしい。 

好きだよと言えずに初恋は、/有川浩 同上
単行本未収録植物図鑑短編。イツキ小学生の頃の初恋話。

ロングインタビュー 小説の作り方 /佐藤正午 聞き手伊藤ことこ きらら 2009 8月号
確かきららっていう漫画雑誌があったような気がするけどこれは小学館のPR誌です。
物語はどういう風にして生まれているのか、という疑問に対し佐藤氏に依頼を送ったのが2年前。
インタビューに懐疑的なところがあるようでこの話はそこで終わる。そして編集者のもとにメールが届く。
聞き手に一度も会わないで長期間やりとりするのはどうか、という現在進行形の連載。
ライターと小説家のメールが載っている。なんかすごい。スタートから泣き言メールとか気味が悪いとか信用できないとかばっさりすぎてすごい。何かこの後どう転がっていくんだろうというのがとても気になる連載。
きららはしばらく読んでなかったけどこれは次回も読む(今回は三浦しをんのインタビューがあったので

エソラ VOL.5

雑誌型の単行本(とAmazonの紹介に書いてあった)
悩んだけど雑誌とかカテゴリにいれておく。

ロードムービー/辻村深月

小学生のトシとワタル、ある夜逃避行に出かける。
騙された!(いい意味で!
読み終わった後確かに女の子が目の敵にするなら女の子だろうなあと思ったけど、終わりまで男の子だと信じて疑いませんでした。名前トリックとか基本なのに! 基本なのに! 女の子なら……おかげでタカノ家から逃げ出した理由も分かりました(タカノ家に近親者が先回りして来てるからだと思った)。結婚相手は深月かしら。

『トシちゃんは多分、すごく眩しい光です。強すぎる光だから、みんな側に寄って来ます。何でもできる、何でも持っているトシちゃんが羨ましくて、みんな友達になろうとします。でも、なれない人もいます。光が強いから、それに耐えられなくなって、それが手に入らないことが悔しくて、友達をやめていく人もいます。

(P90)

道の先/辻村深月

冷たい校舎の時は止まるでは地味ポジションだった彼の話。塾講師と中学生女子の話。

充は大きくなっても充だった。SOS出してる子を引き寄せる人っていうか。
冒頭の留守電はすぐ「あ、これリカだ」っておもった。もしかして2人は付き合いはじめたのかーよかったな充ーっておもったら違うかったーーーー⊂´⌒つ。Д。)つ

「だから安心していいんだよ」

(P151)

鸚鵡幻想曲/恒川光太郎

外見上何も変わりないし使用にも問題ないけど、発している存在感が異なる。何かが擬態してそこに存在しているものがある。例えば携帯電話に擬態する大量の蟻、何十万匹というテントウムシが擬態してできているポスト。
このテントウムシのシーンとても怖かった。ホラーではないのに凄く怖かった。

原理はよく分からないけどアサノと名乗った彼はそれを「偽装集合体」と呼んでいた。
自分以外にはそれが見えない。擬態してそこに存在していることが見えない。
タイトルどおりオウムで幻想的で石垣島な話。

カマラとアマラの丘/初野晴

退出ゲーム以外の初野作品初めて読んだけどえーーーってなった。
ちょー騙された(いい意味で。)最後まで読んでもう1回読んだ。すごい。

廃墟となった動物園にあるという秘密の動物霊園。そこには墓守の青年がいるという。
わたしは遺骨と灰を埋葬してもらいに夜の動物園に忍び込んだ。

すごくびっくりした。

露出も増えたのでまとめる……

新刊
ロードムービーに続き新刊「太陽の坐る場所」12月上旬。(→e-hon
別冊文芸春秋でやってたやつ。値段からするとハードカバー?と思いつつも荒野@桜庭一樹が同じ値段でソフトカバーだったので分からない。

野性時代11月号で短編「8月の天変地異」が載っているらしい?(あの松ケンが表紙の赤いやつ)
そういえば野性時代には今までもちょこちょこ短編が載っていたように思うけど、これはひとつにまとめないのだろうかー。

特集とかエッセイとか
IN★POCKET11月号が出てるところもあるらしい? 一応発売予告的には今週金曜日(14日)
特集の後編。10月号の予告曰く文庫落ちする凍りのくじらについて。
凍りのくじらはノベルスのほうで持ってるのでスルーしようかなと思ってたんですが、文庫版がやけに可愛らしいのでぐぬぬとなっている。

凍りのくじら (講談社文庫 つ 28-5)

asta*12月号の「10歳までに読んだ本」のところにもいたー。ちなみに「モモ」

エソラ VOL.5

に収録されているのは道の先とロードムービー。
恒川光太郎いるけどこれ買うなら普通にロードムービー買ったほうがいいんじゃね?という自主セーブ

-------------ここから他の話-------------

asta*がなんか11月号から吉田篤弘の連載が始まっていることに気付いてなくて、今日処分する前に気付いた……あぶねー。ちなみに「モナリザの背中」というやつ。

その他のasta*12月号→
・池上永一のエッセイでモリミーが出ていた。いや正確には鴨川の若者を見て「森見登美彦の世界っぽい!」と言っているところ。あと梅田の地下街で迷ってた。梅田の地下街は魔物がすんでます。
・森絵都の短編集が1月に出るらしい(どこの出版社とか何日とかは言ってなかった@金原瑞人との対談
・ライトノベル☆いいとこどり 今回は「妄想と現実の境界を飛び越えるライトノベル」
AURA@田中ロミオで1ページ、俺の妹がこんなに可愛いわけがない@伏見つかさ・千の剣の舞う空に@岡本タクヤ・スラムオンライン@桜坂洋で1ページ。

後ちょっと前についったーで「青春×音楽なラノベ」の話が出ましたが、一般文芸のほうでまさに「青春×音楽」がテーマのアンソロジーが出てたらしい。

Heart Beat

ロードムービー

「ロードムービー」「道の先」「雪の降る道」3編収録で初ハードカバーのよう。
これで昔のメフィスト(雪の降る道が収録されている)が捨てられる……!とおもいました。
雪の降る道はヒロとみーちゃんの話。
道の先は冷たい校舎?で目立たなかった彼(具体名は明かされてない)のその後の話。
「目立たなかった」「彼」ということは充?
ロードムービーは3作の中で一番「冷たい校舎」っぽくない話。
発売日は10/23

あと11月に凍りのくじらが文庫落ちの模様。
以上IN☆POCKET10月号の特集より。

名前探しの放課後(上)名前探しの放課後(下)

去年のクリスマスに買ってそのまま放置!
「3ヶ月前に戻って自殺したクラスメイトを探す」という冷たい校舎の時は止まるによく似た感じだけど、内容は青春成分のほうが強い。
コウちゃん(というかレディ・マディ)とか出てたけどぼくのメジャースプーンには気づきませんでした……なのでラスト付近にはなんじゃこれはとおもいました。
青春はいい。

ちなみにアマゾンレビューの上巻のほうに下巻のネタバレが含まれているので未読の方は読まないほうがいいかと思われますー。

スロウハイツの神様(上) (講談社ノベルス)スロウハイツの神様(下) (講談社ノベルス)

この表紙の意味がようやく分かった私です。何回も読んでるくせに遅いな!
狩野とかコウちゃんが見た月の写真っぽいの(下巻)とそれの昼バージョン。
レディ・マディとハロー・レイチェルみたいなあれだ。
ところでコウちゃんが好きすぎる件について。

『派手な事件を起こして、死んでしまわなければ、声を届けてはもらえませんか。生きているだけでは、ニュースになりませんか。何も問題が起こらないこと、今日も学校に行けることが「平和」だったり「幸福」であるのなら、私は死んだりせずに問題が起こっていない今の幸せがとても嬉しい。
(中略)
お願いです。だから知ってください。コウちゃんの本は人を殺したりしません。』

上巻P201
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