妓楼には鍵の姫が住まう −死人視の男−

事前の想像では吉原夜伽帳とGOSCIKのヴィクトリカが仲良くしてる感じだったんだけど、読み終わってみればレンタルマギカとあまつきも足し算することになった。

黒船が来航し開国して文明開化はしたものの未だ幕府による治世が続いている日本。
一時は倒幕だの攘夷だの他国からの圧力だの、国は荒れに荒れたがある時から海外諸国の態度は急に軟化した。その理由について一般人に語られることはなかったが、異国人のもとに天狗や入道が現れたとか各地で百鬼夜行を見られたという話から「この国は今化け物に守られている」というのが多く聞かれた話だった。

妙に浮世離れした風貌の「死人視」誠二と吉原で暮らす「鍵姫」紅羽の物語。
誠二はその過去と現状から生きている実感を持てず、家では「守り神」扱いでなにもしなくていいと言われ美しいまがいものが揃っている吉原を好んでいたが、深夜の妓楼で美青年を従えた高慢な少女と出会う。その後紅羽は楼主を介して誠二に文を送りつけてきた。「やることがないなら仕事をくれてやろう。わらわの下僕となって働け」と。その頃街では殺人事件が起こっていた。

殺人事件です。方向的にはしゃばけとか吉原夜伽帳とかあまつきの最初のほうを連想するといいかと思う。
「守り神」という名前で腫れ物に触るようにして扱われる2人の男女。
誠二は赤子のころ1回死んだ。子どもの死を嘆いた母は稲荷神社に祈りを捧げた。その願いを聞いたのは何だったのか、通夜の晩に誠二は灰色にくすんだ目を持って黄泉がえった。以降三好屋は狐がついているのではいわれるぐらい幸運に恵まれあっという間に大店になった。紅羽は吉原に住んでいるけど花魁ではなくて、もともと禿だったけどその生まれの特殊さから今は天井裏に一室を与えられて本に囲まれて生活している。

あとな、知ってるけどわたし「生きることに対する偏差値」低い男好きすぎだろっていう。
しんみり切ない系と生きるってなんだーっていうのと殺人事件の謎。「この謎を解くにはまだ鍵が足りぬ」みたいなことをいってて混沌の再構成かよ! と脳内でヴィクトリカが走っていった。
f-clan11月刊の中で出るけどひとつ限定。選べるとしたらどれがいい? って言われたらこれかなあ。
とても好きです。