お仕事小説……なんだけど内容としては「人が良すぎるあまり慈善事業レベルで仕事を請け負う無能で思想がブラックの上司、しわ寄せは部下に流れてすり潰す」炎上プロジェクトの受注・残業続きの日々・顛末という感じなので脛に傷がある人は読まないほうがいい本。ブラック上司だけならともかく発想が昭和のコンプラ的にアウトの上司も登場します。

結衣は新卒でIT系企業(WEBサイト制作・アプリ開発)に入社して10年、中堅として仕事はきっちりこなし定時退社して職場近所の中華料理屋のハッピーアワーで半額のビールを飲むこと、好きなドラマを見ること、人生の楽しみとしている。

最初のほうは「どんなに体調が悪くても出勤するマン」「新人は有給など取るな働け空気を読めマン」「残業あたりまえ休日返上あたりまえマン」と濃い人間が多くその辺の個性が強い人間と何とかしていく話かと思えば、上司福永はやばい。これまでつぶしてきた人間の多さと手口の多様さがこわい。NO見積もりで稟議を出して通ってしまった予算はこれ以上出せないと言われ、残業を前提でスケジュールを組もう死ぬ気でやればなんとかなるとか背筋が寒くなる話がある中で、インパール作戦の話がぶちこまれる当たりすごい。
人間が考える創作上のブラック企業なので現実はたぶんこんなもんじゃないと思いつつ、顔を隠しつつも指の隙間から見てしまうような「読んじゃう」感じ。まんじゅうこわいって言いながら読む感じ。怖い物語です。ホラー。