夏の階段 (ピュアフル文庫)

夏休み?2学期(人によっては中学の卒業式以降)の高校生連作短編。
「マイナークラブハウスへようこそ」と「初恋素描帖」を混ぜて文学少女の千愛とエリ組のバロ子を追加投入して煮込んだのちヤンデレ成分を抜いたみたいな。ハチクロみたいな片想いスパイラルが発生したりしていた。
恋の話が含まれるけどそれが叶ったり崩れたりするまでの話ではないです。すごい本を読んだ気がした。

視点が変わってそれまでの脇役が主役になる。視点変更による雰囲気とか印象の違いようがすごい。
好きなのは雨の屋上・月の望潮。遠藤さんすごく好きだ。

あとがきがすごかった。小説の中では今まであんまり読んだことがない感じ。
すごくはじけてる。方向的に近いのは種村ありなっちの柱コメントではないだろうか……

また同じ日常がはじまるのだな、と諦念を覚える。疎ましいような安堵するような、甘い樹液みたいな日常。
いったんその粘性にからまるとなかなか抜け出せず、心も麻痺して、だけど時々腹がゴロゴロするような、しかし同じ場所にはとどまっていられない。ゆるくて厳しい高校生活。

(P86?P87)

あの頃の貴輿ちゃんは、大学のサークルの先輩に片思いをしているとかで、恋の相手は生身の男性だったはずなのに、今ではすっかりBL好きの腐女子です。この1年半のあいだにいったいどんな心境の変化があったのか、気になりますが、訊けません。

(P169)

善き人は、すべてを愛し、恋なんてしないと思っていたからです。恋こそ、不平等で不合理な感情の始まりだと思うからです。

(P189?190)

どうにかして性格を変えたいと思っていましたが、おそらくわたしはわたしのようにしか生きられないのです。だとしたら変えることではなく、気をつけることで、精一杯わたしらしく生きてみたほうがいいのかもしれません。
少々嫌われたって、命がとられることはないのです。誤解なら誤解をとけばいいのです。怖がることはありません、毒草だって毒虫だって、何かの役に立っているのです。

(P193)