凄いものを読んだ、というのがまず思う感想。
色んな種類の物語が読めるので読後感はアンソロジーに近い。
不妊に悩む女性とコンビニで出会った男子中学生の話「ネオンテトラ」
コメディに振った「魔王の帰還」
膝を打つしかないミステリ「ピクニック」
兄を殺された女性と受刑者男性の書簡体小説「花うた」
うらぶれた男性教師とLGBTの娘(心の性別は男)の話「愛を適量」
高校時代の後輩から「葬式に来てくれないか」と連絡がきた話「式日」

どれも読んでいくと「えっそうなるんだ?」という展開をする。安直に「泣ける話」「ほっこりする話」と言うのでもなく、かといって分かりやすい絶望の物語でもない。さじ加減が絶妙で共通点は家族という小さい単位での物語。
発売前からすごい勢いで推されていて、なんだ? なんだ?? そんな面白いのか??と思っていたけど高め期待値のハードルぽーーんと飛んで行った。
近作では「つないで」が好きなんです。講演で向かった先の広島で大雨特別警報が発令される災害にぶち当たったテレビ局所属報道畑の2人が「この非常用電源が落ちたら県下120万世帯のテレビへ映像を届けることができなくなる」緊迫した状況下で間髪いれぬやり取りをするところとか好きで、活動の幅が広がったら読めるジャンルの幅も増えるから見つかってくれてとてもうれしい。