カテゴリー「 単行本 」の記事

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芸人交換日記 〜イエローハーツの物語〜

コンビ結成してM-1にも出れなくなるぐらいの年季を積んだけど鳴かず飛ばずの芸人の物語。
お互い腹を割って本音をぶつけ合おうと交換日記を始めることにした。合意の上ではじめたわけではない。
近所に引っ越した甲本が田中の家のポストに交換日記しようぜとノートを入れる。田中は律儀に「嫌です」とだけ書いて翌日に返す。

脳内でDkが点滅した。
交換日記に否定的だった田中が落ち込んでいる甲本を慰める。慰める。時にはバイト先へ押しかける。
お笑いのコンテストを目指す。一生懸命ネタあわせして「俺らやれるよ今ならトップ取れるよ」と輝く。眩しい。
片方のために夢を諦める。相方を生かすために10年以上もがんばってきた芸人としての自分を殺す。なんというコンビ愛。このデレがすごい。

(略)川野さんから、コンビ解散して作家でやれば、絶対作家として売れるって言われたらしいと聞いたけど。
本当のこと、教えてくれ。
6月30日 甲本へ
本当だよ
7月2日 田中へ
なんで隠してた??
7月3日 甲本へ
隠してたつもりじゃない。でも、ごめん
7月5日 田中へ
なんで相談してくんなかった??
7月6日 甲本へ
ごめん。
7月6日 田中へ
つうか、なんで断った!!
やってれば今頃、お前、貧乏生活しなくてすんだだろ?
7月7日 甲本へ
単純だよ。
甲本と漫才をしていたかったから。

(P43)

六月の輝き

図工の時間にカッターで怪我した美奈子の指を美耶が触ると傷が跡形もなく消えていた。
その頃世間は超能力ブームに沸いていた。狭い町だったため「病気や怪我やなんでも治す美耶の不思議な左手」のことはあっという間に広まった。ろくでなしの美耶の父は美耶の左手で商売を始めた。

左手は良いことも悪いことも様々なものを生んだ。別れを作り確執も生んだ。
「特別ではなく」「僕はただ……」が好きだ。「六月の輝き」はせつない。たまりたまってせつない。

統ばる島

八重山諸島それぞれの島を舞台にした短編。
小浜島と黒島が特に好きだ。
小浜島はなんかすごいふつうでまっとうな家族の話だった。前に読んだ池上作品が風車祭なので余計に思うのかも。黒島はasta*で読んだ時から好きだった。だからよーでエリート先生を戸惑わせる子供たちが好きだ。

ふがいない僕は空を見た

「女による女のためのR-18文学賞」大賞作品。
全5話の連作短編で、斉藤卓巳君が中核なんだろうか。
この子のガールフレンド、一時期関係を持った主婦、友人、母などの視点で語られる。
1話が冒頭からちょっと引くレベルでえろい。なんたっていきなりどんである。
主婦がコミケでナンパした男子高校生に札つかませて脚本書いてそれにそってコスプレでピーなのである。
とりあえず本を閉じて1週間ぐらい寝かせて再度読み始める。性的な意味で結構えげつないのは最初の1話だけである。あと基本的には結構悲惨な話が多いです。無惨な事態さ。

「世界ヲ覆フ蜘蛛ノ糸」はなんというか、気持ち悪い話だ。
ストーリーセラー2収録の有川浩のヒトモドキのような気持ち悪さ。こっちのほうがさらにえぐいとは思った。
1話で出た主婦視点の話。「あなたがもっとがんばらないからよ」って怖い。妊娠こえー。
こえーとおもってたらさらにこえー展開。なにこれやばい。

「セイタカアワダチソウの空」はうってかわって黒い。2035年が比較的あれだったのでとても黒い。
ハチクロのはぐとおばあちゃんの二人だけのおうちを思い出す。田岡さんが花丸つけてるシーンになぜかじーんときた。なんでもないワンシーンだけど、JR内だったのでこれはやばいと思ってそこで中断した。
この話はすごかった。この子が一番心配だ。

花粉・受粉は命が生まれてくる現場は凄い話だった。でもあの壷はだめだ。よくない。

学校の授業や、テレビでは絶対味わえない、いのちの出来事に、心を奪われてしまったのだ。初めてお産に立ち会ったとき、産婦さんの体から流れ出てくる羊水の温かさに感動した。こんなに温かくてやわらかな水の中でいのちが育ち、この世界に生まれ出てくる。その現場にいつもいたかった。
眠れなくても、食事が出来なくても、儲からなくても、お産の場所にいたかった。

(P226)

本日は大安なり

大安吉日、老舗のホテル・アールマティで行われる4組の結婚式。新郎新婦や出席者の思惑や事情が交錯する晴れの日。

鞠香と妃美香が好きだ。双子補正か。いやでも凄く好きだ。ぎゅううと絞られるような思いだった。ふたりのこれまでとか小学生の願いとか久しぶりのあの人たちの登場とか、ピアノとか何回ももうここからは読めない!(くるしい!)と思いながら読んでいた。とてももだもだした。

P74のあたりは島田紳助の声で再生された。すりこみこわい。

映一が持ってる「君ら以上のややこしさ」がなんなのか表に出る日は来るのだろうか。恭司と月子が久しぶりに登場したようにまた会える日が来るだろうか……。

まじで結婚式って300万も? とおもった。
友達は人前式で12だったっていってた。別の友達の結婚式では「え、この曲……クラナド……?(挙動不審)」「まあ不思議ではないだろ(黙々」「クラナドって何?(知らなければただのBGM)」ということがあった。
こちらはゼクシィよりももっと地域密着型の結婚情報誌が2種類ぐらいあって、さらに毎月のタウン誌の半分をブライダル関係がしめていることがあって、結婚式やばいとおもうなど。

双子は強い。

背表紙は歌う (創元クライム・クラブ)

書店の新人営業マンと謎シリーズの第2弾。
取次ぎでの一件やらトークショー、出版社の倒産、直木賞(仮)待機、書店員による帯アオリ文と暗号。
「新刊ナイト」と「プロモーション・クイズ」が好きだな。やっぱり書店ミステリよりこっちのほうが好きだ。

ちなみに現在asta*では大手出版社の文芸編集者を主人公にした「クローバー・レイン」
同じ出版者を舞台にし、まったく興味のないローティーン向けファッション雑誌に配属された新人編集者が主人公の「プリティが多すぎる」
なんかもやっているそうです。そのうちシリーズ横断長編とかあるといいなあ。

四畳半王国見聞録

太陽の塔寄りの登美彦氏。
かといって今までどおりではなく「ひとりの阿呆」のみならず数々の阿呆大学生を取り上げ、誰の視点だか解らずあれっと思う作品もあり呑まれる感じ。よいよい。
「グッド・バイ」と「四畳半統括委員会」と「四畳半王国建国史」が好き。
「グッド・バイ」はあの微笑ましさから段々哀れな感じになってくる流れが好きなんだ。
大日本凡人會が真面目に異能集団である。モザイクさんはすごい。

昨今、一見普通のサークルのように見せかけて、その実、違法なビジネスや宗教に勧誘するサークルがあります。ソフトボールサークルに参加したつもりが、夏の合宿に出かけて見るとソフトボールにまったく関係のない教祖様が出てきた、などという哀しむべき逸話は枚挙に暇がありません。

(P166)

ゴールデンタイムを思い出す。四畳半統括委員会はあの議事録とか手紙とかが好きだ。

だいたい四国八十八ヶ所
(四国を)一周してみたい・(八十八ヶ所を)全部回ってみたい・いっぱい歩きたいという理由でお遍路開始。
ろうそくやら線香を割愛したエコノミーかつ民宿利用の区切り打ちである。

春になったからそろそろお遍路さんを多く見る季節がやってくるのである。
わたしは極当たり前にお遍路さんが歩いている環境で生まれ育ったのでよそから見るとどう見えるか知らない。なのでこの本はその別の視点から見えるっていうのが興味深い。
ちなみにこれと同じ時期の日記が載っているのがスットコランド日記 深煎りである。

なかには新町川にエイが出没した記録もあった。懐かしい。
そして鮎喰川にキャッキャウフフしていたのでそうかそれが既に凄いのかと驚く。
うんいや関東から来た人たちも新町川見て「中心地でこの透明度はおかしい」っていってたもんな。

私には香港人の友達がいて、日本が好きで、もう何十回と旅行に訪れているのだが、日本のどこが一番よかったかと彼に尋ねると、四国と即答する。人がものすごく親切だったというのだ。思えば、それも納得できる。彼はきっと、知らず知らずのうちにお接待文化の真っ只中を旅したのに違いない。

(P102)

いいよねなんか嬉しいよね。
わたしNHKの四国ニュースはほぼ見ない(=四国他県のニュースに触れる機会がない)ので同じ地方といえど関西のほうが馴染みがあるのでなんとも「四国」としてのひとまとまり感はないんですけど。
ちなみにマチアソビオフ主催のときのは「お接待してくるわ」というて家を出ます。
「オフ」とか言わないでもこっちのほうが理解されやすい。

51番の石手寺のところがやたらとおもしろかった。あの写真の攻勢はやばい。

多くのお遍路が、四国を特別な土地を思い見なし、ただそこにいるだけで感動したり、感謝したりする。冷めた目で見れば、へんろ道の9割以上はアスファルト道路で、中にはトラックがばんばん走る国道に過ぎなかったりするにもかかわらず、それは美化され、心の中で光り輝いたりする。
なかにはそうして美化することに反発を覚える人もいるだろう。だから、これから新たにへんろ道を歩こうとする者はみな、その一歩手前のところで、判断を求められることになる。
すなわち、この幻想を受け入れるか否か。
四国幻想にどっぷりハマるか。あるいは拒絶するか。

(P274)

待っている怪談 白い本 (ポプラポケット文庫 児童文学・上級)

主人公の子が「怪談の本」を読み始めて作中作を挟みつつ、現実となんだかリンクしていくのがこのシリーズなんですが、今回はちょっと切ない系。いわばちょっといい話系のホラーだと思います。

両親とも予定が入ったので「ぼく」が先にペンションへ行き、その行きの電車の中で女の子と出会う冒頭。
「ぼく」はなんだかよくわからない不思議な事態に触れていくのです。
怪談は「夜の訪問者」と「白装束」が好きだな。

不思議な羅針盤

大きいサイズ1のソフトカバーでエッセイ。
ひとつの章が長く家守綺譚より長いぐらい。話題もその中で入れ替わる。小説みたいだ。

「栗花落」で「つゆり」さんという苗字の人がいるらしい。梅雨入りの略かも? ということで。
新聞の集金のおじいさんの話が好きだ。

  1. 文庫本横置き2冊分ぐらい []
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