タグ「 津村記久子 」の記事

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ポトスライムの舟 (講談社文庫)

そういや一番最初のは読んだことなかったなと思って読んでたんですがスーパー胃が重くなる本でした。表題作のポトスライムの舟と12月の舟の2編収録で、ポトスライムはワープア、12月はパワハラと。淡々としているのにすごく怖い。
12月のツガワの頭がだんだんぼうっとしてくる感じとか、「みんなが優しくなった気がする」とか、V係長とか、生々しい! この感じ覚えがある! こわい!!!!! 重い!!!!!!!!って転がりながら読んでいた。読み終わる頃にはげっそり疲れていた(ので復帰すべく気分を変えようと外出した)

確か何かの対談系で津村さんが前に勤務していた会社がパワハラ系でっていうのを読んだ覚えがあるんですが、その時の体験はいってるのかなと思った。とにかく生々しい。そこに優しさなどない。脱出できれば勝ち、みたいな。こわいこわい。決して面白い本ではないんだけどすごい本を読んだ。

社会人必読なんて書かれているけどけっして「明日から頑張ろう☆」みたいな本ではないし、「働くってしんどいことだ」っていう感じで日常的に激務でフィクションぐらいは優しいものが読みたいっていうひとは読んじゃ駄目だと思う。

とにかくうちに帰ります

「職場の作法」・職場の作法のスピンオフみたいな「バリローチェのファン・カルロス・モリーナ」・「とにかくうちに帰ります」の3篇。会社員小説です。

職場の作法はなんだかあちこちに見覚えがありすぎた。あるあるあるwwwwwみたいな。とても他人事ではない。浄之内さんが好きだな。「とにかくうちに帰ります」は穂村弘さんのエッセイみたいなタイトルだなあと思いつつ、読んでみたら台風みたいな天候で帰宅難民化している人々の話だった。
これを読んでいた昨日は「あしたは台風並みの春の嵐」とニュースで見ていたので、これらは明日の私か思いつつ読んだ。元妻と子どものためなんとか家路を急ぐ人とか、とにかく家に帰らなくてはいけないのだ! という人々の話。読んだ時期がこれまた他人事ではなかった。布団の中でずぶぬれになりつつ歩いている感覚を思い出した。

ペリカン ペリカーノJr - Pelikan Pelikano Junior - 本体:ブルー 万年筆

作中に出てくる万年筆。色が複数あって可愛い。

アレグリアとは仕事はできない

2編収録されている。ひとつは「アレグリアとは仕事はできない」もうひとつは「地下鉄の叙事詩」

アレグリアのほうは原題が「コピー機が憎い!!」ちょー直球タイトルである。
アレグリアは人間ではなくミノベの職場にあるA1?A3まで対応のプリンタ・スキャナ・コピーの複合機である。品番YDP2020商品名アレグリア、高性能が売りのその機械は1分働いて2分休み、取説にないエラーコードを吐き、メンテの人が来れば治る。キスよりも早くのあとがきに出てくるような複合機だ。
これはアレグリアとミノベの戦いの話である。超リアルだった。
コピー機に紙が詰まって中開けてみたけどどこにも紙がなくて、電源切ってつけてみても相変わらず紙詰まりエラー表示のままで「何が気に入らんのや!」と心の中で叫んだ みたいなことを思い出した。

「地下鉄の叙事詩」は早朝の満員電車の中での物語です。視点変更と内面描写、人身事故や痴漢。
ミカミ氏に著しく共感を覚えた。

ミカミは人を殺したくなることがある。それも1時間ほどのうちに何人も。凶器はハンマーがいいと思う。大きく足を開いて座っている男の股間を金槌でぶん殴ってズボンの下にあるものを潰してやりたくなる。吊り革と吊り革の間にいるくせに肝心の吊り革を持たず、すました顔で二人分のスペースを占領している女の後頭部を殴りたくなる。聴いているとノイローゼになってしまうような音楽をイヤホンから漏らしている男の耳を、釘抜きの部分で抉りたくなる。車両の真ん中で、でかいリュックを背負って馬鹿面で立ち塞がっている高校生の膝の裏に一撃を加えたくなる。乗客が乗って来ているのにドア付近に溜まっている連中の頭を鉄琴を演奏するように叩いてやりたくなる。前に並んでいる人間の斜め裏を取って影になり、少しでも先に電車に入ろうとする卑怯者は、電車とホームの隙間に五寸釘よろしく叩き込んでやりたくなる。

(P147?P148)

婚礼、葬礼、その他

初津村記久子です。
ヨシノは仕事上のことでも部下が相手でも、呼びつけるのではなくこちらから出向く側で同僚に「腰が低い人ですね」とか言われていた。そして自分は呼ばないけどよく誰かに呼ばれる側であった。
旅行に行こうと屋久島ツアーを予約したその日に結婚式に呼ばれる。旅行はキャンセルし幹事やらスピーチやら2次会準備やらに徹する。そして結婚式に行ったかと思えば会社関係の人の葬式に呼ばれる。
淡々と進む話のなかあちらこちらで揉め事に巻き込まれたりごはんを食いっぱぐれたりとにかく振り回されるヨシノ。
後ろからそっと苦笑交じりに「頑張れ……」と言いたくなる話だった。おもしろい。
同時収録の「冷たい十字路」は視点がくるくる移り変わり話が繋がったりする。1回読んだぐらいではあんまり分からない話。

「わたしはね、やっぱりあんまりでかい葬式とかはいいから、誰も関係ない人を呼び出さずに済むようにしたいですね。あと、孫ができたらかわいがって、何もちらつかせずに誰かにお見舞いにきてもらえる人生を目指します」

(P79)
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