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北九州連続死体遺棄事件をめぐる、「あの時ああしておけば」の連続の物語。
途中からノンフィクションドキュメントを読んでいるような気分になった。序盤は男女が死体を埋めるシーンで幕を開ける。
飯塚みちるはその山中に遺棄された死体の件で取材をはじめた。飯塚みちるは一時は東京で記者として働いていた。今は彼女は出身地北九州でタウン誌のライターとして働いている。彼女を変えたのはかつて取材したいじめと称される凄惨な性暴力だった。それが元職場から今回の死体遺棄事件からの誘いで埋められていた死体は誰だったのか、を調べ始めた。

Twitterでは時々目に入る単語がある。身体的、精神的に障害をもった子どもが支援学校ではなく公立校へ進学し、「お世話係」として近くの席の子や「面倒見がいいと思われた子」が任命される件。支え合って生きていくことを学ぶことは間違いではないが、大人の都合を押し付けられて自分の意思とは反して「お世話係」としての役目を果たす子どもは「ヤングケアラー」であるというシーンにため息をついた。
町田そのこ作品ではしばしば生きづらい人たちが語られてきたが、「あの時こうしておけば」もっといえば「選択を誤った」「見殺しにしてしまった」「取り返しのつかないことをしてしまった」とどうしようもないところまできて悔やむ人たちをたくさん見ることになる物語だ。

九州は男尊女卑がなかなか……と聞かれることだけど、「早く結婚して子供を産まないと後悔する」と親に言われるシーンもあって、令和ァ! と思ったけど、数年前に某女子アナがご結婚された時に「はよ子ども産まなあかんねえ」とごく当たり前のこととして言うのも聞いたので、そういう価値観はある……。しかし、崇周囲の人間の生育環境ほんまきっつと思う。
ヘビーなので、休憩を入れながら読んだ。

武道館既読者でyoutubeの筆者インタビューを見ていたらこれは面白そうだなあと思って買った。
主な登場人物は3人。
久保田慶彦(47)アイドルグループの運営に関わることになった。澄香の父。
武藤澄香(19)内向的な女子大学生。自分の性格に嫌気がさしているところにとあるアイドルと出会う。
隈川絢子(35)契約社員。舞台俳優を熱心に推していた。

推し活ビジネスを構築する者、推し活ズブズブの者、かつてズブズブだった者、という雰囲気に惹かれて読んでいたものの途中から「もしかしたら隣のタイムラインであったかも」「自分の身に降りかかっていたかも」と思う生々しさ。

まとまりがない感想を書いたが、今出力できる感想を書いたらこうなった。恐ろしい本を読んだ(面白い本です。CDやカレンダーやチケットをガンガン積んだりする趣味がある人におすすめです)

絢子周りが本当に怖かった。俳優の三浦さんの話をしているのかなと思った。ある程度長い間Twitterやってる人間はハッシュタグデモやってるところ見たことの一度や二度あるだろう。そしてわたしは割と最近に近親者を亡くしてグリーフケアの本に手を伸ばした。

オタクと話してるときってその人の職業とか家族構成とかどうでもいいし、年齢も本名も気にならないからさ。必要な情報って、どの界隈で誰担か、くらいだし

(P151)

わかるわー。
あと陰謀論ってほんまこのぐらいある日突然に、つけこみやすいところを狙ってくるんかって思う。

いやこれはフィクションやし、創作やけど「心の拠り所だった神のような存在がよく分からないままに突然この世を去って、朝も夜もないような状態で一人過ごし、かつて同じ時間を長く過ごしていた人が久しぶりに訪ねてくる」そしてその人が連れてきて、ある程度の時間を一緒に過ごした後、ある日突然に「私は新型コロナウィルスがきっかけだった」って滔々と「この世界の真実」について話し始めたとして、私はその人をちゃんと拒絶できるだろうかって考える。絶対受け入れてはいけない。youtubeならアプリを落としてしまえばそれで終わる。でも対面である。3人でいるのである。そして絢子は。

澄香もわかる。わたしは2次元だったけど10年ちょっと前はオーディションにずぶずぶだった。デビューさせたいってTwitterで選挙活動をしていた。慶彦はこれからわたしが行く道を歩いている。誰のことも「この感情わかる」と思いながら読んだ。こんなヤバい本なんで朝井リョウは書けるのか??? と思いながら読んだ。劇薬みたいな本なので、1章というか1視点ごとで切って読んだりしていた。
ひとりがわーーーって話してる横で、自分はひとりでちょっとパニックになっている、みたいなシーンがちょいちょいあるけど、わたしはその場所が見えるような気がした。聞こえているけど聞こえないふりをしている、今更そんなことを言われなくてもわかっているみたいな。
あの寄る辺ない感じがなんでこんなにもビジュアル化されているのかと思う(※文字なのでビジュアルはない)

読みながら、「こわい」「それはだめだ」「こわい」と言いながら読んだ。
CDをいっぱい買ったり「この界隈の人はみんなやさしい」「みんなでがんばろうね」とかいうのが普通になっている人たちにはちょっと読んでほしい本だった。いや「これが推し活の真実だ」みたいなことをいうわけではなく「中毒症状があるほうが苦しくないのだ、人生は」も正しいと思うし、「幻覚を守るためには強い物語が必要」もそう。わかりみが強すぎる本なんだ。人によっては劇薬。
すごい勢いで「エコーチェンバー」「フィルターバブル」ってこういうことなんかと思う本だった。
これが日経新聞で連載されていたのも驚きだ。すごい本を読んだ。

最初に知ったのは【山崎怜奈×三宅香帆】日本最大級の大型書店で完全自腹の書店デート【ジュンク堂書店 池袋本店】 - YouTube

ちょうどそのころ吉沢亮と横浜流星の国宝(映画)を見に行って、やっぱやーめたと思っていた歌舞伎刀剣乱舞を見に行くことにした。前作は配信でちらっと見たものの、せっかく南座まで行くんだからねと歌舞伎について勉強していくことにした。
この本はフルカラーでイラスト多め1、「歌舞伎は基本不良の祝祭です」「顔を見ればキャラが分かる」「そこがいいのよ覚えておいて」「歌舞伎の舞台拝見」と読みやすく簡単で分かりやすい文章が並んでいる。
国宝を見た人間にはよくわかる、「各家の特徴と家系図」みたいなものもある。

  1. 写真の類は一切ないのでそういうのを求めている人は他の本をあたってください []

youtubeで流れてきた動画がきっかけで買った。

いつまでたっても阪神が勝たないから、短歌を作ることにしました。

そう始まる短歌集だ。時代は2022年。2022年の1年の阪神の短歌。
筆者のことは存じあげないが、たぶん関東在住で、投手か野手かでいえば投手が好き、大山は別腹で好き、そういう人が詠んだと思っている。

春の夜に067が示すのは大阪の電話と阪神の勝率

魔の開幕9連敗の年だった。

断崖の絶壁で一輪さいている花を伊藤将司といいます

わたしはこの歌でこの本は買いだ(電子書籍があるかどうかも調べてないうちに)絶対紙でほしいと思った。ところでこの本は大阪はなんば、OCATの横にあるジュンク堂で買いましたが、都会の本屋は「短歌」の棚であんなにもたくさんあるんですね。
イトマサの短歌はクソエモなものがとても多い。

ストライクが決まらぬ才木を気持ちごと引っ張る梅野にただ泣かされる

2022年だから梅野は強く、坂本誠志郎はほぼ登場しない。

大山がファーストにいると何もかもが引き締まるファーストにいてくれ

ほんまに今もそう。

読んでると自分から湧いたもので作る野球短歌を1冊作りたいと思うような本だった。
昨日の試合で言えば「火の玉を越えたドラ8赤い大地でガッツポーズ」

面白かったね。わたしはブレイクショットといえば「ビリヤードで最初にパッカーンってやるあれ」と思っていたけど、これに出てくるブレイクショットは車で、車にもブレイクショットってあるんだなーと思ってたけど、内容的にビリヤードのパッカーンってやるあれっぽいなと思いました。具体的には突かれた玉がぶつかりあって影響しあっていく感じ。バタフライエフェクト的な。
わたしはツイ廃で一般時に毛が生えた程度にはそこそこ投資もしてる勢なので、「あっ生々しい」と思うリアルな描写があって笑ってしまう。その中のひとつが明らかにリベ大を擦ってるよなというあれやこれやが「ええんかこれ」っていうぐらいあの声で再生された。
この本が紙の本で580ページあってこんなに分厚い本読むの久しぶりだけど大丈夫か??? って思ったけど吸引力すごかった。

食に関するエッセイだ。生活の中に溶け込んだ食事の話。日々の営みって感じの。
チキン南蛮は頭がいい、だってチキンと南蛮。カタカナと漢字だよ、と言われた話だったり日本酒がおいしいことがわかったけど東北の日本酒以外はピンとこない(日本酒は空気と水なので)と言われた話とかがよかった。
なんか読みたいけどがっつり何かを読む時間はない、でもなんか、という時に読むのにいい感じという空気感だった。

この例えが適切なのかどうかはわからないけど、まほろの女性版みたいな。

ネイルサロンをふたりで開業していろいろあって今はひとりでやっている月島がもうひとり雇って、仕事をしたり酒を飲みに行ったり、なんかそういう話である。事件は起きない。恋愛も発生してない。クソデカ感情もここにはない。でも「お仕事小説」というにもなんか違和感がある。仕事も日常の一環として描かれているからからかなあと思っている。

タイトルは「ミステリ」だけど内容はSFっぽい短編集。
「妹の夫」と「ゴールデンレコード収録物選定会議予選委員会」が好きで、特に「ゴールデンレコード収録物選定会議予選委員会」のほうはキャラが良かった。宇宙に向けて流す、地球人類から異星人へ向けるタイムカプセル「ゴールデンレコード」、そこに何を収録するかの持ち寄り会みたいなものである。自分の推しマンガ(リボンの騎士)を入れたい御竈門玖水(みかまど・きゅうすい)はプレゼンを繰り広げるものの芳しくない結果に終わった。それ以外に登場する人もなかなかの私利私欲の「それやばくない?」というものを持ってきており、玖水はそれ微妙じゃね? 言っていくのである。

「妹の夫」は時間跳躍を繰り返す荒木務は妻の殺害現場を目にしてしまった。夢をかなえて「初の有人長期航行」を手に入れたが、これに乗り込むと帰れる保証はないしそもそも妻が生きているうちにもう会えることはない。その覚悟で乗り込んだ。しかし妻を愛していた荒城は地球の自宅の映像を宇宙に飛ばし、一方的にそれを見る選択をした。声は入らない。映像だけでこちらからの問いかけも届かない。その中に妻が殺されている現場が映り込んでいた。

このサイトは来月で24周年を迎えるのですが、実は24年前に書かれた日記が現存しているのである。
書いたり書かなかったりする時期があって、「日々を無為に過ごしているような気がして」と書き始めて今は日記を書く媒体を増やしている。

この本は日記の新しい指南書になれば、と担当さんに言われたが正直そうするつもりはない。日記と言い張ればどんなものでも日記であるが実はそれが難しいことなのかもしれない。だからわたしの日記を公開することでなんだそれでいいのかと思ってもらっていろんな日記が読めればいいと思う、という序文で始まる。

わたしがインターネットを始めて間もないころ、ウェブリングやタブブラウザが元気だったころは日記サイトというのがとても多かった。SNSの隆盛とともに個人サイトや個人ブログが少なくなり数年ぐらい前からnoteで日記(ただし毎日更新ではなく、数日分まとめて更新するスタイル)が読めるようになった。人の日記はおもしろい。叙述トリックのようなものを味わうことがある。
くどうさんは同性とルームシェアをされているのかと思ったらのちにその人と結婚していて男性やったんかと新鮮な驚きを得た。
たくさん書いている日があれば1行2行で終わっている日も日付だけの記述の日もあり、日記とはこうでいいんだよと思える本だ。

高松で日記の練習を買って年始のAmazonセールでも2冊ほど買って、今ちょっと「くどうれいん」という人を知ってみようキャンペーンが行われている。
岩手出身で割と生活に根差したエッセイを書かれている方だ。瓶ウニがおいしそうだった。

「ひとりでごはんが食べられない」が印象に残ったりした。わたしはひとりでも外食ができるが、ひとりだと食事をおろそかにする(しかもお腹が空いてくるとどの店を見ても「コレジャナイ感」に襲われて結局どこにも入れない)ことがある。
でも誰かとおいしさを共有したさはないので、こういうところで他人の見解が見られるのは良い。
いやライブ終わりに西梅田のファミマでサンドイッチとビール買ってハービス大阪で写真撮って食べながら検索するのいいんですけどね。直近ではよしここだと並んでも「ご案内はできますが、キッチンが混んでいて提供に〇分かかります」と言われて高速バス時間的に無理で泣く泣く後にしたこともあり。思えばあれはインフル的にアウトだったのだろうか。

それをあれかが「丁寧な暮らし」だと嘲笑するかもしれないが、うるさい。わたしは大根を面通ししているだけだ。それ以上でも、以下でもない。わたしはわたしの大根を切る。お前はお前の大根を切れ。

(P102)

2018年から2022年(主には2020年)の日記。古賀さんと2人の子ども(中学生の兄と小学生の妹)
コロナ禍真っ只中の子どもも書かれているが、そんな悲壮なものはなくよく子どもたちと話をし、戯れ、生活をしている。
小学生の娘にきく「どうやって仲の良い友達を作ったのか」はそういえばこの年代は確かにそうだった、と思う。

アンソロ形式の本ではないが、まえがきとあとがきがある。
ちなみに本作は「スペース」以来20年ぶりになる駒子シリーズの続編。まえがきでは「ななつのこから始まる、ストレートな続きではない」と書かれているものの、読んでいるとあーはいはいはいとなる感じだ。ミステリの味は薄く、日常の謎というか日常に存在するちょっとした不思議なことに結末がつく。
基本的には犬が物語の中心にいる。宮部みゆきのパーフェクトブルーぐらい犬と人間の物語である。

今年の賞ランキング系を片っ端から取っていくすごいやつ。短編集。
高校生射守矢 真兎(いもりや・まと)が戦う5つのゲーム。ゲームはどれも誰もが一度はやったことがあるだろう、じゃんけんが2種類、坊主めくりとポーカーとだるまさんが転んだ。しかし今回はどれも特別ルールが追加され論理的なゲームとなっている。
これはネタバレですけど、射守矢は勝ちます。その勝ち方が鮮やかです。

元々はAmazonオーディブル用に書き下ろされた作品の書籍化。

都内にある老舗ホテル、三日月ホテルに勤めている続 力(つづき・ちから)は忙しい日々を送っている。
小ぢんまりとしたホテルがゆえに宴会担当専任とはいかず、ある時はフロントを、ある時は荷物を運び、ある時は夜勤もする。その中のひとつとして招待状作成がある。ここぞというときは手書きによる招待状の需要がある。
とあるお別れの会の筆耕として選ばれたのが遠田書道教室の遠田康春氏であったが、氏は亡くなられており、筆耕は遠慮するという連絡があった。それがサンプルと一緒に送られてきたのが今回選ばれた「教室を継いだお子さん」遠田薫氏であった。
康春が跡を継がせた人間なら間違いはないだろうが、万が一のことがあっては困る。薫氏の腕と人物像を見極めてほしいと力は書道教室を訪れた。

書道教室に通う子供からは若先と慕われ、あらゆる筆跡を駆使し代筆を請われる遠田に巻き込まれる形で力も代筆に協力したり食事を共にしたりすることになる。
元々がオーディブルということは耳で聞いて理解できる内容のためか、あっさりした内容で読みやすく、登場人物も限られている。

「宮木あや子が明治ブルガリアヨーグルトをテーマにお仕事小説ともやしもんぽいもの(さらに入れ子としてPixivで細々連載されている乳酸菌擬人化小説)を書いた」というやつ。
岩手県出身で東日本大震災で被災し、今はとある大手食品会社で勤めている朋太子由寿と「悪魔の創造せし国に忍ぶ矜持の器と刃」(乳酸菌擬人化)と仕事の話である。
というと「ハハーン、B面の宮木あや子ね」と思って読むと震災サバイバー、地方も地方出身女子の大学院進学ほか「女性の権利について」、なんかもういろいろ入っているのである。軽そうに見えてそんなに軽くはない。
アフタヌーンティーのところの流れが好きなんだな。

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