騎士と王女 饒舌な幽霊 蒸気機関車 錬金術と数秘術 そんな感じです。
タイトルは王女ですが主な視点は青年です。キーリが好きな人は好きなんじゃないかなあと思う。
新しい技術・蒸気機関から派生した新しい科学のようなもの「数秘術」と、旧来からの技術・いわゆる魔法「錬金術」が激突した世界を揺るがす戦争から2年経った。
錬金術側「コローニアの英雄」と謳われたウィルは現在中立国で小説家を志しつつひっそりと暮らしている。
このウィルがハーヴェイっぽい。いや「生きること」そのものに対しての偏差値はウィルのほうが明らかに高いのだけど。雰囲気が! 読み終わった後無性にキーリが読みたくなった。あれも蒸気機関が走っている……。
で、数秘術の国ブラッキアリにコローニア王族で引きこもり・説明不足・錬金術師のアンジェリンが亡命してくる。
ウィルには「英雄」以外にももうひとつ秘密がある。「幽霊が見える」こと。そしてアンジェリンには執事の幽霊がついている。彼、エルネストはアンジェリンを溺愛し、アンジェリンに近づく男は屑だと思っている。非常に多弁な男である。
エルネストは挿絵があるにもかかわらず脳内では外見ロノウェ中身ルパート様で再生された。アルフォンソは胡散臭い眼鏡でよい。とてもよい。ウィルの書いた小説が読みたい。調理済みの鶏肉の血抜き戦争……洗濯ばさみのロマンス……。どこのAmazonに行けば買えますか。
それまで目にする機会がなかった「数秘術師」をよく聞いた2月でした。いやアンチリテラルは未読ですが。
章タイトルとか変則挿絵とか、この手間隙かかってる感あってかわいい。
(上)(下)って解ってるから安心して来月を待てる。
変に期待を持って「こ、これで終わりなのか……」なのかとしょんぼりしない。
楽しみだな。
小さいころから聞き慣れた国歌が頭の片隅から響き始めて、すぐに全身を震わせる。骨がかゆい。指がむずむずする。心臓が震える。まるでわくわくしているときみたいに。ただ単に音に反応して震えているだけなのに、身体は勘違いする。俺は興奮してるんだ、って。俺は戦いたいんだ、って。戦いたい。戦いたい。殺したい。頭の隅で誰かが怒鳴っているみたいだ。
うるさいな。本当にうるさい。気持ち悪い。
俺は一体何者なんだ。俺の体はどうなってるんだ。俺の魂はまだここにあるのか。ないのか。
(P14)