推しが燃えた。ファンを殴ったらしい。

推しとの別れを想像するとき、あたしはここにいる人たちとの別れも一緒に考える。推しで繋がったから、押しがいなくなればばらけていくしかない。
成美みたいに途中で別のジャンルに移っていく人もいるけど、あたしは推しがいなくなったときに新しく別の推しを見つけられるとは思えなかった。未来永劫、あたしの推しは上野真幸だけだった。

推しを推すとき、あたしというすべてを懸けてのめり込むとき、一方的であるけれどあたしはいつになく満ち足りている。

去年ものすごく話題になった芥川賞。
普段なら直木賞はともかく芥川賞を手に取ることはまずないんですが、今回は「推し」「炎上」「アイドル」と、凄く近い世界が描かれていたので読むことにしました。

作中は男女混合アイドルグループ(CD封入投票券による人気投票で歌割りや立ち位置が変わり、接触イベントもある。メディアへの露出はかなり多そう)を推している女子高生が主人公。
「推しを推す」生活を全く知らないと異文化交流すぎて分かりにくい本になりそうだけど、現場、インスタライブに祭壇もあるし、「作中SNSのコメント」はtwitterやyoutubeのコメント欄やはてブロやnoteにありそうですごく生々しい。

全体としては淡々としている。でも「推しに対する解釈を深めて推し解像度をあげている女子高生」の解像度がかなり高く色彩も鮮やかだ。分かりやすくいうと「こういうオタクいる」
わたしのTwitterのタイムラインには湿度の高い推し方をするオタクが複数いるのでそれに比べればずいぶんと乾燥している。でも重いか軽いかでいうと大分重い方のファンだ。

あかりの同担である自分を想像したところ、わたしは後半のインスタライブと記者会見を見て担降りエントリを書いて現場が終わった後公開されるように予約投稿しますね。
面白い/面白くないという判断はできないけど、推し活に身を浸している人間としては衝撃的な本でした。