富士見ファンタジア大賞の銀賞作品でL文庫。
シャリア王国のルイーゼは王女として育てられた。というのも先王2人の息子が王位をめぐって争いに巻き込まれることを憂えたからだ。
自分が貴族の派閥争いの結果兄と争って王位についた第二王子だったからなおのこと心配し、第1王子オーギュストが王位を継ぐまでルイーゼの正体は秘密にしようと、事実を知っているものは本人、王、第二王妃、ルイーゼの世話役を任されたヴェルスタール家のみである。
ルイーゼ(ちなみにこの名前も男女どちらでもとれるように付けた名前だ)は予想以上に王女として演じたしオーギュストも王にふさわしい器に育った。王位を譲ればルイーゼのことも大々的に知らせるつもりだったが、王は急病であっという間にこの世を去った。
「王妹ルイーゼは男である」と世に知らせることができるのは最早ルイーゼのみなのである。現状、唯一真実を知る世話役のクラウスは今すぐにでも言ってほしいがルイーゼはのらりくらりとかわしている。
そうして派手に知らせる場を見つけた。 王にして兄が持ってきた「ルイーゼの花婿選び」である。花婿選びは同時に事件の始まりでもあったのだという。
ルイーゼは表向きは貴族の視線を一身に集める美貌の完璧な姫君なんですが、まあ本性は雑な、全裸で舞い踊る系の、ついでにいうなら3つ目の顔としてごろつきの親分もやっているという、まあ愛しい系のあほの子。このあほのこがめろめろになっていく話です。
まあ要するに、壮大な一目惚れの話です。
花婿選びに参戦した男は四十二人。自分の秘密をばらす舞台を作り上げるために、最高の人材を見つけたいとして「なんかめんどくさい事情を抱えてそうなやつとか、俺ぐらい美形のやつはいないのか」とサロンをみていたら本当にそんなヤツがいた。それがオレスである。
そして先ほど抱いた感情を打ち消すかのように、自らの頭を幾度も壁に打ち付けた。
「違う!! 違うぞ、今のは違うんだからなっ!!」
しかし思いとは裏腹に、波立った精神はなかなか落ち着くことがない。
「なっ何にもドキドキしてとかないからな!! ふざけるなよ!! 馬鹿っ、変態!! ……って、痛あああっ!!」
(P193~194)
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