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サイコロみたいな本だ。
とある小説家の話。明記はされてないけどおそらくミルリトン探偵局と世界観を同じくする本。
年がら年中小説のことを考えているカタリテ1が色々考える話。
ThinkとかBoleroよりはこっちのほうがちょっと未来の話である。音ちゃんが二十歳である。
メタだったり現実と幻想の境界があいまいだったりする。

言葉が休暇を取るとか「自分が書いた小説が現実に現れて舞台が始まる感じ、でも描写のあまりのしょぼさに嘆く」とかいいなあ。我々は今読点の中にいるんですとか。
あと「そろそろワタシもいい加減話し疲れてきた」の章が好きだ。
カタリテとそのカタリテがつくりだした登場人物の療養所のターン。
カタリテは自らが創作した登場人物に出会うことになる。その登場人物曰く、カタリテから独立して別の新しい生活を始めなければいけないことになったという。

あらすじを書くのがとても難しい本ですが、一言で言うなら「いつもの吉田篤弘です」に尽きる。
おもしろかった。

ものすごくしみじみした顔で「ああ、それはね」と微笑すら浮かべる。「音ちゃんも大人になったら分かるよ」とかナントカ。ぜんぜん分からないんですけど! すっかり大人になったのに。というか大人になってしまったおかげで、もうさっぱり分からない。

(P115)

ちなみに同じ世界観にあるのではという本がこちら。

Think—夜に猫が身をひそめるところ (ミルリトン探偵局シリーズ 1)Bolero—世界でいちばん幸せな屋上 (ミルリトン探偵局シリーズ 2)

文庫版もあるけどこっちのほうが表紙好きなので……

  1. 小説家である。妻子がいる []

小さな男 * 静かな声

今月文庫落ち祭りが控えてる吉田篤弘の新刊。
メインは2人。
百貨店の寝具売り場に勤務し<ロンリー・ハーツ読書倶楽部>に籍を置く「小さな男」
日曜の夜、深夜1時から「静かな声」という2時間の台本なし生放送のラジオ番組をやることになった静香

ゆるっとリンクしつつ、交互に語り手が変わりながら進んでいく。
吉田篤弘作品ですという感じの。静かな声#7の「夜中に赤い手帳を読み上げる静かな声」がとてもつぼだった。「間違って撃ちました」とか。

しかし、読書はいい。この素晴らしき「ロンリー・ハート」な夕方の読書よ!

(P189)

「違うの? だって、ちょうど人が寝静まる頃にさ、姉貴の声を聴く人がラジオのスイッチを入れるわけじゃない? あっちこっちでさ。ラジオってスイッチを入れると赤い小さなランプが灯ったりしない? 暗い夜を過ごしている人たちにはそのラジオの小さな赤い灯が街灯みたいなもんじゃないの? だから、姉貴こそ点燈夫じゃないのかね(以下略)」

(P325)

露出も増えたのでまとめる……

新刊
ロードムービーに続き新刊「太陽の坐る場所」12月上旬。(→e-hon
別冊文芸春秋でやってたやつ。値段からするとハードカバー?と思いつつも荒野@桜庭一樹が同じ値段でソフトカバーだったので分からない。

野性時代11月号で短編「8月の天変地異」が載っているらしい?(あの松ケンが表紙の赤いやつ)
そういえば野性時代には今までもちょこちょこ短編が載っていたように思うけど、これはひとつにまとめないのだろうかー。

特集とかエッセイとか
IN★POCKET11月号が出てるところもあるらしい? 一応発売予告的には今週金曜日(14日)
特集の後編。10月号の予告曰く文庫落ちする凍りのくじらについて。
凍りのくじらはノベルスのほうで持ってるのでスルーしようかなと思ってたんですが、文庫版がやけに可愛らしいのでぐぬぬとなっている。

凍りのくじら (講談社文庫 つ 28-5)

asta*12月号の「10歳までに読んだ本」のところにもいたー。ちなみに「モモ」

エソラ VOL.5

に収録されているのは道の先とロードムービー。
恒川光太郎いるけどこれ買うなら普通にロードムービー買ったほうがいいんじゃね?という自主セーブ

-------------ここから他の話-------------

asta*がなんか11月号から吉田篤弘の連載が始まっていることに気付いてなくて、今日処分する前に気付いた……あぶねー。ちなみに「モナリザの背中」というやつ。

その他のasta*12月号→
・池上永一のエッセイでモリミーが出ていた。いや正確には鴨川の若者を見て「森見登美彦の世界っぽい!」と言っているところ。あと梅田の地下街で迷ってた。梅田の地下街は魔物がすんでます。
・森絵都の短編集が1月に出るらしい(どこの出版社とか何日とかは言ってなかった@金原瑞人との対談
・ライトノベル☆いいとこどり 今回は「妄想と現実の境界を飛び越えるライトノベル」
AURA@田中ロミオで1ページ、俺の妹がこんなに可愛いわけがない@伏見つかさ・千の剣の舞う空に@岡本タクヤ・スラムオンライン@桜坂洋で1ページ。

後ちょっと前についったーで「青春×音楽なラノベ」の話が出ましたが、一般文芸のほうでまさに「青春×音楽」がテーマのアンソロジーが出てたらしい。

Heart Beat

フィンガーボウルの話のつづき (新潮文庫 よ 29-1)

クラフトエヴィング商會の吉田篤弘の16+1の短編集。
短編同士が複雑にリンクしている(Aという短編はBという短編の中の登場人物が書いた小説のことでもある、とか)

「で、私の結論はこうだ。なるべく多くを読み、多くを聴くこと。つまりね、語られなかった物語をあぶり出すには、この世に語られた物語をすべて並べてみせることだよ。そうやって失われたものを包囲してしまうわけだな。包囲して輪郭を浮かび上がらせる」(P19)

78(ナナハチ)

13編の小説。続き物であったりリンクしていたりいつも比ちょっと分厚い本でした。
蓄音機でしか再生できない78回転のSPレコードがモチーフの話。
好きな話は第3の男とトゥインクル、トゥインクル、アーサーのねじ回し

大いなる無駄を積み重ねないことには、決して到達はありえない——(P230)

という、はなし

児童書のショートショートっぽい。もしくは絵本。
まず絵があって、それに吉田篤弘が文をつけるバトンリレーのような感じで「読書の情景」がテーマ。
「とにかく」「何ひとつ変わらない空」「眠くない」「背中合わせ」が好き。

フィンガーボウルの話のつづき (新潮文庫 よ 29-1)

何とも不思議な話だ……

吉田君は「世界の果てにあるような食堂に来る人」の話を書きたいと思っていて長く悩んでいる。
そこに奇妙な連作小説を予告して消息不明になったジュールズ・バーンのことを知る。
物語のはじまりのしっぽを掴んだ吉田君は……という話だったのが。

「奇妙な連作小説」というのはフィンガーボウルの話のつづきを言いあらわしてることばでもあるのですが、17の短編が入っています。
たとえばAという短編があるとして、これは吉田君が書いたものなのかバーンの過去作品なのか、それとも何の関係のない話なのかと先を読む。終わる。誰だーと思いつつも次の短編を読む。読んでたら別のBという短編の中で昔は俺もAっていうやつを書いたんだとかいうのが出てきてナンダッテーと叫ぶことになる。リンクが複雑。

物語の重要なキーワードとして出てくるもの
ビートルズ:ホワイトアルバム

「私は殺し屋ではない」と「白鯨詩人」と「ろくろく」が好き。

針がとぶ Goodbye Porkpie Hat

うわーなんかめさめさおもろかった。
短編集「一見別々の話、しかし実は繋がってる」という話がとても好きで
「本」が出てくる話は何かとても印象的なんだー

金曜日の本——「クロークルームからの報告」>パスパルトゥ>路地裏の小さな猿
の順で強まってる。金曜日の本はまじで最強。

いやいや、待て、少し待て、読むのを止めないと……次のセンテンスでひと区切りして……そう思っているのに、気づくと2、3頁があっという間に過ぎている。
なんだろうか、これは。
驚きながらも、目がひたすら熱狂して文字を追い続ける。手はいつの間にか頁をめくるためのマシーンでしかない。
そのうち全身が震えだした。そんなことはもちろん初めてのことだった。
この先どうなるのか? 主人公はどうなっていくのか? その答えが、今この手の中にある。いや、もう次の頁、ほんの薄い紙を一枚隔ててある。そう思っただけで興奮と期待で大声を出したくなった。それを抑えようとして体が震えてくる。

P41・金曜日の本——「クロークルームからの報告」

目次を読んだだけで引き込まれ、しかも信頼する本屋の親父さんのお墨付きの本。
それを読んでいるときのとある男の描写だだー。

本好きならだれでも覚えのある感覚だと思う。
私この前これやったよ封殺鬼。寝る前に1冊だけと読んでみたら3冊読んだ。

こんな感じで的確に文字化されてるの見ると嬉しくなってそうそう、そうなんだよ(*゚∀゚)=3と
無駄にテンションが上がる。
うっかりと私も作中作「運命の女賭博師」を読んでる気分になった。
吉田篤弘の本は読んでると凄い勢いで脳内劇場が動いている。
文字が脳内で映像化している。忙しい。

さて次は百鼠を読みます⊂´⌒つ*。Д。)つ

読了:6.17

それからはスープのことばかり考えて暮らした

オーリィ君(日本人、青年、本名大里)が無職からパン屋(サンドイッチ屋?)の一員になってスープを店で売るようになってあれこれ考える話。

オーリィ君と安藤父がメールしてるところが好きだ。
後料理がいちいちおいしそうでお腹すく。ラーメンとかラーメンとか。
スペイン風オムレツの入ったサンドイッチがちょーうまそうだった。

「心暖まる人との交流の話」というととても使い古されたにも程がある
表現なんですが実際そうとしか言えないんだからしょうがない。
連作短編で、こんな内容ならもっと読みたいなあと思いました。

「うまい」というより「すごい」と言いたくなる。小粒だけれど強烈な香りを放つものたちが、ひとつの鍋で融けあって思いもよらない黄金色のスープストックに化けている。
これはもう化学反応である。
つまり、スープのストックというのは、例えば「H2O」といった化学記号をわかりやすく解いたものと同じで、誰がいつどこで発見したものか知らないけどそのレシピがいくつもの鍋と時間を介し、今自分の手元の鍋にまでたどり着いているという不思議。

P110

5.26読了

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