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卒業するわたしたち

色んなものからの卒業。全体的にしんみりとしている。
「にじむオレンジ」が好きなんですが、これは女子アイドルグループから学業を理由に卒業するメンバーの卒業公園に行く話。アイドルが繋いだ縁、わたしと友達の仲のよさは変わらないのにアイドルグループは変わってしまう。
卒業公演のアンコールの、卒業する子のソロの部分に差し掛かってオレンジのサイリウムで埋め尽くされるっていいよね。この前までもーむすの卒業公演のあれこれをタイムラインで見かけたからこういう感じなんだろうなあって思った。

「胸に赤い花」はびっくりするほど加藤千恵で、でもこういうのはひとつ読めたらいいなあって。

あのころの、 (実業之日本社文庫)

窪 美澄,瀧羽 麻子,吉野万理子,加藤千恵,彩瀬まる,柚木麻子による女子高生青春アンソロジー。
女子高生ですが当人的にはほとんど恋愛は関わってこなくて、むしろ百合百合である。
高校卒業したらもうこんな風に一緒にいられないとか、たくさんの時間と出来事を共有しているのに同じものを見ていないとか、一緒に東京へ行こうとか、女子校で女の子にキャーキャーいう感覚。焦燥感に絶望感、ともだち。
百合ですよって言うのは単に女の子同士がキャッキャウフフしているだけに留まらずキスまではするからです。でも性的な百合はないよ。
アンソロだったら割と当たり外れがあったりもするんですが、これは割とどれも面白い。
で特に好きなのは加藤千恵「耳の中の水」 彩瀬まる「傘下の花」 柚木麻子「終わりを待つ季節」
要するに百合百合してるやつです!
「耳の中の水」は仲良しグループのかなめから「好きな人ができた」と告白され、きゃあきゃあいいながら協力しかなめは無事彼氏ができた。のはいいのだけど四人は段々すれ違ってきたように思う。高校2年生、進級したくないようずっとここでいたいようという話。
「傘下の花」は転勤族の母に連れられやってきた長野県での話。標準語の私・訛ってる周り。馴染めない。
そして出会ったのが老舗の和菓子屋の一人娘だった。
「終わりを待つ季節」は大学推薦をとって私の選択はこれで間違ってなかったんだろうかエスカレーターではなく外に出るべきではなかったのかと悩み、ひょんなことから学年1の人気者と仲良くなる話。

「約束は今も届かなくて」は鷺沢萠さんのことが出てきてドキッとした。訃報を目にしたのも今ぐらいの季節だったなあ。ぐぐったら4月11日、もう8年前のことでまだ35歳だった。

「でも、女の子も怖いよね。みんなさあ、子供です、無邪気ですって顔しているんだけど、体はもうバッチリ大人なんだよね。男が欲しくてうずうずしているんだよ。私はいわば男の代替品。もみの木の代わりのヒマラヤ杉、ホットケーキミックスで作るお菓子、口紅じゃなくて色つきリップクリームってとこ」

(P256)

ハッピー・アイスクリーム (集英社文庫)

ハッピーアイスクリームって(歌集にしては珍しい感じに)文庫にもなっていたけどあっちももう入手困難の気配なんだろうか。あのハッピーアイスクリーム3度目の出版。前半は短歌を元にした小説。後半は短歌。

ハッピーアイスクリームは10代後半〜20代前半の頃に最初のマーブルブックス版で読みました。
もうその頃からすごく好きです。今回これ読んでるときも魂がすごく思春期だった。
短歌では昔から

どうしようどうしていいかわかんないどうしようあたしあの人が好き
欲しいとか欲しくないとかくだらない理屈の前に奪ったらどう?
あいまいが優しさだって思ってるみたいですけどそれは違います
幸せにならなきゃだめだ 誰一人残すことなく省くことなく

このへんがもうすごく好きなんですよ。このどうしようもなく青い感じ。解説に出て来た子じゃないけど「分かる!」なんだよね。共感というか理解。私はこの青さをいくらか持ち続けていたい。少なくともラノベが好きで読んでいるうちは。

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